「一体どうなってるの!?サクラさんのチーム以外のガンプラがいないのに、なんであんなにダメージを受けてるの!?あ、ビームが来た!!」
勇太の服を引っ張るミサはテレビに指をさしながらこのおかしな状況の説明を求める。
今の一撃はビームだが、時にはミサイルも飛んできており、それが不規則かつ正確に彼女たちを狙っている。
ファンネルやドラグーン、ガンバレルでの攻撃とは考えられない。
ビームだけなら、ゲシュマイディッヒ・パンツァーもしくはレグナントに使われたGNフィールドの近似技術を応用していると考えれば説明がつく。
だが、ミサイルはどうして正確に彼女たちに向かっているのかの説明がつかない。
「相手は完全に姿を隠しているな。カメレオンみてえだ…」
「この攻撃手段への対抗策を考えないと、サクラさん達は一方的にやられてしまう…」
スマホで現在サクラ達が戦っているチームの今大会の戦績を調べる。
相手となっているのは三重県代表で、彼らの登録機体はモビルアーマー1機となっている。
しかし、ここまでの戦闘でその姿をフィールド内で見たファイターは一人もいないという。
その姿を目撃する前に撃破されてしまったケースが後を絶たない。
「もしかして、ミラージュコロイドを使って消えてるってこと!?」
「ううん、ミラージュコロイドを発動したとしても、音まで消すことはできない。それに、これまで戦ったフィールドの中には海もある。そこでも姿を見ることができなかった…。ミラージュコロイドは水中では使えない以上、きっと別のものだよ」
問題はその別のもののシステムで、それはまだ勇太の中で答えが出ていない。
「くそ…ミラージュコロイドデテクターでも、見つからん。奴らの隠れている手段はミラージュコロイドでも、見えざる傘でもないようだ」
ミラージュコロイドと見えざる傘はどちらも光学迷彩で、そちらもガス状のコロイドを展開する点に変わりはない。
違いがあるのは範囲で、見えざる傘の場合はミノフスキー粒子のように散布することで周囲の味方の姿を隠すことさえできる。
その性質故に、どちらもミラージュコロイドそのものを探知するミラージュコロイドデテクターを使えば、居場所だけはつかむことができる。
サクラのチームは光学迷彩を使う相手に備え、ザクⅠのカメラにミラージュコロイドデテクターモードを取り付けておいた。
原作でのそれはただ近くにいるというだけで正確な位置の把握は不可能な代物だったが、モビルスーツの機能として直接取り付けることで機能性を高め、正確な居場所をつかむことが可能となった。
計算外だったのはそれでも、隠れている相手の居場所をつかむことができないことだ。
「ガス状コロイドを使っているわけじゃないというの…?」
「ミサイル、来るぞ!!」
スグルは飛んでくる3発のミサイルをヘブンズダートで撃ち落とす。
だが、ヘブンズダートが接触した瞬間、ミサイルは強い光を放ちはじめた。
「照明弾か…くそ!!これじゃあばれるぞ!」
「補正を急ぐわ!…?」
センサー補正を始めるサクラは一瞬、白い光の中で何かが動くのが見えた気がした。
正確に言えば角度を変えているだけで、その場所からは移動していない。
光が収まり、照準補正が終わると同時にサクラ達はその場を離れる。
その少し後で、大出力のビームがその場所の真上から降り注いでいた。
(もしかして…彼らが私たちの居場所を見つける手段って…)
試しにサクラは動きを止めて、ギカンティックシザースに搭載されているビーム砲を出鱈目に発射する。
そうしていると、サクラに向けて再びビームが飛んできた。
機体を後ろへ下がらせて回避するが、死角からのビームだったために回避が遅れ、右足の指先部分がビームを受けて溶解してしまった。
「サクラ!なぜ居場所を伝えるようなことを…」
「ヒデキヨ!スナイパーライフルを貸して!」
「何…?いったいどういうつもりで…」
