艦CORE 黒い鳥は海を舞う   作:紅月黒羽

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第2話 人間だって努力すればできる

 校内放送で呼び出されたからきたものの、やはり校則違反をした覚えはない。

 俺はいたって真面目で平凡な生活を送っていたはずだ。

 なのにどうしてこうなった。

 

 元々俺は人付き合いがうまくない。

 だから面倒ごとを起こさないようにあまり他人に関わらないようにしてきたし、誘いが来てもそれとなく受け流してきた。

 

「失礼します。一年電子機械化霧雨斬夜です」

 

 ノックをし、名乗りながら職員室に入る。

 この手の礼儀作法はこちらの世界にきて嫌というほど躾けられてきたので舌がもつれることもなくすらすらと言えた。

 

 一瞬教師たちがこちらを見るがすぐに自分の仕事に戻る。

 にしても暑いし臭い。

 少子高齢化という波を受けてかこの学校も若い教師はそれほど多くない。というかほとんどが30代後半だ。

 そのせいか揃いも揃ってコーヒーばかり飲むから匂いがこもる。

 

 …さっさと終わらせたいから早くしてくれないだろうか。

 

「斬夜こっちだ」

 

 そう呼んでくるのは担任の佐々木 紀之 (ささき   のりゆき)師だ。

 年齢は見た目からして30代後半から40代前半といったところだろう。

 それなりに年を食ってるはずなのに熱血系で何かと口うるさくクラスメイトからの評判は低い。

 

 俺としては親しみやすいと思っているからいいとは思うが見方は人それぞれだしな。

 

「先生、先に聞いときますが俺が何かやらかしたというわけではないですよね?」

 

「違う違う。そんなことで呼んだんじゃないぞ?逆にそんなことをした覚えがあるのか?」

 

「多分…ないですよ」

 

「ならいい。間違ったことをしたら正すのが俺らの仕事だからな」

 

 ハハハと陽気に笑っているが早めに本題に入ってほしいところだ。

 時間だって無限ではないし昼休みがなくなったら飯を食い逃してしまう。

 

 流石に育ち盛りの今にとってそれは堪える。

 せめて五分あれば何とか食えるが何故か無理な予感がする。

 

「さて本題に入るがちょっと場所を移すぞ」

 

「?分かりました。聴かれたらよくないことでもあるんですか?」

 

「いや、言ってなかったがお前をここに呼んだのはお客さんが来ててな、その人が連れてきてくれって言ってきたんだよ」

 

「連れてきてくれってどこにですか?」

 

「校長室だ。失礼のないようにな」

 

 …マジでか。わざわざ校長室まで行くとなるとそれなりの客人が来てるというわけだが、俺が思い当たる人物は一人しかいない。

 

「失礼します、校長先生。霧雨斬夜を連れてきました」

 

「ご苦労さまです佐々木先生。斬夜君も入っていいですよ」

 

「…失礼します」

 

 校長に促され入室する。

 部屋の内装は俺の予想通りだった。来客用に使う大きめの黒いソファーに歴代の校長の写真、あとは校長用の机と椅子、書類などが入った棚。

 

 校長用の椅子に座っているのは伊藤 誠二郎(いとう   せいじろう)校長。

 年齢は分からないが顔にあるシワなどから察するに50はいってるだろう。

 特徴といっても他にはないしあるとすれば話が長いくらいだ。

 まぁそこは年の功ということで流すとする。

 問題はそこではない。ソファーに座っている来客に問題があった。

 

 シミ一つない真っ白な軍服をしっかりと着こなしその胸についている勲章が日光で眩しく輝いて見える。

 もう初老に入っている筈だというのにその姿勢は何一つ崩れることのなく整っており年齢など全く感じさせない。

 

「久しぶりだなじいちゃん」

 

「ほほっ、元気そうで何よりじゃよ斬夜」

 

 そう、この人は俺の祖父でありいまこの国で国の次に権限を持っているといっても過言ではない大本営の元帥でもある霧雨 荒谷(きりさめ あらや)だ。

 

「全く見ない間にここまで育ちおって。どうじゃ、何かあったか?」

 

「いいやこれといっても別に。じいちゃんこそなんで学校に?」

 

「あぁそうじゃな、そのために呼んだんじゃった」

 

 おいおいボケるのはまだ早いぞ?

