俺の新たな生活がいきなり来やがった   作:主任大好き

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この話は割とアレなんで。べ、別にタイトル詐欺じゃないんだからね!


第三話

「おーい!大神、俺たちに勉強を教えてください!」

『オナシャス!』

 

 テスト前の朝礼前、俺が教室に入ると男子が黒板の前に勢揃いで土下座である。このクラスのテスト前の恒例行事となったこの光景は、他クラスから観光客(野次馬)が来るようになった。

 ちなみに、大神とは俺のあだ名である。俺の名前は加治木天照(かじきそらあき)で、天照の部分をとって日本神話でもとりわけ有名である天照大御神からとったそのネーミングセンスは中々に厨二心を擽られる。まあ、悪くないな。

 

「はぁ・・・・・・お前らにプライドないのかよ」

「ふむ、それで飯が食えるなら誰もそんなことしない。俺ら守るべきもののために土下座をするのだ」

『そうだそうだ!』

 

克敏(バカ)が何やらかっこいい台詞を大声で叫ぶが、俺は知っている。こいつら男子共が守りたいのは親から貰う小遣いの事だということを。以前の話だが、男子特有の一時のノリに身を任せて教えてしまい、教えた教科がクラス平均が学年一位になったのだ。すると、どうだろうか。クラスの担任が俺に頼み込んできた。どうやら、ボーナスが出たらしい。それに、妻から貰える小遣いが増えたらしい。なんとも切実であり、余りの馬鹿さ加減にため息をついた俺は悪くないだろう。

 

「はぁ・・・・・・身から出た錆か。おら、じゃあ、さっさとやるぞ」

『あ、ありがとうございます!』

 

 因みに仕方が無いといった体で俺は言うが当然見返りがある。その見返りを重宝している事は言えないでいる。何故なら、その月一人一人から日毎に飯を奢ってもらえるからだ。金を使わないでいいというのは、中々俺に優しい奴らである。

 すると、女子も席に着き始め、廊下にいる野次馬連中はノートを取り出して朝礼前にちょっとした授業が始まるのだった。

 

 

⿴⿻⿸

 

 

「うーし、おめぇら今日は終わりだ、帰れ帰れ。あ、大神ありがとうな。多分また、ボーナス出るし小遣い増えるわ」

 

 シッシッと払うように手を振るその仕草は教師のそれではないだろう。あまりにも適当過ぎるSHR(ショートホームルーム)を終えた担任は生々しすぎる言葉を吐いて教室を去っていった。

 てか、ちょっと待って。ていうか何?今気づいたけど、俺の渾名って先生たちの間でも飛び交ってるの?

 

「ふぅ・・・・・・終わったぁ」

『ありがとうございます!』

「ホント、お前ら自分で勉強しろよ・・・・・・」

「そう言えば、お前今回どうなんだよ」

「めっちゃ自信あり。多分一位だと思う」

 

 ドヤ顔気味に俺は返す。今回かなり力を入れて勉強したためかなり自信ある。少なくとも、物理化学数学の三教科は満点だろう。それ以外は全て95点は超えているはずだ。流石にこれで一位取れなかったら死ぬ。いや、ホントに。

 他のみんなはどうやら遊びに行くようだ。これから春休みもある。また、稼ぎ時なのだ。取り敢えず俺はバイトを詰め込むとしよう。

 

「じゃあな」

 

 今日は早い時間からバイトの時間を入れていたため、もう帰らなければならない。俺は掛けられる声に背を向けて扉を開けて教室から出た。なんか厨二っぽいな。

 そして、道中は何もなく静かな廊下を一人シューズの音をテンポよく刻む。靴箱へたどり着き、靴を履いて玄関に向かうまではいつも通りだった。

 

「あ、あの・・・・・・加治木、君ですよね?」

 

 いつもと違ったのは、玄関の扉に手を掛ける前に話しかけられたことだった。後ろを振り向くと、大人しめな雰囲気を纏わせる長い黒い髪を下ろした美人さん。ふむ、名札には出水桃華(いずみとうか)と書いてあり、三年の先輩を表す青色だ。因みに、二年は赤色で一年は緑だ。

 そう言えば、三年に綺麗で成績優秀の先輩がいると聞いたことがある。その人はたしか出水と言ったからきっと目の前の先輩のことなのだろう。

 

「ん?ああ、そうだけど・・・・・・あんたは先輩か。すまん、あまり丁寧な言葉使えないんだ。許して欲しい」

「あ、いえ、そういうわけではなく・・・・・・えっと、これ、受け取ってください!」

 

 勢いよく両手で俺にかわいく包装されたものを渡された。何だ?何故包装されたものを渡されるんだ。

 誕生日ではないことは分かりきっているため、なぜ渡されるかわからないが誕生日という関連ワードで今日の日にちを確認。2月14日が出てきた。そこまで行き着くとバレンタインデーということに気づく。

 

「あ、ああ、ありがとうございます・・・・・・」

 

 くっ・・・・・・かなり吃ってしまった。しかも、あまり丁寧な言葉は喋れないと言った矢先にこれだ。慣れてないんだよ!いつも怖がられていたから、1度たりとも貰ったことなどないのだ。故にこの気恥ずかしさがもどかしい!

