艦CORE 黒い鳥は海を舞う   作:紅月黒羽

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第4話 失敗は成功のもと

「にしてもかなりデカい音がしたが大丈夫なのか?」

 

 俺たちは今爆発があった方向、つまり工廠に向かっているわけだがどうやらそこに三人目の艦娘がいるらしい。

 怪我、で済めばいいのだが爆発音が大きかったので重症の可能性もある。

 

「大丈夫だと思いますよ。あの娘何度も同じことを繰り返しているので、心配する必要もないですよ」

 

 かなり辛辣なことを言うな大淀は。

 艦娘は確かに強い、だがそれはあくまで人間よりかはということでその見た目から分かるように基本的な部分は人間と変わらない。

 

 刃物で切られれば血も流れるし、強い衝撃が加われば骨だって折れる。

 それも修復―というか風呂、に入れば治るという謎の技術を持ってすればすぐにでも治療されるが。

 

「そんなことよりも施設の状況を確認するのが優先かと。重要なものも幾つかありますしそれらが壊れてたら目も当てられません」

 

 人命よりも道具優先ですか貴女は。

 しかしその三人目も重要なことには変わりない。

 大淀から見たらどうでもいい、という感じなのかもしれないがいきなり鎮守府に来て戦闘が始まる前から死人が出るなんてたまったもんじゃない。

 

「何か……不憫だなその娘」

 

 俺も途中からはこき使われるように戦わされたからな、どこかもう一人の艦娘に同情のような気持ちが生まれてしまう。

 ロザリィはそういう性格だったから違和感がなかったがフランがあそこまで変わるとは思っていなかったな。

 あんなに強い娘に育つとは戦場というものはやはり何が起こるか分からないから面白い。

 

「しかし彼女もアレで鎮守府には欠かせない存在なので無事でいてもらわなくては困りますが」

 

「大淀さん、気持ちは分かりますがちょっと言いすぎじゃないですか?」

 

 間宮が擁護するように言うが依然として大淀の顔は不機嫌そうである。

 大淀は何事にも真面目そうな感じだから勝手なことをするのが許せないのかもしれない。

 

 真面目なのは良いことなんだが思いつめすぎないようにしてほしい。

 大淀の仕事は戦闘には出ないものの重要なことには変わりないし書類類ということもあり量も多い。

 一人で考え過ぎず誰でもいいから相談するなりしなければいずれ体に限界が来てしまうだろう。

 

(まぁ大淀なら自分のこと分かってそうだし、そこの所も大丈夫だとは思うが)

 

「はぁ……私も少し大人げなかったです。何度もこのようなことがあったのでつい苛立ってしまいました」

 

「ここに来る前からこんなことがあったのか?」

 

「えぇ、鎮守府に来る前は大本営の開発部で手伝いをしていたのですが─」

 

「あー、あの子か。それならまぁ大淀ちゃんの気持ちも分かるかな~」

 

「知ってるのか主任?」

 

 知ってるなら早めに教えてほしかったが元帥から言われたことすら忘れたヤツだ、自分が担当していた所で居た人物なんて覚えていないのだろう。

 

 本当にコイツはいい加減だ。

 いつも適当なことばかり言ってその場の流れに身を任せるようなヤツなのに一度本気になると誰が何と言おうと絶対に曲げないくせに。

 

「知ってるというか覚えている程度だけどね。彼女よくうちで手伝ってくれてたし。あ、でも中々面白い発想をしていたのは覚えてるよ。時々俺に色々見せに来てたからさ、たまに話したりもしたんだよ」

 

 主任が面白いって言うことは絶対どこか吹っ飛んでるってことじゃないのか……?

 しかも開発部にいたってことは場所と物さえあればやりかねないんじゃ……。

 

「まぁ、ほとんど失敗続きだったけどね。それでも彼女諦めずにやってたからさ止めるのも悪いかなって」

 

「そのせいで余計な支出をしなければならなかったんですけどね」

 

 何故だろう、どこか安心している自分がいる。

 主任と同じ匂いがするがそこは大淀が何とかしてくれるだろう。

 じゃなきゃ俺が面倒ではすまない奴らを二人同時に相手しなければいけなくなる。

 

(主任が二人とか勘弁してくれ……)

 

「ほら進化には多少の犠牲は付き物でしょ?あれくらい大丈夫だって。それに一応予算内には納めてたから大淀ちゃんも文句はないでしょ?」

 

「それはそうですが愚痴の一つくらい溢したくなりますよ」

 

 むしろ愚痴の一つで済むのが驚きなのだが。

 よく主任が二人いるような状態で今までの耐えてきたな。

 俺だったら両手パイルで速攻で潰しにいくんだがな。

 