 てか俺が言わなかったらこのまま喋り続ける気だったのかこの人は。

 それともこんな人だからこそ人類と艦娘とのわだかまりをなくせたんだろうか。

 

「わしと一緒に来てもらいたい場所がある。校長先生には許可を貰っておるからあとはお前さん次第じゃ」

 

「その場所って?」

 

「悪いが今すぐには言えん。軍事機密なのでな」

 

 それもそうか。こんなところでそんなことをのんきに話してたらどんな聞き耳をたてられているのやら。

 しかし軍事機密ということは必然的に軍に関係あるということか。一体何をする気だ?

 

「まぁ簡単に言ってしまえばお前を提督にするということじゃな」

 

「は?」

 

 軍の話が出た時点で薄々感づいてはいたがまさかこうなるとは。

 しかし何で今になってそんなことを?

 最初からそのつもりだったらもっと前から士官学校なりと入れさせられてたはず。

 それをわざわざこんなときに?

 

「…その理由は?」

 

「わしについて来れば答えは分かる。まぁそこはお前さん次第じゃがの」

 

 なるほど、俺に拒否権はないと。

 この人は無理やりにでも俺を提督にしたいらしいな。

 まぁいいさ、そこまでするなら乗ってみようじゃないか。俺としても気になるしな。

 

「最初から俺の答えは決まってたってのにわざわざまどろっこしいことしやがって。これだからじいちゃんは」

 

「いやぁ~すまんのう。別に深く考えることはないんじゃよ、わしの話を聞いて納得したならなればいい。それでもいやならいままでどおりに過ごしていればいいんじゃから」

 

 ん?おもったよりも押してくるわけではないのか。

 てっきり元帥の権限でも使って無理やりにでもくるのかと思ってたんだが。

 

「では話は纏まったということでよろしいですね、霧雨元帥?」

 

「ええ、お手数を掛けましたの校長先生」

 

「本来教師としては学生を戦地に送るようなことは承認したくはないのですがこんな時代じゃ仕方のないことかもしれませんね」

 

 自嘲気味にいう伊藤先生だったが俺から見てもそれは仕方のないことだろう。

 戦争が起きているのならどうしても人手が欲しくなる。

 事実この国も昔は若者たちが戦地へ赴いていた。

 

「それでも斬夜君が提督になるというならそれを応援しないわけにはいかないでしょう。あくまでなるという話ですがそれでもこの世界の未来を担っているわけですからね」

 

「そんな風にいわれても俺は…」

 

「今はいいんです。ただ少しずつでも成長していけばいい、それがいつかは実を結ぶのですから。」

 

 ありきたりな言葉ですけどね、と伊藤先生は笑っていたがこの人の言葉はどこか感慨ぶかいものを感じてしまう。年季という奴だろうか?

 

 それから数分後俺は荷物をまとめ出発する準備をしていた。

 同級生には家族がらみのことといい抜けてきたがあの二人にしつこく聞かれるのは確実だろう。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「それでは失礼します。急な来訪ですみませんでしたの」

 

「いえいえお気になさらず。これでもそういう対応には慣れていますので」

 

「斬夜しっかりと考えて決めるんだぞ!お前の人生が決まることかもしれないからな」

 

「分かりました。自分なりに考えて決めます」

 

 それぞれが手短に言葉を交わし俺とじいちゃんは黒塗りのリムジンに乗り込む。

 さすが元帥ともなるとこんな高級車まで引っ張ってくるのか。

 まさかリムジンで迎えにこられれるとは思ってなかったわ。

 てかこんなのに金使うならもっと有効に使おうぜ。

 

 ん?誰か乗っている?

 見た目は男だが線が細くヒョロッとした姿が印象的だ。

 白衣を来ているということは医者か科学者だろうか?

