「今だ、ミサちゃん!いけぇ!!」
「うん!トランザム!!GNバズーカ、出力最大!!」
ギアナ高地で、トランザムしたアザレアのGNバズーカにGN粒子を最大までチャージしていく。
ターゲットがリーダー機であるガンダムAGE-FXベースのガンプラへ向かうことを知ったクシャトリアベースのガンプラがIフィールドを利用して支援防御しようと動くが、その動きを呼んでいた勇太に阻まれる。
「いかせない!!」
超大型メイスを振るい、四枚羽根を力任せに破砕する。
胸部拡散メガ粒子砲が発射されるが、ナノラミネートアーマーの対ビーム防御を信頼して装甲のみで受け止める。
「はあああ!!」
超大型メイスを大きく振り回し、逆手に握りなおす。
すると、柄の部分からビームサイスのような鎌状のビームが出る。
「何!?」
「切り裂け!!」
ビームの鎌でクシャトリアが真っ二つに切り裂かれ、爆発とともに消滅する。
その間に、アザレアのGNバズーカが発射される。
発射されたビームをガンダムAGE-FXがダイダルバズーカで相殺しようとするが、トランザムによる粒子量の増加が出力増加に直結したのか、そのまま押し切られる形でビームの中へと消えていった。
「決まったーーーー!!彩渡商店街ガンプラチーム、圧倒的な力を見せ、見事、決勝進出です!!」
「いやったーーーーー!!!!」
勝利が決まり、シミュレーターから飛び降りたミサは両手を上げて素直に喜びをあらわにする。
これまでタウンカップ予選すら突破することのできなかった自分のチームがまさかここまで進むことができるとは思いもよらなかった。
「やったね、次勝てばジャパンカップ優勝で、君の願いが叶うよ」
「うん…!これも勇太君が私のチームに入ってくれたおかげだよ。ありがとう!!」
「それ、優勝するまで取っとかないとだめだよ、ミサちゃん」
「えへへ…でもいいじゃん!うれしいのはうれしいんだから!!」
ニコニコ笑顔を見せるミサにつられ、冷静さを保とうとする勇太も思わず表情を柔らかくしてしまう。
そんな2人のほほえましい光景をカドマツはニヤニヤ笑いながら見つめる。
「うーん、それだそれ。やっぱ、若いやつはこうじゃないとな。ロボ太、よーく見とけ。これが同年代の男と女という奴さ」
カドマツの言っている意味がよくわからないロボ太だが、これも一つの学習なのだろうと思い、首を縦に振った。
「あー、さっぱりした…さてっと!!」
風呂から出て、パジャマ姿になった勇太はさっそくバルバトスの修理を始める。
カドマツとロボ太は晩ご飯の買い物のために出ていて、今部屋にいるのは勇太だけだ。
バルバトスの現状を見ると、やはり拡散メガ粒子砲を受けた個所の装甲は焼けている。
塗料を塗りなおしておかないともしかしたらナノラミネートアーマーが劣化してしまうかもしれない。
さっそく持ってきた塗料でバルバトスの装甲を塗りなおす。
(決勝戦は8チームが同時に当たって、最後に生き残ったチームが優勝になる…。弾薬や推進剤の補給は特定地点でできるけど、修理のためのインターバルはない…)
これまでのバトル以上に、自機に負担をかけずに最後まで戦い抜ける状態を作る必要があるルールで、勇太は持ってきたほかのガンプラのパーツを見る。
(フルアーマー化が必要だ。機動力を確保したうえで…)
「勇太君、入っていー??」
「ミサちゃん?いいよ!」
決勝戦のミーティングかと思った勇太はパーツを机の上に置き、部屋の鍵を開けてミサを中に入れる。
「ごめんね、勇太君。勇太君のバルバトスが気になっちゃってさ…って、あれ?勇太君、もしもーし!」
急に黙り込んでしまい、動かなくなった勇太の様子に疑問を浮かべ、ミサは彼の目の前で手を振る。
今のミサはピンクをベースとしたパジャマ姿で、風呂から出たばかりなのか肌や髪がしっとりしていて、いつもは感じないような色気が感じられた。
ミサが至近距離に近づいた際、勇太は彼女のシャンプーやボディーソープの匂いを感じてしまったようで、頭の中でお風呂で体や頭を洗うミサを思い浮かべてしまっている。
ミサの声を聴き、ようやく正気に戻った勇太は頭の中の湯気に満ちた光景を必死に追い払う。
「あ、ごめん。ぼーっとしてた…。疲れたのかな…?」
「そっか、じゃああんまり長くいちゃだめだね」
