連日続く最悪の体調に苛まれながら支部を這いずるように出る。
手足が棒のように重く本当に動いているのか実感がない。
そのくせ身体中が冷たいということだけはわかる。
咳をするたび胸に激痛が走るが、慣れたものだ。
周りに座る人たちが奇異な目線を寄越しては侮蔑の色に変え目を逸らす。
あの新聞は真実として受け入れられているらしい。
僕は体力の回復に努める。
電車内の電光掲示板が破軍学園前と映したところで時計に目を向ければ、選抜戦開始まで残るところ10分になっていた。
駅に着くまで約5分。駅から学園まで多目に見積もって徒歩15分といったところか。
遅刻は確定した。電子手帳は充電切れで沈黙したままだから学校に連絡を入れることもできない。
だが30分の遅刻までは認められている。
なら大丈夫だ。選抜戦に出られる。
あとは体の問題。
いけるのか。この半死半生の体で。
自答する前に駅に到着してしまい、その答えを出さずに電車から転がり出る。
そうだ。そんなことは後でいい。
会場に到着しなければ話にならないのだから。
学校に着くことに専念しろ。
悩むのはそこからだ。
なにかを考えていなければすぐにでも倒れてしまいそうで、益体もない思考を巡らせる。
健全な精神は健全な肉体に宿ると言う。
肉体がボロボロの今まともな精神が宿るはずがなかった。
ゆえに騙す。
──あの広告を通り過ぎるまで頑張ろう。
──次は階段を降りきるまで頑張ろう。
──ここまで来れたなら改札口にも行けるだろう。
必死に自分を騙し続け、眼前にぶら下がる人参を追う馬のように歩く。
どうしてこんなに辛い思いをしなくちゃならないんだ。
そんな邪念がふとした拍子に思考の間隙に滑り込んでくる。
どうしてだろう。わからない。
親の勝手な都合で人生を翻弄された結果なのか、それとも身の程をわきまえなかった僕に対する応報なのか。
どうなのだろう。わからない。
諦めちまえ。楽になるぞ。
彼の言う通り、諦めれば楽になれるのだろう。
とても魅力的に思えた。
今ここで膝を折ればすぐにでも手に入れられる安寧。
なによりも甘美な誘惑だ。
だが。それでも。
一つの理想があった。
心打たれた美しい生き方を知っていた。
誰に恥じることのなく一本真っ直ぐ己を貫く人に、僕はなりたいんだ。
駅を行き交う雑踏に掻き消されてしまいそうになりながら、それでも己の信念に従って体を運ぶ。
憎たらしいほど澄み渡った空を睨みあげた、その時。
「キミならなれるさ」
不意に肯定された。
散々親から否定された生き方を、当然のように認められた。
僕の耳から周囲の騒がしい雑音の一切が消え去り、僕の目はたった一つの姿を映し出す。
「待ってたよ。黒鉄君」
憧れ、追い求め、上に見る理想がそこにいた。
◇◇◇
「言ノ葉さん……?どうしてここに」
「新宮寺さんに聞いたら当日は送られてくるって聞いたから、なら
お見事としか言えない読みだ。
そんな言ノ葉さんはいつもの制服ではなく軽やかな私服だった。日除けの帽子も被っている。
その格好はどうしてだと聞くと、
「一応変装のつもり。ほら、外で一緒にいると視線がウザいでしょ?」
と肩を竦めながら手に持っていたお茶を渡してきた。
「どうせろくに水も飲ませてくれなかったんだろ?買っておいたから飲みなよ」
何から何までお見通しのようだ。
少しずつ口に流すと乾いていた体の隅々に染み渡る。
喉を通るたびに炎症が激痛を発するが、そんなものは気にならなかった。
「ありがとう。助かったよ」
「どういたしまして。時間も押してるしそろそろ行こうか」
そう言って手を差し伸べてきた。
