ガンダムブレイカー3 彩渡商店街物語   作:ナタタク

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第33話 ニューヤークの空

「ぐー…ぐー…」

「ったく、風邪ひくぞ」

早朝になり、机に突っ伏した状態で寝る勇太にカドマツは掛け布団をかける。

夜11時にカドマツは先に寝たとき、勇太は椅子に座って何かに取り付けれたかのようにノートに何かを書いていた。

自分とロボ太のガンプラの修理以上にそれにうちこんでおり、それが何かカドマツは気になって仕方がなかった。

「ま、寝てるからバレないだろ?」

カドマツは勇太のすぐそばに積み上げられている数冊のノートの内、一番上のノートに手を取る。

ページを開けると、そこにはコックピットとヘルメットの絵が描かれていた。

「へえ、こいつは…」

「んん…」

「おっと、これはまずいな」

もぞもぞと動き出す勇太を見たカドマツはすぐにノートを閉じて元の場所に戻す。

うっすらと目を開けた勇太は頭を動かし、カドマツに向けた。

「あ、カドマツさん…おはようございます」

「おう、ずっとそいつをやってたのか?」

読んでいないように見せるため、あえてはぐらかしながら質問する。

勇太はそれを肯定するように、首を縦に振った。

すぐに机の上に置いてあるスマホで時間を確認するが、まだ6時くらいで、まだ寝ることができる。

今日の試合のため、もう少しだけ今度はベッドで寝ようと立ち上がるのと同時に、ドアの咆哮から声が聞こえてくる。

「おーい、勇太君。起きてるーー!?」

「ミサちゃん?」

ガチャリとドアが開き、そこにはピンクのジャージ姿をしたミサが立っていた。

「おはよう…でも、どうしてジャージ姿?」

「それはね…」

 

「はあ、はあ、はあ…」

「勇太君、もっとペース上げて上げて!!」

ホテルのそばにある公園で、ミサは後ろを走る黒いジャージ姿の勇太に声をかけながら前を走る。

同時に走り始めたのだが、どうやらインドア派の勇太は体力があまりないようで、2周走った今はミサと20メートルくらい距離が開いている。

「はあはあ、これで3周目…充分走ったでしょ…?」

「まだまだ。5周くらい走らなきゃ!」

「え、ええ…?」

「こうして体を動かすことも、ガンプラバトルの練習の1つだよ!」

「そ、そう…?」

勇太はこうしたランニングのような運動よりも、ガンプラづくりや操縦による特訓の方がいいのではないかと思った。

今はミサと付き合う形で一緒に走っているが、どうしてそれがガンプラバトルの練習の1つになるのか、勇太には理解できていない。

そうして走っていると、どこからかジャズが聞こえてくる。

「この音楽…もしかして」

「おお、やっとるな。ミサ、勇太!」

ジャズと声が聞こえた方向に目を向けると、そこにはジャージ姿のホウスケの姿があった。

「まさか先客がおるとはのぉ。まさか…できとんのか?」

「で、できてるって!?」」

「え、ええ!?」

どういう意味に聞こえたのか、勇太とミサは一斉に顔を真っ赤に染めてしまう。

からかうつもりで、あえていろんな意味に聞こえるように意地悪な言葉で質問をしたのだが、見事に釣ることができ、ホウスケはそんな2人を見て腹を抱えて笑い始めた。

「ギャハハハ!!なんや、すげえ赤うなって…あー、腹痛い、腹痛いわー!!」

「もう、ホウスケ君!!」

これ以降聞こえてくるミサからのののしりを無視しつつ、ホウスケはその場でラジオ体操を始める。

体操で体をある程度ほぐしたホウスケはそのまま2人と同じく、公園の外側で走り始めた。

「んもう、なんでホウスケ君も一緒に走るの!?」

「別に構わんやろ。公園はみんなのものや!」

本音を言うと、ミサは勇太と一緒に過ごせる時間がほしくて、彼を無理やりここに誘った。

彼女にとっては今のホウスケはお邪魔虫で、早くランニングを終えてホテルへ戻ってほしかった。

ちょっとだけペースを落としてホウスケを先に走られ、ミサは勇太の隣で走り始める。

「そういえば、決勝トーナメントってどんな形になるの?」

「対戦カードとフィールドは直前になってから決まる形だよ。だから、決勝まではどのチームが相手になるか、そしてどのフィールドで戦うのかは全く分からないんだ。あと、予選で分かったと思うけど、バトルダメージはガンプラにも反映されるから気を付けて…はあはあ」

