「ううーーーん…ついたぁーーーー!!」
駐車場に車が止まり、飛び出したミサは大きく背伸びをする。
サービスエリアで出ることがあったとはいえ、それでも長時間の車内は体にくるようで、勇太もミサ程ではないが体を伸ばしていた。
「んじゃあ、宿舎へ行くぞ。ま…さすがに年頃の男女を一緒の部屋にはしねーみてーだけどな」
荷台からロボ太と2人の荷物が入ったカバンを降し、勇太とミサに自分たちのカバンを渡す。
基本的にはチームメンバーは同じ部屋で滞在するが、チームが全員同性になることは半々だ。
また、ジャパンカップではあらゆる年代のファイターとビルダーが参加している、仮に年ごろの男女が一緒に過ごして何か間違いを起こす可能性も否定できない。
そのため、カップル以外はそのような措置を取られることになる。
「開会式まであと1時間…。ゆっくり行けますね」
「そりゃあ、余裕をもって行動するのが普通だしな」
宿舎の受付に到着したカドマツは受付をし、鍵を2つ受け取る。
勇太とカドマツが入る部屋は512号室、ミサは513号室になっている。
「んじゃ、ロボ太はミサに任せるぜ。1人じゃ寂しいだろうしな」
「私がそんな寂しがり屋に見えるの!?」
「見えるな」
「即答!?ねえ、勇太君はどう思ってるの?そう思ってないって言ってよぉ」
勇太が唯一の味方だと確信したミサが彼の両肩に手を置き、涙目になりながら訴える。
チームメイトであると同時にクラスメートである勇太はミサの日常をある程度知っている。
休み時間は勇太を含め、いつも友達と一緒にしゃべったり遊んだりしており、勇太と対照的に一人静かに過ごすイメージが全くない。
そう考えると、カドマツの考えもあながち間違いと言い切れず、つい目を背けてしまう。
それがミサにとってショックだったのか、フラフラと後ろに下がっていく。
そして、一気に目に大量の涙をためる。
「うわああああああん!!勇太君の裏切り者ぉーーーー!!」
「え、ええええ!?!?」
「もういいもん!勇太君なんか知らない!!」
カドマツから自分の部屋の鍵を強引に奪ったミサはロボ太の手をつかみ、エレベーターに向けて一直線に走っていった。
入るとすぐに扉を閉め、1人だけでそのまま5階へ行ってしまった。
「あーあ…チームメイトといきなり仲間割れしちまったな」
「誰のせいですか!?誰の!!」
「ま、隣のエレベーターがもうすぐ来るから…落ち着いたら謝っとけよ」
まるでこうなったのは100%勇太のせいだと言わんばかりのカドマツの言葉に腹を立てる。
そんな彼のことなど、カドマツはまったく気にしていなかった。
「ったく、なんでカドマツの言うことに反対しないの!?勇太君、気が弱すぎ!!」
エレベーターから出たミサはプリプリ怒ったままロボ太の手を引き、廊下を歩く。
基本的にシャイである勇太があまり反発したりしないことはチームメイトとして付き合う中で分かっている。
しかし、自分へのからかいについてだけは反対してほしかった。
「勇太君の馬鹿…」
「勇太が…どうかしたの?」
後ろから聞いたことのある少女の声が聞こえ、ミサは思わず振り返る。
そこには初めて会った時と変わらない、腹部を露出させた白いセーラー服姿の少女がいた。
その姿を見たミサは先ほどまでの不機嫌な態度が嘘だったかのように、明るい笑顔を見せる。
「サクラ!!」
「久しぶりね、ミサ」
ミサの笑顔につられたかのように、サクラも柔らかな笑みを浮かべる。
一緒に特訓した相手との再会はうれしいのだが、残念なのはそれが戦場だということだ。
「ちょうどいいわ、ちょっと話し相手になってくれないかしら?私の部屋、1人だけだから…」
「え…いいの!?じゃあ、ロボ太も一緒に…」
「構わないわ。いろいろ、聞かせてもらうわよ?」
サクラもミサに再会できた喜びから、すんなりとその提案を飲む。
そして、2人と1機は一緒にサクラの部屋へ向かった。
「ふうう…荷物はこれで良しと」
カドマツと共に部屋に入った勇太はカバンの中の荷物からガンプラ用の工具や予備パーツが入った、アムロがガンダムに初めて乗るときに手にしたマニュアルのようなデザインの箱をベッドのそばに置く。