「これで、もしかしたら正体をつかめるかもしれないのよ!!」
「…」
ビームスナイパーライフルでどうやって正体をつかむというのか。
困惑するヒデキヨだが、ここで手をこまねいていたら、一方的にやられるだけだ。
どんな手段で打って出るつもりかは分からないが、今はそのサクラの策を信じるだけだ。
ヒデキヨはザクⅠの主力武器と言えるそのライフルを手渡した。
それを受け取ったサクラはコーボードを展開させ、ライフルのプログラムを入力していく。
「みんな一か所に固まって。攻撃は一切しないように」
「どうするんだ、サクラ?」
「もし、今の私の読みが外れたら、私たちはここで敗退…けど、当たっていたら、ここを突破できるわ」
「ふん…急に動きが止まりましたね」
3機のガンプラが一か所に固まって、なおかつ動きを止める。
ガンプラバトルではかなりの下策で、敵チームに集中攻撃してくださいとお願いするようなものだ。
そんな戦法をとるようなチームはもはやジャパンカップにはいないはずだ。
「嫌な予感がします…場合によっては、2つ目のプランを使う必要があるかもしれませんね…」
「2つ目のプラン…決勝で使うあれか?」
「ええ。相手は特別推薦のチームです。油断ならない相手ですからね…」
最も、それを使うとなると戦うのはメインパイロットを務める彼、叢雲恭二1人になる。
ルール上そうせざるを得ないが、彼は特に気にしていなかった。
「これは…高熱原体接近!!」
「こちらへビーム!?流れ弾か?」
「クスリ、どうやら、狙って撃って来たみたいですね」
キョウジが笑みを浮かべる中、飛んできたビームが装甲で弾かれる。
熱源を逆探知すると、そこには放棄されたザクⅠのスナイパーライフルがデブリに挟まる形で置いてあった。
「なるほど…プログラムで一定時間経過後に発射するように調整されていましたか」
パイロットが脱出した後のモビルスーツが一定の動きを自動で行うこと自体は不可能ではない。
かのラストシューティングも、アムロが脱出前に教育コンピュータを応用した自動操縦機能を使って、ガンダムにある程度進んだ後で真上にいると思われるジオングヘッドにビームライフルで攻撃するようプログラムしたことで可能になった。
最も、メインカメラを失っているうえに地の利のないア・バオア・クーでそれができたのは一重にアムロのニュータイプ能力が大きかった。
それを武器単独で行うことも、理論上はできるものの、問題はどうしてここの場所をつかむことができたかだ。
この一発のビームで居場所が分かったのか、バエルとブリッツがこちらへ向かて一直線に飛んできていた。
迎撃のため、隠れていたモビルアーマーがその姿を現す。
その正体は真っ黒な塗装をされたアルヴァトーレだった。
しかし、原作では搭載されていたはずの疑似太陽炉は搭載されておらず、動力源が複数の核融合炉に変更されているうえにサイズも一回り大きい。
スナイパーライフルを受けた個所はもはや光学迷彩の機能を発揮していなかった。
「ええっ!?なんか、黒い装甲が宇宙に出てきた!これ、どうなってるの!?しかも、サクラさん、どうやってそこに敵がいるってわかったの!?」
試合映像を見るミサはどういうことなのか理解できず、目を回していた。
大人であるカドマツに説明を求めるように目を向けるが、カドマツもよくわかっていないのか、首をかしげている。
「ミラージュコロイドじゃないとしたら…そうか、オクトカムだ!」
「え…オクトカム…??」
「オクトカム…ああ、なるほど。蛸か…」
勇太の言葉でようやく相手チームの迷彩の謎が解けたカドマツは笑みを浮かべ、そのチームのアイデアを感心する。
「オクトカムは地表や物体表面の見た目から凹凸までそっくりに擬態できるシステムなんだ。まさか、宇宙そっくりに擬態までできるなんて…」
オクトカムの存在は勇太も小耳にはさんでいたが、まだそれをガンプラバトルで完全に実践に使うことができるレベルに達していないとばかり思っていた。