こうしたルールの関係上、出場チームのガンプラにはある程度どの領域でも対応できるような汎用性が求められることになる。

大きな落とし穴になりがちなのは太平洋やインド洋のような陸地の少ない海のフィールドで、大抵のビームが減衰してしまうことや水中用チューンが不十分なために満足に動けずに撃破されるケースも珍しくはない。

バルバトスやアザレア、フルアーマー騎士ガンダムには水中でも動けるようにチューンを施しており、水陸両用モビルスーツほどではないものの、戦闘できるようにしてある。

それが一番難しかったのはバルバトスで、鉄血のオルフェンズには水陸両用モビルスーツが本編で登場することがなかったことやナノラミネートアーマーがどこまで水中で耐えられるのかわからなかった都合上、どういうチューンが良いのかが分からなかった。

今は関節部をアトラスガンダムやサンダーボルト版のズゴックなどに採用されている多重構造型球体関節をモチーフとしたものに変更し、スラスター廻りを見直すことでどうにか水中でも戦えるようにできている。

ただ、武装がビームショットライフル以外がすべて実弾であることから、火力低下の心配はない。

(そういえば、鉄血のオルフェンズでは水中での戦いが一回もなかったな。ターンエーも同じだったっけ…?)

「おーい、何トロトロしとんねん!おいてくぞ!」

「んもう、そっちが勝手に参加しただけじゃん!ふう…行こ、勇太君」

「うん…」

これはあと何周付き合えばいいのか。

せめてその疲れで今日の試合に負けてしまった何て格好の悪い真似が起こらないことを願いながら、勇太は走り続けた。

 

朝の10時になり、複数のバトルシミュレーターと大型モニターが設置されたスタジアムの中には大勢の観客が集まっていた。

「えー、お集りの皆さま!たいへん長らくお待たせいたしました。これより、ジャパンカップ本選1回戦を開始します!対戦カードとフィールドは試合直前に決定する方式となっております!」

モニターには予選で生き延びた20チーム分の空欄とトーナメント表が表示されていた。

勇太とミサをはじめとしたファイター達は控室のテレビでその様子を見ている。

「あれ?5チームで決勝?」

「総当たりでの決勝戦…ジャパンカップではそうなってるんだ」

「ってことは、3回勝ったら日本一ってこと!」

「そう。けど、1回でも負けたら終わりだ。ガンプラと僕たち自身のコンディションはしっかり維持しておかないとね」

「それでは、1回戦第1試合の対戦カードは…赤コーナー、東京代表、彩渡商店街ガンプラチーム!」

「いきなりか…」

緊張しているのか、勇太はゆっくりと深呼吸をする。

ハーバード大学で考案され、日本の総理大臣が平常心を保つために使ったことで有名になっている4-7-8呼吸法で、ネットで知ることができた。

それで緊張を少し落ち着かせてから、相手チームの発表を待つ。

「青コーナーは…大阪代表、大阪ガンプラ同盟!!対戦フィールドとなるのはニューヤークです!一年戦争の度重なる空襲で廃墟となったこの街で、激戦の火ぶたが切って落とされることになります!」

「ホウスケ君が相手か…」

勇太は近くの席に座っているホウスケら大阪ガンプラ同盟のメンバーに目を向ける。

ちょうと、ホウスケも勇太に目を向けており、ニヤッと不敵な笑みを見せていた。

「負けへんで」

「こっちこそ…」

 

