テイルズ オブ ヴェスペリア ~始祖の隷長の傭兵~ 作:バルト・イーヴィル
毒に侵されたティソンの解毒にミートソースを用いたパルチ。
元気百倍となったティソンはキマイラバタフライに特攻。
ナンとティソンで進路を切り開き、ハルルまでの道を確保した。
クリント含む魔狩りの剣を置き去りに、バルト一行はハルルの街にまで向かうのだった。
第1章『破壊』
ハルルの街は異常気象に見舞われていた。
局所的な降雪。
結晶化したハルルの花弁。
氷の冷たさに痛覚が置いてけぼりとなる。
「なん……だこりゃ」
バルトはつい最近訪れたばかりのハルルの豹変ぶりにエアルクレーネの暴走が過る。
「ここにそんな場所あっただろうか」
だが、僅かにエアルクレーネと似た様な感覚を感じずには居られない。
この感覚、確かエステリーゼ・シデス・ヒュラッセインにも感じた。
満月の子に対する防衛本能。
否、ヘルメス式魔導器に似ている。
「豹変ぶりは気になりますが、1度村長さんの所へ行きましょう」
カムイが提案した時、その感覚が遠くなる様な感じがした。
バルトは思わず走り出す。
「報告は任せた!」
奇妙な胸騒ぎ。
思い違いならそれでいい。
だが……。
反応を近くに感じるようになると、その対象をハッキリと雪景色の中に視認した。
真っ白な髪の青年がハルルの木に触れていた。
「お前は……?」
バルトが問いかけると、その青年の腕に蝋燭の入れ墨が入っているのが見えた。
「俺はユーリ・イヴァーノフ」
名乗った彼の指先から氷が広がっていく。
恐ろしいことに、それは術技ではない。
そう、断言できた。
そして、彼がユーリであると名乗ったその時、この異変を察知したもう一人の人物が訪れていた。
「バウルに聞いて訪れてみたけど……魔導機じゃないのね」
ユーリは氷を広げてまるで臨戦態勢に入っている様だった。
「ジュディス」
彼女はバルトも知っている。
そして、彼女もバルトを知っている。
「あら、奇遇ね」
始祖の隷長であるバウルに心を許し許された存在。
バウルとミョルゾを経由してバルトの存在もジュディスへと伝わっている。
そのバルトの活動も含めてだ。
ジュディスとバルトは敵ではない。
よって、この時、バルトはユーリとどう接すべきなのかを思案する。
エステリーゼ・シデス・ヒュラッセインからの依頼のソードピストル・試作黒匣を取り出す。
果たしてこいつに渡して良いものなのか。
「待ちなさい」
ソードピストル・試作黒匣を取り出した事でジュディスが手で制する。
「それ、リタが作ってた物よね?偽ユーリに渡したらダメよ」
「偽なの?」
それすらも分からないバルトにはユーリと敵対するという選択すら取れない。
襲われたら自衛するくらいのものだ。
「少なくとも……ユーリ・ローウェルでなくては渡すのに相応しくないと思うわ」
妖艶な笑み。
大人の色気というやつだろうか。
「ハルルに何をしているのかは……倒してから聞けば良いのよね」
ジュディスがユーリへ槍を向けた時、辺りが激しい光に包まれた。
氷の結晶による光の乱反射。
視覚を取り乱すバルトに迫る氷的。
氷の礫がバルトの体を強かに打ち付けようとした時、ジュディスの槍はそれらを正確に撃ち落とす。
そして、あろう事かジュディスは空を飛び上がった。
人間技とは思えない。
術技も用いずに槍の技術だけで空中に滞在しているのだ。
「まるで別ゲーだな」
ユーリ……イヴァーノフに空から接近し、心臓を狙った一突き。
それは滑らかな円形の氷の膜に逸らされた。
遠距離、そして防御能力共に優れたその性能に、敵でなければ手放しで拍手していたかもしれない。
今まさに近接という手段でイヴァーノフはジュディスに向けて氷柱を振り回す。
それは剣技だった。
そして、ただの剣技ではなかった。
術技に見える。
なのに、武醒魔導器の類は彼の身には見つけられない。
イヴァーノフの左腕。
氷に覆われたハルルとの接続部分から手が離れる。
「目的は達した」
ハルルの木から氷が溶けていく。
「なら、私に付き合ってほしいのだけど?」
自由になった左腕を使ってジュディスの槍を弾き氷漬けにする。
足元を凍らせて滑るように移動すると、空を飛ぶジュディスの下を通り抜け、バルトの持つソードピストル・試作黒匣を興味深げに観察していた。