その手を取れば何も言わずに肩を貸してくれるのだろう。
だけど、
「ここまで来たんだから、一人で行けるさ」
そう見栄を切って飲み終わった缶を置く。
もう、その手に縋るのはやめた。
僕に対するけじめだ。
ここからは僕一人で歩く。
歩けるようにならなきゃいけないんだ。
「そうだね。それがいい」
少し嬉しそうに微笑むと、くるりと缶を持ち替えて近くのゴミ箱に投げ捨てた。
改めて歩き出した言ノ葉さんの歩調はいつもより緩やかだ。
ときおり時間を確認しているのを見ると、ギリギリ遅刻しない程度の速さで歩いているらしい。
同じような速度で時間が過ぎていく。
どちらも口を開かないから一秒が長く感じる。
その間に先延ばしにした自問を思い出していた。
このボロボロの体で、あの東堂さんに勝てるのか。
普通に考えたら無理だろう。
正直なところ僕自身も無理だと思っている。
だけど、これはそういう話じゃなかった。
勝つか負けるかはもっと先のこと。
自分から逃げるか逃げないかの話だ。
その先が崖になっていようと飛び込むと決めた。
はたから見たら自殺志願者に見えても仕方ないだろう。
たぶん珠雫あたりは止めに来るんじゃないか。
ステラは……ちょっとわからない。どちらもあり得る気がする。
言ノ葉さんはどう思っているのだろうか。
「僕のことを止めないのかい?」
唐突な問いかけだったのに、言ノ葉さんはなんてことなく返した。
「止めないよ。キミがそう決めたならボクは背を押すだけだ。それに────」
言うか言わないか躊躇ったのか言葉を濁す。
が、僕に目線を戻すと確かな口調で続けた。
「ちょっと嬉しかった」
「え?」
「キミがここに着いたとき、死にそうな顔してるのに絶対に諦めないって目をしてたから。あぁ、ボクの親友はすごい奴なんだなって改めて思ったんだ」
僕がすごい奴、か……。
言ノ葉さんと初めて会って、戦って、負けたときにも同じことを言ってくれたんだっけ。
「キミはどんなに苦しくても立ち向かい続ける。誰もが諦めることをキミだけはやり遂げてみせる。そんな姿をもっと見たいと思ってるからキミのことを止めないのかもしれない」
言い切った後顔を正面に直して帽子のつばをぐっと下げた。
理想の人に手放しに褒められると少し……いや、かなり照れる。
「あんまりこういうことは言うもんじゃないな。何とも言えない空気が苦手だ」
ぱたぱたと手で顔を煽ぎそんなことを嘯く。
「僕は嫌いじゃないよ。友達同士で褒め合うって普通のことじゃない?」
「そ、そうなの?そういうのって言わなくても大体伝わるでしょ」
「言わないと伝わらない時もあるし、口に出して欲しい時だってある。試合が始まる時とかサムズアップするだけで少し寂しいんだよ?」
「うっ……。まぁ、今度から気をつけるよ」
やりづらそうに頬を掻いた。
ふと目線を戻すと、破軍学園の校門が遠くに見えるところまで来ていた。
「時間は……10分前か。結構早く着いたね」
駅舎から改札口に着くまでの気の遠さが嘘のようだ。
死に体のくせにかなりのハイペースで歩いていたらしい。
それを自覚していなかった上に疲れもさほど感じていないあたり、知らず知らずのうちに元気をもらっていたようだ。
「いけそうかい?」
言ノ葉さんが問う。
それを自問に変えて考える。この体でいけるのかと。
今度は即答できる。勝てる、と。
精神の方から体を変えるとは我ながら単純だ。
そんな高揚感から、今まで言えなかったお願いをしてみた。
「言ノ葉さん。
目をしばたかせて凝視し、からかいと呆れ半々の苦笑を浮かべた。
「一人で行くんじゃなかったの?」
「それとこれは別。言ノ葉さんこそ、ついさっき言うようにするって言ったじゃないか」