「だ、大丈夫だよ。それで、僕のバルバトスがどうしたの?」
「うん。さっきのバトルの映像を見たけど、あんなビームを間近に受けても、本当に大丈夫だったのかなって…」
ミサは勇太が座っていた椅子に座り、塗料を塗り終えたばかりのバルバトスを見る。
ビームで一部が融解した超大型メイスも直っており、万全な姿に戻っていることにミサは一安心する。
「大丈夫だよ。武器や装甲の隙間のチェックが必要だけどね。やっぱり、ナノラミネートアーマーはすごい」
「だよねー。あれって滅茶苦茶頑丈じゃん。衝撃とか熱を与え続ける攻撃には弱いっていうのは分かるけど、それでもなかなか爆発しないモビルスーツってだけでも…」
「まぁ、あの作品ではモビルスーツも戦艦も簡単には壊れないって話だし」
「あ…それともう1個あった!勇太君、明日のガンプラフェスティバルで行きたいところは決まった?」
「ガンプラフェスティバルか…あ、まだパンフレット見てなかったよ」
「もう、一緒に回るの楽しみにしてるんだよ?ちゃんと見とかないと!」
「ごめんごめん。今見るから」
頬を膨らませるミサに詫びを入れ、勇太はガンプラフェスティバルのパンフレットを読み始める。
これはジャパンカップの決勝戦前日に行われるもので、ライブや出店、ガンプラ製作教室、バトルステージなどの様々なイベントを楽しむことができる。
もちろん、ジャパンカップの選手たちも楽しむことができ、決勝戦に参加するチームにとっては良い息抜きとなる。
これは勇太がガンプラバトルから離れている間にジャパンカップで追加された余暇で、復帰してジャパンカップについて調べているときに勇太は知った。
「明日、朝ごはんを食べたら早速行こうよ!きっと楽しいからさ!私と2人で!」
「え…カドマツさんとロボ太はどう…」
「別にいいじゃん!2人とは別でも!もしかして、勇太君は私と一緒に回るの嫌なの?」
「そ、そういう意味じゃなくって、ええっと…」
別にミサと2人で行くのが嫌というわけではない。
女の子と2人っきりで行くというのが恥ずかしいだけだ。
だが、こうして口ごもってしまうのがミサにとって不満だった。
翌日、スタジアム前の広場は多くの出店が並び、ジャパンカップがきっかけで集まったすべての人々がこのフェスティバルを楽しんでいた。
ライブステージでは現在、ガンダムSEEDのアサギ、マユラ、ジュリそっくりな3人組のアイドルユニット『M1ガールズ』によるライブが行われている。
他にも、ガンダム関連の歌を限定にしたカラオケ大会が行われているステージもあり、そこでは一定の点数以上を出した参加者にガンプラがプレゼントされている。
一緒に見て回っている勇太とミサも例外ではなく、ミサの手にはボールを模した林檎飴やSDガンダムのイラストが描かれた風船が握られている。
「うーーん、おいしーーー!」
「ミサちゃん、よく食べるね」
「いいじゃん!せっかくのお祭りなんだもん!」
「まぁ、そうだね…」
勇太も出店でお好み焼きや焼きそばなどを食べており、ミサのことを言える立場ではない。
なお、ガンプラフェスティバルで使うお金はカドマツから受け取っていて、勇太が管理している。
「(カドマツさんに感謝しないと)あ、ここだここ」
勇太たちがたどり着いたのはガンプラ製作教室で、そこではジャパンカップのスタッフがガンプラ初心者にバリの取り方や色の塗り方などのレクチャーをしていた。
もちろん、初心者以外でも参加は可能だ。
「ん…もしかして…」
帽子とスタッフ用の上着を着ているため、普段とは雰囲気が違うものの、どこか見覚えのある後姿が気になり、勇太はじっとその人を見る。
「そうじゃ。こうやってニッパーを使うと、バリがくパーツを外すことができる。おっと、いきなり次々切ってしまうと後からわからなくなるぞ?」
レクチャーする声は明らかに勇太にとって聞き覚えがあり、それで彼の正体が分かった。
「もしかして…タケルさん?」
「うん?その声は…勇太か?」
勇太の声が聞こえたその人物は振り返る。
勇太の予想通り、彼はタケルだった。
「この人がタケルさん!?でも、どうしてここにいるの?」
「なんじゃ?俺がここにいちゃあいかんのか?」
「そ、そういう意味じゃなくって…その…」
勇太にとっては知人の1人だが、ミサにとっては世界レベルのファイターの1人で、カリスマだ。