「これは……?」
「渡したらダメよ!!」
強い語気の後にジュディスの足がイヴァーノフの頭に向けて伸びて行き、それを氷の膜が逸らす。
「まるで魔物だな」
バルトの言葉にイヴァーノフは無表情からようやく笑みを見せた。
「ああ、それこそが人のあるべき姿だ……美しいだろう?」
「美しいというよりは」
ただただ不気味だった。
「常々疑問だった……人と魔物は違うのか……」
唐突に語り始める。
「違うだろう。文化を受け継ぎ新しくを生み出す人と、破壊を繰り返すだけの魔物では」
「理知的かどうかならば、魔物の中にもコミュニティを形成する者は居る。根本は変わらない。変わらなかった。『星喰《ほしは》み』という破壊を招く人間が魔物でないとどうして言える。魔物なんだ人間も。理知を武器とした魔物なんだ。ならば、人間という種の進化はどこに行くのか。それは、破壊という結論になる。あらゆる環境の破壊。だが、それでは今生を全うする事は不可能だ。だから、我々は破壊との共存をしていかなくてはならない。我々は常に破壊と再生を行うべく再び世界の破壊の一手を選ぶ事にした魔導器だ。その魔導器の復活。我々はそのために遺跡を探索を一手に引き受ける遺構の門《ルーインズゲート》との接触を試みた。だが、ラーギィは死んだ事になっているらしい。だから、我々はラーギィを作り出した。その方が都合が良いからだ。理知を武器とする人間として、最大限に活かした」
「それは命に対する冒涜じゃないかしら?」
会話しているようでしていない。
彼は思想を語り、理念を押し付けようとしているだけである。
矢継ぎ早な言葉は体が聞くことを拒否しようとしてしまう。
「まあ、要するに我々の目的は破壊と再生の共存。そのために破壊の理念として魔導器の復活を目指しているのだ」
つまり、先程「目的は達した」というのは。
明確に彼という存在は始祖の隷長の対であると言えよう。
彼との接続がコアの無いハズのハルルの木の結界魔導器《シルトブラスティア》を修復してしまったのだから。
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第2章『再生』
皮肉なことに、バルトがそこに居ることで彼の言う破壊との共存が成立してしまっていた。
バランサーであるバルトはそれを嗤う。
「貴方達の言う理念は身勝手なものよ」
「なんとでも言うと良い。正義とは……より多くの理解者を得た方の事を言う」
「そして、勝者もそれに含まれるよな!」
バルトのクラウソラスがイヴァーノフの氷を砕いた。
「術技?ほう?君も我々の作り出した武醒魔導器を使っているんだな。良いだろう?それは始祖の隷長を家畜として量産出来るようにしたものだ」
「なんて酷いことを」
「生きるためだ。豚や牛と変わり無い。魔物もそうだ。人間も食物連鎖に含まれるのに、始祖の隷長が含まれない訳が無い」
そうやって言うイヴァーノフにバルトは沸々と怒りが湧いて出る。
同族を殺されているのだ。
しかし、続けてイヴァーノフに剣を振るよりも先にハルルの木に異常が見られた。
「いけない!」
エアルクレーネの暴走。
ハルルの木がエアルクレーネとなったかのように満開の花弁が辺り一帯を切り裂く剃刀のように広がっていた。
「進歩には失敗も付き物だ」
去ろうとするイヴァーノフを追い掛ける事はバルトには出来なかった。
なぜなら、このエアルクレーネの暴走を放置すると近隣の人間にも悪影響を及ぼす。
バルトはハルルの木に駆け寄り、立ち上るエアルクレーネをその身に吸収する。
「ぐぅ……くっ……」
如何に始祖の隷長とはいっても、過剰摂取は自らの暴走を引き起こす。
だが、その身と引き換えに助かる命があるならば。
その命の中にはカムイやカタハ、パルチやビッグボスも居る。
ともに過ごした時間は僅かとはいえ、バルトにも情はあるし、守るべき対象となるのも当然だった。
「はは……やべぇかもな」
冷や汗が止まらない。
ここに居るのがイヴァーノフとジュディスだけで良かった。
もしも、自分の最後がこんなのだっていうなら、暴走する前にきっと止めてもらえる。