「軽口叩けるくらい元気なら言わなくても良さそうだけど」
「頼むよ。他の誰でもない君の口から聞きたいんだ」
僕の食い下がりぶりにさすがに参ったらしく「しょうがない奴だなキミは」と観念のため息をついて正面立って僕の肩を掴んだ。
「
するりと首の後ろに腕を回し、そのまま抱きしめられた。
だがそのことに驚くよりも言ノ葉さんの告白に我を忘れるほど驚愕していた。
こんな人になりたいと思っていた人から同じように思われていたのだ。
僕なんかが?という疑問が浮かぶ一方で、言われてみたら納得するところもあった。
合宿所に向かう車の中で言ノ葉さんは僕が勝ち取った結果だと固辞した。
恩を帰依されることを迷惑に思ってそう言ったのかと考えていた。
が、もし立場が逆だったなら『言ノ葉さんなら僕がいなくとも勝ち取っていただろう』と考えて、僕は関係していないと言ったはずだ。
彼女ならできると、言ノ葉さんの生き様を追い求めるからこそ断言できる。
彼女がそう言ったように、僕もそう言うはずなんだ。
それだけじゃない。
僕が言ノ葉さんに勝てていないのは僕を上回るスピードで成長しているからだと思っていた。
正しいが、正確ではなかった。
敗北の数だけ新手を繰り出してもその悉くを上回ってみせた。
編み出した僕自身もよく思いついたなと自賛した会心の手すらも。
そこまで来るともはや技術の問題ではなかった。
つまり、言ノ葉さんは僕という人間をどこまでも信じていたのだ。
彼女が頭の中に思い浮かべているのは無機物の的ではなく、僕。
何百回と勝ち続けても一切油断せずに、いつか必ず自分を超してくると信じて僕自身すら把握していない『僕』を分析し続けているのだろう。
ひとえに僕を尊敬しているから。追いつきたいと願って見続けているのだ。
そう自覚してから次々と脳裏に浮かんでくる。
『キミはすごい奴だ。ボクよりずっとね』
『キミもそうなるために頑張ってるんだろう?』
『ステラさん、先に言っておきますけど、黒鉄君はボクと互角以上に戦える人ですよ』
『それはキミが今まで積み重ねてきたキミの思いの結晶だ』
『キミのかっこいい姿をボクに見せてくれ』
いつ、どの時でも、彼女から向けられる目にはこちらが恥ずかしくなるほどの尊敬の念が浮かんでいた。
カッと顔に血が上った。耳から血が噴き出るかと思う勢いだった。
こんなに純粋な気持ちを貰っていたのにどうして今まで気付かなかったんだ。
どうして僕は平気でいられたんだ。
嬉しさやら恥ずかしさやらが噴火した。
じっとなんかしていられない。
何か猛烈に言いたくて、けれど上手く言葉が出てこない。
少しでもこの気持ちを伝えたくて覆いかぶさるように抱きしめ返した。
「わわっ!?」
言ノ葉さんの声を無視して顔を肩にうずめる。
すると背に回す腕に力が強まった。
何も言わない彼女に、ようやく口を開いた。
「……やっぱり僕みたいなバカには言葉にしないと伝わらないこともあるよ」
「そうなの?ボクには十分すぎるほど伝わってたけどね」
「今やっと伝わったよ」
「キミは本当にバカだなぁ」
そうに違いない。
僕は本当にバカだ。
彼女のことを見ているつもりになって全然見ていなかった。
「とっくの前に誰かの思いに応えられるような人になれていたんだね、僕は……」
「当たり前だろう?難しく考えすぎなんだよ、キミは」
コツンと頭突きしてくる。
我に返って慌てて離すと「痛いくらい伝わったってことにしておくよ」と苦笑いした。
そして電子手帳を開くと、ぎょっと目を見開いた。
「時間がやばいぞ。ボクの勇気を無駄にするつもり?」