朝起きてすぐに自分のガンプラのチェックをできるようにするためで、試合中に不具合が発生する可能性を少しでも防ぎたいという思いがある。
なんでも、これから行われるジャパンカップは勇太にとっては未知の領域。
何が起こっても不思議ではない。
(それにしても、カドマツさんの荷物はすごいな…)
準備を終え、ふとカドマツのベッドのそばに置かれている大きなボストンバッグを見た勇太はその中にある物を見て驚いた。
ロボ太が使用するSDガンダム系のガンプラパーツと武器、更にはロボ太そのものをいざというとき、いつでもメンテナンスができるように彼のパーツやロボット用の工具、そして彼の設計図も入っている。
地元の縁があるとはいえ、カドマツもこのジャパンカップにかける思いが大きいことがよくわかる。
「んじゃあ、俺はトイレに行くとするかな?勇太はどうすんだ?」
「僕はスタジアムの下見をしてから、会場へ行きます」
開会式の会場はスタジアム付近の広場で、既に舞台のセットがされていることから、迷わず行くことができる。
「その前に、ちゃんと仲直りしろよ?バトル中に大喧嘩されたら目も当てられねーからな」
「だから誰のせいで…はぁ…」
ため息をついた勇太はいつか何らかの形で腹いせをしてやると考え、部屋を出た。
そして、隣にあるミサの部屋のドアの前に立ち、ノックをしようと思ったものの、どうしてもためらってしまう。
しかし、どうにかして機嫌を直してもらわないと支障をきたすのも確かなので、深呼吸をした後でノックをする。
「あ、あの…ミサちゃん、勇太だけど…今、大丈夫かな?」
扉越しに中にいるであろう彼女に声をかけるが、一向に返事がない。
「もう行っちゃったのかな…?」
もし、そうだとしたら、会場近くで合流できるかもしれないと考え、まずは下見に行くことにした。
「うーーーん…おいしぃーーー…」
一方、勇太が機嫌を悪くしていると思っているミサはサクラの部屋でショートケーキを口にしており、ご満悦な表情を浮かべていた。
それは宿舎近くの売店でサクラが買ったもので、すっかりそれの甘さに上機嫌になったミサは今度はサクラが入れた紅茶を口にする。
ホテルに置かれているティーカップとコンビニで買ってきたプラスチックフォーク、紙皿でどこかあべこべな食器の組み合わせになっているが、それでもミサを満足させるには十分だ。
「ああ…やっぱり、ショートケーキには紅茶だよねぇー…」
「喜んでもらえてよかったわ。すっかり機嫌がよくなったわね」
「あ…」
ケーキを一口食べたサクラの言葉にミサは気が付いたように声を漏らす。
サクラに誘われ、一緒にケーキを食べているとき、ミサの脳裏には先ほどの出来事が嘘のように消えてしまっていた。
しかし、今思い出したことでわき始めたのは勇太への申し訳なさだった。
一気にシュンとしてしまったミサを心配するようにロボ太は見つめる。
「喧嘩でもしたの…?」
空になったミサの紙皿とコップを片付けるサクラからの質問にミサは何も言わずに首を横に振る。
「…何か、あった?」
片付け終え、椅子に座ったサクラは正面からミサに問いかける。
彼女を圧迫させることがないように、柔らかな笑みを浮かべながら。
ミサはゆっくりと受付で起こったことを話し始めた。
スタジアムに出ていた勇太は係員の人に許可をもらい、その中に入れてもらった。
観客席からしか下見することが許されなかったものの、それでも多くの参加チームのメンバーがここに来ており、会場の様子を見ていた。
気になったのはシミュレーターで、いつも見ているものと異なり、外側のデザインがオーライザーのコックピット部分のような形に変わっていた。
「あのシミュレーターは…」
「この大会から採用される新型シミュレーターや。よりガンダムの世界とファイターを近づけるってコンセプトらしいで」
ジャズソングと共に見知った少年の声が聞こえる。
「近づけるって…どうやって?ホウスケ君」
ガンガンそんな音楽を流し続けるファイターが一人しか思い浮かばないのか、勇太は振り向くことなく、彼の名前を呼ぶ。
そんな疑問をぶつけられたホウスケはびっくりするように彼の後姿を見る。
