ガンダムブレイカー3 彩渡商店街物語   作:ナタタク

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第4話 兄の遺産

「勇太君、こっちこっちー!!」

「ここは…」

彩渡商店街ガンプラチームに入った後の休日、勇太はミサに連れられて商店街に来ていた。

そして、彼女に案内されたのがこの商店街唯一のプラモ専門ショップだ。

「ああ、ここはバルバトスを手に入れた店だ」

「そうなの!?ってことは初めて来るんじゃないんだね。それでも、私のチームに入ったんだから、ちゃんと父さんにあいさつしないと!」

「ん…?父さん…?」

ミサに引っ張られ、プラモショップに連れ込まれると、カウンターで新聞を読んでいる、青い模様のある白の服とピンクのエプロンをつけた茶髪でメガネをかけた男性が新聞を置いて2人を出迎える。

「お帰り、ミサ」

「ただいま!あ、あのね父さん…紹介したい人がいるの…」

「ちょ、ミサちゃん!?」

しおらしく、まるで自分の恋人を紹介するようなミサの言動に顔を赤く染める。

以前にミサに路上で抱き着かれたときのことを思い出してしまっているのだ。

「ああ、新しいチームメンバーを見つけたんだね」

だが、ミサの父はまるで分っているかのように柔和な表情で勇太に目を向ける。

「あ、君はこの前店に来てくれた…」

「はい。沢村勇太です、お世話になります…」

「あ、あのさぁ、父さん…”き、君はまさか娘の…!?ぬぅ、許さん!!表に出ろー!”とかないの?」

「ないよ」

おいてけぼりにされそうになったうえ、父親の反応が不満だったためか、2人の会話を遮るように、本来望んでいた反応を口にするが、即答で否定される。

より不満が強まったのか、頬を膨らませる。

(ちょっと、子供っぽいかな…?)

そんなミサの様子を見た勇太は若干苦笑する。

「ミサの父親の井川雄一です。すまないね、強引に誘われたんだろう?」

「いえ、そういうわけでは…」

「上がっていいよ。ミサ、新しいチームメンバーを部屋に案内してあげなさい」

 

「…ま、まぁ、流れでこうなってるけど…いいのかな?」

「父さんの奴…なんで年頃の娘の部屋に男を入れるのを良しとするのかなー…」

よほどユウイチの反応が気に食わなかったのか、プリプリ怒りながらジュースを飲む。

部屋の中は女の子らしく、ぬいぐるみやかわいらしい小道具が置かれている。

ただ、特徴的なのはそんな空間の中にガンプラやガンダムシリーズ関連のグッズがあるということで、机の上にはアザレアが置かれている。

なお、母親はいま、パートで出ているとのことだ。

「そうだ、ミサちゃんに見せたいものがあるんだ」

「え??何何!?もしかして…珍しいガンプラとか!?」

みせたいもの、という言葉に反応して身を乗り出して勇太をじっと見る。

目をキラキラさせており、とても先ほどまで怒っていたのが嘘に思えてしまう。

勇太はそばに置いたリュックサックから緑色の丸い機械を取り出す。

「これって…ハロ!?」

「うん、兄さんがリージョンカップに初めて優勝したときに父さんからプレゼントしてもらったって。この中には戦闘データやガンプラに関するデータがいろいろ入ってる。もしかしたら、今後の役に立つかなって思ってさ」

ハロは十数年前から幼児から中学生を対象に販売されたトイボットだ。

現在もバージョンアップをしつつ販売が続けられ、ガンダムファンを中心に購入者が存在する。

なお、本来は勇太が言うような機能は持っていないものの、父親が改造したことでそれが可能となっている。

勇太はノートパソコンとUSBケーブルを出して、ケーブルでパソコンとハロを接続する。

すると、ノートパソコンに勇武のこれまでの戦闘データが出てきた。

「けど、戦闘データを集めて、そこからどうするの?」

「このデータを分析して、僕たちのガンプラの改造プランを作り出すんだ」

「すっごーい!まるでAGEシステムみたい!」

「確かにそれっぽいけど、あくまで提示するだけで、細かい調整は僕たちがしなくちゃいけないし、それに当然、ハロじゃガンプラを作れないから、AGEシステムのデータ解析オンリーバージョンって言ったほうが正しいかな」

「ハロ、ミサ!ハロ、ミサ!」

「しゃべった!?」

ハロに搭載されている機能を聞いただけでも驚きが隠せなかったミサだが、急にハロがしゃべりだしたことでもうどんな反応をすればよいのかわからなくなっていた。

 