「ホウスケ君といきなりバトルかぁ…」

シミュレーターに入り、ノーマルスーツ姿で格納庫にいるミサは壁にもたれながらアザレアを見る。

勇太も火星ヤシ型の果物グミを口にしながら、自分のガンプラを見ていた。

「前の試合はタイガーに邪魔されて不成立になっちゃったから、この試合で決着をつけることができる。楽しみだ。緊張もするけど」

「もう、緊張しなくていいよ。でも…勇太君がそうしたいなら、他のファイターは私とロボ太で抑えないと」

「え…?でも…」

「大丈夫だよ。勇太君が勝つって信じてるから」

「ミサちゃん…。じゃあ、その信頼に応えないと」

若干顔を赤く染めた勇太はバルバトスのコックピットへ向かう。

バルバトスは固定されたままうつぶせの状態となり、床のハッチが開く。

勇太の眼には真夜中のニューヤークの光景が見えた。

「よし…沢村勇太、バルバトス、出るよ」

固定具が外れ、バルバトスは重力に従うように降下していく。

(やっぱり、地球の重力って強いんだ…!」

落下スピードをスラスターで調整しながら、勇太はシミュレーターで再現される地球の重力に驚きを感じていた。

後からアザレアとフルアーマー騎士ガンダムも降下を始めていて、2機からの着地予測ポイントが送信される。

「ミサちゃんはスタジアム東の高層ビル、ロボ太は…うん?」

ザザ、と通信用スピーカーから雑音が聞こえ、念のため勇太はミサと通信を繋げる。

「ミサちゃん、今変な音が聞こえてるけど、そっちは大丈夫?」

「え…な…よくきこ…!!」

徐々に雑音が強くなり、ミサの声が良く聞こえない。

「どうしてジャミングが…まさか!!うわあ!!」

急に背部で爆発が起こり、機体のバランスが崩れる。

爆発と背中から伝わる衝撃から、バズーカによる攻撃なのは間違いなかった。

「後ろから…この機体は!」

どうにかバランスを直して振り返ると、そこには空を飛ぶ青いレコードブレイカーの姿があり、左手にはバズーカが握られていた。

「ジャミングを発生させているのは…あのレコードブレイカーか!くっ…!」

再びレコードブレイカーがバズーカを発射してくる。

阿頼耶識システムがあるとはいえ、重力下の空中では宇宙でやったような感覚的なわずかな動きによる会費は難しい。

ビームショットライフルを手にし、散弾モードでビームを発射する。

拡散するビームがバズーカの弾頭を破壊し、更にレコードブレイカーをも襲う。

「これでええ、目標達成や」

レコードブレイカーのコックピット内でワタルがそうつぶやくと、その機体はバズーカを投げ捨て、変形を始める。

「この変形は…!」

頭部が後ろに移動し、背部は機体の下部へ移動。

腹部の一部とフロントアーマーを前に股間部を内側に倒す。

脚部を外側に展開し、つま先を伸ばす。

肩部を機体の上部へ移動、腕を後ろに向ける。

木星帝国が生み出した光の翼の未完成機の変形機能がその起源の機体で見事に再現されていた。

変形を終えたレコードブレイカーはバルバトスに背を向けて逃げていく。

「やられた…!」

光の翼を発動し、おまけにモビルアーマーに変形したレコードブレイカーを追いかけるだけのスピードをバルバトスは持っていない。

それ以上に問題なのは、先ほどの攻撃や反撃の影響でバルバトスの着地ポイントにずれが生じてしまった。

このままではミサ達と離れた状態で戦うことになる。

「まさか、あのレコードブレイカーは僕たちを分断するために!!」

そのことを早くミサ達に伝えなければならないが、ジャミングのせいで通信を行うことができない。

「どうにかして、ミサちゃんたちに伝えないと!!」

通信以外で2人にこのことを伝える方法を考える。

そうしている間にもどんどん高度が下がっていて、おまけにレコードブレイカーはミサとロボ太のもとに向かっている。

「そうだ!これがある!!」

超大型メイスを投げ捨てたバルバトスに破砕砲を持たせた勇太はロックオン設定の変更を行う。

そして、ミサの機体にロックオンする。

(気づいて…ミサちゃん!)

 

「ロックされた!?」

勇太と通信ができなくなり、心配するミサは急に聞こえてきた警告音に反応したミサはその方向にカメラを向ける。

その方向には破砕砲の照準を向けたバルバトスとこちらに迫ってくる可変したレコードブレイカーの姿が見えた。

「気づかれた…だが、もう遅い!」

モビルスーツ形態に戻ったレコードブレイカーが今度はザンバスターを手にしてアザレアとフルアーマー騎士ガンダムに向けて発射する。

「もしかして、このガンプラの作戦って。ロボ太!!」

ビームを左腕のシールドで受け止めながら、ミサはアザレアを後ろに下げていき、無理やりフルアーマー騎士ガンダムと接触させて回線を開く。

ジャミングされたとしても、ミノフスキー粒子の影響を受けたとしても、王道である接触回線は有効だ。

「ロボ太!このまま私から離れないで!」

「ミサ。あの機体、我々を!」

「そう!勇太君が教えてくれなかったら、危なかった」

「だが、主殿は…!」

フルアーマー騎士ガンダムがアザレアに掴まったことで、分断されることはなくなったものの、バルバトスだけが離れてしまった。

通信できない状況では、もはや無事を願うことしかできない。

(勇太君…!)

