銃は剣より強し   作:尼寺捜索

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21話

 連盟日本支部地下十階。そこの一室に僕は勾留されていた。

 煤けたベッドと今にも足が折れそうなテーブルと椅子が一組あるだけで、それ以外は何もない。

 丸一日査問会で立ちっぱなしにさせられ、食事もろくなものが出ない環境だ。

 

 査問会とは名ばかりの揚げ足取りの尋問を延々とされる日々が一週間も経った。

 内容はここでは割愛させてもらうが、毎度毎度ひどい茶番である。むしろ相手が飽きずに続けてくることに感心すら覚える。

 

 それだけ僕の揚げ足取りに必死になっている証なのか、単純に僕を貶すのが楽しいのか。

 おそらく両方だろうが、何にせよこの場を凌がなければ僕の騎士としての人生が終わるどころか、二人の名誉を損なうハメになる。弱音を吐くことは出来ない。

 

 しかし。

 

「……こんな生活は久しぶりだな」

 

 敵中にただ一人。四面楚歌。孤軍奮闘。

 そういうのに慣れているつもりだったが、椅子に腰を下ろした途端に込み上がってくる疲れを鑑みるに、相当堪えているようだった。

 

 他人事のように言ってしまうのは、頭では大したことないと思っているのに、心が悲鳴を訴えてくるというチグハグな内面に困惑しているからだ。

 

 言ノ葉さんとの出会いをきっかけに、僕の心は温かさにすっかり慣れてしまった。それが当たり前だと思い始めたところにこの凍えはキツイものがあったのだろう。

 

 心が弱ったのではない。成長したと言うべきはずだ。

 

 この困惑こそが正常なのだ。

 彼女たちが教えてくれなければ、この環境が異常だと気づけなかったはずだ。以前の僕であれば、今まさに頭で考えていたように、心までも〝こんなの大したことじゃない〟と思い込んでしまっていただろう。

 そしていずれ決定的に狂ってしまい、壊れたに違いない。凍え切った心を粉砕するのは振り下ろした金槌ではなく、衝撃から生じた内側の亀裂なのだから。

 

 さて、辟易するようなこの現状はそこまで長く続かないと見ている。

 時間をかけることはできても、かけすぎることは出来ない。なぜなら、七星剣武祭が始まってしまうからだ。

 

 七星剣武祭の代表生というネームバリューは世間一般人が思っている以上に重い。

 数多といる学生騎士たちの中から選りすぐられたトップたちが頂点を競う()()()()のイベントである。代表生に選ばれるということは騎士としての実力を連盟に認められるということだ。

 

 それは査問会(あちら)にとって非常にまずいはずだ。

 彼らは大元である国際騎士連盟に逆らえない立場にある。連盟が直々に認めた騎士に難癖を付けることはできない。

 

 僕が代表生に選ばれる可能性が皆無であればこんなことをしなかったのだろうが、生憎と有力候補になりつつあるのが現状だ。無視できない所まで来てしまったのである。

 

 だからこそ彼らは躍起になっている。何でもいいからとにかく僕が不利になるような材料を集め、連盟本部に騎士資格の剥奪を認めさせたがっている。

 表向きは余裕ぶっているものの内心では焦燥に駆られているに違いない。どんな嫌がらせをしても僕がへこたれない上に、こうしている今にも七星剣武祭が迫っているのだから。

 

 その焦りが表に出てくるのは、もうすぐだ。

 

 僕の予想に正解を出すように独房の目の前にあるエレベーターがベルを鳴らした。

 無機質の扉の向こうに姿を現したのは、昔の記憶と寸分も違わない底冷えする無機質な瞳をする父さん──黒鉄(いつき)だった。

 

 ついに騎士連盟日本支部支部長自らが乗り出してきたのだ。

 向こうに余裕はなくなった。そう思うと、無意識に早まった動悸を鎮めることが出来た。

 

「中に椅子を入れろ」

 