そして、数十分後のゲームセンターで…。

「それじゃあ、まずはチーム戦の練習をしよっか!」

「そういえば、タウンカップまではあとどれくらい時間がある?」

「んー、そんなに長くはないよ。あと1週間くらい」

「そうか…だったら、早く初めてデータを集めないと」

ハロとバトルシミュレーターを接続した勇太は対ビームコーティングマントを新しく装備したバルバトスをセットする。

そして、耐圧服姿になって、バルバトスとともにニューアークの廃墟を模したステージへ飛び出した。

(ううー、やっぱり出撃前が一番恥ずかしい…)

既にフィールドで待機していたアザレアと接触回線をつなげると、すぐにミサの恥じらう声が聞こえてくる。

「恥ずかしいって…どうして??」

「だって、アバター登録したノーマルスーツに代わる間…その、は、は…」

「敵機が来たよ!」

「んもーーー!!乙女が恥ずかしいことを勇気をもって言いだそうとしてるときにー!」

バトルシミュレーターのCPUによって、勇太たちの周囲にドムやグフ、ザクⅡなどのモビルスーツが多数出現する。

今回のステージ設定はジオンによるニューアーク方位を突破するというのがクリア条件らしい。

そして、あいさつ代わりにとドム3機がジャイアント・バズを撃ちながら勇太たちに接近してくる。

「いくよ!!」

「うん!」

右手にメイスを握り、バルバトスが跳躍する。

そして、アザレアはザクマシンガンでゆっくりと動く弾頭を撃ち落とし、左手に持つジャイアント・バズで1機を撃墜する。

(なるほど…アザレアはある程度バランス良く攻撃できるように武装を設定してるのか…)

ピピピピッと敵にロックオンされたことを告げる警報音が鳴り、それと同時にドダイ改に乗ったグフ・カスタムがガトリングガンで攻撃を仕掛けてくる。

「やっぱりコンピュータだと動きが読みやすい…!乱入してくるプレイヤーと戦ったほうがいいかな」

メイスでドダイごとグフ・カスタムを地面にたたき落とし、滑腔砲をダメ押しとばかりに1発発射する。

起き上がろうとしていたグフ・カスタムの頭頂部に垂直になるように着弾し、機体が爆発する。

撃墜を確認すると、そのまま地上へ降下しながらも滑腔砲でビルの中に隠れていたザクⅠ・スナイパータイプのロングレンジビームライフルを破壊した。

「うわあ…やっぱり強い。けど、私だって!!」

マシンガンを腰部のウェポンラックにしまい、バックパックのジャイアント・バズ2丁を手にしたアザレアが上空に現れたガウから降下してくるドム・トローペン2機に向けて発射する。

背後からの攻撃で、気づくのが遅れた2機は逃げる暇もなく撃ち落とされたが、彼女に気づいた周囲のザクⅡが彼女に向けて攻撃を始める。

ケンプファーのバックパックの出力を利用し、低空で高速移動をして弾幕をしのぎ、バズーカをバックパックに戻して左手に握ったビームサーベルで1機を真っ二つに切り裂いた。

「やった!!このままドンド…ひゃあ!?」

上空から放たれた大出力のビームがシールドに直撃する。

ビームが収まり、焼け焦げてボロボロになったシールドを捨てたミサは上を見る。

上空にいるのはアッザムで、よく見るとその周辺には6基のリフレクター・ビットが浮かんでいる。

「改造ガンプラ…ってことは、乱入か!」

アッザムがリフレクター・ビットに向けて4門のメガ粒子砲を発射する。

リフレクター・ビットに次々と反射していき、真上からバルバトスにビームの奔流が襲う。

「く…反射機能をここまで高めてる!!」

バルバトスの反応速度でも逃げ切れないと悟った勇太は対ビームコーティングマントを強制排除し、真上に向けて投げる。

マントは数秒程度、ビームマグナムレベルのビームを遮ることができ、その間に勇太はその場を離れることができた。

「こんのぉぉぉ!!」

バックパックに装着したままバズーカを発射し、リフレクター・ビットを1基破壊した次の瞬間、アザレアに強い衝撃が走る。

「キャアアアア!!!これ、アッザムリーダー!?嘘、全然見えなかった!!」

上を見るが、アッザムリーダーが見えず、見えるのは檻の部分と周囲にほとばしる電撃だけだ。

「改造でアッザムリーダーを見えなくしたのか!!」

滑腔砲をリーダーがあるであろう場所に向けて発射する。

着弾と同時にアザレアの上部で小規模な爆発が起こると同時に、閉じ込めていた檻と電気が消えた。

「うう、今の電撃のせいで、動けないみたい…」

ガチャガチャと必死に両手のスティックを動かすものの、アザレアはうんともすんとも動かず、ツインアイの光も消えている。

「…バズーカ、借りるよ」

「え、勇太君!?」

メイスを置き、ミサからバズーカを半ば強引に借りた勇太はビームで弾幕を作るアッザムへ突っ込んでいく。

(アッザムリーダーは見えなくなってる。でも、アッザムリーダーを射出するために、どうしてもハッチを開かなきゃいけなくなる…!そこを突けば!!)

