艦CORE 黒い鳥は海を舞う   作:紅月黒羽

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Chapter1 着任
第3話 鎮守府に到着


「さて、目的地には着いたわけだが…」

 

 長時間の移動で固まってしまった体をほぐしながら斬夜は隣にいる人物に目を向ける。

 その人物ははっきり言って一緒に居たくない人物だった。 

 というかここまでくる間にもずっと一緒だったので今更感もあるのだが。

 

「ん?何かな斬夜君、気になることがあるなら言っといた方がいいよ?」

 

「なら言わせてもらうが…何であんた主任まで一緒についてきてるんだよ!?」

 

「いやいや、ちょっとお手伝いをね!」

 

 いつぞやかに聞いたセリフと同じように明るく答える主任。

 ただし主任の言う手伝いと一般人が言う手伝いとは少し…いや大分意味合いが変わってくるのだが。

 それでも手伝う気はあるのだろう。現に斬夜に力を与えていることやこの世界の人類に協力していることからそれは明らかだ。

 

「手伝うったって今まで通りあそこで仕事してればいいんじゃないのか?」

 

「いやさ、現状君の艤装を整備できるのは俺だけだしあっちで何か作るにしてもいちいち持ってこないといけないじゃん?だったらそばに置いといて使えるようにしといた方がいいってのが俺と元帥の考えなんだよね」

 

 そう言われて斬夜は納得がいく。といっても渋々といった感じだが。

 まぁ言われてみればその通りだろう。

 

 ここ『横須賀第四鎮守府』から主任の仕事場までは距離がそれなり以上にある。

 運ぶのにも時間がかかるし、何よりコストもかかる。

 ならば少しでも安くでき尚且つ時間短縮できるのなら手元に置いておけばいいという判断だ。

 

 ちなみに聞いた話では第一鎮守府には無論元帥である荒谷が就いており、第二には将官のベテラン、第三には数年前に入ったばかりの若者が提督をしているらしい。

 

「にしても軍の建造物にしてはやけに綺麗じゃないか?」

 

「そりゃ出来たばっかりだからね。新しく誰かを着任させようとしてたらしんだけど中々決まらなくて、そこに元帥が君を入れたってわけ」

 

「中々決まらなかったねぇ…」

 

 どこか人為的な物を感じて斬夜は主任を軽く睨むがあっさりとそれを流されてしまう。

 この反応を見るからに恐らく最初からここに入れさせるつもりだったのであろう。

 そのために主任は前々から準備を重ねていたのだから。

 

「にしてもまぁ無駄に広いなここは」

 

 敷地内を歩きながら見渡すと造船用もしくはコンテナを運ぶためのものとみられるクレーンに、『燃料』『弾薬』『鋼材』『ボーキサイト』と書かれた巨大な倉庫、それから執務室がある本舎や艦娘たちの部屋がある宿舎などが建っている。

 ほかにも工廠があるがそれほど敷地は使っていないらしい。

 

 というかあの無駄に巨大なクレーンは意味があるのだろうか。

 艦娘は人とほぼ同じサイズだし鎮守府にはコンテナを積んだタンカーが来るはずなどない。というか入れない。

 だったらあのクレーンのある意味とは?と考えてしまうが昔の鎮守府をそのまま参考にして作ってしまったのかもしれないと考え納得することにした。

 

 「仮にも大勢の艦娘たちが住むわけだからね、そりゃ広くもなるさ。広ければそれだけ価値があるしもしもの時に使えるだろう?備えあれば憂いなしってやつだよ」

 

「もしものときってどんなときだよ?」

 

「そんなのそのときにならなきゃ分からないさ。そういうのをもしものときっていうんだからさ。それに今そんなことを考える必要はないさ、これから戦っていく中で備えていけばいいよ」

 

 主任の言うことは至極当然だった。

 今から先の分からないことに身構えて下手に不安を抱える必要などどこにもない。

 第一斬夜は提督にはなってもまだ実戦はしていない。

 ならばまずは目の前のことから順番に進めていくことの方が大事だ。

 

「にしてもこれだけ広いと俺も色々と自由にできそうだね。これなら多少は無茶なこともできるでしょ」

 

「基本的にはそっちに任せるがやりすぎるなよ」

 

「大丈夫だって~周りのことは考えてやるしさ、君たちには危ないことにはしないよ………多分」

 

「おい、今多分って言ったよな!?そこは嘘でも言いきっとけ!いや嘘でも困るけどさ!」

 

「だ、大丈夫だって。昔ほど無茶はしないしこっちに来てからこれでも落ち着いた方だし…」

 

 そういいながらも主任はどこか自信が無いようにに見える。

 恐らく自分のことを分かっているからこそ興味のひかれることや面白そうだと思ったことについ手を出してしまうかもと否定しきれないのだ。

 

