第4話「モンターク」
ガンダムレライエに敗れ、ゲーティアもろとも鹵獲された暁が連行されたのは自らの目的地であるドルトコロニーだった。
そこのスラム街で、彼は仮面をつけた女性、ガンダム・レライエのパイロットであるモンターク夫人と出会う。
「おい、おーい!勇太ー!いつまで寝てるんだよ、さっさと起きろー!」
ドンドンと扉を叩く音とツキミの声が廊下に響く。
アジアツアーが明日最終日となっており、この日は調整日兼休みとなっている。
その間に本選で疲れた体とガンプラを癒し、明日の決戦に臨む。
明日は本選で生き残っているチーム総出でのバトルロワイヤル。
最後に勝ち残ったチームが優勝となる。
「あいつ…いつまで寝てるんだよ?今日は西門通りへ行くって約束なのに」
ガンプラの調整や戦術についてはもう昨日の段階で済んでいて、今日は台湾の西門通りへ遊びに行くことになっている。
既にミソラやモチヅキ、ウルチはレンタカーの用意をして外で待っている。
待ち合わせの時間からもう1時間近く経過しているため、心配してツキミが来た。
ようやくツキミの声が聞こえたのか、ドアが開くとそこにはパジャマ姿のままな上に髪の毛が寝癖でいっぱいになっている勇太の姿があった。
「ああ、ツキミ君…?今、何時…」
「もう11時半だよ。お前、この時間までずっと寝ていたのか?」
「ごめんごめん、ゲーティアの調整が終わってから、別のガンプラ作ってて…」
「別のガンプラって、あのレライエか?お前が考えてる物語に出てくるガンダム・フレームの…」
「そうだよ。ただ、完成度はゲーティアほどじゃないけど」
勇太が考えている第3期の鉄血のオルフェンズのストーリーはツキミも読んだことがある。
今、勇太の部屋の机の上に置いてある、左腕に大型の弓を模したレールガンを装着した緑ベースで細身のガンダムというべきガンプラがそれで、1.5形態のゲーティアと戦闘する際はレールガンなしの状態で圧倒したという設定になっている。
明日には決勝があり、休めばいいのにそんな戦うことではなく、自分が作った物語の設定を取り込んだ観賞用のガンプラを作る勇太に思わず苦笑してしまう。
しかし、そんな余裕がなければジャパンカップで優勝できず、世界大会に出場できないのかもしれない。
「そんなことより、早く寝癖を直して、着替えて来いよ!みんな待ってるからな!」
「待って…ああ、そうだ!!急がないと!!」
「あいつ…どこか抜けてるんだよなぁ…」
大慌てで着替えを探し始めた勇太を見て、もう少し時間がかかると思ったツキミは扉を閉めた。
「まったく、せっかく台湾の新宿なんて言われてる西門通りへ連れて行ってやるって言ったのに、ここまで遅刻する馬鹿だなんてなぁ、あいつめ…ブツブツ…」
西門通りへ向けて走るハイゼットの中で、モチヅキはのうのうと遅刻してやってきた勇太への文句をブツブツと口にする。
一番後ろの席に座る勇太はさすがに申し訳ないと思ったのか、隅に隠れる始末だ。
「ああ、勇太。元気出せよ。俺もミソラも気にしてないからさ」
「そうそう。ねえ、お菓子食べない?これ、おいしいよ」
前に席に座るミソラがヌガークラッカーの袋を勇太に手渡し、素直にそれを受け取った勇太は袋を開けて、それを口にする。
台湾では一押しの人気お菓子で、定番なものは今勇太が食べているネギ風味の味だ。
「うっ…ネギの味がきつい…」
「これ、病みつきになるけど、たまにネギがいっぱい入っていることもあるのよ」
「まるで、三日月が食べる火星ヤシみたいだ…」
火星ヤシの元ネタと言われているナツメヤシを思い出す。
北アフリカや中東における主要な食品の一つであり、雨の少ない砂漠でも育つ上に、乾燥させることで長期間保存できることから、乾燥地帯に住むサハラ砂漠の遊牧民やオアシスに住む人たちにとって、大切な食料の1つとなっている。
栄養価も高いらしいが、火星ヤシは実際にそうなのかはわからない。
オルガと1年しか年が違わないはずにもかかわらず年少組よりも少し高い身長しかない三日月の場合、3つのピアスをつけたことによる発達障害もあるため、栄養価があるかないかは判断しようがないのが勇太の見解だ。