少し緊張した面持ちでタケルを見ている。
そんな彼女を見たタケルはハハハと大笑いをする。
「冗談、冗談じゃ。ジャパンカップが呼んだんじゃ。アルバイトとしてな!お前たちもガンプラ、作っていくか?当然、作って終わりじゃないぞ?」
ここにはフェスティバルでも一番人が集まる場所だ。
当然、作って持って帰って終わりというわけではなく、併設されているシミュレーターを使い、作ったばかりのガンプラで無料のバトルをすることができる。
「はーい!こちらはバトルステージでーす!こちらでは誰でも参加可能で、5連勝した方にはプレゼントがあります!ぜひご参加くださーい!」
MCのハルが商品であるジャパンカップ限定カラーのネラティブガンダム(C装備)を紹介しながら、バトルステージの近くを通る人々に呼びかける。
既にガンプラを完成させた多くの子供たちが参加しており、1対1のバトルを楽しんでいる。
「お前らも作っていくか?」
「もちろん!勇太君も、いいよね」
「うん。じゃあ、お願いします。タケルさん」
「おう!」
2人はさっそく作るガンプラを決め、隣り合うように席を確保してから作り始める。
勇太が作っているのはダークグレーのディジェで、ミサはヴェルデバスターだ。
「ま、バトルの参加者資格はないに等しい。できたら、さっさと5連勝して景品もらって来い。あと、勇太。覚醒は使うなよ?」
「分かってますよ」
このイベントでは小さい子供も参加しており、使える人物が限られる覚醒を使ったら大人げない。
それに、勝つのではなく楽しむのがこのイベントのため、さっそく勇太はシミュレーターに乗り込み、完成したばかりのディジェを乗せる。
コックピットは全周囲モニターとなり、ノーマルスーツは今回に限り、ガンダムNTのヨナが着ていたサイコスーツを纏う。
「やっぱり、重たいな…。ノーマルスーツや耐圧服と大違いだ」
サイコフレームが仕込まれているだけあって、着てるだけで体力が奪われるくらい重たい。
中にある機能はすべてカットしているため、ニュータイプに一時的になれるわけではない。
非効率ではあるが、この機体もヨナが搭乗していたということでお遊びとして着込んでいる。
コックピットが開き、戦闘の舞台となる月面の光景がモニターに映る。
「沢村勇太、ディジェ・オービタル、出るよ」
ディジェがカタパルトから射出され、月の低い重力に従ってゆっくりと降りていく。
降りていく中でディジェは変形し、バズーカを背負ったデルタプラスのウェイブライダー形態といったような姿へと変わる。
さっそく、まずはビグロが敵機として出現し、勇太のディジェに向けてメガ粒子砲を発射するが、ウェイブライダーとなって機動性が上がっているディジェには簡単に回避することができた。
覚醒は使わないが、ガンプラづくりもバトルも手加減する気にはなれない。
「もらった!!」
バズーカから徹甲弾が発射され、ビグロの頭部から下部にかけて大穴ができる。
少しの間、スパークした後でビグロはディジェに対して何一つダメージを与えることができないまま爆発した。
「よし…レールクレイバズーカは良好だ。次の機体は…」
続けて勇太の前に現れたのはナイチンゲールで、すべてのファンネルを発射してくる。
10基のファンネルが飛んでくるが、焦りを見せず、すぐにやるべきことを頭に浮かべ、行動に移す。
モビルスーツ形態に変形し、レールクレイバズーカを持ったディジェが周囲に散弾を発射する。
ばらまかれた散弾によってファンネルの動きが制限され、撃ってきたビームも勇太にとっては回避しやすいパターン通りのものだった。
だが、ナイチンゲールの武器はファンネルだけでなく、モビルアーマー並みに巨大化した代わりに得た出力もそれだ。
腹部のメガ粒子砲を発射し、散弾ごとディジェを焼き尽くそうとする。
その前に、再びウェイブライダーに変形して射線から逃れ、ビームライフルでファンネルを撃ち落としながら接近していく。
発射された散弾モードのメガビームライフルの弾幕をかいくぐり、急速変形する。
一気に減速したことで強いGを感じるが、サイコスーツのせいなのか、耐えられないものではない。
左手に握るビームサーベルをナイチンゲールの頭部に突き立てた。
コックピットを失ったナイチンゲールは撃墜判定を受け、消滅した。