 鉛のような重い声音で背後に控えていた従者にそう命じた父さんは、無言で淡々と従う従者を無視して手に持つタブレットに目を落とす。

 声を掛けてくる様子がないので僕も黙り、独房には作業の物音のみが行き来した。

 

 これまた無言で退出した従者を尻目に父さんが用意された椅子に腰かけた。

 五歳の誕生日以来顔を合わせなかった手前少しの緊張感を帯びる。それと同時に二人を傷つけた張本人を前に胸の奥から怒りが沸々と茹でたつ。そんな一方で父との十年ぶりの再会に妙な疼きも覚える。

 

 しっちゃかめっちゃかになる心中を押さえつけながら、それを煩わしいと思う自分がいる。

 

 何を我慢することがあるのだろうか。この男がすべての元凶なのだ。内側に秘めてきた数々をぶちまけてやってもいいじゃないか。僕にはその権利があるはずだ。

 

 混乱し始める思考を押し留めたのは、別れ際に見た言ノ葉さんの色のない表情だった。

 沸騰しかけた頭に冷や水を浴びたことでかろうじてまともに戻ってこれた僕は、それでも燻る熱をため息と共に吐き出す。

 

 十年以上もの時間をかけて積もりに積もった感情。その凶暴性を我が事ながら甘く見ていた。

 

 怒りに任せて怒鳴っても何の解決にもならない。

 まだ爆発して良い時ではない。

 

 自制に集中する僕に対し、いつもの仏頂面をさげる父さんが言葉を繰り出す。

 

「率直に聞く。お前は騎士をやめるつもりはないんだな」

 

 査問会で意地でもボロを出さない姿勢から僕の意志を感じとったのだろう。無駄な前置きを省いた質問を投げかけて来た。

 

「ありません」

 

 僕も率直に返す。

 父さんは「そうか」と無感動な声音で呟いた。

 

「無能のお前がなぜ魔導騎士の道に固執するのか、私には理解できん」

 

 容赦のない言葉を吐き捨てながらタブレットを机の上に置いた。そこには先程から父さんが見ていたのであろう資料が映っていた。

 僕が画面を覗いたのを見た父さんは変わらない声音で続ける。

 

「それはお前の小学校から高校一年までの成績だ」

「え!?」

 

 タブレットにかじりつくと、確かに今まで渡されて来た成績表がそのまま載せられていた。

 

 なぜこんなものを見ていたのか。これでまた良からぬゴシップを作ろうとしていたのだろうか。

 しかし次の発言でその憶測は外れだと知る。

 

「伐刀者としての成績は散々だが、座学は目を見張るものがある。私が見ていたのはそこだ。お前は()()()()()()は無能だ。しかし()()()()()()ならその限りではない。親ながら驚いたものだ」

 

 思わぬ方向からの発言に面食らう。

 父さんの言う通り、座学の成績はかなり良い。それは万が一『座学の成績も悪いため魔導騎士として不適切』などと難癖付けられて進学出来なかったら困るため、文句を付けられないよう武の修行と並行してしっかりと勉強しているのだ。

 

 それが功を奏したのかは不明だが、高校でも座学の授業は普通に出席出来ていた。最低限度の能力水準とやらで僕を締め出すとほとんどの生徒を締め出さなければならなくなるからだろう。

 

 だが、そんなことはどうでもよかった。

 

 確かに父さんは口にした。『親ながら』と。

 その言葉があまりにも予想外で、呼吸をするのも忘れて呆然と父さんを見つめる。

 

『何もできないお前は、何もするな』

 僕という人間の根底に刻まれた言葉であり、あらゆる困難と苦痛の元凶となった言葉であった。

 

 それは僕が父さんに失望されたからだと思っていた。

 黒鉄家の家名に泥を塗るような僕を息子として認めない。そういう意味で言ったんだと思っていた。

 

 だからこそ、僕は頑張ろうと思った。

 失望の裏返しは期待。僕に失望したということは、少しでも期待をしていたということなのだから。

 言葉遊びに過ぎないこじ付けだ。でも、当時の僕には何か生きる理由が必要だったのだ。何もかもを否定され、打ちのめされた心が崩れないよう縋り付ける何かが。

 

