テイルズ オブ ヴェスペリア ~始祖の隷長の傭兵~ 作:バルト・イーヴィル
それは、この世には対となる存在が居るということだ。
世界を混乱へと導くエアルの暴走。
エアルは魔物を凶暴化させるだけでなく、時にはバランサーである始祖の隷長までもを狂わせる。
そして、始祖の隷長をも殺す満月の子。
月には太陽が、光には影が……ベリウスは世界のサイクルを分かっている様だった。
「光は影の影は光の果てまでついて行くのだろう」
闘技場都市《ノードポリカ》の遥か後ろに見送る戦士の殿堂《パレストラーレ》の面々、声が届かなくなる頃には手を振るのを辞めて、ナッツが闘技場の鐘を鳴らして送り出す。
「死の直感に現実逃避?」
ナンの問いにバルトは首を横に振る。
「ギガントモンスターにとっての対はなんだろうなってよ……」
ナンは一呼吸も置かずに答えた。
「突出した強さ……暴力に対なんて無いのよ」
バルトは黙する。
「だから、私達が狩らなきゃいけないの……それが魔狩りの剣《まがりのつるぎ》の存在意義だから」
第三章『対《つい》』
白には黒。
影には光。
月と太陽、あるいは新月。
あらゆる物事には対となる存在が在る。
術技ならば属性がそうであり、物理の反対に魔導がある。
ハルルへの道すがら、思考に耽る。
先程のナンとの会話が過る。
ナンもバルトとの会話で思う所があるのか、二人して沈黙のまま歩が進む。
ビッグボスとカムイは警戒を厳とし、牛歩よりも遅く移動をする。
カタハも『ナギーグ』の力によるものなのか、呼吸も荒ければ肩の力が極限にまで張り詰めている。
パルチは依頼主が余計な提案をしないように警戒しており、彼女の暴力には余裕の無さからか手加減が見えなくなっていた。
この場の誰もが、いつガス欠になってもおかしくない。
一本の糸がピンと張ったような空気。
「……オレも焼きが回ったもんだ……止まれ」
それを緩めたのは意外な人物だった。
「どうしたの師匠?」
ティソンがどっかりと地面に腰を降ろす。
「ゆっくりとでも進まないとアイテムが足りなくなるぜ?」
実際、ハルルまで遊んで行けるほどティソンの容態は良くない。
顔色も悪い。
なのにも関わらずティソンは再び立ち上がろうとはしなかった。
「ほざいてろぉ!魔物狩りに関しては、オレは譲らん!……だからこそ分かる。このまま行くと死ぬぞ。この行進には死臭がする。」
「ご親切に説教か?」
「全ての魔物は退治されるべきなのだァ!だからこそ……お前の言う口車に乗せられて生きながらえている。つまらん後生にさせるな」
まるで人格者の様である。
否、忘れてはならない。
ティソンはナンの師匠である。
紛いなりにも魔狩りの剣では交渉役もやっている人物だ。
ただの気狂いではないのだ。
出血の影響か、毒気よりも猛毒に侵されたか……何にせよ冷静になれるだけの余裕がこの場にあったのは、おそらくは一番の強者であるティソンだったのだ。
余裕と言うほどの大層なものではないのかもしれない。
それでも、死線を前にしてそれを察知したティソンは歩を止めたのだ。
その行いが自らの命をも危うくする選択だというのにも関わらず、その命をまるで小事のように。
「……飯にするぞ。最後の晩餐になるかどうかはお前ら次第だ」
ティソンは自らのアイテムポーチの中からレシピを取り出した。
しかし、それを取りこぼす。
「おっと」
すかさずバルトがそれを拾って中を見る。
それは『ミートソース』のレシピだった。
そして、ティソンのやらせたいことがバルトには理解できた。
「材料は俺が持っている……必ず成功させろ」
『ミートソース』の料理には解毒の効果があるとされている。
「こんな物があるなら先に出せよ」
しかし、ティソンは歯を噛みしめる。
「材料は1人分。失敗は出来ない。……繊細な作業だ……負傷していては作れない」
そんなことは無いと思う。
のだが……ティソンが大人しく料理するような人物には思えない。
では、ナンはどうか。