 

 ニヤリ

 

「…!?」

 

 目が合った瞬間男が不敵な笑みを浮かべてきた。そのとき俺はこれまでにないくらい嫌な予感がした。背筋がゾワリとするような全身の産毛が逆立つようなあらゆる嫌な予感が俺の体を駆け巡った。

 …え、何この感じ、何か寒いんだけど。今夏だよね?まだ本番じゃないけど一応夏だよね?冷房効きすぎてんのか?

 

 おぉ、流石リムジン。座り心地がめっちゃいいぞ。ふかふかだしかと言って柔らかすぎない丁度いい具合だ。

 ACのコックピットもこんな感じだったら良かったのにな。っと校長たちが手振ってるからこっちも振っとくか。

 さてさてこれから俺はどこへ連れていかれるのやら。

 提督にするって言ったって大本営くらいにしか行くところはないはずだ。

 適当に抜擢されたとか血縁だからとか言えばすぐにでもなれるはずなのにどこへ行こうというのか。

 

「じいちゃん一体どこに連れて行く気だ?」

 

「その前に斬夜、一つ聞きたいことがある」

 

「質問をしてるのはこっち―」

 

「お前さんは誰なんじゃ?」

 

「…」

 

 正直意表を突かれた。俺はこの世界に来てから『霧雨斬夜』を演じ続けてきた。

 ただの一般人として、そして一人の人間として。言葉遣いや仕草などは自然とこの体の主と同じようになるが性格や価値観などは変わってくる。

 体は霧雨斬夜であって中身は俺なのだから。

 

 だから俺はこの体の記憶を頼りに演じ続けた。

 何度か危うい場面はあったがそれでも中身が違うだなんて気づく奴なんていなかった。

 

 目の前の元帥だってそのはずだ。

 そもそも俺はこの人とそれほど関わってはいない。

 感づかれるようなことも何一つしていない。

 だというのにいきなりこれだ、驚かない方がおかしい。

 

 普段の行動でそんなことに気づくことはありえない。だとしたら誰かが教えたとしか思えない。

 でもそれはもう分かった。

 

 まさかこいつまで来てたとは思わなかったけどな。運命のいたずらってやつか?

 …何だろう自分で言って恥ずかしくなってきた。

 でもこれでさっきの嫌な予感の正体も分かったから良いとしよう。

 

「あんたの入れ知恵か、『主任』」

 

「あらら、バレちゃった~?もっと感動的で壮大に正体を明かそうと思ったのにネタバレはつまらないな~斬夜君」

 

 白衣を着た男『主任』はあっけらかんというが俺としてはそんなことよりもなんであんたがここにいるのか知りたい。

 てか何でじいちゃんと仲良くなってるみたいな感じなんだ…。

 あんた一体今度は何をする気なんだか…。

 

「何でよりによってあんたなんかがこの世界に来たんだか。もっとまともな人選があっただろう?」

 

「手厳しいね。これでもこっちに来てからは真面目に仕事してるんだよ?まぁそんな話はさておき、元帥これで分かっていただけたかな?」

 

「にわかに信じがたいが実際に目の前にしたら信じるしかないじゃろう」

 

 主任の印象が強すぎてすっかりじいさんの質問のことを忘れていた。

 でも今の会話で何となくは察しただろう。

 何か考え込んでる顔だし。

 

「すまんなじいさん、ずっと騙してて。俺としては斬夜として生きていければ良かったんだが流石にそんな甘いことは出来なかったか」

 

「ほほっ、構わんよ。お主が誰だとしても斬夜は斬夜じゃ。今までも、これからもそれは変わらんし変えるつもりもない。お前さんは血のつながった家族じゃよ」

 

 本当にこの人は器が広いな。

 こんな話されてもそんなすぐ信じる奴なんてそうそういないだろう。

 それにこんな俺でもまだ家族と言ってくれるのか。

 

「あれれ、まさか感動しちゃってる?」

 