「次は…」
「私だよ!!」
「ミサちゃんか…うわ!!」
さっそくあいさつ代わりにと次々とミサイルとビームが飛んできて、大急ぎでバルカン・ファランクスでミサイルを撃ち落として安全な場所を確保する。
月面には両肩や胸部などに内蔵されている火器をすべて展開しているヴェルデバスターの姿があった。
「勇太君、今度こそ私が勝つよ!」
「いきなり攻撃してくるなんて…ミサちゃん相手なら使いたいけど…!」
それよりも、まずはチームメイトのミサの実力をしっかりと見たいと考え、反撃の徹甲弾を発射する。
後ろに下がって射線から逃れたミサだが、徹甲弾が月面に命中すると同時に大きな衝撃がコックピットに走る。
「うわわわ!!やっぱり、これって…」
「破砕砲とレールガンを参考にしたんだ。もっとも、威力が強すぎたかな…」
2発目でレールクレイバズーカの砲身のダメージ警告が響く。
破砕砲のような砲身部分の強化を行うことができなかったがために耐久度が通常のクレイバズーカと同じものになっている。
ノーマルの砲弾と散弾を使うことはできるが、もうレールガンとしての機能は使えない。
トランスフェイズ装甲のヴェルデバスターにそれらの弾を使っても意味がないため、迷わず勇太はレールクレイバズーカを手放し、ビームライフルを発射する。
狙うのは装甲ではなく、持っておるバヨネット付きのビームライフルだ。
(ヴェルデバスターは格闘戦にも対応できるようになったバスター。けど、それが可能なのはバヨネットの付いたビームライフルだけ。それを狙えば!)
あとは弾幕をかいくぐり、接近戦というパターンを作ることができる。
だが、ビームは確かに勇太の狙い通りにビームライフルに命中したが、それと同時にかき消されてしまう。
「ビームコーティング!」
「勇太君がそれを狙うって分かってたから!」
バックパックのビーム砲とガンランチャーをお返しに発射する。
胸部に追加されている姿勢制御用スラスターで後ろへ下がり、弾幕をかいくぐるが、それでも一部被弾し、そのたびにコックピットに衝撃が走る。
「ここでオマケ!!」
弾切れになった両肩のミサイルポットが強制排除され、本来の肩パーツが露になるが、その中から2基のインコムが飛んでいく。
弾幕に気を取られている間に、死角からさらに一撃を叩き込もうとインコムは左右に配置される。
「なら…!!」
勇太はビームライフルに外付けされたリボルビングランチャーから閃光弾を発射する。
アザレアのビームで撃ち抜かれると同時に強い光を発する。
「くっ…光!?」
強い光に視界を包まれ、消えたときにはもうディジェの姿はない。
「どこ!?どこに…後ろ!?しまっ!!」
後ろから飛んでくるビームが両肩から伸びていたインコムのワイヤーを焼き切る。
これで、インコムによるオールレンジ攻撃はできなくなった。
そして、そこからディジェが左腕のシールドを強制排除し、左手にビームサーベルを握った状態で接近戦に持ち込む。
「これだけ近づければ!!」
「くぅーーー!!」
対ビームコーティングで覆われたビームライフルでビームサーベルを受け止める。
「勇太君!どう!?私だって、強くなったんだよ!」
「分かってるよ。それくらい。一番近くで、ずっと見てきたんだから…」
「勇太君…」
強くなった自分を勇太が認めてくれる。
今までで一番うれしく思い、思わず目に涙を浮かべてしまう。
「けど、今は真剣勝負。負けるつもりはないよ!」
「当然!!」
「へっ…あいつら、いい顔してやがるな…」
バトルの状況をモニターで見ているタケルは嬉しそうに笑う。
あの勇太がこれほど楽しくガンプラバトルをしている。
きっと、それは勇武が願っていたものかもしれない。
(おい、勇武…。てめえの弟が日本一になるぞ。お前が叶えることのできなかった夢だ…)
「すっげえ、あんなバトルどうしたらできるんだよ」
「彩渡商店街ガンプラチーム!?聞いたことないぞ!!」
「すげえ、俺もあんなバトルしてみてえ…」
子供たちはみんな勇太とミサのバトルに魅了されている。
かつて、自分たちがガンプラバトルに初めて取りつかれたときのように。
その時バトルをしていたファイターと同じことを勇太とミサができるようになった。
(だが、これはまだ途中だ。まだまだいける、そうだろう?)
