やって来たのは、エリス・ファーレンガルト。学院の風紀を守る騎士団長だった。その後ろに、同じ恰好をした少女が二人。
「学院の内で私闘は禁じて……なっ!?」
ファーレンガルドは、瓦礫となった宿を見つめる。
「こ、これは、いったいどういうことだ!」
ファーレンガルトは、怒気を含んだ声音でそう言った。
「わ、私の作った家が気に入らないとか、そういうことか?抗議行動なのか!?」
「これはだな、ファーレンガルト。お姫様たちがちょっとな」
クレアとリンスレットは、お互いに指を差し合った。
「このバカ犬が粉々に吹き飛ばしたのよ」
「その前に、この残念胸が燃やしたんですわ!」
ファーレンガルトは納得したように溜息を吐く。
「……なるほど。いつものお前たちの仕業ということか」
「あら、いつものとは、随分な御挨拶ですわね、騎士団長」
「いつもの、だろう?レイブン教室の問題児」
ファーレンガルトが、キッとリンスレットを睨み返す。
騎士団の少女たちも、後から追い付いて来た。
三つ編みにした茶色い髪の少女と、黒髪の少年っぽい髪形の女の子だ。
クレアたちの顔を見ると、苦虫を噛み潰したような顔になる。
「……火猫のクレア!それに、氷魔のリンスレット!」
「また何かやらかしたのか?
少女たちの目には、あからさまな侮蔑の色が浮かんでいた。
「……なんですって?」
「今、なんとおっしゃいまして?」
クレアとリンスレットが同時に二人を睨みつける。
だが、少女たちの目は、クレアとリンスレットを無視して、編入してきた俺とカミトへ向いた。
「あんたたちか。学院に編入してきたっていう、例の男の精霊使いは」
「へぇ、悪くないわね。結構カッコイイし、可愛いじゃない」
「ちょっと、コイツらはわたしが見つけた奴らよ!」
「二人は、私の下僕にする予定ですわ!」
いや、ならねーからな。と俺は内心で突っ込む。
三つ編みの少女は鼻で笑い、
「あら、誰もチームを組んでもらえないからって、色仕掛けで編入生をたぶらかすなんて、辺境の田舎貴族はやることがせこいわね」
「へ、辺境の田舎貴族ですって……」
リンスレットの顔が引き攣った。
これは、かなりの地雷発言らしい。
「そうよ。ローレンフロスト家なんて、家柄だけがご自慢の田舎貴族じゃない」
「な、なな、な――」
「お、お嬢様。落ち着いて――」
「ふ、ふふ、ふ、わたくしは落ち着いてますよ、キャロル」
リンスレットはにっこりと笑った。……お姫様なのにかなりの形相である。
もう一人の少女がクレアの方を向き、嘲笑うように言った。
「クレア・ルージュに至っては、貴族どころか反逆者の妹じゃないか。まったく、学院はどうしてこんな奴の入学を認めたのだか」
クレアの表情がきつくなり、鞭で地面を打ち据えた。
「――黙りなさい。消し炭にするわよ」
声が震え、紅い瞳は静かな焔にたたえ、押し殺した声で呻く。
「(クレアが反逆者の妹……。まあいいや、今はそれはどうでもいい……)」
刹那、――
「……おい、テメェら。言い過ぎじゃねぇか。言っていい事と悪い事があるって、親から教わらなかったのか……」
「……ここで貴女たちを凍らせちゃおうかしら。私、今かなり怒ってるの……」
俺たちの怒りに呼応して、周りの木々が所々に凍っていく。
温度が劇的に下がり、後ずさる騎士団。
これを止めたのは、俺の隣に立っていたユーナだった。ユーナは俺に腰に手を回す。
「落ち着いて、カケル君。決闘で白黒をつければいい話だよ。その方が穏便に事を済ますことができるから。ね、イレイナさんも」
「………………わかった」
「………………今回はユーナちゃんに免じて見逃してあげる。……次はないと思って」
徐々に収まっていく吹雪。
周囲の温度も、徐々に戻ってきていた。
「あ、ああ。――クレア・ルージュ、リンスレット・ローレンフロスト。貴様らもそれで構わないか?決闘形式は、そちらで決めるがいい」
「……そうね、
「いいだろう」
そう言って、踵を返して去っていく騎士団。
彼女たちの背中を見ながら、クレアが毒づいた。
「ふん、後悔させてやるわ!特に、あの髪の短い奴は絶対に許さない!」
「いい機会ですわ。騎士団の連中は前から気に入らなかったんですの」
「リンスレット、足でまといにはならないでよ」
「あら、誰に言っているんですの?」
「……お前らな、小屋を破壊した後は決闘騒ぎか?勘弁してくれよ」
カミトは深い溜息を吐いた。
「ま、そんなわけだから」
クレアは腰に手を当て、カミトを指差した。
「さっそく、あんたの力を見せてもらうわよ、奴隷精霊!」
「……オレかよ。カケルとキャンベルがいるじゃんか」
「は?あんたバカじゃない。カケルの力は今見たでしょ。あれじゃ決闘にならないわよ。騎士団が蹂躙されるだけよ。それに、ユーナ・キャンベルは部外者」
「そうですわね。決闘を見届ける第三者ということでどうでしょうか?証人がいれば、私たちが勝った確実性がでますので」
決闘は、
「そうね。ナイスアイディアよ、リンスレット。そういうことなので、奴隷精霊、絶対勝つわよ!」
マジか……。と言い、瓦礫の家の前でカミトはうんざりと肩を落とした。
俺とイレイナ、ユーナは、頑張れと内心で言う事しかできなかった。
もうすぐ戦闘描写だ。
上手くか書けるか、メチャクチャ不安です(-_-;)