「これで…ラストォ!!」
南極の水中ステージで、ビームサーベルを手にしたアザレア・カスタムがそれをサンダーボルト版グラブロの頭部に突き立てる。
「うわああ!?ベスト4に進出した俺がこのセリフだけで退場!?」
どこかメタな発言をしたが、愛機の爆発に飲みこまれていく。
そして、2本のビームサーベルを利用して水上へと飛び出したアザレア・カスタムは氷上に着地し、そこまで待っていたバルバトスと騎士ガンダムにハイタッチする。
(準決勝第2試合、勝者は彩渡商店街ガンプラチーム!!これで、リージョンカップ頂点は佐成メカニクスと彩渡商店街ガンプラチームの2チームに絞られましたーー!!)
「やったーー!!次勝てばジャパンカップだー!!」
準決勝が終わり、控室に戻ったミサは嬉しそうにジュースを飲む。
勇太との戦いの後、自信を取り戻したミサの動きは格段に良くなった。
3回戦ではロボ太に誤射してしまったときと同じような状況が発生したが、その時はレールガンでピンポイントに敵モビルスーツの頭部を撃破することに成功した。
「うかれんなよ。決勝の相手はあいつらだ」
MCであるハルが言っていたように、決勝戦で戦うのはウルチとモチヅキがいる佐成メカニクスだ。
いずれのバトルも圧倒的な火力によって勝利を収めてきた。
それ故に、こういうチームとのバトルでは一発でも当たれば終わり、ということになる。
「ま、シャアが言ってただろ?当たらなければどうということはないって。ま、どうにかなるさ」
「むー…カドマツめ、自分はバトルしないのをいいことに…」
言うのは簡単ではあるが、実際に攻撃を回避するのは難しい。
数回の戦闘で軽く敵の攻撃をよけられるようになったアムロやフリットとは違って、自分たちは一般人だ。
勇太自身も、あれだけの動きができるようになったのは勇武との特訓という大きな下地があったからこそ。
「決勝戦まであと1時間。調整はできそうだ…」
ウォーターゼリーを飲んだ勇太はさっそく決勝戦のためにバルバトスの調整を始める。
スラスターの動きを再確認し、更に関節部分にはグリスを縫って滑らかにする。
「どうやら、やる気は満々ってところだな」
「だったら、私も!ロボ太!」
ミサとロボ太も勇太と一緒にそれぞれのガンプラの調整を始める。
となると、年長者であるカドマツも動き出さざるを得ない。
ノートパソコンでアセンブルシステムの調整をはじめ、こちらとしても勝てるだけの準備をすることにした。
(俺にはあいつらほどガンプラを動かす力はないが、こういうことなら負けはしねえ!勝負だ…モチヅキ!)
ライバルである彼女への闘志を燃やしながら、カドマツはキーボードを叩いた。
「みなさん、お待たせしましたーー!リージョンカップ決勝戦をお送りいたします!なお、決勝戦では特別ゲストとしてミスターガンプラにお越しいただいておりまーす!」
「よろしくぅ!」
ミスターガンプラと呼ばれたアフロヘアーとアロハシャツ姿の男性がハイテンションな様子であいさつをする。
彼はガンプラバトルでは史上初となるプロのファイターとして一世を風靡したレジェンドであり、8年前に引退してからはこうしてガンプラバトルの面白さを伝える日々を送っている。
なお、引退した理由はいまだに不明で、本人は病気になったから、だの神様からのお告げだの、ちょっと行方不明になったアムロの思念に導かれた、だのいろいろと訳の分からない理由をペラペラ話しているため、誰も真相を聞く気にならなくなった。
「ミスターガンプラ…兄さんがあこがれていた人…」
「ミスターガンプラが見てる…こうなったら全力で戦わないと!!」
ミサががぜんやる気になった一方で、勇太は兄があこがれていた男をこうして肉眼で見れたことを静かに喜んでいた。
それだけでも、勇武がいる場所に近づけたという実感がわいたためだ。
ミスターガンプラを見て、動きを止めている勇太の腕をロボ太が引っ張る。
「…ごめん、すぐ行くよ」
しかし、今は感傷に浸っている場合ではない。
目の前にいるライバルを撃破しなければ、ここよりも先にある、ミサが目指している場所であり、兄が目指した場所へたどり着くことができない。
ゆっくりだとしても、一歩一歩着実に、確かに進んでいく。
何のために、そしてどこへ進むのかという意思を確かにして。
勇太は走っていき、シミュレーターの前でウルチと対峙する。
「あれ…?ほかの選手は…?」
なぜウルチ1人しか出ていないのか気になりながら、ミサはきょろきょろし始める。
ウルチのいつも通りのけだるげな様子を見てわかるように、今回出撃するのはウルチ1人のようだ。
「…ということは…」
「ちぃーす…。ま、恨みはないけど、負けたら負けたで姐さんがうるさいからさ…本気でぶつかるよ」
最後の一言の瞬間、ウルチの目つきが変わり、鋭い眼光が3人を襲う。
(い、今のは…!?)
