精霊使いの剣舞~氷結の剣舞姫~   作:舞翼

2 / 8
ま、まさかの続いた。


第2話 学院案内

 現在、俺とカミトは、魔女から支給された制服に袖を通し、揺れるポニーテールの後を追っていた。

 制服は、魔女が用意した特注品。

 

「教師棟と学生棟は二階の廊下で繋がっている。食堂は一階だ」

 

 校舎を案内してくれてるのは、エリス・ファーレンガルト。

 何でも、アレイシア精霊学院の騎士団長だとか。てことは、強いのか?

 

『カケルの方が強いわ。てゆうか、この学院ではほぼトップじゃないかしら』

 

「(そうなのか?そんな実感はないが?)」

 

 ちなみに、イレイナは元素精霊界(アストラル・ゼロ)に戻った。いや、実際には俺が頼んだ。

 いやね、ほとぼりが冷めない内の顕現はマズイと思ったからね。イレイナは、『ぶーぶー』と頬を膨らませてたけど。

 

『私を7割使いこなせるんだから、カケルの方が強いわよ』

 

 まあそうかもしれない。イレイナ・アッシュフォードは氷結最強の精霊だ。

 7割使いこなせていれば結構強いかもしれん。

 

「(……つっても、俺はイレイナを完全には使いこなせてないんだ。……まだまだ未熟ってことだよ)」

 

『だけどカケルは、歴代の誰よりも使いこなすのが早いわよ。自信を持ちなさい。あとね、私とあなたはどこまでも一緒よ』

 

「(お、おう。サンキューな)」

 

 どこまでもってどういう意味ですかね?イレイナさんや?

 そんな時、騎士団長が足を止める。

 

「君たち、聞いているのか?君たちの為に説明してるんだぞ」

 

 騎士団長は険しい顔をしながら、腰に手を当てそう言った。

 

「……ああ、悪い。ちょっと考え事をしてたんだ」

 

 カミトがそう言った。おそらくカミトの考え事は、精霊剣舞祭(ブレイドダンス)に出てくるであろう、レン・アッシュベルの事だと思う。

 つーか、剣を振り回すな。カミトは全部避けてるけど。

 

「む、君もだぞ」

 

 ま、俺もこうなるよな。

 んじゃ――、

 

氷結の絶壁(アイス・ウォール)

 

 俺は氷の壁を展開させ、ファーレンガルトが振り下ろす剣を弾く。

 氷の障壁に剣が弾かれ、目を丸くするファーレンガルト。

 

「なっ!精霊魔術!?」

 

「まあそんなとこだ。次は、剣を凍らせるぞ」

 

 俺は内心で、はぁー。と盛大に溜息を吐く。

 おそらく、男に免疫がないのだろう。精霊と交感できるのは清らかな乙女だけ。その乙女たちは、清らかさを保つため、幼い頃から男を徹底的に遠ざけた環境で教育される。つまり、超がつく箱入りお姫様。という事だ。

 

「い、いいか、勘違いするな!私は決して君たちを認めた訳ではないからなっ。学院長のご命令だから、仕方なく君たちを案内しているだからな!」

 

 踵を返すと、ファーレンガルトはすたすたと歩き出してしまった。

 

「まったく、なぜ学院長はこんな男共を編入させたのか……」

 

 カミトが生活する場所を聞いたら、ファーレンガルトが窓から指を差す。

 その先にあったのは、馬小屋の隣にあるオンボロの小屋だ。ちょっとの風で吹き飛ばされそう。てか、風呂、トイレも馬と共有らしい。

 カミトは口論をしていたが、

 

「(まあ俺は十分だ。風呂はイレイナの清めの水があるしな。……俺の感覚は麻痺してるのか?あんなので大丈夫って思えるなんてな)」

 

『そうかもしれないわ。私たち、いつもと言っていいほど野宿だったし』

 

「(だよなぁ……)」

 

 がっくりと肩を落とす俺。

 ちなみに、イレイナもこっちの世界で野宿をしてた。何故かわからんけど。

 

「宿舎のことはひとまずは置いておこう。で、オレたちの教室はどこなんだ?」

 

 カミトがファーレンガルトに聞く。

 

「君たちの教室は、優秀な問題児たちが集められたレイブン教室だ。君たちにお似合いの教室だな」

 

「「優秀な問題児?」」

 

「言葉通りの意味だ。……君は、なぜ苦い顔をする?」

 

 どうやら、カミトには問題児に思う節があるらしい。

 ファーレンガルトもレイブン教室じゃね。校内で剣を振り回す奴は、問題児以外の何者でもないと思うが。

 

「てことは、ファーレンガルトもレイブン教室か?」

 

 顔を真っ赤にするファーレンガルト。だから何で?

