精霊使いの剣舞~氷結の剣舞姫~   作:舞翼

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いやー、以外に続くものですね。


第4話 砕け散る宿舎

 あれから数時間後、俺とカミト、イレイナは学院の中庭を歩いている。

 他の学院生はともかく、俺たちは講義を受ける予定がない。編入したばかりなので、カリキュラムができていないのだ。

 取り敢えず、俺たちは用意された宿舎の前に到着し、軋んだドアを開けて内部に入って行く。

 

「ちゃんとしてるんだな」

 

「私たちにとっては、かなりの宿だね」

 

 まあ確かに、俺とイレイナがちゃんとした屋根の下で眠れるのは、約数週間ぶりである。

 その間は、洞窟で雨を凌いで休んだりとか、ほぼ壊れかけた小屋で休息したりとかだったのだ。それに比べ此処には、藁葺(わらぶ)きのベット、テーブル、椅子、タンスなどの家具が備え付けられている。

 

「……カケルとイレイナさんは、どんな生活をしてたんだ」

 

 カミトが藁のベットに座りながらそう聞いてくる。

 俺とイレイナは椅子に座り、

 

「旅人生活」

 

「サバイバル生活かな」

 

 カミトは顔を引き攣らせた。

 

「……そ、そうか。大変だったんだな」

 

「まあでも、それなりに楽しかったぞ」

 

「私も楽しかったなぁー。冒険してるみたいで」

 

 まあ俺は、コイツと居られれば何処でも大丈夫って感じだ。

 決して、恋愛っていう意味じゃないからな。固い絆って言えばいいのか、そんな感じだ。

 

 ――閑話休題。

 

 まずは精霊剣舞祭(ブレイドダンス)のチームメイトを探さなければならない。精霊剣舞祭(ブレイドダンス)の出場に求められるのは、五人のチームである。

 

「(それにしても、誰がレン・アッシュベルの名を騙ってるんだ?)」

 

 レン・アッシュベルは、もうこの世に存在しない(・・・・・・・・・・・)のだ。てか、レン・アッシュベルの名を語っていたのは、カミトだし。

 そんな時、腹の虫の音が聞こえてきた。どうやら、カミトのらしい。

 俺が聞いた話だと、《精霊の森》を彷徨っていた今朝から、何も食べてないらしい。学園には一応、学生が利用するレストランがあるが、その値段がかなり高い。スープ一杯で、俺が数週間食ってける賃金とか、マジか、的な感じだ。流石、お姫様学院と言った所だ。

 まあいいや。俺も腹が減ってきた所だ。調理器具もある事だし、何か作るか。火種とかは、《精霊の森》で火属性の低位精霊を捕まえてくればいいし。

 

「カミト、イレイナ。精霊の森でキノコでも採りに行くか?兎とかも捕れそうだしな」

 

 高位精霊のイレイナが着いているのだ。《精霊の森》で迷う事はないだろう。

 

「お、いいね。久しぶりのお肉だ♪」

 

「カケルの案に賛成だ。オレは、腹が減って仕方がない」

 

 その時だった。何処からか旨そうな匂いが漂ってきたのだ。

 匂いは、半開きになったドアの隙間から入り込んできてるようだ。カミトが立ち上がりドアを開けると、そこには白い湯気がたつ鍋が置いてあった。

 たっぷりのタマネギと骨抜きの鶏肉が入った、旨そうなスープだ。

 カミトが鍋に手を伸ばすが、ひょいと取り上げられる。もう一度手を伸ばすが、またしても取り上げられる。

 

「(鍋、結構重いのに頑張るなぁ)」

 

 と、俺は身も蓋もない事を思っていたのだった。

 

「カゼハヤ・カミト。アマヤ・カケル。イレイナ・アッシュフォード。お腹は減っていないかしら?」

 

「俺はいいや。それはカミトに上げてやれ」

 

「私たちは、《精霊の森》で食材を捕ってくるね」

 

 ということなので、《精霊の森》に行って食材を捕ってこよう。俺はそう思いながら椅子から立ち上がった。次いで、イレイナも立ち上がる。

 

「んじゃ、行きますか。イレイナさんや」

 

「OK。出発進行―」

 

 とまあ、ドアから出て行く俺とイレイナ。

 外に出るとそこには、プラチナブランドの髪をしたお姫様。たしか、……リンスレット・ローレンフロストだっけか?