「オーケーまずはそのふざけた面をぶっ飛ばしてやるよ。ちょうどいいし前の世界での分もやってやろうか」

 

「ごめんなさい調子に乗りました。だからその振りかぶった拳を下してくれるとおじさんうれしいなぁ!?」

 

「ほほっ、なんじゃお前さんたち聞いていた話じゃと敵同士だったというのにこんなにも仲がいいではないか」

 

 いやいやじいさんこれのどこが仲がいいって言うんだ?はたから見たら高校生が無抵抗のおっさんに殴りかかってる絵面だぞ。

 それにこいつに好き勝手させたら裏で何をしてるか分かったもんじゃない。

 でもあっちの世界よりかは確かに雰囲気が違う気がする。ふざけたところは相変わらずだがそれでも敵対の意思は感じない。

 

「すまない、少し取り乱した」

 

「んじゃまぁ、本題に入っても良いかな?」

 

「あぁ、問題ない」

 

「うんうん素直でいいね」

 

 言葉の所々にイラついてくるがここは耐えることにした。

 いちいち反応していたらこいつの思うつぼだろうし手玉に取られるのは気に食わない。

 

「まずなんで君に提督になってほしいか、そこから話そう。いいですよね元帥殿?」

 

「構わんよ。斬夜に用があったのはわしじゃなくお前さんなんじゃからの」

 

「ん?どういうことだ?」

 

「まぁまぁそう焦んない。今からそれを言うんだから」

 

 それもそうか、少し急ぎすぎたな。

 でもなんでじいさんじゃなく主任が俺に?

 また力を見せてみろ、なんてことを言う出すんじゃないだろうな。

 

 当然今の俺にそんなことは到底出来ない。ACがなければ俺はただの一般人にしか過ぎない俺には戦う力などない。対人戦ならまだいけるが深海棲艦が現れてから人間同士の戦争など一度も起こっていない。

 

 なら俺の戦闘能力としての価値は皆無といってもいいだろう。現代兵器が効かない深海棲艦に生身で勝てる人間などいないのだから。 

 

「君には深海棲艦と戦ってもらう」

 

「ゲホッ!?」

 

 こいつ自分の言っている意味が分かって言ってるのか?俺に死ねと言っているようなもんだ。

 なんだ俺に恨みでもあるのか?

 自分からふっかけてきたくせに逆恨みもほどほどにしてほしいな。

 

「俺に死ねってか?悪いがACがなけりゃ俺は戦えない」

「ならACの代わり(・・・・・・)になるものがあればいいんでしょ?」

 

「…あるのか?」

 

「あるとも言えるし、ないとも言える。まぁこれは君の返答次第だけどね。どうする?俺たちに協力してくれるなら話してあげるよ?」

 

 あるとも言えるしないとも言える、か。…何故そこで俺次第なのかは分からないが答えは決まっている。

 戦う力と場所があるなら俺は喜んで身を投じよう。それが俺の生き方なのだから。

 

「いいだろう。寧ろこっちから願いたいくらいだ」

 

「やっぱり君ならそう言ってくれると思ってたよ」

 

 御託はいいからさっさといってくれんかね。こちとら話の続きが気になって仕方がない。

 というか本当にそんなものを作ったのか?どうにもこいつは他人に掴ませるような奴じゃないからどうしてもうさん臭さが残る。

 

「それじゃこれからは一応軍事機密になるから他言無用でお願いね」

 

 

 

 ◇

 

 

 

「まず斬夜君、艦娘の艤装についてはどれくらい知ってる?」

 

「艦種ごとに決められた装備で戦艦なら大型の主砲、空母なら艦載機、駆逐艦なら魚雷とかか?」

 

「うん、一般知識としては十分だ。だがそれ以外に注目する点があるんだけど分かる?」

 

「?」

 

 他に何がある?艤装なんて史実にあったものが艦娘用になったくらいじゃないのか。

 それにそんなに艤装を展開してる姿なんて見ないんだからどうにも…

 

 ん?艤装の展開…そういえば小さい頃じいさんの鎮守府に行ったことがあったがあいつらはどこで装備している? 