 些細でいて、されど致命的な食い違いをしている不安を覚えながらもそれを押し殺し、伐刀者としての実力を示せばいつか父さんも息子と認めてくれるはずだと()()()()()()()()

 

 誰からも除け者にされたがゆえの承認欲求だった。

 それを叶えるためならどんな辛いことだろうと躊躇うことをしなかった。

 

 高校に入り言ノ葉さんという親友を得てからその激情はだいぶ鎮まったものの、消えたわけじゃない。

 あれほど怒りと憎しみを寄せた父さんに、こうしている今でも繋がりを求めているのが良い証拠だ。

 

 

 そんな前提を崩すような発言に、僕は堪らず声を震わせてしまう。

 

「……父さんは、僕のことを息子と思ってたの?僕が家を出る前から」

「無論だ」

 

 まるで当たり前なことを尋ねられたそうな口ぶりで即答した。

 僕は衝動的に立ち上がって叫んだ。

 

「嘘だ!」

「嘘ではない。確かにお前に親らしいことはしなかったが、認めていないわけではない」

 

 どこまでも変わらない重々しい声が部屋を闊歩する。

 

「仮にお前を息子と思っていなかったなら、お前が五歳の時点で苗字を改めさせるなり養子に出すなり、それ相応の対処をしている」

「そ、んな……」

「実感がないか?ならばお前が破軍に通えているのは、私が退学を命じていないからだ。本来なら除籍に下すことは簡単だが、お前には座学が必要だ。だからこそ在籍を黙認している」

 

 淀みなく告げられる事実に唖然とする。

 そんな僕を無感動な瞳を浮かべる父さんを見て、かろうじて保っていた自制があっさりと千切れた。

 

「なら、なんで僕の邪魔をするのさ!なんで僕に伐刀者としての教育を受けさせてくれなかったのさ!なんで……ッ!」

 

 堰を切ったように溢れ出る怒りに踊らされ思考が暴走する。

 空回りした頭では喋ることすらままならず、先の言葉が出てこない。

 それを節目と捉えたのか、固く口を閉ざしていた父さんが言う。

 

「邪魔をしているのではない。是正しているだけだ。そしてお前に伐刀者の教育を施さなかったのは、お前には不要と判断したからだ。無能に技術を教えても、教える側教わる側双方に無益だからな」

「是正……?是正だって……?僕が魔導騎士になることのどこが間違いなの!?」

「それ自体が間違っているのではない。お前が()()()()()()()()()ことが間違いなのだ」

 

 そう静かに述べた父さんは、ひとつ間を置いた。

 

「……そうだな。先程から私とお前の間に齟齬があるらしい。それを改める意味も含めて、具体的に説明してやる」

 

 父さんとの齟齬なんてたくさんある。その中でも最も食い違っているであろう部分について父さんの口から言ってもらえるなら、一旦黙るべきだろう。

 暴れ出した感情を押さえつけるためにも好都合だった。

 

「お前も知っているだろうが、我々黒鉄は伐刀者が《侍》と呼ばれていたころから伐刀者をまとめ上げてきた。

 しかし、超常の力を持つ彼らを一つの組織にまとめることは至難の業だ。なぜなら己の力に溺れ、付け上がるからだ。

 俺はアイツより優れている。そう思い込むヤツらは自分勝手な振る舞いをし、組織の統率を崩す。

 そこで伐刀者にランクという枠を設け、間違っても思い上がらないように個人の限界を明確にしたのだ。

 人にはその人なりに出来る仕事がある。与えられた階級に相応しい仕事をこなせばいい。いや、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 確かに中には己の限界を超えられる者もいるだろう。だがそれはごく一部の『例外』に過ぎない。

