ガンダムブレイカー3 彩渡商店街物語   作:ナタタク

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第29話 嵐の予選

「うわあああ…すっごーい!!これが新型シミュレーター!?」

会場に入り、各チームが予選突破のためにガンプラやファイターのコンディションチェックを開始する中、ミサは目をキラキラさせながら新型シミュレーターの中を見ていた。

見た目は全周囲モニターになっているものの、VRを使って好みの設定のコックピットにすることができるうえ、パイロットが機体の外に出で、単独で周囲を確かめに行くこともできるらしい。

中には、専用のヘルメットが備え付けられており、パイロットシートに座り、それをつけることでシミュレーターが開始するという形になっていることから、若干スタートの手順が増えることになる。

なお、ロボ太についてはヘルメットの代わりにケーブル接続してその新型シミュレーターを使用する。

「興奮するのはいいが、ガンプラの準備はいいのかよ?」

「うん。もうバッチリ!アザレア・パワードで勝ってみせるーー!」

1秒でも早くやりたいと思い、シミュレーターに入ったミサはアザレアをセットし、ヘルメットを装着してパイロットシートに座る。

まだ開始時間になっていないことから、それをしても起動することはない。

「そういやぁ、ジャパンカップの予選は1時間耐久バトルだ。おまけに、地球と宇宙の両方がこのバトルのフィールドになる。弾数とか、間違うなよ?」

「ええ…。補給地点はしっかり把握しておかないと…」

ジャパンカップの予選は全チームが参加して行う1時間のバトルロワイヤルで、手段は問わず、1時間の間に生き残りのいるチームはすべて本選進出となる。

地球と宇宙の両方でバトルを繰り広げることになり、大気圏突入の際は大気圏突入用シールドもしくはノッセルのようなサブフライトシステムの使用が必要だ。

しかし、ストライクフリーダムなどのような大気圏の摩擦熱に耐えることのできるガンプラはそのまま突入することができる。

逆に大気圏離脱の際はクロスボーン・ガンダムでトビアとキンケドゥがやったように、ロケットとビームシールドを利用した離脱、もしくは10分おきに宇宙へ向けてマスドライバーによって打ち出されるザンジバルやホワイトベース、あるいはHLVを利用した離脱しかない。

