俺とカミト、イレイナは、学院の石畳をとぼとぼ歩きながら、紅いツインテールの少女と黒髪のセミロングの少女の後を歩いていた。
リンスレットは、決闘の用事がありますので!と言い、一足先に宿舎に戻った。
「……なあカミト、イレイナ。今日どうする?」
「どうするもなにも、今日は野宿じゃないか」
「私は野宿でも構わないけど、カケルとほぼ毎日だったし」
クレアが振り向くと、びしっと指を突き付けた。
「あ、あんたら、まだぶつぶつ言ってるの!」
「オレたちの家」
「放火魔」
「えーと、犯罪者?」
俺たちが矢次にそう言うと、クレアは明後日の方向を見て、うっ。と呻いた。
そんな時、こちらを振り向き、顔を真っ赤に染めて口を開いたのはユーナだ。
「あ、あの……、わ、私の部屋、今はルームメイトがいないの。よかったら、……来ますか」
…………えーと、何で俺を見るのかな。ユーナさん?てか、イレイナはニヤニヤ笑うな。
嬉しい提案でもあるが、男女が一つ屋根の下はちょっとな。って感じだ。色々とマズイ気もするし……。
だが、俺の考えはクレアの意見によって掻き消される事になる。
「……そそ、そうね。し、仕方ないわ。わ、わたしもルームメイトはいないのよ。ど、奴隷精霊はわたしのものだし、わたしが面倒を見るわ!」
「「……ちょっと待てお前ら」」
俺とカミトの言葉が重なった。
やはり思ってる事は、同じだろう。女子寮に住み込むのはマズイ。という事だ。
「まあまあ、2人共。今日はお言葉に甘えようよ。これからの事は明日考えればいいでしょ。もうそろそろ、日が落ちちゃうし」
まあ確かに、目の前に泊まる場所があるのだ。これを見逃すのも惜しい。
俺とカミトは苦渋の決断の上、この提案に賛同したのだった。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
現在俺たちは、女子寮の前に到着していた。
寮といっても普通の建物じゃない。大貴族の邸宅のような
「…………これ、マジで寮なの。豪邸じゃないの?」
「…………私たちここで寝れるの?」
前の生活から考えるに、これは180度ものごとが変わった感じだ。
なんつーか、入るのに躊躇いがあるな……。
「それじゃあ、クレアちゃん。私は、カケル君とイレイナさんをお部屋に連れてくね」
「そう、わかったわ。決闘の時間には遅れないように」
「ん、わかってる」
寮に入り階段を上り、少し歩いた場所にユーナの部屋はあった。
ユーナがドアを開け、その後ろにイレイナと俺が続く。電気がつけられ回りを見回すと、身の回りの物は綺麗に整理された。また、女の子特有の甘い香りと言えばいいのか。それが鼻腔を擽る。……俺は変態じゃないからね。
「と、とりあえず、座ってて。お茶入れてくるから」
ユーナはそう言って、キッチンに消えて行ってしまった。
まあそういう事なので、近場のソファーに腰を下ろす。……かなりもふもふして気持ちいいんですが。これがお姫様の力か。
「お待たせ。お茶だよ」
俺とイレイナは、ユーナがお盆に乗せたカップを手にして、それを確認してからユーナも向かいのソファー腰を下ろす。
お茶を一口飲んだが、かなり高い茶葉だと思われた。……これ、マジで幾らの茶葉だ。
俺は目の前のテーブルの上にカップを置き、一息吐いてから口を開く。
「最近のお姫様は危機感ってものを持ち合わせてないのか。一応、俺男だぞ」
「カケル君なら大丈夫だって思うんだ。今日話してみて、悪い人じゃない事もわかってるしね」
「それは何て言うか、ありがとうって言えばいいのか?」
「うん、そうかも。それに、あの時怒ってくれてありがとう。私にはできない事だったから」
「そうか」
差別する人間が気に入らないっていう俺の私情がかなり占めているんだが。
俺とイレイナは、差別が大嫌いだしね。
そう思っていると、イレイナが俺の袖を掴んだ。
「もういっそ、カケルとユーナちゃんは一緒に住んじゃえば。あれだったら、私は
「アホ。話が飛躍しすぎだ!」
俺はイレイナの頭にチョップをかます。で、ジト目で俺を見るイレイナ。
ほら、ユーナは茹でダコ見たいに顔が真っ赤じゃん。10代で同棲?は色々アレだしなぁ。まあ、明日からは安全に野宿できる場所を探そう。
「え、えっとね。カケル君とイレイナさんは、今後どうするのかな?」
「ん、寝床のことか?」
コクコクと頷くユーナ。
「んー、まあ野宿だな。やっぱ、学院内がいいかもなぁ」
「そ、そんなのダメ!野宿なんてダメだよ!」
「うおっ!ビックリした……」
てか、ユーナさん。何で若干涙目?
「わ、私決めた!――――カケル君!私と一緒に住んでください!」
いやいや、意味がわからん。てか、どうしてそうなった。イレイナも、『ひゅー、ユーナちゃん大胆!』って言うな。
「……え、えーと、野宿は許さないから一緒に住めってこと?」
「……うん、そう」
暫しの沈黙が流れる。
……何か我慢比べになってるんだけど。
結果は――、
「……俺の負けだよ。ここに住ませて下さい」
ユーナはにっこり笑い、
「もちろんOKだよ。これからよろしくね」
「ああ、よろしく」
俺は、女子に弱い事が解った瞬間だった。
女の子は、イレイナとしか関わってなかったからなぁ……。
「カケル君は
「一応そのつもりかな。てか、メンバーが集まるか、かなり不安でもある」
「じゃ、じゃあ、メンバー第1号になっていいかな」
マジか、まだユーナはチームが決まってなかったのか。
やったね、メンバーゲットだぜ。……これ、某アニメのセリフだよね。
「そういえば、ユーナの契約精霊ってどんな奴なんだ?」
「うーん、そうだね。一言で言えば、火の鳥かな」
なるほど。火の鳥=鳳凰って所か。てか、
まあ、近々見る機会があるだろう。
「そうそう。カケル君とイレイナさんは、ここに来るまで色々な街を点々としてたんだよね」
「まあそうだ」
「それでね。街で昼食を食べてる時に手紙が届けられて、ここに来たって所かな」
「そうなんだ。旅のお話とか聞きたいんだけど、いいかな?」
ユーナは首を傾げてそう聞いてくる。
「あんまり面白くないぞ」
「いいのいいの。私が聞きたいの」
「じゃあ、私から話すね。最初の街はね――」
俺、イレイナ、ユーナは、刻限が近くなるまで話に更けているのだった。
次回は戦闘か……。
上手く書けるかな……不安です。