「さあ、全方位レーザーだ!!」
再びヴォワチュール・リュミエールから発射されたビームが今度は拡散してバルバトスを襲う。
ビームの雨をどうにかグレートキャニオンの山の影を利用して回避していき、ビームが収まったと同時にビームライフルで狙撃する。
しかし、関節に向けてはなったはずのビームは命中したと同時に蒸発し、関節部は無傷な姿をさらしていた。
「やっぱり、関節にもビームコーティングを」
「初期世代の必須アイテムさ!!」
一気に高度を下げ、腰に差している刀を抜いたケンプファーがバルバトスに迫る。
直線で迫ってくる相手に対して、バックパックから滑空砲を出すと、照準をケンプファーの頭部に合わせて発射する。
しかし、やはり相手はブランクがあるとはいえプロのファイターであり、速度を維持したまま最小限に機体をそらすことで高速で飛んでくる弾丸をよける。
おまけに持っている刀で滑空砲を切り裂いてしまった。
「でも…いい!!」
もう使い物にならない滑空砲を強制排除し、ソードメイスと刀がぶつかり合う。
「少し動きが鈍いみたいだ…。けれど、それが君の全力ではない。そうだろう??」
「当たり前です!まだ…全部を見せてるわけじゃない!」
「それでいい!もっと見せてくれ、君の力を!!リージョンカップ決勝から、私は君と戦うのを心待ちにしていた!!」
「リージョンカップ…」
その時、確かにミスターガンプラは勇太の戦いを見ていた。
覚醒エネルギーのバリアでサイサリスの核攻撃から仲間を守り、とどめの一撃を与えた動画は今でもガンプラバトルファンの間で有名になっている。
「待っていてくれたことはうれしいですけど…なら、もっと別の形もあったんじゃないですか??それに、僕は一度…ガンプラを…」
「君は確かに一度、戦う目的を…ガンプラを作る目的を見失った。君のお兄さんのこと、すごくショックだったのだろう。そんな経験がない私がわかるなどとおこがましいことは言わない。けれど、君は戻ってきた。そして、いまの君はお兄さんが果たすことのできなかった夢をつかみ、ついにその先へ向かおうとしている!!私が戦いたかったのは…その先へ向かおうとするまさにその時の君だ!!」
その最高のタイミングがジャパンカップ決勝戦の後のエキシビションマッチ。
その大舞台で互いのガンプラとプライドをぶつけ合う。
理由はただ一つ、自分が作ったガンプラ、自分が戦うガンプラこそが最強だと証明したいから。
「私は…私はただひたすらにうれしい!!こうして戦えることが…ここへ戻ってきたことが!!」
つばぜりあう中で、再びヴォワチュール・リュミエールにビームが収束し始める。
「(どういうことだ…?あのケンプファーの腕のパワーに衰えがない。発射のためのエネルギーを控えていたのか、それとも…)おおおおお!!」
発射直前にバルバトスがケンプファーに頭突きをし、わずかにケンプファーの体があおむけ気味に倒れかけ、発射されたビームが上空へ打ち上げられた。
「フフフ、やはり簡単には通してくれないか」
一時動かなくなったカメラが再びもとに戻り、ソードメイスを構えるバルバトスを見るミスターガンプラはうれしそうに笑う。
VRが生み出す無機質な空間の中で、2人は言葉で表せない熱を胸の中で感じていた。
(兄さん…ここから先に、もう兄さんが作ったレールはない。けど…いいよね?僕で、いいんだよね…?兄さんと一緒にレールのない道を進むのは)
(私に彼の数年間をとがめる資格はない。私たちは同じだ。一度は見失った道を、ガンプラの道をこうした再び歩き出そうとしている。感謝する、君の戦いが私に道を示してくれた)
もう、これ以上の言葉は必要ない。
ただ必要なのはぶつかり合う刃とかすめる弾丸、そして光だ。
「さあ、わかっているだろう。この高まりを持っているならできるはずだ!」
