精霊使いの剣舞~氷結の剣舞姫~   作:舞翼

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連投です。



第3話 自己紹介

 教壇に上がると、俺たちに視線が集中する。男の精霊使いが編入してくる、という噂は既に広まっていて、滅多に触れ合う機会のない同年代の俺たちに、不安と好奇心が隠せないらしい。動物園のパンダになった気分だわ……。

 

「あれが男の精霊使い……」

 

「目つきが悪いわ。人を殺してそう」

 

「てゆうか、あの子は女の子に見えるのは気のせいかしら?」

 

 ……後半一人、俺の心を抉らないでくれ。

 俺は列記とした男だからね。てか、女装した時の事を思い出すじゃんかよ……。

 

『また女装する?』

 

「(しないわっ!あの時は緊急時で、仕方なくだ!)」

 

『そ。可愛いと思うんだけど』

 

「(男に可愛い言うな!アホ精霊!)」

 

『むっ。学院に秘蔵写真バラまいちゃおうかしら』

 

「(……それだけはやめてくれ。いや、やめてください)」

 

『ん、よろしい』

 

 どうやら、回避する事ができたらしい。マジ助かった。

 回りを見回すと、生徒の数は14、5人程度。全員が育ちのいいお姫様だ。興味津々な視線を向ける人もいれば、本気で怯えてる人もいた。

 男の精霊使いで真っ先に思い浮かべるのは、かつて大陸に破壊と混沌を齎した男の精霊使い。魔王の名前なのだ。こうなるのも致し方ない。

 

「あー、さえずるな。静かにしろ。単位減らすぞ」

 

 フレイヤ・グランドルが名簿で机を叩くと、教室がしんと静まり返った。

 

「ほら、お前らもとっとと自己紹介しろ」

 

 眼鏡をかけた理知的な容姿の美女だが、口を開けばこんな感じである。

 

「カゼハヤ・カミト、16歳。見ての通り男の精霊使いなんだが……その、あんまり怖がらずに仲良くしてくれるとありがたい」

 

「えー、アマヤ・カケル、16歳。同じく男の精霊使い。よろしく」

 

 かなりシンプルな自己紹介である。

 てか、語る事なんてないし。

 

「なんか、ふつーだね」

 

「うん、ふつー。あんまり魔王っぽくないし」

 

 なんつーか、もっと怖がられると思ったんだが、そんな事はなかったらしい。

 まあその方がありがたいけど。

 

「あ、あの、質問いいですか」

 

 と、1人の女の子が手を挙げる。

 

「う、うん、なんだ?」

 

「ん、なに?」

 

「え、えーっと、す、好きな食べ物は、なんですか?」

 

 この質問。お見合いで話題がなくなった時にするもんだよな。

 見合いなんかした事ないけど。

 

「え?まあ、何でも……強いて言えば、グラタンかな」

 

「俺は、シチューでいいわ。何でも食えるし」

 

 さて、お姫様の反応は――、

 

「ふつーよ!」

 

「ふつーだわ!」

 

「女盛りとか答えると思ったのに!」

 

「可愛い!」

 

 その女の子を皮切りに、つぎつぎと質問が浴びせられた。

 

「故郷はどこなの?」

 

「お、お風呂ではどこから洗うの?」

 

「スリーサイズは?」

 

 いやいや、質問してる方が顔を赤くするってどうよ?

 てか、ほぼセクハラ発言だぞ。

 

「チームはもう決まっているの?」

 

「「チーム?」」

 

「決まっているでしょ、今度の精霊剣舞祭(ブレイドダンス)のチームよ」

 

 え、嘘だろ。個人じゃなかったの?チーム戦とか聞いてないわ。てか、魔女から聞くのを忘れただけなんだけどね。

 参加するにしても、マジでどうすっか……。

 

『1人は、ユーナでいいじゃないかしら』

 

「(そだな。それ採用で。つっても、チームが決まってたら勧誘もできないし。……前途多難だ)」

 

 まあ何とかなるだろう。カミトもいるし。

 

「カケル……君。でいいのかな。氷結最強の精霊と契約してるって聞いたんだけど……本当?」

 

 情報早いな。流石、噂話が大好きな女子って所か。

 

「ん、まあ一応。完璧に使いこなせてはいないんだけどね」

 

「じゃあじゃあ、人型の高位精霊なんでしょ!?」

 

「ま、まあそうだけど」

 

 え、何。見てみたい。的な視線は。

 俺が担任先生に目を向けると、コクリと頷いた。顕現してもいいって事だ。

 という事なので、俺は左腕を挙げ、精霊刻印が蒼く発光すると、イレイナがアレイシア精霊学院の制服を着て俺の隣に顕現する。

 ちなみに、イレイナの制服は予備にあったものらしい。

 

「えーと、カケルの契約精霊。イレイナ・アッシュフォード。よろしくね♪」

 

 きゃーー。と凄まじい歓声。

 まあでも、先生の一言で静まったけど。

 

「カミト君は、あの誰も契約出来なかった、剣の封印精霊を手懐けたって、本当?」

 

「ええ、そうよ。そしてその精霊を手懐けたカミトを手懐けているのがわたし!」

 

 声に反応して立ち上がったのは、先程の火猫の少女だ。それを聞き、お姫様たちは色めき立った。

 

「カミト君とクレアってどんな関係なの?」

 

「ご主人様と奴隷精霊の関係よ!」

 

「そんなわけあるか!っていうかお前が答えるな!」

 

「なによ、生意気な奴隷精霊ね」

 

「誰が、いつ、お前の奴隷になった!」

 

 二人のやりとりを見て、ますます興奮する少女たち。収拾がつかなくなってきた所で、先生がバンッと机を叩いた。静まり返る教室。

 

「お前らいい加減にしろ。お前らも、とっとと好きな席に座れ」

 

「は、はい!」

 

「了解」

 

「はーい」

 

 カミトは一番後ろの席を目指して歩き出すが、首に鞭が巻き付いた。そして、クレアと呼ばれた少女の方へと引き戻される。

「カミト、死ぬなよ」

 

「頑張って、カミト君」

 

 と言ってから、俺は見知った少女の隣に座る。 

 カミトが助けを求めたが……まあ頑張れ。

 

「よ、ユーナ」

 

「ユーナちゃん、よろしく~」

 

「よ、よろしく。カケル君、イレイナさん」

 

 オドオドと答えるユーナ。

 人型精霊を見たのは初めてだと思うし、仕方ないだろう。

 

「そ、そういえば、カケル君とイレイナさんの宿舎はどこなの?」

 

「ん、俺たちか?」

 

「馬小屋だよー」

 

「の近くの場所な。まあ、宿舎もほぼ馬小屋に近いけど」

 

 え、本当に?と言いたい表情で目を丸くするユーナ。

 いや、マジです。てか、馬小屋でも問題ない俺だけど。

 

「じゃ、じゃあ、時間が空いたら遊びに行っていいかな?」

 

 顔を赤くして答えるユーナ。何でそこで赤くなるの。と思ったが、ユーナも箱入りお姫様なのだ。こうなるのも仕方ない。

 

「いいけど」

 

「カモンカモンだよ。ユーナちゃん」

 

「そ、そっか。何か作ってくね」

 

 どうやら、今日は飯を作らなくてよさそうだ。てか、カミト。既にかなりの女子に囲まれてるとか、何処ぞのラノベの主人公だな。

 とまあ、アレイシア精霊学院での一日が始まったのだった。




次回も頑張っぺ!

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