それだけに、三重県代表のオクトカムには驚きを感じ、世界の広さとガンプラの可能性も感じられた。
だが、まだまだオクトカムには課題が存在する。
オクトカムは装甲表面の色を光学技術で変化させる都合上、装甲そのものがダメージを負うとその部分が擬態できなくなる。
おそらく、疑似太陽炉を採用しなかったのはGN粒子がオクトカムの邪魔になるからだろう。
「すごい!それって、カメレオンみたい!」
「カメレオンじゃないよ、オクトパス、蛸だよ」
「え…蛸?蛸とステルスって、あんまり関係ないように思うけど…」
「蛸は周囲の色だけじゃなくて、形まで擬態できるんだ」
「お前、よくそんなこと知ってるな…」
解説しようと思っていたカドマツはまさかオクトカムのほとんどを勇太に説明されるとは思わなかったようで、出番が奪われたように思えて機嫌を悪くする。
だが、オクトカムであればミラージュコロイドとは異なりガスを使わないため、ミラージュコロイドデテクターでも見破れない。
「でも、サクラさんはどうして場所が分かったんだろう…?」
「きっと、これまでの攻撃の探知データを使ったのかもしれない」
おそらく、ファンネルによる攻撃ではないと考え、『曲がる』ことをすでに頭に入れていたのかもしれない。
それでも目星をつけて、しかも逆に奇襲攻撃を仕掛けるところに彼女の恐ろしい面が感じられた。
「ここからは俺たちのターン、という奴だな!」
だが、先が見破られたとはいえ、アルヴァトーレは第1期で刹那を苦戦させ、プトレマイオスに先制攻撃を与えた強力なモビルアーマー。
接近しようとする2機に向けて側面に搭載されているビーム砲とミサイルランチャーで迎撃を始める。
更には下から黒いリフレクタービットが数機出て来て、それが機体周囲に展開されていく。
「ビームが曲がる原因はこれか!?だが、ミサイルはどうやって…??」
「ふふ…何もプログラム変更ができるのは武器やモビルスーツだけではないのですよ…」
サウザンド・カスタムの一機であるバンゾのマイクロミサイルランチャーのミサイルの中には反転するようプログラムされたものがあり、直進するビームへの防御に特化したビームシールドが主流となっていたVガンダムの時代にはその死角を突く戦法だった。
展開しているリフレクタービットに簡易的なプログラム書き換え機能を加えていて、それで飛翔しているミサイルのプログラムを書き換えていた。
スグルはそのそんな多機能のリフレクタービットを、本来は機体周囲に展開させるだけの存在であるそれを長距離まで展開させることができるように手を加えた三重県代表チームの技術力と発想に舌を巻く。
もしかしたら、忍者の存在も影響しているのかもしれない。
「だが、こいつはミサイルじゃあないぞ!!」
発射されたヘブンズダートが飛んでいるリフレクタービットのうちの2基を撃ち落とす。
直線にしか飛ぶ必要のないヘブンズダートにはそれが介入する要素がなかった。
「けど…接近は難しいわね…!」
アルヴァトーレの弾幕をかいくぐっての接近は難しく、原作でも刹那はGNアームズを装着した状態でなければ接近することすらできず、しかも接近に成功したころにはGNアームズを失っていた。
「使うしかないわね…覚醒を!!」
深呼吸したサクラは覚醒を発動させ、側面ビーム砲の直撃コースに入っていたはずのブリッツはあたる直前に桜の花びらのエフェクトを残して消えていく。
「ほぉ…あなたの機体も、忍者でしたね…」
サクラはブリッツをアルヴァトーレの機体下部へと飛ばしていく。
リフレクタービットによって起動が変化したビームは機体の真上だろうと真下だろうとどこでも飛んできて、移動する間にもブリッツは何度も被弾したが、覚醒エネルギーがバリアとなってダメージを抑えている。
(リフレクタービットを展開させるとき、下のハッチを開いていた。そこが一番もろいはず!)