「ワレ、知らんのか!?今日のジャパンカップのホームページを見ろや!?」
「あ、そういえば…」
ホウスケに従い、勇太はスマートフォンを手にし、ジャパンカップのホームページを開く。
そこには昨日の深夜に新しく更新されたページがあり、開くと新型シミュレーターに関する説明が載っていた。
「ええっと…コックピットをモビルスーツモードとファイターモード、タンクモードの3つに変更が可能になったうえに、コックピットそのもののデザインも可能になった…?」
「これは大きいで。特にモビルファイターに関しては体で動きを再現できるようになったからのぉ」
ホウスケの言う通り、この変更は格闘技で戦うモビルファイターや今では珍しいものの、戦車などのガンダムシリーズで登場するモビルスーツやモビルファイター以外のガンプラにとって、戦いやすい環境を生み出しかねないものだ。
コックピットのデザインも可能となると、より原作の自分好みなコックピットにすることも、原作にはないオリジナルのものも作れるようになる。
だが、なぜこのタイミングでそのような告知をしたのかと疑問に感じた。
本来なら、早くとも大会開始の1週間くらい前にはそのような告知をするはずだ。
一種のサプライズ要素にしたかったのであれば、理由がつくものの、それなら最初から告知する必要もないはずだ。
「ま…何か裏があるかもしれへんが、俺は目の前の相手と全力で戦って…勝つ。それだけや」
先ほどの気楽さとはかけ離れた、真剣な勝負師のような表情に打って変わり、じっとフィールドを見る。
既にホウスケの中ではジャパンカップが始まっているのだろう。
実際にこのシミュレーターでバトルができるのは予選が始まってから。
そのことを楽しみにしつつ、勇太は腕時計で時間を確認する。
開会式まであと15分程度で、トイレへ行っても余裕で到着する。
「お…そういえば、ミサはどうしたんや?おらんやないか」
「ああ、ミサちゃんは先に会場へ向かってるよ…多分」
「多分?」
「宿舎では部屋が違うから、バラバラになっちゃって…」
まるで言い訳しているかのような物言いが気に入らず、ため息をつくホウスケだが、そんな彼の懐のスマホが鳴り始める。
「ああ…もう呼び出しか。じゃ、戦えんのを楽しみにしとるで!俺の所属チームは大阪ガンプラ同盟じゃ!覚えとれよ!」
高らかに自分の所属チームの名前を宣言し、ホウスケは大急ぎでスタジアムを後にする。
そんな彼の後姿を見送り、勇太は懐から勇武のブルーフレームを取り出し、それに中の様子を見せる。
「見てよ…勇武兄さん。僕、ここまで来たよ。だいぶ遅くなったけど…強くなれた気がするよ」
「なるほど…そんなことがあったのね」
「…うん」
肩を落とし、下を向くミサが小さくうなずく。
何か事件が起こったのかと思い、気になって聞いてみたサクラだが、少し安心していた。
聞いた話が思ったよりも、言っては悪いが大したことのない話だったためだ。
だが、ミサにとっては重要な問題であるため、笑うのだけはやめておいた。
そして、ある1つの疑問をぶつけることにした。
「ミサちゃん…一つだけ、シンプルな質問があるけど…」
「質問…?」
「あ、ロボ太君に聞かれないように…」
席を立ち、ミサの隣へ向かったサクラは小声で耳打ちする。
その瞬間、ミサの顔が一気に赤く染まっていった。
「皆さま、たいへん長らくお待たせしましたーーーー!!」
リージョンカップでMCを勤めたハルがお立ち台に上がり、明るい口調で言葉を発し始める。
目の前にはリージョンカップを勝ち抜いたファイターとビルダーが集まっており、ドローンやカメラマンのカメラの向こう側には惜しくも敗退した戦士たちとガンプラバトルファンの人々がいる。
日本中が今、この場所を注目している。
「これより、ガンプラバトル選手権、ジャパンカップの開催を宣言します!まずはタウンカップ、リージョンカップを勝ち抜き、見事ジャパンカップに進出したみなさん、おめでとうございます!皆さんは日本一になるにふさわしい実力を持った選手たちです!!」
人気キャスターである彼女の賞賛の言葉に、彼女のファンであるファイターやビルダーたちは歓声を上げた。