 普通の者に身の丈に合わない仕事を強要したところで得られるのは不利益だけだ。身の丈を超えられないからこそ普通だというのに。

 にも関わらず、目の前の甘美な英雄譚に惑わされ、ならば俺も出来ると勘違いする輩が現れるのだ。

 往々にしてこの手の輩は一度思い込むと中々現実を見ない。そんな存在は組織にとって害でしかない。そしてその害を生み出す元となる『例外』もまた不要なのだ。

 ランクとは絶対の指標。鉄の掟だ。掟を破る者は誰であれ処断する。黒鉄はそれを自らで示し、多くの伐刀者たちを組織にまとめてきたのだ」

 

 それが黒鉄という家に課せられた役目だと言う。

 忠実に、そして厳格にまっとうしてきた父さんは不惑(まどわず)の法の番人・《鉄血》の異名を持つに至ったのだろう。

 

「いいか一輝。私は黒鉄の命を背負う者として一切の矛盾を許してはならぬ存在なのだ。たとえ我が子が無能であっても、そこから挽回できる見込みがあったとしても、決して許しはしない。お前にはFランクという枠があり、その内に従事する義務がある。

 私がお前に伐刀者としての教育を施さなかったのは、それがFランクに出来る仕事だからだ。私がお前を是正するのは、お前が枠をはみ出すことを止めるためだ」

「……じゃあ僕を家でいない者扱いしたのは?黒鉄家に相応しくない子がいると名に傷が付くと思ったんじゃないの?」

「言っただろう。何もできないお前は、何もするなと。お前はそれを破ろうとした。だから無視した。それだけの話だ」

 

 家名など組織の運営に比べれば瑣末なことだ、と吐き捨てた。

 

 そこまで聞いてようやく、父さんの一見矛盾したような言動を正しく理解できた。

 

 この人は公私の割り振りを全て公に注いでいるのだ。

 もしかしたら人並みの親としての情を持っているのかもしれない。けれど、それを完全に押し殺しているだけなのだ。常に《鉄血》であり続けるために。

 

 あまりに不器用でいて、そして頑固な人だった。

 僕の思っていたような冷酷で残忍な人ではなかった。

 

 まぁ、親としてどうかと思うけど。

 

 けど、父さんの考えを聞けて本当に良かったと思う。

 僕が()()()()()と思っていたものはちゃんと繋がっていたのだから。

 それが歪で今にも千切れそうでも、僕にとっては堪らなく嬉しかった。

 

「……分かったよ、父さん。父さんの言いたいことをちゃんと理解できた」

「そうか。ならば──」

 

 心なしか明るくなった声音を発する父さんを遮って、断固として言った。

 

「だけど、父さんの望みは聞けない」

「……」

 

 僕にも譲れないものが出来た。なりたいと思った理想が出来たんだ。

 

「僕は誰に恥じることのない魔導騎士になりたい。僕に期待して思いを寄せてくれる人たちに応えられるような人でありたい。これだけは絶対に譲れない」

「聞いていなかったのか?落第騎士(おまえ)の英雄譚など害でしかないと言ったはずだ。お前は何も出来ないなりに、何もするな」

「父さんこそ聞いてなかったの?父さんの望みは聞けないって言ったよ」

 

 お互いが言いたいことを言い拮抗する。

 僕らは自分の信念に従って主張している。それも、死んでも曲げない強い信念の元に。

 妥協点や折衷案など一切無い、どちらかが折れるまでの角のぶつけ合い。

 

 威圧的に見つめてくる父さんはしばらくして「……そうか」と呟いた。

 どこか残念そうに聞こえたのは気のせいだろうか。

 

「私にはわからない。お前は騎士の道以外でなら大成できる素質を持っている。それは今までの成績を見れば明らかだ。お前自身も自覚しているだろう。にも関わらず、なぜ自ら茨の道を進む。なぜ必要のない挑戦をする……。今からでも剣を捨てれば間に合うと言うのに」

 

 僕に投げかけているというより独り言に近い嘆きを聞き、僕は場違いにも少し笑いを漏らしてしまった。

 睨め付けるように目線を寄越す父さんに謝りを入れて答える。

 