そして、翌日のスタジアム。
開始1時間前にはすでに満席になっており、外には入れなかった観客たちのために急きょ巨大モニターを設置することとなった。
「お集りのみなさん、たいへん長らくお待たせいたしました!いよいよ、今年度のジャパンカップ決勝戦の幕が上がります!!」
「決勝に勝ち進んだ8チームには、総当たりで戦ってもらう!最後まで生き残ったチームが日本一となり、私と戦うことができる!さあ、勝ち上がって来い!そして、私に熱いバトルをさせてくれーーー!!」
このような事態となった最大の要因と言えるミスターガンプラの熱い言葉に会場が今まで以上の熱気に包まれる。
「既に出場者はシミュレーターに乗り込み、出撃準備を開始しています!あと3分で運命の戦いが始まります!!」
「勇太君のガンプラ、もうバルバトスの面影がないね…」
「ここまでする必要があったのか…?」
今回割り振られた戦艦、ガウンランドの中で勇太のガンプラを見たミサとロボ太は目を丸くする。
かろうじてバルバトスのマニピュレータを見ることができるが、灰色の増加装甲によって全身が隠れており、頭部に至ってはかぶせられたディジェのような一つ目の装甲によって隠れてしまっている。
バックパックには4枚羽根の展開式のブースターが外付けされており、それには破砕砲やミサイル、ロングライフルにビームライフルなど、多彩でありったけの武装を銃火器を詰め込んでいる。
まるでモビルアーマーのようだが、これでもモビルスーツとしてシステムは認識しているのだから驚きだ。
「何日か前から準備をしていたんだ。可能な限り手数を増やして、最後まで戦い抜けるようにね。ある程度はミサちゃんとロボ太を運べるだけの余裕もある」
「しかし…このブースター、射出することができても旋回すらできないのではないか?」
ロボ太の言う通り、このブースターは自由に飛び回ることを最初から考慮されていない。
下手な旋回をした場合、バラバラになるか墜落するかの悲劇が待っている。
当然、それに捕まって乗ることになるアザレアとフルアーマー騎士ガンダムもただでは済まない。
「出来上がったのは朝6時、だからテストもできてないよ。射出されても仮にブースターがまともに動かせなかったら、もう切り離すしかない。でも、切り離すだけならその場で武装をばらまくことができるよ」
だからこそ、積み込む武装は実弾からビーム、爆発物まで多種多様に選んだ。
相手が複数チームで、しかも実力者ぞろいである以上、逸脱した手段を選ばなければ勝ち残ることもできない。
「勇太君、接触回線を使ってミサイルとかの発射命令をするのとかって、できる?」
「うん。だから、僕の手が回らないときはミサちゃんとロボ太もお願い」
「心得た」
「勝ちに行こう、みんなで!」
もう、これは商店街を守るために立ち上がったミサだけの戦いではない。
勇太やロボ太、そしてカドマツといった仲間たちと一緒に挑む決戦だ。
3人の通信機からカドマツの声が流れる。
「勇太、ミサ、ロボ太、やってやれ!お前らならできる!」
「はい、行ってきます」
先に勇太はバルバトスのコックピットに乗り込む。
しかし、なぜかミサが後からついてきて、コックピットの前で浮かんで止まる。
「ミサちゃん、どうしたの…?」
「勇太君、ちょっとだけヘルメット…取ってくれる?」
「う、うん…いいけど…」
まだ格納庫には酸素が充満しており、あと2分少々時間が残されているため、急げば問題はないだろう。
ヘルメットを外し、ミサを見ると、急にバイザーを上げたミサが勇太の前へ行く。
そして、いきなり勇太の前髪を掻き上げ、額に唇を押し付けた。
「え…?」
「お、お、お、お守り、がわり!!」