「はあ、はあ…わかって、います!!」
「「勝負だ!!」」
2体のガンプラが一斉にオーラに包まれていき、ケンプファーの両肩や脚部をはじめとした装甲の一部が展開し、一気に放熱していき、装甲と同じ赤のオーラを帯びる。
一方のバルバトスも、一度は青いオーラを帯びていたが、それが次第に炎のようなオレンジへと変わっていく。
「主殿…??」
「覚醒の色が…変わった??」
今まで青だったバルバトスの、というよりも勇太の光が変わった意味が観戦するミサとロボ太にはわからなかった。
まだまだ覚醒のすべてを知ってるわけではない彼らには仕方のないことだ。
「覚醒の光…ここまでは君のお兄さんの勇武君が歩めなかった道を進んでいた。だが…もう彼は沢村勇武の弟ではなく、ただ一人のファイターとして…『確立』した。自分自身を」
「この感覚…これなら、いける!!」
距離をとっていた2機が再び接近し、つばぜりあう。
強烈な覚醒エネルギーのぶつかり合いが衝撃波となって周囲を駆け巡り、岩山にひびが入り、クレーターが生まれる。
しかし、この状況で不利になるのは勇太の方で、そこから再びヴォワチュール・リュミエールのビームが飛んでくる。
ナノラミネートアーマーで、ビームのダメージは軽減されるとしてもモニターが焼かれてしまい、決定的なスキを与えてしまう。
そして、バルバトスによってコックピットを一突きされて沈黙したグレイズ・アインのようになる。
(思い出せ…確か、ヴォワチュール・リュミエールは太陽風を受けて…)
太陽から放出される太陽風や、荷電粒子をリング周囲に展開した微細な量子の膜で受け止め、空間構造への干渉を介し光圧へと変換して推力にする。
これがヴォワチュール・リュミエールシステムであり、微小であったとしても、それを受け続ける限り、機体が持つ限りはどこまでも加速し続けることのできる、外宇宙を目指す人類の夢のシステム。
(だとしたら、もらっているのは機体のエネルギーじゃなくて、その円盤そのもの!!)
外からエネルギーを受け取ることができるからこそ、機体そのものの出力を使わずにビームを撃てる。
「まさか、同じ手段をもう1度使うと思ったかな?」
「え…?」
「今度は…違うぞ!!」
今度はビームではなく、そのまま推力に変換していき、それに押されたバルバトスが後ろに下がっていく。
バルバトスのツインリアクターを最大まで高めても、ヴォワチュール・リュミエールの無制限な加速力と推力に対抗できない。
その力はアポロンAによるプロパルションビームの供給を受けたとはいえ、ストライクノワールを地球と金星のはざままで吹き飛ばす、そこから669時間で元のトロヤステーションまで帰還することができたことからもすでに証明されている。
その推力によってバルバトスが一気に押し込まれていき、背後の岩山に激突する。
「うわああああ!!」
「このままでは、岩山に押しつぶされるぞ!さあ、どうする!?」
「覚醒と…ヴォワチュール・リュミエールのエネルギー…すごい、ぐうう!!」
岩山に押し付けられているバックパックの損傷を告げる警告音が鳴り響く。
覚醒のエネルギーも手伝って、今のケンプファーの推力はバルバトスをはるかに上回っている。
「まだ…まだぁ!!」
「何!?」
ジリジリと背中を引きずりながら機体を下に下げていき、右足を使って巴投げをしてみせ、逆にケンプファーを顔面から岩山に激突させる。
ヴォワチュール・リュミエールをカットしたものの、それでも取り込んだエネルギーを放出しつくさなければ止まらない。
イノシシのように岩山に突っ込み続け、刀にもひびが生じる。
「く…ならば、これでぇ!!」
奥の手と言わんばかりに残ったエネルギーがすべて強烈な光に変換し、ケンプファーの周囲を覆いつくす。
「ぐ…ビームに推力だけじゃなくて、光まで…!!」
「ガンプラは自由…そういうことさ!!」