「ミサの奴、遅えな…ロボ太と一緒にいるし、場所も教えたから、すぐ来るとは思うけどよ…」
会場で勇太と合流したカドマツは周囲を見渡し、ミサとロボ太を探している。
開始10分前までには来るように電話したが、今も2人の姿が見えない。
「あ…カドマツさん、来ました!!」
カドマツの反対方向を見ていた勇太が2人の姿を見つけ、カドマツに声をかける。
ロボ太に引っ張られる形でやってきているが、ミサはうつむいた様子になっていた。
「どうしたんだ?ミサ、腹でも下したか?」
「なんでもない」
「その…何か、あったの…?」
様子のおかしいミサを心配し、肩に触れると同時にミサはまるで静電気を受けたかのようにビクリと大きく震え、びっくりした勇太は飛び退いてしまう。
「ミ、ミサちゃん…?」
「え、ああう!?ごごご、ごめん…びっくりしちゃって…」
明らかに様子がおかしいミサは一向に誰にも顔を見せようとしない。
分かれている間に何があったのか、気になりながらも勇太は開会式を見ることにした。
勇太から見て左後ろに立つ格好となったミサは脳裏でサクラの質問を思いだす。
(ミサちゃん…あなた、勇太のこと…好きなの?)
その質問に、ミサは驚きと疑問のあまり答えることができなかった。
勇太を誘う以前、ミサはカマセをはじめ、様々なファイターと一緒にガンプラバトルをしてきた。
それは自分とやや同じレベルのファイターばかりで、はるかに高い実力を誇るファイターと一緒にバトルをしたのは、勇太が初めてだった。
限られたファイターしか使えない覚醒が使えることもあり、ミサは勇太を頼りにするものの、どこかで彼に対して劣等感を感じていた。
しかし、勇太がミサが自分にない強さを持っていることを認めてくれた時はうれしく、サクラと特訓を積んで実力を高めていくにつれて、勇太と一緒にバトルができるのがもっと嬉しくなった。
だからこそ、勇太への思いがチームメイト兼ライバルとしてなのか、それとも純粋の一人の少年に対する者なのか分からずにいる。
「それではここで、おなじみのミスターガンプラからの激励の言葉を!」
お立ち台にミスターガンプラが登ってきて、彼のファンが歓声を上げる。
ハルからマイクを受け取ったミスターガンプラはアフロヘアを直し、マイクの電源を確かめる。
「よし…えーー、ただいま紹介にあずかりました。ミスターガンプラです。えー、本日このような素晴らしい日に皆さんと共にいられることを心から感謝しています!」
「お疲れ様です、ウィル坊ちゃま」
「ん。まったく、いつものことだけど頭が固いな、あいつらは…」
アメリカのニューヨークで、重役会議を済ませたウィルがスーツ姿で社長室に戻り、ドロシーは休む彼のためにお茶菓子を用意する。
椅子に座るとともに口から出たのは重役たちへの不満だ。
死んだ父親の代からの古株の社員が多く、彼らはスリーエスの告発・解体などのウィルの行いが行き過ぎだという声を上げている。
スリーエスのようなことはこのタイムズユニバースでは何度も起こっており、ウィルはこのような悪徳企業を時には買収、時には多角化の名目でその市場に参入するなどして、あらゆる手段で潰している。
スリーエスの場合は結果的にその企業が持つウイルス技術を転用して新しいウイルス対策ソフト作りにつなげることができたため、勢いは弱かった。
ドロシーのこれまでの記憶が正しければ、そのような悪徳企業潰しの買収と勢力拡大のための買収の比率は3:7らしい。
ウィルは角砂糖を1つ入れ、紅茶を飲みながらテレビをつける。
紅茶は死んだ父親も好んで飲んでおり、元々イギリス系移民の末裔であることから『紅茶は英国紳士のたしなみ』などと言っていた。
何代にもわたってアメリカで暮らし、イギリスの土を踏んでもいないのに滑稽だと今更ながら思いながら、ウィルは次々とチャンネルを変える。
最近大統領に就任した、アメリカ第一主義の実業家であり、ウィルにとっては経営の師匠にあたる男性の過激な発言を問題視するニュースや日本の漫画をモチーフとしたアニメなど、様々な番組を見つける中で、とあるニュース番組に目が留まる。