ティソンの弟子という点があまりにもシェフ像として相応しくない様に思えて失敗する姿が想像に難くない。
「昔はカロルが作ってくれてたんだけど」
ナンの言葉にティソンは鼻を鳴らしてバルトに料理素材を突き付けた。
「始祖の隷長《エンテレケイア》だろうと、ギガントモンスターだろうと魔物の対はこのオレだァ……おもしれえ!望むところだ!」
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第四章『生業《なりわい》』
人にはそれぞれ、生まれながらの役割。
あるいは習得した技能による役目、生きていくうえでの糧を得るための手段として受け継がれし業なんてのがある。
生まれてたったの三年のバルトには始祖の隷長としての役割があり、カムイならば得意とした索敵、ビッグボスならば嗅覚による探索。
そこに、料理を得意とする者は……いなかった。
いや、居た。
その者、その時、そんな場合ではないと護衛対象の頭を蹴っている。
カタハが何か言いたそうにパルチを見ていた。
「この者、ビッグボスに料理を任せる程ズボラなのでござるが、私と二人旅の時に料理番を譲られたことがありませぬ」
パルチはカタハの言葉にようやく視線に気が付いた。
料理当番は交代制になっており、ビッグボスが入ったから次は確かにパルチの番であった。
その事からため息を吐きつつパルチは素材を受け取る。
「タダ働きは嫌いだし、だけど不味いご飯も嫌いなんだけど……わんちゃんの時は面白そうだったから任せただけだし」
「そのくせ気分屋でござる」
料理に気分で変なものを混ぜそうで怖い。
「だが、その料理の腕で語るなら……三ツ星レベル」
「……まあ、元々ギルドの料理番だったし」
パルチがどこのギルドに所属していたかについては誰も興味を示さない。
今大事なのは料理番を任される三ツ星レベルの腕があるという事である。
「それならそうと最初から言ってくだされば」
「嫌よ!私に料理全部押し付ける気でしょ!」
パルチの断固拒否。
「某と共に居たときは全部買って出ていたではござらんか」
「わけわかんないクリティア族の民族料理ばっかり作ろうとするからでしょ!?」
パルチはぶつくさと文句を言いながら調理器具を広げる。
「私、お金にならない労働は嫌いなの」
バルトがガルドの入った袋をパルチに投げ渡す。
「なら、仕事として任せる」
「ゲヘヘヘヘ!お金だぁぁぁ!もちろんやらせていただきますよ!うへへへへ!お金いっぱいやっほー!!」
パルチ豹変。
カタハの頬が引きつる。
「さーて、ちゃちゃっと美味しいの作っちゃうわよー!!」
パルチのミートソース。
啜るティソン。
開眼!
無言でかき込むティソン。
美味いのか……。
美味いんだろうな。
完食し、ティソンは手足を握っては感覚を確かめる。
「よし……」
そして、立ち上がり走り出す。
「あ、おい!」
手を伸ばしたバルトが遥か後方に。
ティソンは振り返る事なく叫ぶ。
「ハルルまでの道は切り開いてやる!だが、オレは一緒には行かん!魔物を狩るのが……オレの生きる意味だからだ!」
ティソンの駆ける先に、凶悪な鎌を持つ化け物が居た。
姿がハッキリと視認出来るようになると、その傍らで戦うクリントの姿があった。
魔狩りの剣のボスである。
「師匠!ボス!」
ティソンに遅れる形でナンが合流し、キマイラバタフライの進路上からバルト達を塞ぐようにティソンとナンが立ちはだかる。
「行ってバルト!」
ナンの背中の飛来刃が投げ飛ばされ、茂みを切り刻むと人一人が通れる様な道が出来た。
「だが……」
「勘違いしないでよ!私達は貴方達の力を借りないと行けないほど弱くなんてないんだから!」
ナンの言葉の通りだった。
「行きましょうバルト兄さん。どの道、足がすくんで足手まといですしね」
今にも踊り出しそうなくらい膝がガクガクと震えているカムイ。
「またな」
茂みに向かって身を投じる。