モニターが光で真っ白に染まり、補正が終わったのと同時にコックピットを激しい衝撃が真正面から襲う。
同時にバルバトスは再び吹き飛ばされてしまい、地面をこするように滑った後であおむけに倒れた。
そこには覚醒の光をまとったままのケンプファーの姿があり、右拳を前に突き出していた。
「やはり、覚醒の力とガンプラの力をシンプルに、そして力強く出すとしたら、これが一番いい」
思わぬカウンターで刀を失う羽目になったものの、今のミスターガンプラにとってはそれは些細な問題だ。
ただ、彼はこの一撃でコックピットを破壊して、終わるだろうと踏んでいたが、まだ撃墜判定が出ておらず、バルバトスそのものも両手を使って起き上がっている。
「なるほど…とっさにコックピットに覚醒エネルギーを集中させて、それがバリアになって撃墜を防いだということか」
コックピットはわずかにへこんでいるだけで、それ以外に損傷していない。
だが、撃墜は免れた勇太だが、だからといって状況が好転したわけでもない。
(ソードメイスはもう使えない…スラスター出力は…ダメージを考えたら3…いや、4は減ってる。太刀は無事だけど…あの拳相手じゃ、焼け石に水か…)
刀身が大きくひび割れたソードメイスでは、こぶしを受け止めることすらできないだろう。
だとしたら、もう相手の土俵で戦うしかない。
それが今できる最高の手段だと考えた勇太はソードメイスを投げ捨てると同時に、もう出番のない太刀を強制排除する。
そして、顔を相手に向けたまま体を横にした。
「半身…空手の基本の構えか。どこかで習ったのかな?」
「授業で教わっただけです。見様見真似ですけど」
「けれど、このまま離れていても何も変わらないな。なら、近づくとしようか」
ヴォワチュール・リュミエールを使わずにケンプファーが歩いてバルバトスに迫り、バルバトスもまた徒歩で近づいていく。
ケンプファーのヴォワチュール・リュミエールにはひびが入っており、おまけに先ほどの岩山に激突した影響で先ほどのような加速もできなくなっている可能性が大きい。
一方、バルバトスはバックパックに著しい損傷があり、勇太の思った通り、大きく出力を低下させている。
そんな状態で推進剤に火がついていないのはもはや奇跡としか言いようがない。
やがて2機が至近距離まで接近すると、互いの既に握りしめた右拳がぶつかり合う。
覚醒エネルギーがこもった拳のぶつかり合いは衝撃波を生み出し、フィールドを駆け巡る。
少し距離が離れていたミサとロボ太にも、機体を介してビリビリとその衝撃が伝わってくる。
「すごい…」
「仮に助けに行けたとしても、これでは…主殿の邪魔になるだけだ」
武装をなくした2機の格闘。
アムロとシャアの最期の戦いを彷彿とさせる彼らの戦いを邪魔することはできない。
「なんで…一緒に勇太君と戦ってきたのに。ジャパンカップで優勝したのに…どうして…」
「世界は…広いのだな」
「うおおおお!!」
ケンプファーの右拳がバルバトスの頭部に直撃し、ナノラミネートアーマーに大きくひびが入るとともに左のメインカメラが砕ける。
網膜投影された画面の左半分がブラックアウトし、半分になった視界に勇太は舌打ちする。
「ちぃ!!」
「動きが鈍くなってきたぞ!?もう限界かぁ!!」
続けて左の拳を叩き込もうとするケンプファー。
死角となっており、拳の位置は分からないが、ここでも阿頼耶識システムが生きてくる。
疑似的に脳内にできた空間認識能力で予測し、放たれた拳を左手で受け止める。
「何!?」
「まだまだぁ!!」
受け止めた拳をつかみ、強引にケンプファーを引き寄せるとともに左ひじに向けて右の手刀を振り下ろす。
無理な格闘戦を継続したことで、関節部分への負荷が大きかったのもあるだろう、バキリと大きな音を立ててケンプファーの肘から先の左腕が折れてしまう。
