ドジっ娘である。ということ以外に公式設定が存在しないローゼンメイデン第八ドール『珪孔雀』。
彼女が動くところを読みたいけれど見つからない。よし! 自分で書くか!
地産地消をモットーに至高の少女を描きたい。

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書いたので取りあえず投稿しました。
続きを書けるかは分かりません。


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 私立中学への進学で離れた故郷。さして思い入れも深くない町に戻ってきたことに特別な理由はない。公立で、自分の偏差値相応の高校が偶然ここにあっただけだ。

 高校生一人が暮らすに狭すぎず広すぎないちょうど良い塩梅の部屋は、前の住人の残り香だろうか、煙草の掠れた空気が少し漂っているようだった。築年数四十五年、木造二階建て、水道代込み光熱費別で家賃は月々四万円。最近リフォームしたという赤褐色の外壁からは、半世紀を眺めてきたであろう古建築の面影は感じられない。

 引っ越し業者のにいちゃん、おじさんと一緒になって荷物を運び終えた頃には空も赤橙(あか)く染まり始めていた。がらんどうで中々広く感じた部屋も、もろもろの家具を並べてしまえば思った程ではない。

 さて。ベッドや勉強机、本棚、冷蔵庫など一人では手間取るものは設置したが、未開封の段ボール箱はまだまだ残っている。今日一日では無理でも出来るだけ(かた)してしまおうか、と気合いを入れて、作業に取り掛かる前に風呂を沸かした。

 だばだばと轟音を響かせる水音から四十五年の歴史に思いを馳せながら、大手のハサミで段ボール箱を開けていると、奇妙なものに出くわした。

 段ボール箱から現れたのは鞄だった。あまり見かけることのないアンティーク調の大型鞄だ。映画に出てくる一九〇〇年代の旅行鞄のような角ばった形で、重量もそれなりにある。

 すわ業者のミスかと伝票を確認してみたが、宛先はここになっていた。それにしたってろくに梱包もしないとは、高価なものだろうし傷ついたら大変だろう。とりあえず箱から出そうと持ち上げる。僅かな隙間もなく密着するように収まるそれを取り出すのに苦心しながらもどうにか成し遂げると、にわかに邪な考えが脳裏をよぎった。

 いやしかし、これは私の部屋に送られてきたモノで、受取人も私なのだ。まるで思い当たる節がないことが少し気がかりだが、今現在コレは私の物であるとして良い……はず。

 そんな自己弁護にもならない言い訳をしてから、慎重に鞄の()め金を外して蓋を開く。手がすべって一度蓋を落としてしまったが、その直前、僅かに開いた隙間から水色が見えたような気がした。

 垣間見えた青空のような蒼。それと一緒に『小さな手』も、まるで『子供の手』のようなものが一緒に。

「……いやいや、違う。大丈夫、僕は関係ない」

 なにを焦ってるんだ。やれやれ、新生活一日目からのハプニングに興奮してるのだろうか。まったく私らしくもない。不測の事態には慣れっこじゃないか。ただ蓋を開けるだけ、それだけで答えははっきりするんだ。それに鞄に人が入るわけないじゃないか。大きい鞄だがこれに入るなんてどこぞのエスパーだって出来やしない。

 それこそ、小さな子供でもない限り。

 たらり、と汗が頬を垂れる。

「……」

 目を固く閉じて、見間違いであってくれと祈りながら蓋に手を掛けた。

 そして(私なりに)意を決して片目の瞼を持ち上げる。臆病と罵るなかれ、誰だって誘拐事件に巻き込まれるかどうかの瀬戸際にあれば近い行動をとるはずだ。

 幼児誘拐事件。まさかもまさか、片棒を担がされるなんてことにはならないでと当時の私は、心中必死に祈っていた。今振り返ればなんて間抜けで、アホらしいのだろう。そんな大事件に巻き込まれるなんて、宝くじで一等を当てるほうがまだ現実味がある。よしんば事件だとして、何故私なんかの元に送りつけてくるのか。それも年代物の旅行鞄に入れた状態で。

 実際そのとおりで、私の目に飛び込んできたのは子供や、ましてや人でさえなかった。

 ふかふかのベッドのように純白のシーツが張られた鞄の中に入っていたのは、膝を抱えて瞳を閉じる一体の『お人形(ドール)』だったのだ。

 