 

「そ、その・・・・・・克敏君と梓弥ちゃんに部活の時に君のことを聞いて惹かれていって」

「あ、いや、その、ほんとありがとうございます・・・・・・こういうの初めてなんで」

 

 そう言うと、以外に思われたらしく驚かれたのだが、直ぐに嬉しそうな顔になった。

 

「じゃあ、私が初めてなんですね」

 

 ・・・・・・うおおおおおおおおおおおおっ!?あれ、俺初対面だよね!?なに、何で俺こんなにときめいてんだよ。くっそ、男はなんで単純なんだよ・・・・・・!

 

「そ、その、返事の方・・・・・・貰えないでしょうか」

「あ、ああ・・・・・・けど、俺あんたのことを知らないから、少しずつあんたのことを知っていけたらと思う。・・・・・・だから、すまないが返事は今後させてくれないか?」

「・・・・・・」

 

 目の前の女子の先輩は、拳を握り震えるその手を隠すようにスカートの側面につけている。ついでに顔を下に向けている。

 おいおい、俺やっちまったんじゃねぇのか?女子泣かせたんじゃないのか?もし本当に泣いているのなら、今後俺のイメージは大変なことになる。例えば?そんなもんいくらでも思いつく。

 

『あいつ、女子泣かせたらしい』『まじかよ、いいやつかと思えば見た目通りのクズか』『勉強さえできればなんでもいいと思ってるのかよ』『あいつ、そういえば夜に街で出歩いてるらしいぜ』『ちくわ大明神』

 

 おい、最後の誰だよ。いや、そうじゃなくてだな。ホント、あれだ。何でもするから許してください。

 

「よ、良かったよぉ・・・・・・」

「え・・・・・・な、何が?」

 

 いや、本当に泣いてたんかい!そして泣いてるのに何がよかったんですか。俺ホントそういうのわかんないんで詳しくお願いします。

 

「も、もし、フラれたらって・・・・・・緊張しちゃって。えへへ・・・・・・」

 

 ・・・・・・やばいな。これはホントやばい。何がやばいって俺がやばい。泣いてる→理由聞く→緊張してた→微笑む。何これ最高のコンボかよ!

 もうOKしていいんじゃない?俺の頭の中で数人の俺が会議している。俺の男としての野党(本能)がそう言い放つが、俺の人間としての与党(理性)がそれはダメだ。誠実でないと、あのゴミ虫と同じような存在であると戒める。するとどうだろう。野党が静まり返り与党と手を組んだ。勝敗は決したため誠実に行かせてもらう。

 

「私、三年だから最後に想いを伝えたくて。大学は隣の県だからもし想いが通じても会いに来れないかもなんて思ってたから」

「一つ気になる。今の時期だと勉強の方が大変だと思うんだが」

「私、推薦で行くんだ。志望校のレベルが高くて・・・・・・。評定も足りてたし、入試だと去年の途中から成績が伸びなくなっちゃってちょっと自信なかったから受かって安心したんだ」

「ん?でも受かったなら来る必要はなくないか?今は私立組の受験もそろそろ終わりだろ?」

「うん。だけど、一応大学でも苦労しないように・・・・・・かな」

 

 意外だ。成績優秀と聞いていたから、余裕かと思えばそういうわけでもないようだ。高校受験と大学受験というのはかなり違うらしい。これは勉強になったな。

 

「今回、君のいい返事を聞けなかったのは残念だけどまだチャンスはあるみたいだしね。卒業までは覚悟しててね」

 

 クスッと不快にならない程度にからかうような小悪魔的な微笑みは俺の年齢=彼女いない歴の心臓の鼓動を早める。顔が熱い。・・・・・・俺ってこんなに惚れやすかったかねぇ?くっそ、俺だってやり返してやんよ!

 

「お、お手柔らかに」

 

 あれ?出水先輩の目から逸らして頬を人差し指でかいて顔を赤くしたままじゃん。やり返してないだろ!