 もし急な敵襲があった場合艤装を装備している暇などないはずだ。

 空爆で兵器庫が壊れることもあるだろうし何より駆逐艦ならまだしも戦艦の艤装のようなあんな巨大なものをそんなすぐに装備出来るわけがない。

 

 だとすれば……

 

「……艤装の即時展開?」

 

「その通り。艦娘は自分の艤装を自分の意思ですぐに出せる。これは今の技術じゃ到底無理なことだ。何せ物質が質量を残さず文字通り消えてるわけだからね。だけどね俺もこっちに来てそれなりに艦娘について研究してきたからねそしたら~」

 

「まさか……」

 

「そう作っちゃったんだよね~。人の手によって初めて艦娘と同じように出せる技術を、人が装備できる艤装を」

 

 さらっと言ってのける主任だがその有用性は計り知れないだろう。

 日々の生活から軍事的価値までありとあらゆるところにその技術が普及すれば世界は一変してしまう。

 

「あぁ勿論世間にこのことを公表する気はないから。めんどくさいし何よりこれは君のために作ったものだからね」

 

「俺の?」

 

「実は君がこの世界に俺と一緒に来ていたことは初めのうちから知っていたんだ。それで君がある程度育つまでは俺も人類のためにせっせと働いていたわけ」

 

「アンタらは人間が嫌いじゃないのか?」

 

 かつて俺のオペレーターをしていたこともあるキャロルを思い出す。

 今はいないが主任がいるということはあいつもいるんだろう。

 あいつは人間は愚かな存在といった。

 ならその仲間である主任もそう思っているのではないのかと俺は思った。

 

「いや~誤解されるような言い方だけど俺もキャロりん人間は嫌いじゃないさ。前にも言っただろう、愛してるって。俺たちの目的は人類の存続だ。ただその中にたまにいるんだよね例外(イレギュラー)ってやつが」

 

「俺のことか」

 

「そう。君や赤い鳥のような化け物みたいに強い人間ってやつ。本来そういうのはいちゃいけないってのが俺の上司、神様の考えなんだけどね、まぁそれも当然の考えっちゃそうなんだけどね。だってみんなでまとまって行動しようって時に一人だけ突っ走って周りを壊しちゃうような存在なんだからさ」

 

 ただ生きて命令されたとおりに生きているだけで始末される羽目になるとは俺も面倒なことに巻き込まれたもんだよ。

 

「それで俺を潰しにきてたと」

 

「そうそう。でもね君を見てると俺の中で考えが変わってきたんだよ。人ってのは負の感情に陥りやすい存在だ。だってなにかに抗うよりも諦めた方が楽なんだからそっちに行っちゃうんだよ。でもそれだけじゃ人類は停滞を迎えることになる。そんなとき新たな道を切り開くのが君のような存在だ。だから俺は君に興味を持った、この人間は一体どこまで行くんだろう、俺の予想を簡単に超えていくようなそんなことをしてくれる気がしてね」

 

「それがあんたの言う可能性ってやつか?」

 

「そうだね、人の持っている機械には分からないものそれを可能性っていうには十分だろう」

 

 なるほど。こいつらもただ殺していたわけじゃなかったのか。

 自分たちのわかる範囲で一番いい方法をしようとしてああなったと。

 

 それでもあのやり方はどうかと思うが。

 

「あんたの存在理由は分かった。それで話の続きは?」

 

「逸らしたのは君だったよね?まぁ言っておきたかったことだったからいいけどさ。んでさっきも言った通り俺らの目的は人類を守ることだ、そのために俺が出来ることはないかなって思いながら過ごしてたら軍に抜かれてね、今の俺は軍の医者でもあり兵装開発部の主任ともなったわけ」

 

「何でじいさんはこいつを選んだんだ?」

 

「わしは人を見る目には自信があるからの。主任のことは一目見て他とは違うと分かったんじゃよ」

 

 そんな曖昧な感覚で軍に入れてよかったのか…。ある意味爆弾みたいなもんだぞこいつは。

 