 

───────────

 

 

「マスター。これはどこに置きますか?」

「炊飯器はキッチンだけど、重いから僕がやるよ。君は枕にカバーをかぶせておいて。あと僕はマスターじゃないよ」

「分かりましたマスター」

「なるほど」

 分かってない、ということが分かった。

 小さな体で一所懸命にカバーに枕を押し込む少女にほっこりしながら、ふと窓の外に目をやると、知らぬ間に夜が深まってきていたのでカーテンを引いて、室内灯を点ける。一瞬部屋が真っ暗になった後、オレンジがかった電球色の光がぼんやりと部屋を照らした。白い光とは違って弱々しさを感じる明かりだが、幸い日中の陽当たりは悪くないので、夜に使う分には十分な明るさだ。

 こつん、と弱い衝撃に足下を見てみれば、茶髪の小さい女の子が眩しそうに目を細めていた。ちょっと眉を寄せながらも天井の照明から目を離さない様子が可笑(おか)しくて、思わず笑いが零れる。

「なんですか?」

「いや、なんでもないよ。少し眩しいかなってね。天井が低いから」

「低いですか?」と少女は首を傾げて言った。

「僕には低いかな。ほら」と、軽く跳んで天井に触れてみせる。

「わぁ。マスターは大きいですね」

 少女が感心したように言った。とどくはずもないのに小さな手のひらを天井に向けて、ぴょんぴょん飛び跳ねている。

「別にそうでもないよ。どちらかと言えば僕じゃなくて、君が小さいんだ、えっと……」

珪孔雀(けいくじゃく)ですよ、マスター。もう三回も自己紹介してるのに」

「ははは……珪孔雀って言葉が聞き慣れなくってさ。あと重ねて言うけど僕はマスターじゃないよ」

「分かりましたマスター」

「なるほど」

 なるほど。やっぱり分かってない。このやり取りをもう何度繰り返しているだろう。

 少女こと珪孔雀を鞄から見つけて数時間しか経っていないが、彼女が人の話を聞かない性格だということだけは間違いないようだ。

 

 

「わお、綺麗」

 女の子 ―――の姿をしたお人形を見た瞬間、私の目は彼女に釘付けにされた。ぬいぐるみや人形なんて一切興味がなかったのに、その中でも本格的な、アンティーク・ドールの彼女から目が離せなかったのだ。

 そのまま、なにか超常的な力に導かれるように伸ばした指が少女の頬に触れた。思ったとおりの(なめ)らかできめ細やかな頬は、その柔らかな弾力で私の指を押し返す。肩口で切り揃えられた赤茶色の艷やかな髪は、夕陽を吸い込んでより鮮やかな光沢を得る。手櫛が水を切るように抵抗なくすり抜けたので、思わず確かめるように二度、三度と繰り返してしまった。

「わぁ……! うわぁ…………はっ!」

 そして不意に我に返り、何をしているんだ私はと自戒する。

 先の屁理屈については置いておいて……『この子』が私宛に送られているのは間違いない。けど、それは何らかの手違いなんだ。心当たりが何一つないのだから間違いない。かなりの値打ちものに違いないし、もし傷でもつけて高額請求なんてされたらたまったもんじゃない。そう自分に言い聞かせながら、少女を元通りに横たえて蓋に手を掛けて───その時だった。

 どこからともなく現れた"彗星"が目の前を横切ったのだ。

「わあっ!?」

 反射的に体をのけ反らせる。どうにか視線で追えば、天井付近で水色の"彗星"がやたらめったらに飛び回っていた。"彗星"はしばらく『8』の字を描くように蛇行してから、その非現実的かつファンタジックな光景を前に呆然としていた私の元に降りてきた。

 チカチカ、チカ。

 光を強めたり弱めたり、瞬き、点滅を繰り返しながら私の前を行ったり来たり。"彗星"は何かを伝えようとしているようだった。けれど悲しいかな、私にはそれがさっぱり分からない。

 蛍をつかまえるのと同じ要領で手のひらを差し出してみると、"彗星"は判断に迷うかのような挙動を見せてから玄関の方へ飛んでいった。何だろうと観察していれば、ドアポストから手紙を引っ張り出しているようだ。蓋を開けるのに難儀していたので手を貸すと、ビクッと大袈裟に跳ねた"彗星"にその手紙を押しつけられた。

