つか、また書いてしまった……。
第1話 魔女との邂逅
――清き乙女の特権であるはずの精霊契約。
だが、現在森を歩いている男性は、精霊契約が可能な
俺は何を解説してるのだろうか?まあいいけど。
「ったく、あの婆さんも人使いが粗すぎるだろ。つーか、今から行く学園って、アレイシア精霊学院だろ」
姫巫女の学園とか、マジ勘弁……。
悪態を吐いても、もう引き返せないだけどね。
『そうね。色々と頑張って』
今俺に話しかけたのは、俺の契約精霊。イレイナ・アッシュフォード。
おっと、俺の名前もだな。俺の名前は、アマヤ・カケルだ。
「頑張れって言われてもなー……はあ~」
『溜息ばかっり吐いてたら、幸せが逃げちゃうわよ』
そう言ってから、イレイナはクスッと笑った。
おい、笑うな。いや、いいけどさ。
ちなみに、イレイナは高位精霊なので、人型で顕現する事が可能だ。容姿を一言で言うなら、氷の美少女ってところか。
ともあれ、門の所まで到着しましたとさ。
まあ、色々と面倒な事になりそうなので、懐からある手紙を取り出す。あの子に案内を頼もう。学院長室までの道解らないし。
「すんません。学院長に呼ばれた者なんですけど、学院長室までの案内をお願いできますか?」
こちらを振り向く少女に手紙を差し出す。
「帝国の第一級紋章印つきの手紙……ですか」
手紙を見た少女は顔を強張らせた。
うん、その反応は予想してた。
「ま、まあ。今日は魔女に会いに来たんですよ、…………どうせ碌でもないことなんだろうけど」
俺が内心で頭を抱えていると、少女の視線が俺の左手の甲を見る。
……あ、隠すの忘れてた……。
『バカね』
「(ちょ、イレイナさん。俺、泣いちゃうよ)」
そう、俺の左手の甲には
すると、おずおずと少女が聞いて来る。
「……それって、精霊刻印ですよね。……ふ、不思議な事ではないんですけど」
歴史上、姫巫女以外で精霊を行使できる男の精霊使いは存在した。
魔王スライマン――――七十二柱の精霊を従え、大陸に破壊と混乱を齎した、男の精霊使い。まあ俺は、魔王スライマンとは一切関係ないけど。
「……まあ、色々と訳ありで……。あ、この事も内密にお願いします」
「わ、わかりました。そ、それではご案内しますね」
……この子、素直すぎでしょ。
オレオレ詐欺に引っ掛からないか心配だわ。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
学園に入り少女の案内のもと廊下を歩いているのだが、精霊の彫刻などが凄ェ……。
俺の反応が面白かったのか、少女が俺を見て微笑した。
「綺麗ですよね。精霊彫刻」
「ああ、メッチャ綺麗。ずっと見てても飽きないかも」
「ずっとは言い過ぎですよ。えっと……」
そういえば、自己紹介するの忘れてた。
「アマヤ・カケル。カケルでいいよ。敬語もなしで。えーと……」
「ユーナ・キャンベルです。ユーナでいいです。私も敬語なしでいいです」
「おう、よろしく。ユーナ」
「はい。よろしく、カケル君」
……まあうん、呼び捨てじゃなくて君づけなのね。
ともあれ、学院長室前まで案内してもらいました。
「ここが学院長室だよ」
「サンキュー。俺一人だったら、十中八九迷子になってたわ」
そう言って、俺はユーナと分かれた。
俺が木製の扉をノックしようとしたら――、
「あいつは亡霊なんかじゃない!」
突然、部屋から声が聞こえてきた。声の主は男?てか、中では何か揉めているらしい。
……帰っていいかな?