「お二人ともそろそろ工廠に着きますよ」

 

「あぁ、もうこんな近くまで来てたのか」

 

 主任と大淀の話を聞いていたらいつの間にか工廠の目の前まで来ていた。

 未だ煙は消えていないがそれほど大きな損害は見られない。

 部品や工具は爆発により吹き飛んで散らかっているがこの様子なら中にいる艦娘は無事だろう。

 

「大丈夫ですかー大丈夫だったら返事をしてくださーい」

 

「アイタタタッ……あちゃーまたやらかしちゃったな、大淀に何て言おう……」

 

 俺たちから少し離れた場所から煤まみれになった少女が瓦礫の下から出てきた。

 髪の毛は綺麗な桃色で服装は大淀と同じような制服を着ているが大淀は落ち着いた雰囲気を持っていたがこちらは 無邪気なそんな子供っぽい雰囲気を持っていた。

 

 というか弁明の余地はないと思うんだが。

 既に大淀が説教タイムに入りそうな勢いなんだけど。

 

「明石さん、ご無事そうで何よりです」

 

 間宮に明石と呼ばれた少女は服についた煤を手で払いながらこちらに振り向いた。 

 

「相変わらず開発熱心だね~。ま、俺も人のことは言えないけどね、ギャハハハッ!」

 

「あっ、間宮さんに主任さん!いやーご心配を掛けて申し訳ないです。つい熱中してたらこんなことに」

 

「こんなことではすまないのですが、明石?」

 

「ゲッ、大淀!?」

 

「少しお話をしましょうか」

 

 あからさまに嫌な反応をしたな明石。

 安心しろ、骨は拾ってやる。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「全く、これに懲りたらもうこんなことはしないでください!でなければ開発もさせません!」

 

「分かった、分かったって。もう、大淀はすぐ怒るんだから」

 

 こいつこの惨状を作ったのが自分だってことに気づいてないのか?

 工廠の中だけで済んだのが幸いだがこれ以上の被害があったらと思うと頭が痛い。

 

 何故に鎮守府に来て最初の仕事が勝手にやった事故始末になるんだ。

 そんなのはこちらから願い下げだがこういうことの管理をするのも大淀の仕事らしい。

 

「その原因が自分だということは自覚してるんですか?」

 

「してるってば!だからこれからも開発はさせてよお願い!」

 

 余計な一言を付けたせいでまた大淀の説教が始まりそうだったので流石にマズいと感じた明石が頭を下げている。

 じっと見つめる大淀だが根気負けしたのか大淀の方から引いていった。

 

「まぁ貴女がいなければ鎮守府が成り立ちませんからね。これからはしっかりとやってくださいね、明石?」

 

「もちろん!そのための私だからね、自分の仕事はきちんとこなすよ」

 

 調子のいいことを言ってるが大丈夫か?

 主任よりかは信用できるがこいつもこいつで危なっかしく感じる。

 唯一の救いは主任と違って悪意がないところか。

 こいつはただ自分が作りたいと思ったらだが、主任の場合それとは別の思惑があるのだから性質が悪い。

 

「それがずっと続けばいいんですけどね。それと新しい提督が着任したので挨拶くらいはしてください」

 

 大淀が手を俺の方に向けて軽い紹介をしてくれた。

 そういえば自己紹介すらしてなかったのか、まぁ工廠に着た瞬間から慌ただしかったからな仕方ないか

 

「そちらが新しい提督なんですね。初めまして工作艦の明石です。色々あって紹介が遅れましたがどうぞよろしくお願いします」

 

「今日から着任した霧雨斬夜だ。創作意欲が盛んでいいじゃないか、これからもその意気で頼む」

 

「はい!お任せください!」

 

 そんなことを言ったらまた何かしでかしますよと大淀に言われたがそれはそれ。

 失敗があって成功があるのだから多少のことは目をつむることにした。

 それに下手に口出しして彼女の芽を潰してしまうのはもったいなさすぎる。

 

「あっそうだ!妖精さんたちが無事か確かめないと」

 

 言われてみればそうだ。

 本来なくてはならない存在の『妖精』たちの姿が見えていない。

 

 妖精というのは小さい頃にじいさんの鎮守府にいったときに教えられたが今でも謎が多いという生命体。

 人語を理解し、多少かたことではあるが意思疏通ができ、こちらが資材を出せば気まぐれではあるが艦娘を建造してくれる。

 開発も同じように妖精が主となって行うがそこに明石が出てくるというわけだ。

 