 まぁそれが主任らしいところなので仕方ないといえば仕方がないことなのだろう。

 程度の差はあれども斬夜も胸が熱くなるような戦いだと周りのことが見えなくなってしまうのであまり強くも言えないのだが。

 

「いきなり鎮守府が汚染物質まみれとかやめてくれよ…」

 

「君の中で俺は一体どんな実験をしてるのかな!?」

 

「だってさぁ………ねぇ?」

 

「ねぇってなにさ!?俺だってまともなことはしてるんだよ!?ただちょっと発想が他より飛んでるだけでそれ以外はいたってまとも…」

 

「俺が心配しているのはそういうところなんだけどなぁ…」

 

 きっと大丈夫…いや絶対大丈夫だと信じよう、そういうことにした斬夜はまた歩みを始めた。

 その間にも主任は何か言っていたがどうせ聞いても不安が募るばかりなので出来るだけ無視していた。

 

 「そういえば先に待っている艦娘たちはどこにいるんだ?」

 

 事前の話では三人ほど艦娘が配備されるらしいがいまだそれらしい影を見ていない。

 何かトラブルでもあったのだろうか?

 それにしては何も連絡はない。

 やはり何かあったのではないかと元帥に連絡を取ろうとした斬夜だったが、本舎の入り口付近から一人の少女が駆け寄ってくる。

 

「貴方が今日からこちらに着任した提督ですね?私は軽巡洋艦の大淀です。こちらの案内を頼まれていたので、本舎で待っていたのですが何かありましたか?」

 

「え、そんな話聞いてたか主任?」

 

「い、いやー聞いてないと思うよ、うん。聞いてない聞いてない」

 

 何故か焦っている様子の主任。

 大淀が首をかしげているが主任の様子を見て斬夜は理解した。

 

「おい主任、正直に言ったら怒らないから言ってみ?」

 

「…ごめんね~、鎮守府に出るとき元帥から言われてたのさっき思い出したよ~」

 

「そうかそうか。まぁ、誰にでもミスはあるよな」

 

 笑いながら返事をする斬夜だったがその目は笑っていなかった。

 その瞳の中には静かに燃える冷たい炎のような何かが見えている。

 そして次の瞬間には斬夜から放たれた拳が主任の鳩尾に入っていた。これが素人の拳なら主任でも避けれただろう。

 しかし今目の前にいるのは戦いだけを経験してきたような男だ。

 当然その拳もそれなり以上に鍛えられているわけで。

 

「グハァ!?」

 

「次からは忘れないように頼む主任」

 

 ぽかんとした顔でその様子をん見ていた大淀。

 まぁ目の前で高校生がいきなり大人を目視すら危うい速度で殴ったらそんな顔にもなるだろう。

 

「あぁ、すまん。こっちの不手際だった」

 

「わ、分かりました。それよりもそちらの方を…」

 

「気にしなくていい、どうせすぐに復活するから」

 

「イタタ、全くさぁひどいよね~いきなり鳩尾狙ってくるなんてさぁ。おじさんの身には結構来るんだよ?」

 

 鳩尾をさすりながら立ち上がる主任。

 その言葉とは裏腹に表情は思ったよりも余裕を持っているように見える。

 

「そういえば自己紹介が遅れたな、俺は霧雨斬夜。で、こっちが開発なんかをしてる主任。これからよろしく頼む」

 

「こちらこそよろしくお願いします提督」

 

 愛想のいい笑顔で答えてくる大淀。

 聞いてみれば彼女は主に事務的な勤めが多く滅多に前線には出ないという。

 しかし決して能力が低いというわけではなくやろうと思えばできるらしい。

 

「それではもう一人待ってる方がいるのでその人と会ってから中の案内をしますね」

 

「すまない、俺らのせいで余計な時間を使わせたな…」

 

「気にしなくて大丈夫ですよ、私の役職的に待つのは慣れていますしもう一人の方も私と同じようなものですよ」

 

 彼女からしてみれば何気なく言っただけなのだろう。

 しかし自分たちの非をこれ以上咎めることをしないことに斬夜は感謝していた。

 もちろん軍に所属してるなら時間厳守など当然のことで、ましてやそれに遅れるなどもってのほかだ。

 普通なら当然許されるようなことではない。

 

「そういってくれると助かる。それでもう一人の艦娘はお前と同じように事務系を担当しているのか?」

 

「似ているといえば似ているのですが、彼女はこの先にある食堂で皆さんのご飯を作っているのですが戦闘には一切参加できないんです」

 

「なるほど」

 

 確かに似ているといえば似ている。

 というか例え前線に出たとしても食堂を経営しているならそんな暇はないだろう。

 

 艦娘たちは食事をしなくても『補給』さえ出来れば生きてはいける。

 しかしただ生きられれば良いというわけではなく、食事による士気の向上も馬鹿にはできず現在ではどの鎮守府でも食事をとっている。

 それ以前に荒谷が元帥についた当初からこれが行き渡ったわけだが恐らく人と同じように暮らしてほしいという思いでもあったのだろう。

 