突入と比較すると、離脱の方が手段が限られ、時間的な制約も多い。

また、他に問題になるのは弾薬と推進剤だ。

ガンプラバトルでもそれらの制約があり、長時間の戦闘に入り、それらが尽きたときは敗北に一歩近づくことになる。

そこでこのステージでは、フィールド内に散らばっているベースキャンプや輸送艦などの補給地点に入ることで、そこでそれらの補給を受けることができるようになっている。

ただし、補給中はガンプラを動かすことができず、その間に敵チームから攻撃を受けてしまう恐れがあるため、安全を確認したうえでの補給が必要だ。

他にも、ビッグガンやトーチカのような自分で使うことのできるギミックやCPU制御で各チームに見境なく襲い掛かるガンプラもいる。

戦うか逃げるかの選択が常に課せられるステージで、これはジャパンカップが始まってからずっとそのような形になっている。

「それでは、予選開始10分前となりました!準備のできたチームから、シミュレーターに入って出撃準備をお願いします!」

「そろそろ時間だ…。おい、勇太」

「え…?」

「気負うなよ。後ろには俺らがついてるからよ」

「…はい」

カドマツに頭を下げた勇太はシミュレーターに入り、ヘルメットを装着する。

シミュレーターが起動し、ゆっくりと目の前の光景が真っ黒な球体型の空間から魚などのペイントが施された、機械音のうるさい格納庫へと変化していく。

「ここって…イサリビの格納庫??」

よく見ると、座っているはずの自分がなぜか起立していて、服装も前から設定していた耐圧服に変わっている。

そして、目の前にはバルバトスとアザレア、そしてフルアーマー騎士ガンダムの姿があった。

「これが…新しいシミュレーター…」

「あ、勇太君!!」

「主殿!!」

後ろから声が聞こえ、振り返ると、そこには現実世界と同じ姿のロボ太とノーマルスーツ姿になったミサの姿があった。

通信モニターで何度かその姿のミサの姿は見ているものの、こうして全身で見るのは今回が初めてた。

それはミサも同じで、自分のノーマルスーツとは反対にブカブカで重苦しい耐圧服姿の勇太をじろじろ見る。

「そんなスーツでよくバトルができるね、勇太君って」

「慣れたからね。ええっと…その…?」

勇太は何かほかに言いたいことがあるようで、口に出そうかと迷っている。

気になったミサは前かがみになり、首をわずかにひねって勇太を見る。

そのしぐさをかわいいと思ってしまい、うっかり顔を赤く染めてしまう。

「ねえ、どうしたの?」

「ええっと、あの、その…ミサちゃんのノーマルスーツ…その、似合ってるって…」

眼をそらし、ヘルメットを脱いで頬をほじるようにかく勇太はそう言い残すと、そのままバルバトスに飛び乗った。

これ以上、ミサの前にいると平常心が保てなくなると思ったからだ。

そんな彼の後姿を見たミサは一瞬、時が止まったような感覚に襲われたものの、だんだん顔が赤くなるのを感じた。

 

「バルバトス…こうしてみるのは初めてだね」

気を取り直して、バルバトスの正面に立った勇太はじっと本来の大きさである19メートルもの全高となったバルバトスを見る。

コックピットのカメラからしかシミュレーター上のガンプラを見たことがない勇太にとって、こうしてその中でバルバトスを見るのは初めてのことだ。

そんな巨大なロボットをバーチャルだとはいえ、自分の手で動かすことに興奮を感じずにはいられない。

しかし、同時にせっかく作ったガンプラを壊してしまう可能性に不安を感じていた。

ジャパンカップになると、戦闘で発生するダメージが実際にガンプラにも反映される。

そのため、リージョンカップまでの時とは異なり、整備性も勝てるガンプラの重要な要素の一つとなっている。

プカプカと浮かんでいることとイサリビの中にいることから、スタートは宇宙空間だということは理解できた。

3機とも単独での大気圏突入能力がないため、仮に突入する際は別の手段を手に入れる必要がある。

もう少しその姿を目に焼き付けておきたかったものの、もうすぐ予選スタートであるため、急いでコックピットに入り、シートに腰掛ける。

コックピットはウィングガンダムゼロとガンダムエピオンのようなゼロシステム搭載モビルスーツと同じく、モニター画面のない真っ暗な空間だ。

背中が見えていないものの、阿頼耶識システムが接続されたようで、後ろからカチリという音が鳴る。

「網膜投影…開始」

つぶやき、コンソールを操作すると、自分の視界がバルバトスと一体化する。

これがあるため、モニターがなくても問題にならない。

また、ニュータイプのような動きを可能にする点は阿頼耶識システムとゼロシステムは共通していることから、その設定を選んだ。

ハッチが開き、バルバトスをカタパルトに乗せる。

「沢村勇太、バルバトス…出るよ」

カタパルトが動き出し、バルバトスが真っ暗な宇宙へ飛び出し、同時に予選開始を告げるブザーが鳴った。

衛星軌道上で、ガンダムAGEで登場した地球連邦軍の宇宙要塞ビッグリングが見え、ディーヴァやサラミスなどの戦艦から敵チームやCPUのガンプラが出てくるのが見えた。

「あまり無駄弾は使えないから…!」

破砕砲はそのままに、超大型メイスを構えたバルバトスは手始めに左腕のワイヤークローを発射し、まだこちらに気付いていないレギンレイズ・ジュリアを拘束する。

「な…!?いきなり捕まった!?」

「開始したからと言って、油断し過ぎだ!」

原作でバルバトスの首を取ったモビルスーツ、レギンレイズ・ジュリアを捕まえることができたことに幸先のよさを感じた勇太は一気にワイヤークローを収納していき、その機体を引っ張っていく。