核融合炉が動力源となっているおかげで、この機体はGNフィールドを展開させることができない。
トリケロスにビームサーベルを展開させ、それを下部のハッチ部分に向けて突き立てる。
しかし、覚醒エネルギーで増幅させた出力のビームサーベルですら、アルヴァトーレの装甲は受け止めていた。
「なんて強度の対ビームコーティングなの…!?」
「サクラ!!これを…うわあ!!」
ビームとミサイルの弾幕にさらされるバエルが持っているバエルソードの1本をブリッツに向けて投げる。
それを手にしたサクラはアルヴァトーレに思いっきり突き刺した。
剣を受けたアルヴァトーレは小規模の爆発をいくつも引き起こし、サクラはその場から離れると同時に覚醒を解除する。
「はあ、はあ…」
覚醒による疲労で、サクラの息が荒くなる。
これで終わりかと思った彼女だが、いまだに試合終了のアナウンスが流れないのが気になった。
もうすでに敵機の反応はないにもかかわらず。
「どうなってる…?おい、試合が終わったんならさっさと…」
「いいえ、終わっていませんよ」
「何…!?」
振り返ったザクⅠが頭部から縦一文字に切り裂かれ、爆散する。
「ヒデキヨがやられた!?」
「背後を取られた…どうして!?」
「まだ敵がいるということ!?まさか…!」
アルヴァトーレはアルヴァアロンの補助ユニット。
東京のリージョンカップでアプサラスⅡの中から出てきたサイサリスのように、1機でも戦える本体が存在してもおかしくない。
「ふふふ…忍者は、あなただけではないということ。ただ、それだけですよ」
サクラの耳に敵からの通信が聞こえ、それはオープンチャンネルではなく接触回線だった。
センサーには一切反応がない。
「こいつは…!」
何が起こったのかわからないスグルはモニターに見える変化に息をのむ。
ブリッツの背後に真っ黒なガンダムが現れ、ブリッツの首にシュピーゲルブレードを突き立てていた。
やろうと思えば、すぐにでもブリッツを撃破できるというらしい。
「ガンダム・シュピーゲルオクト。本体ユニットです」
「オクト…やっぱり、蛸がつくのね」
「お見事でしたよ。まさか、私たちの居場所をつかむとは…どうやって?」
「攻撃データを計算しただけよ。資料はそちらが提供してくれたおかげで、どうにかなったわ」
記録した射撃データと、現状のガンプラバトルで可能限界のビーム屈折角度。
それらを元に調べる中で、攻撃手段の中にリフレクタービットといった中継機能の存在を予測できた。
ただ、ミサイルの軌道を変化させることができるということについては想定外だった。
プログラムさえ変更できれば、反転・旋回などの軌道を変化させることはいくらでもできるからだ。
その分、特定までに想定以上の時間がかかってしまった。
「ここから、1対1の戦いはいかがでしょうか?同じ忍者として?」
「悪いけど、私は自分を忍者と名乗った覚えはないわ」
「そうですか…」
残念そうにつぶやくキョウジだが、すぐにシュピーゲルはオクトカムで消えてしまった。
次の瞬間、変形して飛行していたバエルの背中に出現し、シュピーゲルブレードを突き刺した。
「馬鹿な…!?くそぉぉ!!」
スグルが無念の叫びと共に消え、バエルのツインアイの光が消滅する。
サクラはあっという間にスグルとヒデキヨが倒したキョウジと彼のシュピーゲルに息をのむ。
あっという間に1対1の状況にされてしまった。
「これで、1対1…お楽しみの時間の始まりです」
「楽しい時間…?あなたにとっては、でしょ?」
冷や汗をかくサクラはキョウジの声におびえる自分を感じた。
あの2人は自分と同じく推薦組で、自分もその実力を認めている。
その2人をアルヴァトーレとの戦いで手傷をおったとはいえ、あっさりと撃破した彼の実力はおそらく今大会でも最強クラスだろう。
彼を突破しなければ、決勝へ行くことは夢のまた夢だ。
「仕方ないわね…応じてあげるわよ。その決闘に!!」
機体名:アルヴァトーレ・オクト
形式番号:GNMA-XCVIIOCT
使用プレイヤー:叢雲恭二
ガンダム00に登場する大型モビルアーマー、アルヴァトーレをベースに改造したガンプラ。
ミラージュコロイドではなく、装甲の表面を擬態させることのできる迷彩システム、オクトカムを本格的に採用しており、起動中はセンサーにも反応しない。
それを最大限に活用するため、GN粒子を放出する疑似太陽炉を排除し、核融合炉を採用している。
また、ファングの代わりに搭載されたリフレクタービットにはビームの軌道変化だけでなく、ミサイルの軌道プログラムの変更を行うシステムが加わっており、それによりビームやミサイルでオールレンジ攻撃を行うことが可能となっている。
疑似太陽炉がないことで、GNフィールドの展開が不能になっているものの、その点はリフレクタービットと強化された対ビームコーティングで補っている。
なお、この機体はあくまで叢雲恭二が搭乗する本来のガンプラのガンダムシュピーゲル・オクトの補助ユニットの位置づけに過ぎない。