 

「はあはあ…よし、着地した。ダメージは…」

どうにか路上に着地した勇太はバルバトスの状態をチェックする。

バズーカのダメージを受けたバックパックの損傷は軽微だが、ほんの些細なダメージでもスラスター出力の影響が生じてしまう。

「あのレコードブレイカー…バズーカを持ってた。しかも、攻撃を終えたら投げ捨てて…」

レコードブレイカーの武器はクロスボーン・ガンダムシリーズにも使われていたザンバスターのみ。

可変機はバズーカのような長い得物の装備は不向きで、仮にそれを放棄しないまま変形しようとした場合は変形にタイムラグが生じることから捨てたのなら納得がいくが、捨てるくらいなら最初から装備しなければいい。

(最大の目的は…僕の分断を!)

相手のやり口を考えている時間はないようで、すぐに警告音が響くとともに大出力のビームが側面から飛んでくる。

ナノラミネートアーマーでビームのダメージを軽減できるが、フレームへの影響が無視できないため、破砕砲を投げ捨てて跳躍して回避する。

「く…!」

高火力武装である超大型メイスと破砕砲を失うことになったことを悔やみながら、バルバトスのカメラをビームを発射したガンプラに向ける。

その機体は勇太の予想通り、ホウスケのガンプラであるケストレル・デルフィンだった。

「こちらに気付いたなら!!」

メガビームランチャーを投げ捨てたケストレルが両腕にビームサーベルを展開して突っ込んでくる。

ビームショットガンを使ったとしても、ビームシールド替わりにそれを使われて防がれてしまう。

太刀を抜いたバルバトスは突っ込んでくるケストレルをそれで受け止める。

「くぅ…!」

「舞台は整ったで!これなら、誰にも邪魔なんてされへん。男同士、1対1のケンカや!」

「そのために…あのレコードブレイカーを!」

「ああ。あんときのままやと、モヤモヤするだけやからなあ!」

右ひざにビームサーベルを展開させ、そのままバルバトスの腹部に叩き込もうとしてくる。

「まだだ!!」

バルバトスの両足の間をテイルブレードが通り、ケストレルの胸部に命中する。

思わぬ一撃を受けたケストレルはバルバトスの後ろへ大きく飛んでしまうが、ホウスケは即座に各部アポシモーターをわずかに噴射させただけで立て直す。

全身のビームサーベルと大出力のスラスターを利用した突撃戦法に勇太はバルバトスとキマリスの闘いを思い出す。

「相性が悪い相手だけど、負けるわけにはいかない!」

太刀を構え直し、テイルブレードを戻したバルバトスのカメラはじっとケストレルを見ていた。




機体名:レコードブレイカー・ブルーシー
形式番号:F-99B
使用プレイヤー:長谷部渡
使用パーツ
射撃武器:ザンバスター
格闘武器:ビームザンバー
頭部:レコードブレイカー
胴体:ガンダムF91
バックパック:レコードブレイカー
腕:ガンダムF91
足:レコードブレイカー
盾:なし

大阪ガンプラ同盟の一員、長谷部渡のガンプラ。
彼自身の設定では、『機動戦士クロスボーン・ガンダム鋼鉄の7人』で木星帝国が奪取したレコードブレイカーの開発データを元に蛇の足が開発したものとなっている。
蛇の足はサウザンド・カスタムの中に光の翼を搭載したモビルスーツが存在する可能性を想定しており、それに対抗するために試作された。
サナリィのスタッフのみで、木星帝国出身の開発者を排除したため、これまでのフォーミュラ計画のモビルスーツと近い姿となっている。
ただし、林檎の花内部の開発機能では光の翼を作ることが難しく、仮想敵であったファントムを奪取したこともありペーパープランで終わった。
なお、ジャミング機能を装備しているのはこの機体の戦闘パターンが相手の懐に圧倒的なスピードで接近し、通信障害を与えることで1対1にもちこむためとのこと。
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