拘束されたのは右肩で、左手は自由に使える。

ワイヤーを切断しようとジュリアンソードを出そうとするが、その前にすでに発射されていたテイルブレードが左腕の関節を貫いていた。

「そんな…!?」

吹き飛ぶ愛機の左腕を見たジュリアのパイロットの表情が恐怖に染まる。

そして、そのまま引き寄せられるジュリアのコックピットをバルバトスの希少金属性の指でできた手刀で貫かれた。

「マオのジュリアがやられた!?おのれぇ!!」

不意打ちに近い形で味方を倒されたことに怒りを覚え、ジュリアのチームメイトと思われるレールガン装備のレギンレイズがダインスレイヴを搭載する。

このレギンレイズのレールガンはガンダムフラウロスのようにダインスレイヴを発射できるように改造されている。

いかに阿頼耶識システムによって反応速度が向上したバルバトスであったとしても、これから放たれる鉛色の閃光から逃れることはできない。

仇討ちと言わんばかりに狙いを定め、引き金を引くが、その前にコックピットがつぶれた状態のレギンレイズ・ジュリアがこちらに向かって飛んでくる。

「鉄血のオルフェンズのモビルスーツは…簡単には爆発しないんだよ?」

原作でダインスレイヴの攻撃を受けたモビルスーツをいくつか見てきた勇太はダインスレイヴがモビルスーツを、というよりは高硬度レアアロイを完全に貫通させるだけの力がないということを知っていた。

実際、発射されたダインスレイヴはジュリアに命中するも、その後ろにいるバルバトスに向かって飛んでいくことはなかった。

無論、投げられたジュリアは命中したダインスレイヴのパワーによって再びバルバトスに向けて飛んでいくものの、そのスピードは恐れるほどではなく、今の勇太であれば簡単に回避できる。

「ダインスレイヴなどという兵器を使うとは…恥を知れ!!」

ロボ太の声が響くとともに、真上からフルアーマー騎士ガンダムが電磁スピアを両手で握って急降下し、レギンレイズの頭部に突き立てる。

「しまっ…うわああああ!!」

バルバトスに夢中になり、他の2機への注意をおろそかにしていたレギンレイズのコックピットに大きなひびが入り、同時に撃墜を告げる赤い光に包まれた。

「ふう…ミサちゃんが見つけてくれてよかったよ」

電磁スピアを抜かれ、暗い宇宙に浮かぶレギンレイズの残骸を見た後で、バルバトスはアザレアに向けてサムズアップをする。

それにこたえるように、コックピット内のミサも笑みを浮かべ、サムズアップした。

彼女の近くには単独で撃破したものと思われるガンダムキマリスヴィダールが漂っていた。

アザレアのコックピットはオーブの量産型モビルスーツのそれと同じ設計になっていた。

 

ビッグリング周辺で彩渡商店街ガンプラチームが戦いを繰り広げているように、バーチャル空間の地球と宇宙で、多種多様なガンプラが戦いを繰り広げていた。

「くそっ、レーダーに反応なしかよ!」

ニューヤークで敵ガンプラを探すジーライン・ライトアーマーが増設されたセンサーを使い、見失った敵を探し続ける。

しかし、その相手はレーダーに反応せず、ジャミング機能特有の雑音もない。

狙撃される危険性があることから、狙撃可能ポイントを割り出してそれらの地点にビームを連射を開始する。

ヘビーライフルの高い出力のビームが狙撃可能ポイントを焼き尽くし、仮にそこにガンプラがいたなら、急いでポイント移動するはずだった。

だが、やってきたのは背後から生じる激しい衝撃だった。

「な…な…!?」

「この鋏で挟まれたら、おしまいよ?」

両サイドから激しい締め付けが起こっていることは分かっているが、その正体が何かをメインカメラで確認することができない。

結局、何の抵抗もできないままスクラップにされ、爆発した。

爆発の光と煙が消えると、そこには真っ白なブリッツガンダム、ブリッツ・ヘルシザースの姿があった。

目の前の敵機の反応が消え、完全に撃破できたことを確認すると、すぐに通信を繋げる。

「こちらサクラ、片づけたわ。そちらはどうかしら?」

「ああ、問題ない。既に沈黙している」

モニターに映る、ガンダム戦記0081で登場するキャラ、シェリー・アリズンのノーマルスーツ姿のサクラを見た金髪緑眼の青年が笑みを浮かべて答える。

そのような欧米人風の眼と髪をしているにもかかわらず、肌の色は黄色であり、日本人と欧米人のハーフであることがよくわかる。

ギャラルホルン一般兵のノーマルスーツ姿の彼が乗っている、バックパックがガンダムヘブンズソードのような大型の翼状のものとなっていて、両足にクローが追加されているガンダム・バエルの周辺にはCPU制御のマゼラ・アタックやザクⅡ、ゲイレールの残骸がいくつも転がっていた。