「これは…!!」
「うおおおお!!」
更に叩き負った左腕を武器代わりにしてケンプファーの頭に叩き込もうとするが、その寸前にケンプファーが右手で受け止める。
だが、バルバトスにはまだ自由な左拳がある。
それをコックピットに向けて叩き込もうとするが、そういう攻撃が来ることはミスターガンプラも分かっており、逆に両手でバルバトスの右腕をつかむと同時に先ほどのお返しと言わんばかりの巴投げを放つ。
「しまった!!うわああ!!!」
「これで…お互いに、腕は1本だけだ!!」
投げられたバルバトスの右腕はバキバキと肩から離れていく。
互いの機体のダメージは限界に近付いている。
片腕だけになり、スラスター残量もわずか。
視界についてはケンプファーが健在で、バルバトスに関しては右半分だけしか見えない。
長い時間の覚醒のせいで、二人とも疲労がひどい。
「もう、これ以上時間をかけると泥仕合になりかねないな…!」どうだい?勇太君。ここはもう…拳1発でお互いにきれいさっぱり蹴りをつけるというのは…?」
ケンプファーのモニターには機体ダメージの表示でいっぱいで、もう無事な箇所がどこかは片手で数えるくらいしかない。
それはバルバトスも同様で、超硬度レアアロイのフレームはもう悲鳴を上げていて、ナノラミネートアーマーも殴り合いによってもはや盾としての意味をなさなくなっている。
「そう…しましょう。この一撃で、最後…!!」
互いに生き残っている拳を握りしめる。
そして、機体を包むオーラが消え、互いの拳に覚醒エネルギーが集中し、まぶしい光を放つ。
すべての覚醒エネルギーがこもった状態の腕は徐々にひび割れてきており、それが最期の一撃であることを互いの主に教えている。
「この一撃に、すべてをかける!!」
「決着だ!勇太君!!」
2機が走り出し、拳を深く下げる。
そして、互いに至近距離となると同時に拳を放ち、再び最初の時のように拳がぶつかり合った。
ぶつかり合い、最初に動きがあったのはバルバトスで、左手の甲に大きなひびが入る。
「砕け散れ!!私の魂の一撃で!!」
「砕けるもんか!!バルバトスには…僕だけじゃない!ロボ太の…カドマツさんの…ここまで戦ってきた皆の…」
「何!?これは…!!」
炎のようなバルバトスのオレンジの拳が更に燃え上がっているように見えた。
疲れ果て、限界に達しようとしているのに、まだ覚醒の力が上がることがミスターガンプラを驚かせる。
「そして…ミサちゃんの思いが、宿っているんだぁ!!」
「主殿!!」
「いっけぇぇぇ!!勇太君!!」
「あああああああ!!」
勇太の叫びと共に、ケンプファーの拳にひびが入る。
同時にひびが右腕や胴体、そして頭部にも伝わってくる。
コックピットハッチにも大きな裂け目ができ、そこからミスターガンプラはバルバトスを見た。
驚きの余り言葉を失っていたミスターガンプラだが、疑似的な形ではあるが、肉眼でバルバトスを見たことで今の現象の意味を知った。
「そうか…『若さ』、か。それゆえの特権、というものか…」
フル・フロンタルのセリフを思い出す。
『過ちを気に病むことはない。ただ認めて、次の糧にすればいい。それが、大人の特権だ』
だが、大人に特権があるというなら同時に子供には『若さ』という特権がある。
そのことを、失っていたものを思い出したミスターガンプラは笑みを浮かべる。
「見事…だ」
左腕を失ったケンプファーは機能を停止させ、グラリとその体を横に倒す。
「ミスターガンプラ!!」
阿頼耶識システムを解除し、バルバトスから飛び降りた勇太は倒れたケンプファーのもとへ駆けつける。
すると、自力でコックピットをこじ開けたミスターガンプラが中から出て来て、無事な姿を見せる。
「はははは…見事だよ。勇太君!私の傑作であるブレイク・ケンプファーをここまで叩きのめすとは」