『ダメに決まってるでしょ』
「(で、ですよね~)」
んじゃ、扉から離れて話が終わるまで待ちますか。
数分後――、
「そこの男子、そろそろ入って来たらどうだ?」
突然、魔女から声がかかりました。てか、マジで行きたくねぇ……。
俺は一息吐いてから扉を開け、部屋の中に入る。
「よう、魔女。久しぶり」
執務室の奥に座るアッシュブロンドの髪、妖艶の笑みを浮かべた魔女へと挨拶をする。
小さな眼鏡の下で、灰色の目が俺をじっと見つめている。
彼女は、帝国の
いつまでも変わらない姿に驚くが、そこは魔女という事で解決させる。
「カケル。お前、刻印は隠してこなかったんだな」
グレイワースは、俺の左手の甲を見てそう言った。
「何れバレる事だし、別にいいかと。てか、イレイナを顕現していいか?なんつーか、
「別に構わん。カミトもいいか?人型精霊が見れる良い機会だしな」
カミトが頷いた所で俺は左腕を掲げると、精霊刻印が蒼色に発光する。
光が止むと、俺の隣には白いワンピースを着て、黒髪を背中まで伸ばし、蒼色の瞳が特徴の美少女が佇んでいた。
「ん~、やっぱり現世はいいわね」
俺の精霊、イレイナ・アッシュフォードだ。
つーか、伸びをするな。目のやり場に困るから。ほら、カミトも目を背けてるじゃん。
「あ、グレイワース。久しぶり」
「久しぶりだな。それにしても、貴様が
イレイナの
一応俺は、7割程度は使いこなせるようになってる。
「その呼び名は止めてよね。私には、イレイナ・アッシュフォードっていう名前があるんだから」
イレイナは、
グレイワースも、悪かった。って言ってる事だし、良しとしよう。
「男の精霊使いって、俺の他にもいたのな」
「ああ。カミトも精霊使いだ。まあ、今は
「へぇー、相棒か。強いんだろ?」
「使い手によるな」
なるほど。大体予想できた。カミトは行方不明の精霊の手掛かりを得る為に此処に来たと。
「俺とイレイナを呼び出した理由は?」
「そうか。カミトにしか教えてなかったな。――カケル。君にもアレイシア精霊学院に編入してもらう」
「は?何で俺。意味が解らん」
「君も必要だからだ。以上」
魔女の言葉は唐突すぎる。まあいいや、ちょと反論して見よう。
「嫌だと言ったら。つーか、清らかな乙女の園なんだろ、この学院は」
「問題ない。私の権限で何とでもなる」
「問題だらけだろうが!」
激昂するカミトに―――、
「勘違いするなよ、少年。君たちには選択の権限はないんだ」
魔女はゾッとするほど冷たい声で告げた。
カミトは息を呑んだが、俺は平然としてる。
「……なるほどな。本来精霊使いは、教会に管理されるものだしなぁ」
「でもでも、私とカケルなら、帝国の精霊騎士団を倒せると思うけど」
オルデシア帝国では、精霊使いは様々な特権を享受する代わりに、協会への登録を義務付けられている。反帝国の思想を掲げるはぐれ精霊使いなどが存在すれば、国家にとって危険だからだ。
「無傷で。とはいくまい。帝国の精霊騎士団を甘く見るなよ。特にカミトは、今のままでは絶対に勝てん。それに―――」
グレイワースは、悪魔のような笑みを浮かべた。
「私がうっかりバラしてしまう可能性も、なきにしもあらずだ」
「………なにがうっかりだ。要するに脅迫じゃないか」
カミトがそう言う。
立てつくと面倒そうだしなぁ。……穏便に済ませるか。イレイナに暴走されたら堪らんし。
「俺はいいや。学園に編入するよ」
「理解が早くて助かるよ」
「よくもぬけぬけと―――」
カミトは苦々しく言い捨てると、魔女はさも心外そうに肩をすくめる。
「ふん、いったいなにが不満なんだ。お姫様が集まる乙女の学院に男が二人。酒池肉林のハーレムじゃないか」
「そんなことするか!」
「俺は興味ないわ!」
俺とカミトは同時に叫ぶ。
てか、叫ばないと俺は命が危ない。イレイナに凍らされて殺されてしまいます……。
「冗談だ。私にそんな権限があるわけないだろう」
「あんたのは冗談に聞こえないんだよ……」
そう言って、肩を落とすカミト。
「何で今頃呼び出した?魔女、お前の思惑はなんだ?」
問題なのはそこだ。
俺に何の利用価値がある?
「本当に話しが早くて助かるよ。実は二ヶ月後に、
―――
数年に一度、
大陸中から精霊使いが集い、
優勝チームが所属する国には、数年にわたって精霊王の加護が与えられ、国土の繁栄を約束される。大会の優勝者には、――
「優勝しろ、カミト。カケルに鍛えてもらってな」
「俺は―――、俺は二度と
カミトは、両手を握り締めてそう言った。
だが、魔女は不敵に笑う。
「いや、お前は出場するさ。出場してもらわなければ困る。――君じゃなければ、あの最強の
「な……に……!?」
その名を聞いた途端、カミトの顔が凍りついた。
最強――その称号で呼ばれる精霊使いは、現在、大陸にたった一人しかいない。
三年前、僅か十三歳にして
「そうだ。彼女が戻ってきたんだよ。最強の
この時、俺は相槌を打っていた。
「(ふーん、なるほどねぇ。三年前の少女の正体はカミトだったと。でも、かつての名は捨ててるのに、レン・アッシュベルを騙る者が出て来た。で、カミトに優勝させる為、鍛える奴を呼び出したって所か。……やべっ、かなり興味が出てきたんだけど)」
「(ねぇねぇ、カケル。私たちも出場しちゃう?何か面白そう♪)」
たしかに、面白いものには目がない俺とイレイナだしな。
よし!決めた。俺も
ともあれ、これが俺と魔女の会合だった――。
原作知識ないに等しいんですよね。
だからまぁ、続くのかな?わからんとです。