背後の撃破しきれなかったゲイレールが起き上がり、ライフルを向けるが、真上から降ってきた赤いビームでライフルを撃ち抜かれたうえ、側面からの緑色のビームで撃ち抜かれ、とどめを刺された。

「ふぅ…油断するな。スグル」

両目が隠れるほどの茶色い長めの髪で、無精ひげを生やしたジオン軍一般兵ノーマルスーツ姿の男性がバエルのパイロット、江宮英に注意をする。

「すまん…信頼していたことにしてくれ。ヒデキヨ」

信頼されていることは分かっているものの、そんな油断をされたら心配してもし足りない。

口で言ってもらえたのがうれしかったのか、狙撃したモビルスーツのパイロットの青木秀清はこれ以上言うのを辞めた。

ビルのがれきの隙間に隠れた、暗い緑色で塗装されているザクⅠ・スナイパータイプに搭乗しており、装備しているスナイパーライフルはジム・スナイパーⅡのものとなっていた。

 

「オラオラオラァア!!!」

「こ、こいつ!?むちゃくちゃすぎる…わあああああ!?」

南極基地では、回転するケストレル・フィルインが機体各部から展開するビームブレイドをライフルに転用して連射しながらサンダーボルト版のゴッグとアッガイの集団に突っ込んでいく。

本来なら、直線にしか飛んでいかないはずのビームが一度だけ曲がって敵機に向かって飛んでいき、堅牢な装甲であるはずのゴッグですら、何度もビームを受けたことで装甲が耐えきれず、爆散してしまう。

「よくも…!!」

水中からその光景を見ていたフォビドゥンブルーのパイロットがエクツァーンを連射する。

水中からの攻撃に気づいたホウスケは軌道を変え、弾幕を回避する。

「さすがにケストレルで水中戦は無理や…」

ビーム主体のケストレルでは水中で使用できる武器がゼロに等しく、おまけに水中戦用の装備がない。

コックピット内に響くジャズ音楽が次のものに変わると同時に、ホウスケはレーダーでとらえた敵の位置を送信する。

「大阪ガンプラ同盟の力、見たれ!!」

通信を終えたホウスケはケストレルをフォビドゥンのいる場所から距離を置いていく。

仲間の敵討ちに燃えるフォビドゥンブルーが追いかける。

しかし、この大会で重要なのは勝つこと以上にこの1時間をたった1機になったとしても生き残ること。

全滅した時点で、仇討ちも何もなくなる。

逃げていくケストレルを追いかけ続けるフォビドゥンブルーのパイロットがそのことに気付き始めたその時、真上にあった氷が砕け、その氷がゆっくりと落ちてきた。

はめられたことに気付いたが時すでに遅く、大きな氷に接触し、そのまま氷とともに深く深く沈んでいく。

フォビドゥンブルーはその発展型であるディープフォビドゥンとは異なり、頭部イーゲルシュテルンと腕部アルムフォイヤーをそのまま使用することができる。

しかし、。コクピット周辺にチタン合金製の耐圧殻が採用されていない上に、水中での耐圧をトランスフェイズ装甲とゲシュマイディッヒ・パンツァーに依存しており、仮にエネルギー切れになると水圧により機体が瞬時に圧壊する危険性がある。

テストパイロットからはフォビドゥン・コフィン、禁断の棺桶などという不名誉な二つ名をつけられている。

彼がそんなガンプラを採用した理由はガンプラバトルであるため、命の危険がないことともう1つはコックピット周辺が無事であったとしても、装甲そのものが無事に済んでいるかは別の話であるため、コントロールできなくなれば結局敗北を待つという点に変わりがないと割り切ったためだ。