 

「なんでそうなるっ、私は最優のヴィーゼル教室だっ!」

 

 アレイシア精霊学院の教室は、各階ごとに離れて配置してるらしい。教室同士が近いと、決闘騒ぎになるとか。

 

「だが、学院に通う学院生は、全員が名のある貴族の娘だからな。規則では学院内での私闘を禁じているが、日頃から決闘沙汰は絶えない」

 

 嘆息しながら、ファーレンガルトは拳を強く握りしめた。

 

「それを仲裁して平穏な学院を守るのが、私たち風王騎士団の仕事なんだ」

 

 そう言ったファーレンガルトの顔は真剣だった。彼女は、騎士団の仕事にプライドを持っているのだろう。

 存在するだけで学院に波乱を呼びかねない、男の精霊使い。なので、風紀を守る騎士団長の立場で、認められるはずがない。

 

「(……なるほどなぁ。根は真っ直ぐでいい()だけど。思い込みで先走りしすぎると)」

 

 何はともあれ、騎士団長の案内を聞く、俺とカミトであった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 講堂のような教室を覗くと、中には誰もいなかった。おそらく。全員外に出払ってる時間帯で、外で実技の訓練をしてるのかもしれない。

 ファーレンガルトは案内を終えると、すぐさま立ち去ってしまった。てか、カミト。火猫少女に絡まれてるけど。お前何かしたの?

 

「よ、よ、よくも逃げてくれたわねっ。わ、わたしの契約精霊なくせに!」

 

「く、クレアちゃん。編入生の首を締めあげるのはよくないよ」

 

 俺は、セミロングの黒髪をした少女に見覚えがある。

 てか、今朝の女の子だし。

 

「ユーナか?」

 

 俺を見て、目を丸くするユーナ。

 

「か、カケル君。ど、どうしてここに?」

 

「いや、俺はレイブン教室だからだけど」

 

「そ、そうなんだ。よろしく」

 

「よろしくな。ユーナがレイブン教室とか意外だな。真面目そうなのに」

 

 ユーナの顔が真っ赤になる。何でも、些細な揉め事を起こした時に、精霊魔装(エレメンタル・ヴァッフェ)を使って校舎を破壊したとか。

 ……人は見かけによらないっていうけど、ホントなのかもしれん。

 

「カケル君は、精霊剣舞祭(ブレイドダンス)に出場するの?」

 

「まあ一応そのつもり。なんか、面白そうだし」

 

 面白そうだけの理由で精霊剣舞祭(ブレイドダンス)に参加するのはどうかと思うけど。叶えたい願いもないし。

 つーか、カミト。お前は火猫お姫様を弄りすぎだ。てか、壁ドンはないだろ。壁ドンは。顎も持ちあげてるし。この光景を見て、ユーナの顔が真っ赤だし。

 今はともかく、この場を収めるのが先決だ。ということなので――、

 

「おーい、カミト。後ろ後ろ」

 

 カミトが振り向くと、そこには穏やかな笑みを浮かべた女性が立っている。

 年齢は20代半ば程。伸ばした黒髪に、黒縁の眼鏡をかけている。

 ダークグレーのスーツの上に羽織っているのは、裾の長い白衣だ。

 

「神聖なるアレイシア精霊学院の学舎で、何をしてるのかな君は、ん?」

 

 貼り付いたような笑みを浮かべたまま、その女性は名乗る。

 

「私は、レイブン教室担当のフレイヤ・グランドル。君たちのことは学院長から聞いているよ。学院始まって以来、初の男の精霊使い」

 

 だが、目は笑っていなかった。

 

「で、なにうちのお姫様を泣かしてるんだ、テメェは?」

 

 俺は内心で溜息を吐く。

 

「(……はあ、この学院は退屈しなそうだわ)」

 

『つまらないよりはいいじゃない♪』

 

 おい、人ごとだな。イレイナさんや。

 まあいいか。何かなる。と思う俺だった。




原作一巻は書ききりたい。
も、文字数は2500字位かなぁ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。