「ああ…そ、その…」
「ははは。気にするな!むしろ感謝している!君のようなファイターと戦えたことを。最高のバトルだったよ」
思いっきり笑った後でミスターガンプラは勇太に右手を差し出す。
曇りのない笑顔で、やり切ったという気持ちが強い彼には敗北の悔しさはみじんもない。
それにつられるように、勇太も笑顔になり、ミスターガンプラに向けて手を伸ばそうとする。
「まったく、はしゃぎすぎだよ。こんな『遊び』に」
「何!?」
急に倒れていたケンプファーが飛ばされ、岩山にぶつかると同時にこれまで蓄積したダメージもあってバラバラになる。
勇太とミスターガンプラの周囲に大きな影ができ、2人はその影の主に目を向ける。
「ゴールドフレーム…??」
ゴールドフレームをベースとし、左手に鞘に入った刀を握るガンプラで、なぜそこに別のガンプラが入ってきたのかは誰にもわからなかった。
右手にはバルバトスが装備していた太刀が握られていた。
「ええっと…ここで乱入の予定はないはずですが??」
思わぬハプニングに会場が静まり返り、ハルも動揺する。
一方のミスターガンプラはそのガンプラを見て、そして先ほどの声で思い出したかのようにサングラスに隠れた目を大きく開く。
「まさか…君はウィル、ウィル少年か!?」
「たまたまテレビをつけたら、引退したチャンプがバトルをしているものでね。チャンプ、どうやらこのバルバトスのファイターに負けたみたいだけど、今回もまた勝ちを譲ったのかい?」
「勝ちを…譲った??」
「違う!私は全力で戦ったよ!!」
「へえ…8年前は僕に勝ちを譲ってくれたのに?」
(8年前…??)
ちょうどそれはミスターガンプラがプロを引退したのと同じ時期。
彼が引退した理由は公表されておらず、今でもファイターの間で一つの謎として語り継がれている。
しかし、勝ちを譲ったと言われたが、実際にボロボロになるまで戦ったからわかる。
彼は手加減なしで戦ってくれたことを。
そして、紙一重とはいえ、自分が上回ったことを。
「やぁ、君よかったね。手加減してくれる優しいチャンピオンで…」
「…!!」
「勇太君、よせ!!」
ミスターガンプラの制止をよそに、再びバルバトスに乗り込み、阿頼耶識システムと接続する。
再起動したバルバトスは立ち上がり、目の前の金色のガンプラをにらむ。
「へえ、戦うつもりなんだ?でも、優しいチャンプがこう言ってるんだ。日本一のトロフィーと…あとこれ、落とし物だろ?これを持って帰りなよ」
右手の太刀を投げ渡すウィルの言葉が勇太を逆なでする。
「黙れよ!!ミスターガンプラを…このバトルを汚すなよ!!」
そして、左手だけで太刀を握った状態で相手に突っ込む。
バックパックの悲鳴を気にかけず、全開にしていた。
「へえ…ボロボロなのにすごいスピードだ」
さすがは勝ち残っただけのことがある。
ほんのわずかしか戦いぶりを見ていないが、それでも強いということは分かる。
それは素直に評価するが、それはあくまでも自分が評価の中に入っていなければの話だ。
金色のガンプラが刀を抜くと、正面から突っ込んでいき、2機が交差する。
交差し、距離を取ったと同時に2人が止まり、地面に着地する。
「止まって、見えたよ」
金色のガンプラが納刀した瞬間、バルバトスの胴体が真っ二つに切り裂かれた。
現地に駆け付けたアザレアのカメラがその瞬間をとらえていた。
「勇太君!!こんんおぉぉぉぉぉ!!」
持っているビームライフルをはじめとした火器を金色のガンプラに向けて一斉発射する。
激しい弾幕の中を金色のガンプラは泳ぐように回避していき、アザレアに肉薄し、その頭を右手でつかむ。
「え…?」
「へたくそ」
見下すような声と同時にアザレアが持ち上げられ、そのまま頭から地面にたたきつけられてしまった。