「わざわざ何で俺のために作ったんだ?軍にいる奴らに配備すれば深海棲艦に対抗できるじゃないか」

 

「君も分かってると思うけどこの技術は一歩間違えれば人間同士の争いの種になる。だから無暗に公表するわけにもいかないしそんなことをしたら本末転倒だ。だから俺は信頼できる君に託そうって思ったんだ。それに一つ作るだけでもすごい時間かかったんだよ」

 

「自分で使うってことは考えなかったのか?お前もそれなりには技量はあるだろう」

 

「流石に三つも掛け持ちするのはキツイよ。そんな非合理的なことをするより、俺が君のバックアップをして君は現地で戦う。こっちの方が合理的じゃないかな?」

 

 こいつも完全無欠ではないということか。

 

「あっ丁度良かった、そろそろ着くよ」

 

 そういえば思ったよりも長く話し込んでしまった。

 辺りを見回してみるとどこかの山に来ているようだ。

 空港の格納庫のよう建造物があるがあれが目的地だろうか。

 

「てっきり大本営にでも行くと思ってたんだがな。ここは一体なんだ?」

 

 外から気づかれにくいようにカモフラージュまでしてるとは無駄に厳重だな。

 

「ここは俺が使ってる仕事場だよ。アレの存在が誰かに知られたら大変だからねこうまでして隠さないといけないんだよ」

 

「それにしては他にも人はいるようだが?」

 

 主任と同じように白衣を着た男女やスス汚れた作業着を着ている男性。ここから見ただけでも20人はいるだろう。

 

「俺一人で作るのは流石に骨が折れるからね。彼らは俺が選んだ優秀な人たちだよ、だから情報が外に漏れることはないよ」

 

「ほう意外と信頼してるんだな」

 

「仕事ってのは信頼関係が大事だからね~」

 

 前の世界で警備隊長と言い争ってたような気がするが言わないでおこう。

 

「ささっ、入って入って」

 

 先ほどの光景とは変わって狭い場所だ。それに少し薄暗い。

 

「じゃそろそろお披露目と行こうか。斬夜君も気になってただろうし」

 

 遂に見れるのかACとは違う俺の新しい力が。

 不思議と気分が高揚してくる。

 やはり俺は戦うことが一番合っているらしい。

 

「それではご覧あれ!君の新たな力『八咫烏』を!」

 

 薄暗かったところからいきなり照明をつけらたもんだから思わず目を細めた。

 次第に慣れてきた視力が目の前にたたずんでいるモノを捉えた。

 

 現れたのは吸い込まれるような黒。

 ACとは違い全面を装甲で覆うのではなく部分的に装甲を展開し特に手や足に集中している。

 もはや艤装というよりかは鎧というべきだろう。

 決して無骨とは言えず、かといって華美過ぎない流麗さがあり俺は言葉が出なかった。

 感動していると言ってもいいだろう。

 

「言葉も出ないくらい驚いてるのかな?いや~作った甲斐があったもんだよ」

 

「これは中々のもんじゃの。よくここまで作ったものじゃ」

 

「なぁ主任これ武装はどうなってるんだ?艤装っていうもんだから砲塔でも付いてんのかと思ったんだが」

 

「ちゃんとあるよ艦娘とは違った装備が。あっちの世界での武器をもとにして作ってみたんだけどね流石にレーザーブレードやパルスガンを作るのは無理だったよ。それにライフルやバトルライフルだってまだ一丁くらいしかできてないんだよね」

 

 いやレーザーブレードは無理があるだろう。

 工場用のレーザーだってあそこまでの出力は出せないだろうしむしろそれ以外の者は作れることに驚いた。

 一体どれだけの時間を費やしたのか。

 

「そんなに大変だったのか?」

 

「いや武器は作ろうと思えば何とかなるけど八咫烏本体が大変だったのよね。艦娘にある『皮膚装甲(スキンバリア)』って分かるかな?敵の攻撃からある程度守ってくれるんだけどそれをこの八咫烏にも搭載しているんだ。といっても艦娘のすべてを知っているわけではないから完全な再現は無理だったけどね。せいぜい軽巡級の主砲一発か魚雷くらいしか耐えられないだろう」