「腹が減っては戦はできぬ、か」

 

 彼女たちは人と同じ見た目はしているが本質は兵器だ。

 人間以上の身体能力を持ちそれらによって深海棲艦を討つ。

 

 もちろん今では受け入れられているがそれまでの道のりは険しかっただろう。

 人の姿をしていながらも馴染めず、逆に恐れられていた程だ。

 自分たちがどれほど戦果を上げようとも認められるのは戦果だけで自分たちではない。

 当然その心は晴れやかというわけではなかっただろう。

 

 しかしそれらを振り払ったのが荒谷だ。

 元帥という立場でありながら公の場で自分たちと艦娘のことを真摯に話し続けた。

 どのようにして誕生するのかを、またどどんなふうに生きているのかを嘘偽りなく話し続けた。

 時には艦娘を同行させたりもした。

 最初はあまり良い目では見られていなかったがその熱心さが伝わったのか次第とそのわだかまりは消えていった。

 

 だからこそ彼女たちはこうして元気に生きていられる。

 自分たちの成してきたことが誰かに認められそれを次の活力にする。

 彼女たちにはそれが必要だったのだ。

 

 守ってきた者たちからの信用が。

 

「こちらが食堂です。提督たちもここで食事をとってくださいね.。艦娘たちとのコミュニケーションも重要な仕事ですから」

 

「分かった」

 

 しかし返事をしたものの全くできる気がしない。

 これから艦娘たちが増えていく中でわざわざ人付き合いが悪く、ぶっきらぼうな自分がそんなことをする必要があるのか、それ以前に意思疎通ができるのか、そればかりが気がかりである。

 

「それでは入りますね」

 

 大淀が扉を開けるとそこは大きな食堂だった。

 いや、まぁ仮にも艦娘が使用するのだから広くなるのは必然なのだが思っていた以上に広かったのだ。

 そんなことを考えていると割烹着を着た、おしとやかな雰囲気を感じさせる女性がいた。

 

「初めまして提督、給糧艦の間宮です。甘いものが食べたくなったらぜひ私のところまで来てくださいね」

 

「こちらこそ、これからよろしく頼む。ところで食堂を経営していると聞いていたが甘味類も作れるのか?」

 

「はい、和洋折衷何でも作れますよ。あ、でもあまり大きいものは作ったことがないのでそこは自信がないのですが」

 

「すごいな…全く驚異的だ」

 

「えっ?」

 

 他からしたらよく分からないところで感動しているようにしか見えないが斬夜からしてみれば十分に尊敬に値することだったのだろう。

 斬夜自身それなり以上に料理は作れるが和洋折衷さらには甘味類何でもとまで作るのは出来ないからだ。

 なまじそういう趣味を持ってしまったからこその感動とも言えるがいずれにしても斬夜には関係ないことだ。

 

「ぜひ俺にも教えてほしい。もちろん手の空いているときで構わない、だから俺に間宮の料理を教えてくれないか?」

 

 斬夜に料理を教える分としては間宮も断る理由が無い。

 むしろ料理をすることが好きな人から教えてほしいと頼まれ嬉しいくらいだった。

 

「えぇ、勿論いいですよ」

 

「ありがとう、恩に着るよ」

 

「ふふっ、私も誰かとお料理をするのは楽しいですから」

 

 それからはお互い和やかな雰囲気で雑談をしている。

 やはり料理人(斬夜は趣味でだが)同士が会うと自然とこういう流れになるのだろう。

 大淀はこれからの執務に支障が出ないかと少しばかり気に病んでいて、主任はこれが本当にあの『黒い鳥』なのかと今更ながら疑ってしまった。

 

「それにしても三人目が見えないがどこにいるんだ?」

 

 これまでに大淀、間宮、二人に会ったわけだが未だに三人目が見えない。

 何故間宮と一緒じゃないのかと聞こうとしたがその時近くの場所で耳をつんざくような爆発音がした。

 

「敵襲か!?」

 

 突然の事態に驚く斬夜に比べて他のメンバーはそれほど驚いていないようだ。

 それどころか大淀は呆れたような顔をしていた。

 

「いえ、違うと思います…多分もう一人の艦娘が…」

 

「そ、そうなのか?取り敢えず爆発音がした方に行ってみるぞ」

 

 誰も異議は唱えず確認に行くことにしたが大淀がため息をつきながら疲れたような顔していた。

 

「また余計な出費が…もう少しきつく言わないと」

 

 どうやら斬夜たちが来る前から色々とあったようだ。 

 何があったのか気になったが今はもう一人の艦娘のところに行くことを最優先にし現場に急ぐことにした。

 




 
 最近艦これしてないなぁ

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