 差出人も宛先の記載もない白封筒に薔薇の封蝋が押されているそれは、これまで見てきたどの手紙よりも、『不思議な魅力』のある手紙だった。

 古風な鞄。血のように赤い封蝋。薔薇の印。謎の"彗星"。恐ろしく美しいお人形(ドール)

 ここに至っては、私もこの不思議な現状が現実(リアル)なのか、引っ越しで疲れ果てた自分が見ている夢なのか、判断がつかなくなっていた。

 まるで夢現の中。明晰夢を見ているようなあやふやな感覚に酔いしれながら"彗星"に問いかける。

「これを……僕に読めってこと?」

 上下に揺れたそれを肯定と受け取り、赤薔薇の封を解く。中の手紙に書かれていたのは、とても短い()()()()の「問いかけ」だった。

 

 

『まきますか  まきませんか』

 

     まきます

 

 

───────────

 

 

「ありがとうございます。いただきますね、マスター」

「えっと……つまらないものですが、どうぞお召し上がりください?」

 まさか初めて手料理を食べさせる相手が人形になるとは思わなかった。調理器具や食材も揃えていないので、お手軽なオムレツを作ったのだが、はてさて生きた人形の口に合うのだろうか。お人形の口に合うかという言葉が既にかなり意味不明だが、お腹が減ったと言うのだから仕方がない。当然のごとく紅茶も要求されたのだが、さすがにティーポットから用意する時間はなかった。

「では」と珪孔雀のスプーンがオムレツにつき刺さる。

 ぷるりと揺れる黄色が口に吸い込まれる。

 すると、これまでさして動かなかった彼女の表情が"ふにゃり"と崩れた。

「わぁ……美味しいです〜」

 珪孔雀は手を頬に当てるとほぅ、と息を吐いた。上半身をくねらせた姿は、少女の姿には少々似つかわしくない艶めかしさを醸し出している。こういうのが好きな人にはハートど真ん中の仕草なんだろうな、と思いつつ、そういった趣味のない私には「なんかおもしろいなぁ」と、それだけだった。

「白いふわふわと黄色いとろとろの合わせ技、これがもうたまりません〜。更にさらに、最初にしゅわっと弾ける空気の泡が食感に驚きを与えてます〜! マスターがシャカシャカしてたのはこれのためだったんですね」

 なんだかグルメリポーターみたいなコメントだけど、期待以上に喜んでもらえたようで結構けっこう。私としてはこの反応が貰えただけでお腹いっぱいだ。でも、スプーンを振り回すのは行儀が悪いのでやめましょう。

「シャカシャカ……メレンゲのことかな?」

「メレンゲになった気持ちです〜!」

「卵白人形?」

 なんか嫌だな。どことなく生々しい……。

 人形といえば―――たしかこの娘も自己紹介で、自分はなんちゃら人形のなんちゃらかんちゃらだとか言っていた。たしか………おや、まるで思い出せない。悲しいけど、これが私である。分からないことは訊けば良いのだから、一々気にしないことが重要だ。

「ねぇ、君は何の人形なんだっけ?」

「! ま、またですか」

「またなんだ、ごめんね。でも名前は覚えたよ。だから教えて、珪孔雀」

 お願いします、と頭を下げれば、仕方ないですね、と頬をふくらませながらも納得してくれた。珪孔雀はごっほん、と大きく咳払いをして椅子の上に立ち上がる。腰に手を当てた仁王立ちで気合も十分のご様子。

 

「───『ローゼンメイデン』です! 誇り高き薔薇乙女の『第八ドール』が、私こと珪孔雀なのでふ!」

 

「でふ?」

「……ですっ!」

「なるほど」

 

 やっぱりよく分からないけど、可愛らしい娘だなぁと、それだけは分かった。

 

 




どうして台詞と地の文で一人称が違うのかとか
どうして選択肢が一つしかったのかとか
どうして人形なのにお腹が空くのかとか
そもそも主人公の名前はなんだとか
性別はどっちなのかとか
天井低すぎね? とか

伏線だけ放り込むスタイル。

これから私生活が非常に忙しくなるので、感想だけでも貰えると日々の励みになります。

ねだっていくスタイル。



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