 

 そんなものまで付けていたとは、こいつの技量は計り知れない。

 今まで人類ができなかったことを時間をかけているとはいえ限定的にでも使えるようにしているのだから。

 

「それになんといってもさっきも言った『即時展開』だ。一番時間がかかったのはここだね持ち主はただ念じればすぐに装備できるなんて破格の代物だろう?物質をないものといておけるんだから」

 

 確かにそうだ。ガレージなんかも必要ないし緊急時にすぐに使えるのは便利すぎる。

 それだけでこれが兵器として十分なスペックがあることを物語っている。

 

「さて斬夜君早速つけてくれないかな?君を登録しておかないと即時展開ができないからさ。君はただ立っているだけでいいよ。細かいところは俺がやっておくから」

 

「分かった」

 

 俺が指定された場所にいくとアームによって八咫烏が装着されていく。

 見た目は金属だというのに重さを全く感じない。これも主任が何かしたのだろうか。

 まぁそこまで考える必要もないか。

 

「ええっと、ここをこうしてこれを打ち込めばっと」

 

 主任がカタカタとキーボードを叩く音が響く。

 まさかこの世界でも戦うことになるとは思わなかった。

 つくづく俺は戦いからは切っても切れない縁らしい。

 

「はい終わりっと。これで八咫烏は君のものだ好きに使うといい。ついでだし少し動かしてみたら?」

「いいのか?」

 

「歩くとか握るとかそれくらいならここでも問題はないよ。君が考えればその通りに八咫烏は動いてくれるから何も難しいことはない」

 

 おぉ本当だ考えただけで動くし、ラグがほとんどない

 これほどスムーズに動くとは本当によくできているんだな。

 

 しかしこれ海に浮かぶのか?

 ACをもとにしてるなら問題はないだろうがもしものことを考えると不安になる。

 

「うんうんちゃんと動いてるねこれなら問題なさそうだ」

 

 満足そうにうなずいている主任だったが急に表情を変えて俺に聞いてきた。

 

「斬夜君、体に違和感とかない?」

 

「いや何も」

 

「ならいいんだけどさ、長時間それに乗ってると体にかかる負担が大きくなっちゃうんだよね。だからあんまり無茶はしないようにね」

 

「了解した」

 

 さすがにデメリットの一つはあったか。

 それくらいなら体を鍛えれば何とかなるだろう。

 これからは毎日トレーニングをしなければ。

 

「落ち着いてきたところで斬夜、これからのことじゃがお前さんには一週間後に鎮守府に行ってもらう。そこで艦娘たちと共闘し深海棲艦から人類を守ってほしい」

 

「構わない。元よりそのつもりだ。俺には戦うことくらいしか能がないからな」

 

「そんな風に自分を決めつけるでない、お前さんにはお前さんにしかないいいところもあるんじゃから」

 

「そうか、ありがとうじいさん」

 

 これからはもう普通の生活には戻れない。

 あの世界と似たようになるのかもしれない。

 それでも俺は依頼されたからにはそれをやり遂げなきゃならない。

 

 それが傭兵というものだ。

 

 

 

 




 途中から斬夜の喋り方が(じいちゃん→じいさん)若干変わっているのは主任が出てきて調子が狂わされたというか正体を明かされたからと思ってください。まぁ主任はどんな相手でもマイペースで自由だからね仕方ないね。(気にしない人は気にしなくていいです)
  
 それと八咫烏の見た目は大体は想像に任せますがVシリーズで表すなら

HEAD HF-227
CORE CB-209
ARMS Ar-M-W 48
LEGS LO3 FreQuency
ぽい感じだと思ってください。…うん、これ組み立てると流麗?ってなるけど気にしない方向で。

 また今回は大分長くなってしまいました。文がグチャグチャしていますが少しでも皆様が見やすいように努力していきます。



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