 彼女はその能力を発揮するため自分自身の力で武器を作っているが妖精たちと共同で行うことにより質も量も上がるという一石二鳥になるのだ。

 更に元々明石は今までの会話からするに発想力が豊かだ。

その部分を伸ばすために妖精からも教えてもらっていることも多いという。

 

「イッテェ~全ク、明石ノ嬢チャンノ開発二付キ合ウトイツモコウナルナ」

 

「仕方ナイジャナイデスカ、技術ナンテ一回、二回ジャ覚エラレルワケナインデスカラ」

 

「ソウソウ。ソレニ、何ダカンダデソレニ付キ合ウ、オヤジモオヤジダヨ」

 

「仕方ネェダロ、アンナ熱心二ヤッテルノヲ見チマウト断ルニ断レネェシ」

 

「「ソウイウ所甘イ」」ッスヨネー」デスヨネー」

 

「ウルセェ!!」

 

 おぉう、何かキャラの濃い妖精が出てきたな。

 スパナやレンチ、それにあれは、バーナーか、とりあえず色んな工具を持っているのが分かる。

 

 オヤジって呼ばれてるしリーダー的な何かだろうか?

 喋り方がそれっぽいし多分そうなのだろうがあの見た目であんな風に喋られると違和感しかないんだが。

 

「妖精さん無事でしたか!」

 

「オウ、今回ハ少シ焦ッタガ見テノトオリ皆無事ダ」

 

「流石二ズットコンナ調子ダシ、私タチモ慣レテキチャッタンジャナイデスカネ」

 

「ソリャソウダ。ナンセ失敗バッカダモンナ明石チャンハ」

 

「もう、それは言わないでくださいよ~。私だってまともなものなら作れるんですからね」

 

 心外とばかりに言う明石だがそれってまともなものは殆ど作らないってことじゃないのか?

 それにこの工廠の様子を見てそれを言われても説得力が全くないしな。

 

「えっとまぁ、これでここに来た艦娘たちは全員そろったよな。挨拶も済ませたし次はどうするんだ大淀?」

 

 本来なら挨拶を済ませ大淀から俺の仕事の説明がされていたと思うのだが俺らの手違いと明石のせいで色々とずれてしまった。

なのでこれからの予定を大淀に尋ねた。

 

「そうですねここ(工廠)まで来たのなら建造をしておきたいのですが、妖精さん出来ますか?」

 

「スグニハ無理ダナ。邪魔ナモノガ多イカラ片ヅケル時間ヲ少シクレルッテナラデキルゾ」

 

「うっ……すみませんでした……」

 

まぁ、こんな散らかってる状態じゃすぐにはできないよな。

工具は飛び散っているわ、瓦礫があるわでこれでは妖精も作業に集中できないだろう。

それでも量はそれほど多くはないのでこの場にいる奴らが手伝えばすぐに終わるだろう。

 

「よし、じゃあさっさとやって終わらせるか。どちらにしろこんな状態で新しい艦娘なんて迎えられないしな」

 

 そうだ、どちらにせよいつかはやらなければならないことだ。

 ならばそれをいつやろうと関係ない。

 それに俺は先にやって後で楽をしたいんだ、だから次々と提督としての仕事をやらなければいずれ自分自身をつぶしかねないだろう。 

 

「肉体労働は苦手なんだけどね~」

 

「ぼやくな主任。これよりもハードなことなんて幾らでもあっただろ」

 

「いやだってこんな体だよ?ひょろひょろだよ?ろくに手伝えることなんて無いよ」

 

 確かに主任の体ははっきり言って細い、それも痩せすぎているほどに。

 その見た目で何故そんなに元気そうなのかこちらが不思議に思ってしまうが、どうせ主任だからと言ってしまえば納得してしまう。

 

「口を動かすなら手を動かせ。工具くらいなら持てるだろう?じゃなきゃ開発なんてできないしな」

 

「はいはい、分かったよ。で、妖精さんこれはどこに置けばいいかな?」

 

「ソレハダナ……」

 

 素直に動いてくれれば仕事をしっかりするのが主任だ。

 それでも不安要素は多いがそれがもたらす利益を考えればどうということはない。

 精々こちらは主任の力を有効に使わせてもらうだけだ。

 

『そうだね、人の持っている機械には分からないものそれを可能性っていうには十分だろう』

 

 可能性か……

 

『戦いこそが人間の可能性なのかもしれん』

 

『証明してみせよう、貴様にはそれが出来るはずだ』

 

 ……まぁ人並みには扱ってやるさ。

 




 次回は今回よりも投稿が遅れるかもしれません。そろそろ別作品の方も書かなければなりませんので。
 それと今回は淡々と進んでいってしまいましたがこうした方が良いなどのアドバイスがあればぜひお願いします。

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