一機に顔を真っ赤にし、その顔をバイザーで隠したミサは逃げるようにアザレアのコックピットへ飛んでいく。
コックピットを閉めた勇太はミサにキスされた箇所に手を当てる。
顔を真っ赤にするが、だがなぜか嫌とは思えず、むしろうれしいという感情が沸き起こるのを感じた。
なんとか気持ちを落ち着かせようと、まずは阿頼耶識システムでバルバトスと接続する。
「う…!はあ、はあ…」
やはりサイコ・ザクのバックパック以上に無茶苦茶なスクラッチビルド兼ミキシングビルドで出来上がった展開型追加ブースターを装備しているため、阿頼耶識に伝わるデータ量は一気に増えている。
一瞬めまいがしたが、動かすのには支障がない。
既にアザレアとフルアーマー騎士ガンダムがブースターに捕まっていて、ハッチも開いている。
「よし…バルバトス・レーヴァテインType-B、沢村勇太、出るよ」
「井川美沙、アザレア、行きまーす!!」
「ロボ太、フルアーマー騎士ガンダムで出る!」
バルバトスが飛び立ち、グリプス宙域へと飛んでいく。
ネモやリック・ディアス、ハンブラビにハイザックといった、エゥーゴとティターンズ、アクシズのモビルスーツの残骸が漂う、グリプス戦役最後の戦場の跡地で、役目を終えたコロニーレーザーのグリプス2が再び目覚めの時が来ることを知らずに眠りについている。
射出され、勇太は追加ブースターを起動させようとするが、火が付かない。
「くっ…やっぱり、もっと早く完成させるべきだった!」
「勇太君、敵!!」
同じグリプス宙域にPGのレッドフレーム改とブルーフレームセカンドLが現れ、宙域を漂うバルバトス達に狙いを定める。
「なんだ、この機体!?トラブル起こしてるのか」
「運が悪かったな、PGを前に!」
「主殿!狙われているぞ!!」
「くっ…OSを見ないと」
「そんなの時間ないよ!だから!!」
アザレアは左のマニピュレーターで追加ブースターを殴る。
殴った拍子にシステムが繋がり、追加ブースターが正常に起動する。
「昭和のテレビみたいな直し方…だけど、いい!!」
まっすぐしか飛べないバルバトスが追加ブースターで一気に加速し、正面の2機に接近していく。
「邪魔ーー!!」
叫びながら、追加ブースターに積まれているミサイルを発射した。
機体名:ディジェ・オービタル
形式番号:MSK-008-O
使用プレイヤー:沢村勇太
使用パーツ
射撃武器:ビームライフル(リボルビングランチャー搭載)
格闘武器:ビームサーベル
シールド:デルタプラス
頭部:ディジェ(NT)
胴体:ディジェ(NT)(姿勢制御用スラスター搭載)
バックパック:デルタプラス(レールクレイバズーカ搭載)
腕:ディジェ(NT・隊長機)
足:ディジェ(NT)
勇太がガンプラフェスティバルのイベント用に作ったガンプラ。
NT版のディジェをベースとしており、ウェイブライダーへの変形も可能としている。
武装は閃光弾のみが内蔵されたリボルビングランチャーを下部に搭載したビームライフルや破砕砲やアトラスガンダムのレールガンを参考にして試作したレールクレイバズーカなど、勇太のこれからのガンプラづくりとバトルのための試みも施されている。
設定は逆襲のシャアと最近勇太が呼んだ『機動戦士MOONガンダム』を意識しており、アムロが搭乗していたリック・ディジェをZプラスを参考にして改修し、可変機能などを追加したものの、バックウェポンシステムによる高火力や「モビルスーツは歩兵としての機動兵器」というアムロの認識からリ・ガズィが採用されたために搭乗されることはなかったとしている。
なお、NT版のディジェをベースにした理由は会場にリック・ディジェのガンプラがなかったこと、そして作っている間にその設定を思いついたため。