ジュディスが向ける優しい瞳。
槍を構えてバルトの首元へ。
「良いのね?」
「もしも……この身が耐えられねえってんなら……な」
イヴァーノフはその身を震わせる。
「素晴らしい!素晴らしいな!人の姿をした始祖の隷長か!まるで人間のような思考をするじゃないか!もっと観察したい所だが……こちらも大義がある。世界中の魔導器を直すという……な?」
姿を消したイヴァーノフ。
ジュディスはホッと一息ついた。
「偽ユーリの居る所に来させる訳にいかなかったの。許して欲しいわ。来ても大丈夫よ……バウル」
鯨のような鳴き声。
バルトの意識はそこで途切れた。
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第三章『竜の導き』
目覚めたのは船の上だった。
そこには、バルトの他にジュディスの姿とバウルの姿がある。
船を操舵する場所に誰かが居て、他にもチラホラと船員が居るようだった。
「目が冷めたみたいね」
船は空を進んでおり、目前に古代塔市タルカロンが見えている。
「なぜだ?」
「貴方も見たでしょう?偽ユーリの作り出した『無垢の魔核』を」
ジュディスの言葉に首を傾げる。
「そう言えば、貴方はちゃんと確認する前に気絶したのだったかしら?」
ジュディスが自信なさげに首を傾げる。
「待て、もしかしてハルルの結界魔導器《シルトブラスティア》のことか?」
「そのことよ。あの魔核には聖核《アパティア》の様に術式が組み込まれる前の状態なの。まあ、詳しくは分からないから専門家に聞きに行くところよ」
旧アスピオであるタルカロンに今は魔導器研究員だった者達が集まっている。
旧アスピオには軌道エレベーターが設置されており、それらは新たな原動力である「マナ」を使っているらしい。
バルトもあまり立ち寄らないため、定かではない。
「無垢の魔核は見ての通りエアルクレーネを発生させる事もあるの。私はそれを破壊して回っているわ。存在してはいけない物だもの」
「確かに……結界魔導器は人々の助けにはなるだろうが……あれでは再び星喰みを招く事になるのも時間の問題だ」
バルトでも吸収しきれないエアルの暴走。
バウルの助けが無ければきっと今頃は多くの被害が出ていただろう。
「それに、あの無垢の魔核は……魂を宿していないらしいの」
「どういう事だ?」
「聖核との明確な違いというのがあるとしたら、そこなの……けど、具体的には私には分からないわ。それはあの子に聞いてもらえるかしら?」
タルカロンの乗船場にバウルが寄ると、派手な服装にゴーグルを頭に巻いた茶髪の少女が看板へと乗り込んで来た。
「約束の時間過ぎてるんだけど?」
腕を組み指をトントンとさせる。
苛立ちを隠そうともしない少女にジュディスは口元を押さえて微笑む。
「ごめんなさいリタ。けど、無垢の魔核の発生に立ち会ったものだから」
リタと呼ばれた少女。
それだけでバルトには分かった。
天才魔導少女リタ・モルディオである。
バルトの頬を一瞬冷たい風がなぞった様な気がした。
「ふーん、そっか。あんたがバルトね?」
「どうして俺の事を?」
「ウンディーネがあんたの事を知ってたのよ」
リタは微笑を浮かべる。
「始祖の隷長の死んだ姿である聖核がエステルの満月の子の力……リゾマータの公式に干渉されて誕生した存在ね。エアルをマナに再構築するエアル変換術式を作るはずだったけど、聖核に眠る始祖の隷長の意思が術式に宿ってしまったのよね。意図してなかったけど、アリだったと思うわ。つまり、意思を持ったエアル変換術式が完成したってこと。火を司るイフリート、水を司るウンディーネ、地を司るノーム、風を司るシルフの4体がいるわよ」
一息に知識を押し付けられる感覚。
イヴァーノフと似ていると言ったら怒られそうである。
詳細な話を詰める前に、ジュディスとリタの間で行うはずであったやり取りを進めていく。
「《暗闇の灯籠:カオスキャンドル》の目的は全魔導器の再生よ。ユーリは一足先に情報を掴んで1人で行動してるみたい。カロルが途方に暮れてたわ」
「あんのバカ……勝手に……それで?」
「エステルから私達《凛々の明星:ブレイブヴェスペリア》に正式に依頼がされたわ。無垢の魔核の調査と破壊よ。サンプルの回収の件だけど、これがついさっき発生した『ハルルの核』よ」