「全世界のガンプラファンの皆さん、今日がジャパンカップ始まりの日です。現在、ガンプラ界の世界的なスターであるミスターガンプラによるチャレンジャーへの激励の言葉が放送されています」
ティーカップを置き、ウィルは睨むようにその映像に映るミスターガンプラを見る。
「何をしてるんだ…アンタは…」
今のウィルの眼にはミスターガンプラがピエロのように見え、その姿に落胆と怒りを覚えていた。
「そして…忘れもしない12歳の夏。私は見送りの飛行機で斎藤君に2人で手にした優勝トロフィーを渡し、いつの日か再会を約束しあったのです。それから…」
長時間にわたるミスターガンプラのお祭りの中、カメラマンたちはテープの残り時間を気にしはじめ、次のカメラ付ドローンの準備を始めている。
また、集まった選手や観客の中には立っているのがつらくなってその場で座る、座っている客が居眠りを始めるなど、もはや激励が拷問に変化していた。
しかし、ミスターガンプラの『激励』、というよりも7,8割が自分やライバルのことの回想は終わらない。
「ミスター…あの、そろそろ…数名が貧血で救護室に…」
「ねえ…これ、いつ終わるの?」
ハルがミスターガンプラに注意をする中、ようやく元の調子に戻ったミサが2人に問いかける。
「知らね」
「さあ…?」
延々と続くミスターガンプラの言葉をもう聞く気になれなくなった勇太は既にその場に座っていた。
ここに至って、自分のしゃべりすぎにようやく気づいたのか、ミスターガンプラは咳ばらいをし、話を止める。
「ああ、まぁそういうことだ。では…君たち!ガンプラは好きか!?ガンプラバトルに勝ちたいかーーーー!!」
拳を握りしめ、力を込めてミスターガンプラは問いかける。
まだ元気なファイターは答えるように声を上げたものの、既に疲れ果てた面々については拳を上げるので精いっぱいだった。
「では…最後に。これから始まる戦いに君たちが奮い立てるよう、特別にプレゼントを用意した。既に知っている人もいるだろうが、今回からは新型のシミュレーターが採用される!よりガンプラを、コックピットをより自分の色に染め上げ、勝ち上がってくれ!そして…このジャパンカップ優勝チーム、つまりは日本一となったチームには副賞として…大会終了後のエキシビションマッチとして私と勝負するというものだ!」
「ええ!?ミスターガンプラとバトルができるの!?それに、新型シミュレーターって!?」
まさかのミスターガンプラの言葉に衝撃が広がり、ファイター達は騒がしくなる。
一部の人は既に新型シミュレーターのことを知っていたものの、このミスターガンプラとのエキシビションマッチについては寝耳に水のことだった。
彼は世界初のプロのファイターとして、ガンプラバトルを世界に広げた人物だ。
彼が皮切りとなって世界でプロのファイターが登場し、アマチュアだけだったガンプラバトルをより熱いバトルへと昇華させた。
しかし、8年前に突然引退し、今はバトルをすることなく、ガンプラを広める活動を世界各地で行っている。
引退理由は今も明らかにされておらず、病気説やガンプラバトルを戦争利用しようとするスポンサーへの抗議など、ファンの間では数多くの憶測が飛び交っている。
少なくとも、8年間バトルにおいて沈黙を貫き続けたミスターガンプラが再びガンプラバトルをするというのは会場だけでなく、視聴者にとっても衝撃的なことだ。
「現役を退いて以来、8年ぶりに私の胸は高鳴っている!最強のチャレンジャーを待っているぞーーーー!!」
今まで座り込んでいたファイターも立ち上がり、ミスターガンプラの言葉に応えるかのように叫ぶ中、彼はマイクをハルに渡した。
「勇太君、ミスターガンプラとバトルができるって…!もう、勝つしかないよ!!ねえ!!」
興奮したミサは立ち上がっていた勇太の腕をつかみ、その場で何度も飛び跳ねる。
勇太はミサの言葉に応えず、ただじっとミスターガンプラを見ていた。
「こりゃあ…さすがの勇太も燃えざるを得ないってことか…」
勇太とミサの姿を見たカドマツは笑みを浮かべる。
そして、開会式終了と同時に参加チームは予選のため、次々とスタジアムに入っていった。