 相手からなんの反応も得られないため、横目でチラと盗み見る。出水先輩は耳まで真っ赤にさせて下を向いている。自爆するなら言わなければいいのに・・・・・・。

 

「じゃあ、俺はバイトがあるので」

「あ、連絡先だけ・・・・・・その、貰えないかな?」

「うっ・・・・・・ど、どうぞ」

 

 おう、ラノベやアニメの主人公の気持ちがわかった。お前らのこと、バカにしてごめん。実際に涙目上目遣いとか破壊力が高すぎてやばいわ。

 

「私のも入れておいたから、なにか来たら返してくれると嬉しいな」

「・・・・・・うっす」

 

 

⿴⿻⿸

 

 

 ふぅ、浮かれるのはいいが浮かれすぎるのは良くないな。理性でどうにか、発狂乱舞しそうな身体を抑え込みペダルを漕ぐ力を大きくする。自惚れでなければ、出水先輩と俺のリア充タイムのせいでバイトの時間が押しているのだ。いや、別に出水先輩との時間が悪かったという訳ではなくて、ただ単に舞い上がった俺が時間を確認してなかっただけなのだ。

 ここの交差点を右に曲がれば俺の家が直線で100mくらいだろう。そこまで来れば、俺の心は既にいつも通りとは言わなくとも平穏は訪れていた。冷静になってくる途中、最近のクソ親父の行動に疑問を覚えていたのを思い出した。約半月前の帰ってこなかった日から、ちょこちょこ帰ってこない日が出てきたのだ。帰ってきたと思えば、気持ち悪いくらいにソワソワしたり二、三日すればまた帰ってこなかったりと以前との行動と比べるとかなり不審な行動を取るようになっていた。

 交差点を右に曲がった俺の目に入ってきたのは、借家である俺の家の前に数人の男たちが屯っていること。そこで俺の背中や額、腋から汗がどっと噴き出る。

 

(まさかまさかまさかまさかまさか!あの時、印鑑がなくなっていたのは!)

 

 次第に頭が真っ白になっていく。目の前が黒くなりぼやける。急いで、ブレーキを掛けてハンドルに頭を乗せて落ち着かせることに専念する。もし、本当に考えてることが現実であった場合、一体どのくらい金を借りた。一体いつまでの期間で返すと契約した。一体担保はどれにしたのか。

 考えろ。この場合の最悪の事態は一体なんだ。親が出ることが多くなったこと、印鑑がなくなってたのは借金したからだ。最悪なのは、借りた金額じゃない。期間でもない。金利でもない。担保でもない。・・・・・・なんだ、あと一つ。あと一つは・・・・・・連帯保証人。もしそうであるならば、ここにいてはダメだ。とりあえず逃げなければ。

 

 ───ピロリロリンピロリロリン

 

 数回の通知音。そこにあった名前は、加治木大地(かじきだいち)。俺の親父であるゴミ虫の名前だった。

 俺は震える手で通話ボタンを押す。ゆっくりと愛phoneを耳に当てる。聞こえてきたのは、電話で最初にいう常套句と愉快そうに笑う男の声。

 

「・・・・・・ゴミ虫、お前今どこにいる」

『うん?僕は今街いるよ?あ、東京の銀座ってところだね』

「・・・・・・一体いくら借りた?」

『どのくらいだったかな?適当に1を先頭に8桁くらいかな』

 

 ゾワッと背中に悪寒が走る。きっと、俺の後ろには家の前にいた男たち数人がいることだろう。

 

「・・・・・・返済期間は?」

『どのくらいだっけ?あははは、ごめんね。忘れちゃって』

「・・・・・・担保は?」

『分かんないよー』

 

 なんてことだ。返済期間が分からない、担保もわからないなんてそれが分からないと一体いくらに増えるかわかっだんじゃない。バイトだけじゃ、この先一生払いきることなどできないだろう。

 

「・・・・・・最後の質問だ。連帯保証人は誰の名前を書いた」

『んー、意味が分からなかったから天照の名前書いちゃった』

 

 ───かしゃん・・・・・・

 

 耐えられなかった。それ以上突き付けられた現実を受け容れたくなかった。

 

「坊主ー、取り敢えず確認していいか?」

「・・・・・・なんですか?」

「・・・・・・お前さんの名前は?」

「加治木天照」

「親に捨てられたのは同情するが、仕事なんでな。取り敢えず、今回は連帯保証人に対しての報告だけなんだわ」

「・・・・・・」

「俺たちのところは同業者の中では一番優しくてよ・・・・・・次来る時は来週だ。どのくらい用意できる」

「・・・・・・十万だ」

「そうかい。約束は守れよ」

 

 そう言って、数人の男たちはその場を去っていった。年をを誤魔化しつつやっていた中学時代の貯金と高校での数ヶ月の貯金で二十万はある。

 だが、それでは全くと言っていいほど足りない。

 

「・・・・・・ハハ、ハハハ、アッハハハハハハハハハハハハ!」

 

 ここまで絶望的だと笑えてくる。どれだけ世界は厳しいのか。どれだけ残酷なのか。紛争地域に比べればそりゃまだマシだろう。ここまで生きてこれたのだから。

 だが、何故俺がこんな思いをしなくてはならない。何故だ?俺がバレンタインデーという日にいい思いをしたからか?それなら、何故俺だけなのだ。他にもいくらでもいるだろう。

 

 ───ピロリロリンピロリロリン

 

 その場に佇んでいた俺は、落としていた愛phoneを拾い画面に浮かぶ名前を見やる。前の姓に戻した俺の母親である姶良優海(あいらゆうみ)の文字。




勿論、救済しますけどね?
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