 

 『ちょ、待ちなさい』を背にして、歩き出す俺とイレイナ。

 歩いていると、見知ったお姫様が目に入る。大き目のバスケットを持った、ユーナ・キャンベルだ。

 

「あ、カケル君。サンドイッチ作ってきたんだけど。食べる?」

 

 あー、そうだった。今夜は飯を作らなくても大丈夫だったんだっけ。

 

「悪いな、頂くよ。腹減ってて」

 

「ユーナちゃん。私も私も」

 

 そう言って、バスケットからサンドイッチを摂り、口の中に運ぶ俺とイレイナ。

 かなり旨い。俺が旅をしてた時の非常食より旨い。……いや、当たり前だけどさ。でもまあ、市販のより旨いのは確かだ。イレイナも、俺と同じ感想だろう。まあ立ち食いになっちゃうけど。

 

 ――閑話休題。

 

 三人分あるという事は、あと一つはカミトの分だ。ユーナと共に宿に戻ろうとしたのだが、その手前でクレア・ルージュと、リンスレット・ローレンフロストが対峙してた。

 

「……何やってんの。あの二人は」

 

「うーん、クレアちゃんとリンスレットさんは仲がいいんだけど。それがこんな形になっちゃうんだ」

 

「なるほどねぇ。二人の友情表現が、決闘的な感じに出てるということ?」

 

 その通りだと思いますよ、イレイナさん。まあ、喧嘩する程仲がいいってことかな。つーか、精霊を召喚するな。

 そう、リンスレットは契約精霊の魔氷精霊(フィンリル)。クレアは契約精霊の灼熱の火猫(スカーレット)を召喚しているのだ。

 精霊の格としては、中位精霊(Bランク)以上だろう。かなりレベルの高い精霊である。で、その火精霊と魔氷精霊が同時に跳び、空中で激突し、激しい嵐となって吹き荒れる。

 

「……かなり嫌な予感がするんだが」

 

 まあそれは当たってしまい、火精霊の火の粉が飛んで、小屋に燃え移ったのだ。

 んで、小屋は火に包まれていく。

 

『凍てつく氷牙よ、穿て――魔氷の矢弾(フリージング・アロー)!』

 

 リンスレットが精霊魔装(エレメンタルヴァッフェ)を展開させ、氷の矢をつがえ放つ。

 矢弾は無数の氷の欠片となって降り注ぎ、燃え盛る炎を一瞬で消化する。まあ、結果として小屋は砕け散る(・・・・・・・・)だが。

 ……うん、ちょっとイラッとした。……ちょっと脅しちゃうか。

 

「――氷結の全てを司る女帝よ。汝、我の矛になる為、我に力を与えた給え」

 

 イレイナが発光し、俺の左手に綺麗な長剣が、そう、透き通るような氷の剣が握られていく。

 

「我は命ずる、汝、我を導き剣と成れ――氷剣の女帝(アイス・エンプレスソード)

 

 そして詠唱が完了すると、俺の左手に美しい氷の長剣が握られた。

 最強を冠する氷結精霊。イレイナ・アッシュフォードの精霊魔装(エレメンタルヴァッフェ)だ。隣に立つユーナは『……綺麗』と言い、イレイナの精霊魔装(エレメンタルヴァッフェ)に目を奪われている。

 まあ、かなり美しい氷結の長剣だしね。

 

「おーい、君たち。その辺で止めようか。俺も参加しちゃうよ」

 

 俺の言葉で、ビクッと肩を震わせるクレアとリンスレット。

 まあ、イレイナは最強の精霊だし、こうなるのも無理もない。精霊魔装(エレメンタルヴァッフェ)となれば尚更だ。

 

「まああれだ。精霊を元素精霊界(アストラル・ゼロ)に還そうか」

 

「「……はい」」

 

「よろしい」

 

 そう言ってから、俺も精霊魔装(エレメンタルヴァッフェ)を解除する。

 すると、俺の隣にイレイナが姿を現す。それとほぼ同時に、中庭の方から足音が聞こえてくる。




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