「じゃ、そーいうことで」
しかし、それを見せたのは一瞬だけで、疲れた表情を見せたウルチはそのままシミュレーターの中に入ってしまう。
「お、あの目になったなぁ…。ってことは、今回のウルチは相当やる気ってことだ!こりゃあ私たちの勝ちだなぁ!残念、カドマツぅ!」
ウルチがあのような目つきになるのはモチヅキにとって、かなり珍しいことだ。
だが、その目つきになった後のウルチが試合で負けたことがない。
いずれも圧倒的な勝利を見せつけている。
彼女にとって、それは勝利フラグだ。
それが勇太たちに通用するかどうかはいまだにわからないが…。
「それでは、リージョンカップ決勝戦を開始しまーす!!」
「両者ともに、思う存分戦ってくれ!!ガンプラバトル、レディー…ゴーーーー!!」
「沢村勇太、バルバトス、出るよ」
「井川美沙、アザレア、行きまーす!!」
「ロボ太、騎士ガンダム、出撃する!」
彩渡商店街ガンプラチームのガンプラが一斉に出撃し、ヒマラヤ山脈へ降り立つ。
猛吹雪のせいか、視界の多くが封じられており、頼りになるのは熱源・音響センサーだ。
「ミサ、敵はどこにいる?」
「ええっと、相手は…え!?」
急に熱源反応をキャッチし、アザレアのメインカメラを上空へ向ける。
「まずい…みんな、離れてぇ!!」
3機は別々の方向へ飛んでいき、3人がいた場所には大出力のメガ粒子砲が突き刺さる。
上空にはアプサラスⅡの姿があり、その巨体をミノフスキー・クラフトによって空中に浮かべていた。
「なんと佐成メカニクス、満を持してモビルアーマーを投入してきましたー!」
モビルアーマーはルール上、1機でしか出撃することができない。
そのため、かなり作りこみをした上にファイターの技量が高くなければ、とてもでないが扱いにくい。
それに、そういうタイプの機体は登場した後は対策されるのが常であり、出すとしたらこのような大一番の時が多い。
「どうやら、アプサラスⅡベースのモビルアーマーみたいだね。メガ粒子砲にミノフスキー・クラフトによる衝撃波、どれもモビルスーツにとっては脅威となる威力だ」
「そんなモビルアーマーに対しては、どのように戦えばよろしいのでしょう?」
「セオリーとしては、機動性を生かしてかく乱し、もろい部分を攻撃すればいい。デンドロビウムのむき出しのIフィールド・ジェネレーターを破壊してチャンスを作るみたいにね」
ハルとミスターによる実況が行われる中、勇太は破砕砲の照準をアプサラスⅡの頭部に向ける。
「その武器は危険すぎる!まずはそれを…!」
「それは撃たせないっすよ!」
破砕砲の破壊力を理解していたウルチはアプサラスⅡの前方の装甲を展開し、ビームガン2丁を装備した2本のマニピュレーターを出す。
そして、その2丁から放たれるビームの雨がバルバトスを襲う。
「主殿!!」
バルバトスの前に立った騎士ガンダムがシールドでビームガンを受け止める。
そして、アプサラスⅡの攻撃を阻止しようとミサはレールガンを向ける。
「破砕砲だけじゃあないよ!」
レールガンのT字型の質量弾がアプサラスⅡに向けて発射される。
速度は速いが、直線的なその弾道を見たウルチを笑みを浮かべ、アプサラスⅡの左サイドの搭載されている複数のサブスラスターを展開し、大きく横に避けた。
「ええ!?避けたぁ!?」
「姐さんが作ったアプサラスは…ただのアプサラスなんかじゃないってことっすよー!」
ミサのレールガンによる攻撃を回避し、勇太に向けてビームガンを連射し続けている間にアプサラスⅡのメガ粒子砲のチャージが完了、そのまま発射する。