「あぁ、すぐ行くよ」
慌てて走り出そうとしたが言ノ葉さんは動く様子がなかったので立ち止まった。
彼女は初戦以外の試合を観に来てくれていない。
今でこそ結果がわかりきっているからだと知っているが、当時は興味がないからだと思っていて少し寂しい思いをしたものだ。
本当にバカだな僕。
けど銃以外興味ないと公言している彼女にも非があると思うんだ。
……というのはさておき、今回こそ来てくれると思っていた矢先だったのでショックだった。
きょとんとしている言ノ葉さんに声を掛けようとしたら、
「……観に来てくれないの?」
思ったより情けない声が出た。
それを誤魔化すように顰めっ面を作ると吹き出された。
「そんな寂しそうな顔をしないでよ」
「うるさい!」
「ごめんごめん。珍しかったからつい。真面目に言うと、電話しないといけない人たちがいるんだ。ちゃんと間に合うようにするから先に行っててくれ」
そう言って本当に電話をかけ始めてしまった。
文句を言うに言えず、後ろ髪を引かれるがこうしている今にも時間が迫っている。
清々しい日差しに照らされながら僕は走り出した。
◇◇◇
校門をくぐり抜け会場が見えてきた時、
「お兄様ぁぁぁぁっ!!」
入り口から電子手帳を握りしめた珠雫がとんでもないスピードで駆け寄ってきた。
声が届くのと同時に到着するや否や「失礼しますね」と有無を言わさず胸板の上に手を乗せた。
するとサッと顔を青くして「こんな状態でどうして歩けて……」と呟き掌から淡い翠の燐光を放ち始めた。
と思いきや、
「いけませんお兄様、時間がありませんので歩きながら……!チッ、私じゃ全快は無理か……!?」
と、僕より急いでいるんじゃないかと思うほど慌てていた。
ひとまず僕のことを待っていてくれたことはわかるので、僕の声が聞こえるように落ち着かせる。
「珠雫、一旦落ち着こう。珠雫。珠雫!」
「……ハッ!ご用ですかお兄様!」
すぐ元に戻ったが、僕の顔を見た瞬間みるみるうちに涙が浮かぶ。
「うぅ……っ。ごめんなさいお兄様……私が至らぬばかりに……」
「本当にどうしたんだ!?」
ボロボロと泣き出してしまうが、それが返って落ち着かせたのかしゃくりあげながらも喋り始めた。
「私はもうお兄様に傷ついて欲しくありません。辛い思いもして欲しくありません。だから本当はこの戦いにも出て欲しくありません。けれど止めてしまった後お兄様を支えられる資格も責任も私にはないです。送り出してあげたくてもお兄様の体を満足に治すこともできません。私が役立たずなばかりにお兄様を……!」
堰を切ったように知られざる珠雫の内心が溢れだす。
少しだけ気付いていた気持ちや全く知らなかった気持ち。
珠雫が今まで隠していたものが出てしまっているのだろう。
「ごめんなさい……きちんと送り出すって決めてたのに、私は……」
「いい。いいんだ。役立たずなんかじゃない。珠雫は僕の大切な妹だ」
優しく抱きしめてやり、言葉をかける。
「珠雫の気持ちに気付いてやれなかった僕も悪かった。ずっと一人で抱え込ませてごめん」
「そんな!お兄様のせいじゃ……」
「でも、珠雫のせいでもないさ。僕ってばバカだからさ、言ってもらえないと気付けないことが多いんだ。だからこれから何か思うことがあったら遠慮なく言ってほしい。絶対に相談に乗るから」
「……わかりました」
「ありがとう」
髪を梳かすように撫でると下がっていた目尻が少し持ち上がる。
「それと、あんまり自分のことを卑下しないこと。珠雫ほど素敵な妹なんて他に知らないよ」
目線を上げると会場の入り口前まで来ており、そこにはたくさんの生徒が並んで待っていた。