重量があるはずのアザレアが軽々と持ち上げられ、あの弾幕を一発も当たることなく凌がれたショックでミサは言葉を失い、操縦桿を握る手の力が抜けていく。
「主殿、ミサ!!」
遅れてやってきたフルアーマー騎士ガンダムは2人を倒した金色のガンプラをにらむ。
金色のガンプラがゆっくり近づくが、フルアーマー騎士ガンダムは剣を構えるだけで動きがない。
「へえ、君は力の差が分かっているみたいだね」
「くっ…!!」
歩いてくる相手にロボ太は悔しげな声を出しながらも動くことができない。
そのまま素通りされ、軽く頭を撫でられたことに屈辱を覚えるが、既に彼の思考があのガンプラに勝てないことをはっきりと伝えていた。
そして、金色のガンプラは何事もなかったかのように消えてしまった。
「なんなんだよ、もう…」
空を見上げるミサは何が何だかわからなかった。
ジャパンカップで優勝したのに、勇太がミスターガンプラに勝ったのに、せっかく夢がかなったのに、その喜びがすべて泥を塗り託された。
「すまない…すべて、私のせいだ…」
ミスターガンプラはただ、それだけしかつぶやくことができなかった。
せっかくの戦いを台無しにしてしまった自分が憎くて、仕方がなかった。
「お疲れさまでした、坊ちゃま」
「別に。全然強くなかったし」
スタジアムの中にある練習場を出たウィルが先ほど使ったガンプラを左手で握った状態でドロシーと共にその場を後にする。
彼はドロシーにここのシミュレーターの信号を操作させて決勝のフィールドに侵入していた。
今は元に戻して、痕跡もすべて消去させている。
「それで、いかがされます?このままアメリカへ」
「そうだね、もうここでやることは…うん?」
左手に違和感を覚えたウィルは持っているガンプラを両手で包むように手にする。
それを見た瞬間、彼の目が大きく開いた。
コックピットから見て左の腹部にひび割れがあった。
シミュレーターに入る前にチェックしたが、そのようなひび割れはなく、ドロシーも一緒に確認している。
(まさか…あの一撃で)
心当たりがあるとしたら、あのボロボロのバルバトスと切り結んだ時だ。
おそらく、その時にこの傷が入ったのだろう。
そして仮に、ほんのわずかでもその刃が近づいていたら、コックピットまで切り裂かれていた。
「ガンダムセレネスに…こんな傷を入れるなんて」
「坊ちゃま…?」
「ドロシー、アメリカへ戻るのは少し後だ。行かなければいけないところができた」
「はい…??」
「彩渡商店街だ。あそこに行ってから、帰国する。みんなにもそう伝えてくれ」
ドロシーと一緒に迎えの車に乗り、発車する中でウィルはスタジアムに目を向ける。
同時に、持っているセレネスを握りしめた。
(沢村勇太…叩き潰してやる…!本気の君を、ね!!)
機体名:ブレイク・ケンプファー
形式番号:MS-18EBR
使用プレイヤー:ミスターガンプラ
使用パーツ
射撃武器:なし
格闘武器:ガーベラ・ストレート
シールド:なし
頭部:ケンプファー
胴体:シナンジュ
バックパック:スターゲイザー
腕:武者ガンダム(両肩にIフィールド・ジェネレーター内蔵)
足:ガンダムヴァサーゴ
ミスターガンプラがエキシビションマッチのために用意したガンプラ。
1VS1での決闘を想定した装備となっており、手持ちの武装はガーベラ・ストレート1本のみとなっているが、その切れ味はフェイズシフト装甲をも切り裂くほどのものとなっている。
また、スターゲイザーのヴォワチュール・リュミエールは推進力にするだけでなく、ビーム砲やフラッシュバンへの転用も可能になっており、これは原作にはない。
ミスターガンプラの『ガンプラは常識に縛られない、自由な発想によるもの』という信念の表れで、おそらくは彼の想像が止まらない限りはさらなる応用を見せる可能性があり、それこそがブレイク・ケンプファーの覚醒に次ぐ大きな武器と言える。