「馬鹿にしたつもりじゃないよ。でも、そんなことは父さんが一番よくわかってると思ったから」

「なに?」

「一度そうと心に決めたら意地でも曲げない。父さんのそういうところが似ただけなんだもん」

 

 すると、豆鉄砲を食らったように目を見開いた。

 昔から鋼鉄のように微動だにしなかった父さんの表情が初めて変わった瞬間であった。

 それから心底憎々しそうに歯噛みし凄味のある顰めっ面を晒し、それを隠すように額に手を添えた。

 

 これほど大きく表情を変えるということは、本当に予想外だったのだろう。

 けれど同時に痛いほど納得したはずだ。だからこそ表情を保てないのか。

 

 父さんの人間らしい揺らぎに仄かな喜びを覚える。

 そのおかげなのか、緊張で重々しかった口は少し滑るようになった。

 

「僕は《七星剣王》になってみせる。こんな嫌がらせなんかで諦めてやるもんか」

 

 それに父さんが露骨に舌打ちを漏らした。

 しかし次に突拍子もないこともこぼす。

 

「……そう言えば、言ノ葉綴も『例外』だったな。よりにもよって公の場で無能どもを扇動するような言葉を吐くとはな……。揃いも揃って忌々しいことだ」

「え?」

 

 言ノ葉さんが『例外』だって?どういうことだろう。

 僕はFランクだからともかく、言ノ葉さんはBランクだ。Bランクと言えば誰もが羨むトップクラスの評価だ。全国規模で見ても二十人もいないだろう。

 

 そんなBランクの人が《七星剣王》になることを『例外』と言うのは変ではないか。

 現に、歴代の《七星剣王》はBランクの学生騎士が殆どだ。Aランクの学生騎士自体が希少も希少だからだ。

 

 そのことを問いただす前に、気を持ち直したのか普段の仏頂面に戻った父さんは席を立った。

 

「まぁいい。お前がその気ならば、私も然るべき処断をするまでだ」

「……そのことだけど、もう言ノ葉さんとステラを巻き込むのはやめてほしい。彼女たちは関係ないだろ」

「そのつもりだ。これ以上風評を煽っても大差ないだろうからな」

 

 そういう意味じゃないんだが……。まるで人の心を勘定しない態度に再び怒りが再燃し始めた。

 一発殴ってやろうかと思ったけど、「殴らせたら騎士をやめるか?」と返されそうなので黙ることにする。

 晒し者にされて傷ついた彼女たちには待たせる形になって申し訳ないが、この借りは僕が《七星剣王》となることで清算することにしよう。

 

「七星剣武祭に出れなくなればその大口も叩けなくなるだろう。お前を代表選抜戦で《雷切》と戦わせる。魔導騎士を目指す者なら己の剣で道を切り拓いてみせろ」

 

 去年の七星剣武祭ベスト4・東堂刀華さん。

 まともに戦えば苦戦は必至の猛者との試合に人生をかけろと言ってきた。

 

 負けることも十分ありえる上に、下手をすれば死ぬ恐れもある。それだけ《雷切》は強い。

 加えてあれほど悪辣な手段を切ってきた父さんだ、万全な状態で試合に臨めるかも怪しい。

 

 そんな無理に等しい吹っ掛けに対して、されど僕は不思議にも負けるとは露ほどにも思わなかった。

 

「受けて立つ。いずれは超えないといけない壁だ。それが少し早まっただけさ」

 

 父さんは僕の言葉に何も返さず部屋から立ち去った。

 

 

 

 △

 

 

 

 

 その一時間後、一輝の生徒手帳に代表選抜戦のマッチングを通知するメールが届いた。

 

 《雷切》東堂刀華と《落第騎士》黒鉄一輝の真剣勝負。

 何の思惑が絡んでいようが関係ない。勝つか負けるかの二つに一つ。

 

 黒鉄一輝の人生の分かれ目は二日後だ。

 

 

 


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