友人が、級友が、弟子が、かつての対戦相手が。全員が僕のことを待っていた。
だがそれは僕一人では絶対にありえない光景だった。
「珠雫が呼んでくれたんだろ?みんなのことを」
こくんと小さく頷く。
きっとたくさん頭を下げて来てもらったのだろう。
精一杯のエールを送って僕を応援するために。
「こんな嬉しいことをしてくれる子が役立たずなはずがないじゃないか。そんな滅多なこと言っちゃダメだ」
「うぅぅ……!!」
赤ん坊のようにしがみついてくる珠雫。
どんなに賢くて気遣いのできる子でも、やっぱり手のかかる可愛い妹だ。
だから甘やかすばかりではなく少し厳しいことも言うべきだろう。
「力不足を感じているならなりたい自分に変わろうとするんだ。嘆いていても現実は変わらない。珠雫にしか出来ないことがあるはずだ」
すると泣き痕が散りばめられた顔でムスッと不機嫌そうに頬を膨らませた。
「……あの女がいなくてもお兄様はそう言ったのでしょうね」
「え?何のこと?」
「いいえ、何でもありません。本当に瑣末なことですから。お兄様のお言葉通り、私で出来る限りのことをしてみます」
殊勝な返事に隠れた仄暗い何かが気になったが、珠雫が何でもないと言ったのだから大したことじゃないんだろう。
そこでずっと放ったらかしてしまっていた集まってくれた面々に頭を下げる。
「僕のためにわざわざ集まってもらいありがとうございます。本当に嬉しいです」
一人一人にお礼を言える時間はない。
その代わり目に感謝を込めてみんなを確認する。
銀色の髪の妹。
眼鏡をかけた可愛らしいクラスメイト。
覚悟として左頬に切り傷を残したかつての弟子。
休み時間に剣を教えていた生徒たち。
僕を学園に迎え入れてくれた教師。
七星剣武祭をかけて争ったかつての好敵手たち。
「みんなの期待に応えられるよう全力を尽くします。どうか応援よろしくお願いします!」
『がんばれーーーー!!』
『イッキくんファイトーーーー!!』
『もう一踏ん張りだ!根性見せろ!!』
心強い声援に押されるように歩む。
体はぼろ切れのような状態だけど、もう負けるかもなんて思うことはなくなった。
────勝てる。
考えれば考えるほど不利な要素が目につくのに、この満たされた心があれば勝てると確信する。
「なーんだ。心配なんていらなかったみたいね」
ふと廊下の中央に人影が現れた。
尤も、影なんて暗いイメージと真反対の太陽のような存在感を放っているが。
「ステラ?選抜戦の真っ最中じゃ……」
ふふんと鼻を鳴らしたステラはむんと胸を張った。
「残念だったわね。トリックよ。……てのは冗談で、ワンパンでぶっ飛ばして来たわ」
そして掲げたのは破軍学園代表生を証明するメダルだった。
「ここで待ち構えてドンと励ますつもりだったんだけど、要らないお世話だったかしら」
「いや、嬉しいよ。ただビックリして上手くリアクション出来なかった」
ステラの相手をした人も無敗でここまで勝ち進んで来ただろうに、まさか一発KOで夢を絶たれるとは運がなさすぎるんじゃないか。
あながち他人事じゃないので笑えない。
冗談めかした空気はそこまでに、自分のせいで要らぬ傷を負ってしまった彼女に謝ろうと思った矢先、ステラが手で先を制した。
「謝っちゃダメよ。悪いのはあの赤狸でイッキじゃないんだから」
「ステラ……」
「だから、勝って。アタシの好きな人は正しかったってことを世に知らしめるのよ!」
そう言って道を譲った。
歓声と野次の吹き荒れるリングが姿を現わす。
全国が注目している舞台に出ると言うのに何の恐れもなかった。
「勝ってくるよ」
平らな道を堂々と踏み出した。