道の小枝を掻き分け、森を抜けた。
肩で息をするカタハとパルチ。
バルトも呼吸を乱しつつ汗を拭う。
カムイは倒れる様に地面に寝転び、ビッグボスはバルトの傍らに腰を降ろした。
「……あれ絶対エッグベアじゃ無理だったろ」
ポツリと呟くバルトにパルチは口笛を吹く。
「都合が悪くなると露骨ですね」
「それよりも……で、ござろう」
カタハは護衛対象と物資を見る。
「このままこの者の護衛をしていては命がいくつあっても足りぬのではないか?」
キマイラバタフライの討伐を大義だと言ったこいつ。
ギガントモンスターを倒す事に一定の理解があるということだろう。
武醒魔導器の護送を依頼するのだから当然かもしれない。
そもそも争いのための道具なのだ。
その対象がギガントモンスターであっても不思議ではない。
だが、そうなると、カオスキャンドルが危険視されている理由が分からない。
「もしや、『人魔戦争』……まさかな」
馬鹿な考えだと否定する。
それをする理由が人にも始祖の隷長にも無いのだ。
バルトは思考の外へと最悪の未来を追い出したのだった。
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スキット①『金の亡者』
「金金金金!」
パルチはガルドを広げてご満悦である。
「なんでそんなに金に溺れてんだ?」
「借金でもしているでござるか?」
バルトとカタハの疑問にパルチは下卑た笑いのまま涎を垂らす。
「いつか私の国を作るためよ!ビバ!マイランド!ビバ!マイキングダム!」
「……小銭を幾ら集めても国は作れぬと思うのでござるが」
スキット②『後ろ髪』
「まだ気になさってるんですか?」
何度もクオイの森を振り返るバルトを見てカムイが声を掛ける。
「あんな小さな女の子を残して行くしか無いってのがな」
カムイは肩を竦める。
「適材適所ですよ。向こうは魔物の専門家で、僕たちよりも遥かに強い。居ても役に立てやしませんよ」
「分かっていても後ろ髪を引かれる思いってやつだよ」
『バルト・イーヴィル』
【種族】始祖の隷長
【所属】紅の絆傭兵団
【通り名】《頼りの絆:ラストリゾート》
【装備品】
クラウソラス
コンパクトソード+1
ソードピストル・試作黒匣
フィートシンボル
武醒魔導器
【通常技】
飛行
エアル吸引
分身
【術技】
蒼破刃
ファーストエイド
ファイアボール
リカバー
シャープネス
『カムイ・シルト』
【種族】人間
【所属】紅の絆傭兵団
【装備品】
オウカ+1
ナイトソード
ブーツ
【通常技】
挑発
察知
変装
【術技】
ローバーアイテム
『カタハルト・シホルディア』
【種族】クリティア族
【所属】暁の雲
【装備品】
ニバンボシ
【技】
不明
『ビッグボス』
【種族】プチウルフ
【所属】バルト
【装備品】
魚人の得物
マント
【通常技】
追跡
マーキング
【術技】
不明
『パルチ・レジス』
【種族】人間
【所属】なし
【装備品】
ストライクイーグル
バトルナイフ
【通常技】
罠
人質
【術技】
不明
『ナン』
【種族】人間
【所属】魔狩りの剣
【装備品】
飛来刃
レジストリング
【技】
飛来刃・強襲
飛来刃・円輪
烈震斬
『ティソン』
【種族】人間
【所属】魔狩りの剣
【装備品】
指無しグローブ
【技】
蛟龍刃「鬼哭」
蛟龍刃「朧車」
舞蛟龍「窮奇」
蛟龍刃「降臨」
蛟龍刃「舞頚」
舞蛟龍「顎門」
舞蛟龍「覇道」
蛟龍刃「悪路王」
『レシピ』
サンドイッチ
おにぎり
サラダ
野菜炒め
海鮮丼
超絶・海鮮丼☆
ミートソース
『共有戦利品』
亀の甲羅×2
海苔×1
グミの元×1
サーモン×2
オレンジグミ×1
大きなハサミ×5
トルビフィッシュ×2
蟹の甲羅×3
口ばしラッパ×1
チキン×1
『貴重品』
ソードピストル・試作黒匣×2
武醒魔導器×1
ーー『令和4年の4年後から続きを書きに戻ってきました』ーー
令和8年から再びこの地にやってきました