「まだ…だぁ!!」

座して死を待たないことを信条としているフォビドゥンブルーのパイロットは膝関節を覆っていた装甲をパージし、内蔵されているドリルを露出させる。

南極で戦った場合に備え、そして奇襲のために隠していた武器で、ドリルを回転させながら押しつぶそうとする氷に向けて膝蹴りをお見舞いする。

ドリルの回転とともに氷が削られていき、徐々に水上へと向かっていく。

バッテリーの残量はまだ余裕があり、氷の破壊は可能。

あとは水中からのエクツァーンで攻撃を与えつつ後退し、補給地点に到達すればいい。

そうすれば、バッテリーや弾薬の補給を行うことができる。

あと少しで氷を完全に破壊できると思った瞬間、大出力のビームが氷もろともフォビドゥンブルーを飲み込んでいった。

「ふぅ…これでまた1チームつぶしたぜ」

ビームによって溶けた氷から離れたケストレルの右腕にはメガビームランチャーが装備されていた。

ホウスケはケストレルを水中に飛び込ませ、氷を上からメガビームランチャーをゼロ距離発射していた。

「ホウスケさん!あなたの実力はわかっているつもりですけど…一人で動きすぎですよ!」

ケストレルが離したメガビームランチャーを回収した黄色い木星決戦仕様のアンヘル・ディオナのパイロットであると思われる薄いピンク色のツインテールでラクスのノーマルスーツ姿の小柄な少女、三崎恵子が注意をする。

重力下での飛行能力の確保のためか、ノッセルに乗っていて、バックパックに搭載されているウェポンコンテナにはいくつもの武装が搭載されている。

「うるせーよ!ケイコ!!お前はワタルと一緒に後ろを守ってくれりゃあいいんだよ!それと、これて補給地点を確保したんだ。別にいいだろ!?」

彼に言わせてみると、この単独行動は結果として補給地点の確保に成功し、チームのためになったから、批判されるいわれはない。

ビームを連射したことでエネルギーを消費しすぎたことから、一足先に補給のため、2人のチームメイトに補給地点の座標を送ると一足先に向かった。

「もぅー!いうこと聞いてください!私がリーダーなのにー!!」

「放っておいたれ、こいつはああいうやつや」

ライトブルーで塗装されたレコードブレイカーに搭乗した、新生クロスボーン・バンガードの一般兵のノーマルスーツ姿をしている茶色い角刈りで面長の少年、長谷部渡が仕方なさそうにつぶやき、装備しているムラマサブラスターとアンヘル・ディオナがフォールディングアームでウェポンコンテナから取り出したザンバスターと交換する。

ホウスケを大阪ガンプラ同盟に勧誘したのはワタルであり、周りを見ずに行動するのが玉に瑕ではあるが、実力については信頼していた。

しかし、ここからの戦いは一人で勝てるほど生易しいものではない。

そのことを彼が気付いてくれることを願うしかなかった。

 

「予選開始から10分が経過し、バーチャルの地球と宇宙でいくつもの戦いが繰り広げられています!」

会場やテレビにはリアルタイムで予選の戦闘の様子が映像で流れており、応援しているチームが敗退したと知って残念がる観客もいれば、応援しているチームが勝ち残ることを願い、敵機撃墜の際に自分のことのように喜ぶ観客もいる。

「さて…ミスター、そろそろでしょうか?」

「ああ、そろそろだねぇ」

ハルとミスターガンプラが顔を見合わせ、互いに笑みを浮かべる。

ミスターガンプラは立ち上がると、マイクを手にする。

「よーし、ここから地球と宇宙、両方でボーナスチャレンジを開始する!ボーナスチャレンジはいまと40分経過した時点の合計2回行われる!チャレンジの制限時間は開始から15分!そのチャレンジのどちらの一方を1回クリアしたチームは5分間の戦線離脱の時間が認められ、ガンプラの補修を行うことができる!」

ミスターガンプラの声は戦闘中のチーム全員に伝わり、それを聞いた彼らは耳を疑った。

ダメージがガンプラにも反映されるジャパンカップでは、逆に言えば補修に成功することで蓄積したダメージを回復させ、ベストコンディションで1時間を戦い抜くことができるのと同じ意味となる。

「こりゃあ、こうしちゃあいられねえな!!3人とも、待ってろよ!」

カドマツをはじめ、メカニックの多くが席を立ち、補修用のパーツを探しに出ていった。

「さあ、登場してもらおう!最初のボーナスチャレンジだーーーー!!」

ミスターガンプラの叫びと共に、ソロモン付近とベルリンに巨大なコンテナが出現する。

そして、その中から巨大モビルアーマーがゆっくりと出てきた。


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