「くそ…!」
破砕砲を手放した勇太はメガ粒子砲をよけると、バックパックにあるソードメイスを手にする。
そして、両足のビームガトリングガンを残弾を気にせずにアプサラスⅡに向けて撃ちまくる。
しかし、アプサラスⅡは今度は避けずにそのビームの雨を受け止める。
ビームを受けた緑色の装甲は一瞬赤く焼けた後で、元通りに戻ってしまった。
「アプサラスⅢの対ビームコーティングか…!」
目の前にいるアプサラスⅡがまるで別の何かに見えてきてしまう。
ビームガンを手にしたマニピュレーターを隠し、対ビームコーティングでビームを防ぎ、おまけに各部に追加したサブスラスターによって高まった運動性。
火力だけが取り柄と思い、どこか高をくくっていたのではないかと思った勇太はそのうかつさを恥じた。
「となると、あとはこれか!」
可能な限り接近し、ソードメイスの重い一撃を叩き込む。
阿頼耶識システムによって、より高い反応速度とプログラムに頼らない動きが可能になっているバルバトスであれば、不可能ではない。
「ハアアアア!!」
「こいつ…!」
跳躍し、そのままスラスターを全開にして上昇するバルバトスを見て、驚いたウルチはメガ粒子砲をゆっくりとバルバトスにむけて変えつつ、牽制のためにビームガンを連射する。
「主殿!!」
「援護するよ、ロボ太!!」
「任せたぞ、ミサ!!」
アサルトライフルを手にし、アプサラスⅡに向けて連射するミサに合わせて、ロボ太も上空へ向けて飛んでいく。
「どうだカドマツ!?こいつは当たるとどれも必殺級だぞー?」
自らが作ったアプサラスⅡに感動を覚えながら、モチヅキはカドマツに自慢する。
「何言ってやがる?昔から言うだろ?当たらなければどうということはない…てよぉ」
「ということは、当たるとどうにかなっちゃうってことだろぉ?」
「全部よけたらぁ」
自分たちがバトルをしているわけでもないのに、カドマツとモチヅキがお互いに張り合う。
そんな彼らの会話はダイレクトに勇太たちの通信にも聞こえており、それによって集中力がそがれたのか、ミサのアサルトライフルの弾丸がバルバトスをかすめる。
「あああ!!もう、カドマツ!!あんた見てるだけでしょーが!」
「姐さん、気が散るんでちょっと静かに!」
ビーミガンの弾が切れ、Eパックを交換させながらアプサラスを後ろに下げていくが、それでもバルバトスは追いかけ続けている。
すべてはこのソードメイスを叩き込むために。
やむなく、チャージが完了したメガ粒子砲の発射準備に入る。
「ぶっぱなす!!」
「ぶっ放される前に!!」
メガ粒子砲が発射されるかされないかというタイミングで勇太はソードメイスを投げつける。
ソードメイスはメガ粒子砲のビームをあろうことか真っ二つに切り裂きながらアプサラスⅡに向けて飛んでいく。
「んな…!?カドマツ、なんでビームが切れるんだよぉ!?」
モチヅキはどういうことだとびっくりしながら、ソードメイスを見る。
それは青いオーラを宿していて、バルバトスも同じように青く光っている。
「あれは…」
オーラを宿したバルバトスを見たミスターの動きが止まる。
あの青い光を見た瞬間、それに魅入られ、そして胸が熱くなっていくのを感じる。
何年も前から感じられなくなった、あの懐かしい熱がよみがえってくる。
「隙ありぃ!!」
ソードメイスが命中し、メガ粒子砲が機能停止となると、ロボ太がナイトソードで直接攻撃を仕掛ける。