リフレクター・ビットを利用した四方八方からのビームの雨をよけつつ、バズーカと滑腔砲でリフレクター・ビットを1つずつ減らしていく。

先に滑腔砲が弾切れになり、それを投げ捨てるとバックパックに装着されている太刀を手にし、切り結んでいく。

相手も下から狙ってくることがわかっているのか、リフレクター・ビットを動かしてそれを盾にしようとする。

「遅い!!」

リフレクター・ビットの配置が完了する前に真下にたどり着いたバルバトスが残弾1となったバズーカを発射する。

発射された弾頭はアッザムの開きかけたハッチに命中し、大爆発を起こす。

中に残っているアッザムリーダーもその爆発によって消失し、ハッチの周囲に配置されているメガ粒子砲も砕け散る。

しかし、相手もただやられるわけではなく、残ったメガ粒子砲を撃ち、バズーカを撃つためにわずかに動きを止めたバルバトスの太刀の刀身を破壊する。

「くそ…!バズーカは弾切れなのに!」

武装がなくなったバルバトスに残っているのは拳だけ。

モビルファイターのような素手での格闘戦主体のガンプラを使ったことがない勇太にはつらい状況だ。

しかし、それは1対1ではの話。

今の最大の違いは…。

「勇太君!」

「ミサちゃん!!」

仲間であるミサがいることだ。

機能が回復したアザレアがマシンガンでアッザムの注意をひきつつ、左手に持っているメイスをバルバトスに投げ渡す。

メイスを受け取った勇太は残りのガスを確認する。

(今のガスの残りなら…やれる!!)

スラスターを利かせ、一気に上空へ飛んだバルバトスは至近距離からアッザムに向けてメイスを振り下ろす。

至近距離まで接近されたアッザムには攻撃手段がない。

メイスによる強烈な一撃を受けたアッザムはミノフスキー・クラフトにダメージが生じたのか、浮遊できなくなって地上へ転落、爆散した。

 

「ふううう…」

ガンプラバトルを終え、ハロを抱えてシミュレーターから出た勇太はカバンから水が入ったペットボトルを出し、それを飲み始める。

「やっぱり、10年のブランクがあるせいか、思ったよりも動けないところがあるな…」

他人が完成させたガンプラであるという理由もあるかもしれないが、それよりも自分のバトルの技量が若干低下しているのを感じられた。

しかし、それでも今の勇太の心の中にあるのは、10年前から感じることのなかった充実感だ。

「お疲れーーー!勇太君!」

後ろからミサが背中をたたきながら声をかけてくる。

級にたたかれたこともあってか、口の中に残った水を吐き出してしまい、のどに残った水も逆流して鼻道に入ってしまう。

「ああ、ごめん…!けど、アッザムがこんなに改造されてたなんて…」

「ガンプラの可能性は無限大ってわけだよ。きっと、これからの戦いはモビルアーマーだけじゃない。PGや戦艦といったいろんなガンプラが出てくる。うかうかしてられないね」

「うん!そういえば、今回のバトルでどんなデータが取れたのかな??」

「ああ、調べてみよう」

すぐにノートパソコンでハロが回収した戦闘データを調べ始める。

「ふーん、じゃあ次にこういうリフレクター・ビットを使う相手が出たら、実弾を利用して…」

「可能であれば、接近して破壊する手もあるよ。今回のあれはマシンガンで壊すには厳しいし…」

「じゃあ、ガトリングガンを用意しようよ。今のバルバトスって、短期決戦型に近いし」

こうした、勇太とミサのガンプラ談義はゲームセンターが閉店するぎりぎりの時間まで続いた。




機体名:アザレア
形式番号:ASGT-01A
使用プレイヤー:井川美沙
使用パーツ
射撃武器:ザク・マシンガン
格闘武器:ビームサーベル
頭部:アカツキ
胴体:シェンロンガンダム(EW)
バックパック:ケンプファー
腕:インパルスガンダム
足:ローゼン・ズール
盾:シールド(Ez8)

ミサがアカツキをベースに作ったガンプラ。
白とピンクをベースとした色彩で、バックパックに搭載されている2丁のジャイアント・バズと扱いやすいザク・マシンガンによる後方支援能力が高い。
そのため、滑腔砲が弾切れとなったバルバトスに武装を貸し与えるという場面がある。
ただし、こういうオーソドックスな武装がメインで、隠し玉や切り札となりうるものがないためか、相手の予想外な攻撃に対して弱い一面がある。
今後はハロが収集するデータと提示される改造プランなどを軸にさらなる改造を行うとのこと。
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