マーリンの弟子   作:トキノ アユム

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プロローグ

 それは地獄であった。

 僕達以外の生命体が全て息たえる永遠のコキュートス。

 僕と彼女だけの永遠の世界。

 それを彼女は作り上げてしまった。数多の命と、万能の聖杯の力を持ってして。

「うふふ。楽しいわ。ええ。とっても」

 今感じている喜びを表現するかのように、彼女は踊る。

 くるくるくると。

 狂ったように。

 いや――ようではない。

 彼女は、どうしようもなく狂っていた。

 愛する人と二人っきりの世界。恋をした少女が、一度は夢見る、夢でしかない絵空事。

 

 

 それを本当に、作ってしまったのだから。

 

 

「ねえ笑って?」

 あなたも一緒にこの喜びを分かち合いましょう? と、彼女は誘ってくる。

「ふざけるな」

 だが、笑えるわけがない。

 彼女のせいで、彼女の愛のせいで全てが犠牲になったのだ。

 世界も。

 親友も。

 家族も。

「どうしてだよ?」

 永遠なんて欲しくなかった。

「僕は――」

 なんでもない日常である、あの一瞬一秒が愛しかったのだ。

 それなのに。

 それ――なのに。

「だって必要ないでしょう?」

「……」

 彼女はその一言ですべてを片付けてしまった。

 世界も。

 親友も。

 家族も。

 

 

 必要ない。

 

 

 ただその一言で完結させてしまう。

「私にはあなたさえいればいいの。それ以外は何もいらないわ」

 だから壊したと、罪悪感など欠片も感じずに、彼女は言う。

「そんなことが許されるとでも、思っているのか?」

「誰に許してもらう必要があるというの?」

 彼女は笑う。僕の言ったことが面白くて仕方ないと言わんばかりに。

 

 

 

「もうあなたと私と『あれ』以外、この世界には何も存在しないのに?」

 

 

 

(お前は――)

 もう、決定的だった。

 彼女は、僕の■■は、

 

 

 邪悪なのだ。

 

 

 誰よりも。何よりも。

 

 

「させ、ない」

 殺さなければならない。

 滅ぼさなければならない。

 他ならぬ僕の手で。

 でなければ彼女はこの世界だけでなく、全ての世界を壊すだろう。何の罪悪感もなく、ただ必要という理由だけで。

 どこで間違えてしまったのか。それはもう分からない。

 だけど、今の彼女が間違っているのは分かる。これからも間違っていくのが分かる。

 だから――

 

 

(だから……)

 

 

「お前は、僕が殺す」

 

 

 

 今僕は彼女の宿敵となる。

 

 

 

「うん。待ってる」

 

 かき集めた殺意を、彼女は嬉しそうに受け止める。

 まるで抱擁を交わすかのように、愛しそうに僕を見つめると、両手を広げ、

 

 

「愛しているわ。■■■」

 

 

 全ての罪の始まりの名を呟いた。

 これは誰にも語られぬ物語。

 やがてマーリンの弟子となる僕と、彼女の運命を描いた、もう一つの運命(fate)である。

 

 




ヒント。彼女は既存のキャラです。
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