刃が装甲を貫き、サブスラスターをつぶしていく。
「くっそぉ!!」
ソードメイスが突き刺さり、警報音が鳴り響く中でウルチはミノフスキー・クラフトの出力を高める。
瞬間的に高まったことにより、強烈な衝撃波が勇太とロボ太を襲う。
「ぐ…うわああ!?」
「うわあああ!!」
「勇太君、ロボ太!!」
衝撃波を受け、落下した2機にミサが駆け寄る。
覚醒しているためか、ダメージが軽減されているバルバトスはゆっくり起き上がったが、ロボ太の場合は強い衝撃によって右腕が破壊されてしまっていた。
「くっそーーー!ウルチぃ!こうなったら、奥の手だぁ!!」
「何!?まだあるのかよ!?」
「仕方ないっすね…まだ負けるわけにはいかないっすからぁ!」
一瞬強い光を発したアプサラスⅡが爆発し、装甲がはじけ飛んでいく。
「え、何々!?自爆!?」
「違う…あれは…」
覚醒したバルバトスのメインカメラが光りの中に現れる1機のモビルスーツ、正確に言うとアプサラスⅡの中にあったモビルスーツの姿をとらえていた。
アプサラスⅡと同じ色彩で、頭部がアプサラスⅡと同じザクⅡのものとなっている、サイサリス。
地球連邦軍で初めて、戦術核を搭載したガンダムだ。
右手にはすでにアトミックバズーカが握られていて、ラジエーターシールドによる自機への防御の準備もすでに完了している。
「隠し玉っていうのは、最後の最後まで隠しておくものだぞー、カドマツー」
「ぐうう…」
あれから発射される核は1発しか打てないものの、威力はサテライトキャノン以上の威力を誇り、ナノラミネートアーマーのモビルスーツですら消滅してしまう。
誘導性のなさをどうにかして、相手を射程圏内に追い込み、発射のチャンスをつかむことができれば、まさに最強の武器と言える。
そして、そのあとの戦闘のことは考えなくてよくなる。
このアトミックバズーカの攻撃範囲の中にいる敵はすべて消し飛んでしまうからだ。
「この勝負…」
「私たちの勝ちっすよぉ!!」
上空で浮遊するサイサリスのアトミックバズーカから弾頭が発射され、ヒマラヤ山脈の一画が白い光に包まれていった。
機体名:サイサリスS
形式番号:RX-78GP02AS
使用プレイヤー:宇留地環奈
使用パーツ
射撃武器:アトミック・バズーカ
格闘武器:ビームサーベル(サイサリス)
シールド:ラジエーターシールド
頭部:アプサラスⅡ
胴体:サイサリス
バックパック:サイサリス
腕:サイサリス
足:サイサリス
リージョンカップ決勝戦に登場したアプサラスⅡのコアユニットであり、最大の隠し玉となっていたモビルスーツ。
アプサラスⅡに格納されている間はそれに内蔵されているビームガンを使用して、周囲の砲台やミサイルからアプサラスⅡの防御を行う。
また、本編では行われていなかったが、ネオ・ジオングのコアユニットとなったシナンジュのように、そのままビームサーベルで格闘戦を行うことができる。
一番の特徴はアトミック・バズーカで、1度の試合で1発しか発射できないという大きなデメリットがあるものの、爆発に巻き込まれたら消滅してしまうほどのとてつもない破壊力を秘めている。
これを作ったモチヅキによると、これはできればジャパンカップ決勝戦で使って、みんなをびっくりさせたかったとのこと。
なお、アトミック・バズーカ使用後の武器はバルカンとビームサーベルのみとなる点は変化しておらず、それの解消のためにMLRSを搭載する予定だったが、アプサラスⅡのスペースの都合上、見送られた。