リタがベタベタと触り、興味深そうにしている。
「これも、原理はリゾマータの公式に当てはまるのよね……だとしたら、偽ユーリが何者なのか……」
そこでバルトの思考に過るのは「始祖の隷長の死んだ姿である聖核がエステルの満月の子の力……リゾマータの公式に干渉されて誕生した存在」という説明である。
「なら、偽ユーリが同じ満月の子なのかもな」
古い伝承に伝わる古代に災厄と戦って世界を救ったのは確か兄妹だったはずだ。
エステリーゼ・シデス・ヒュラッセインが妹の側だと言うのならば、もう一人存在していてもおかしくない。
災厄と戦って世界を救った兄妹の兄が、戦いの後に星となって空から世界を見守っていると伝わり《凛々の明星:ブレイブヴェスペリア》として後世に語り継がれていたハズである。
「それよ!」
リタが思い付いたかのように数式を弄り始める。
あーでもないこーでもないと頭を悩ませ、リタは指を立てた。
「ユーリ・イヴァーノフはもう一人の満月の子……だから、自ら術式を介さずに力が使えるんだわ!その延長線上にあるのが無垢の魔核!だから、術式がないのね!そして、満月の子としての力を正確に操れていないのかも……それがエアルクレーネの暴走を招いているってところかしら?」
リタの仮説。
バルトの一言からとんでもない頭の回転率である。
「だとしたら、やる事が出来たわ……説明してる時間も惜しいし、先に行かせてもらうわね」
手をひらひらとさせ、背を向けられた。
説明ェ……。
受けられる筈だった説明はまたの機会に……となってしまった。
ジュディスと船に乗り、ハルルにまで送り届けられる。
「お詫びになるかは分からないけれど、無垢の魔核からは精霊は生まれないらしいわ。説明は省かれちゃったけど……リタの役に貴方は立てた様だったから……きっと後で何か……あるかもね?」
「……まあ、期待しないどくわ」
「ちなみに貴方達の目的は何?」
バルトは自らの胸を叩いた。
「世界の秩序を守る事さ」
「それは貴方の目的よね?」
ジュディスはカムイ達の事を言っているのだと理解する。
「あいつらは……よく分からねぇ」
「それだといざというときに困るのではないかしら?」
「いざという時?」
バルトが首を傾げると、ジュディスは槍を前に向けて構えた。
「目的を定めて同じ方向へ向かうかどうかも分からないのだもの。ふふ、バウルも……ギルドを作ってみたらどうかって言ってるわ」
同じ方向へ目的を共にする仲間とのギルド。
考えてもみなかった。
自分のギルドを作るということを。
けれど、確かに……ジュディスの槍の先を見つめる。
「分からない」では……きっとダメなんだろう。
「分かった……ギルドを作ってみるよ」
『バルト・イーヴィル』
【種族】始祖の隷長
【所属】紅の絆傭兵団
【通り名】《頼りの絆:ラストリゾート》
【装備品】
クラウソラス
コンパクトソード+1
ソードピストル・試作黒匣
フィートシンボル
武醒魔導器
【通常技】
飛行
エアル吸引
分身
【術技】
蒼破刃
ファーストエイド
ファイアボール
リカバー
シャープネス
『カムイ・シルト』
【種族】人間
【所属】紅の絆傭兵団
【装備品】
オウカ+1
ナイトソード
ブーツ
【通常技】
挑発
察知
変装
【術技】
ローバーアイテム
『カタハルト・シホルディア』
【種族】クリティア族
【所属】暁の雲
【装備品】
ニバンボシ
【技】
不明
『ビッグボス』
【種族】プチウルフ
【所属】バルト
【装備品】
魚人の得物
マント
【通常技】
追跡
マーキング
【術技】
不明
『パルチ・レジス』
【種族】人間
【所属】なし
【装備品】
ストライクイーグル
バトルナイフ
【通常技】
罠
人質
【術技】
不明
『レシピ』
サンドイッチ
おにぎり
サラダ
野菜炒め
海鮮丼
超絶・海鮮丼☆
ミートソース
『共有戦利品』
亀の甲羅×2
海苔×1
グミの元×1
サーモン×2
オレンジグミ×1
大きなハサミ×5
トルビフィッシュ×2
蟹の甲羅×3
口ばしラッパ×1
チキン×1
『貴重品』
ソードピストル・試作黒匣×2
武醒魔導器×1