「あ、これはおいしい…いい感じの加減だ」
「おーい、菓子を食べるのはいいけど、見えてきたぞー」
「ああ…」
窓から外を見る勇太の視線には多くの歩行者が集まる通りとアムロやカミーユといった宇宙世紀時代のニュータイプとモビルスーツがふんだんにえがかれた門。
今日の西門通りはアジアツアーで開催されているということからガンダムシリーズがメインとなっており、おまけに週末ということで歩行者天国になっている、若者の街となっていた。
「どうも、お待たせしました。鹹粥(シェンチョー)を卵トッピングで135円だよー」
日本語のしゃべれる台湾人の気さくな店員に代金を支払った勇太はさっそく買ったばかりのその塩漬けのおかゆを口にする。
卵によってまろやかになった、ほんのりとした塩味が効くダシのスープが少し前に起きたばかりの勇太の胃と食道を温める。
台湾では伝統的なご飯であるそれは白身魚などのトッピングもできることや安さもあって気軽に食べれる人気の食べ物となっている。
「にしても、ここもやっぱりとは思ったけど、ガンダムでいっぱいだなぁ」
売店で買ったアイスを口にするモチヅキはガンプラやガンダムとコラボした土産物を売る店をいくつも見て、万国共通となったガンダムに驚きを隠せなかった。
ガンダムが誕生してから既に50年以上経過しているが、今でも人気は冷めないどころかガンプラバトルによってより熱くなる一方。
映画館では劇場版の機動戦士ガンダム00や逆襲のシャアなどのリバイバル上映までやっており、もし完全な休みでここに来ることができたとしたら、一度は見てみたいと思ってしまう。
ネットでいつでも見れると言えばそこまでだが、やはり映画館で見るのとでは違いがある。
「おいおい、勇太。おかゆだけで満足するなよ?それ食えたとなったら、まだまだ胃袋に入るだろ?」
「それはそうだけど…」
「え…まさか、ツキミ…」
ツキミのたくらみを察したミソラは半歩下がり、顔を引きつらせる。
昨晩西門通りへ行くことが決まって、ツキミがスマホを使って調べ物をしていた。
その際に見た画像をミソラは今も忘れられない。
「ああ、そのまさかだ!!」
「これって…」
「おいおいおい、こんなもの食べたら、カロリーで死んじまうぞ…」
ツキミに連れられたとある店で、ツキミが嬉しそうに受け取った商品を見たモチヅキがおびえた表情を見せる。
それが好物の一つである勇太も、さすがにその大きさはあり得ないだろうと思っていた。
「一度食べてみたかったんだよなー。豪大大鶏排の巨大フライドチキン!」
顔よりも大きさそのフライドチキンを売っているその店は本来、士林夜市という台北の巨大夜市でのみ出ているのだが、今回は特別に昼からも営業していた。
その情報を得ていたツキミはどうしてもそれを食べたいと思っていた。
一つ200円から300円くらいで買えることをいいことに、ツキミはなんとそれを5つも購入していた。
「ほら、ミソラも食べろよ!でっかいぞー」
「ええ…その、じゃあ…半分だけ…」
「半分だなんて、遠慮するなよ」
「遠慮するわよ!そんな大きさは…」
とてもじゃないが、一つ丸々食べると油とカロリーで辛いことになってしまう。
半分だけちぎって、それを口にする。
鶏肉そのものの質はかなり良く、香辛料由来の辛味がいい塩梅となっており、日本で食べるフライドチキンとは一味違うそのフライドチキンに魅了されかけてしまう。
「おいしい…」
「だろ?よかっただろ?そんなに怖がらなくて」
こういうおいしさなら何個か食べれると、あっという間に一つ丸々食べてしまったツキミはお代わりにもう1つ口にし始める。
「おいしいのは分かったから、ほどほどにね…」
おいしいのは認めるが、何事も腹八分目が肝心。
そんな勇太のささやかな忠告を無視するツキミを止められるものはいない。
「うううーー、ああ…」
「もう、ツキミ!!こうなると思ったわ」
通りのベンチに、背もたれに身を任せた状態でうめき声をあげるツキミにミソラはため息をつく。
結局、そのおいしさから3つも食べてしまったツキミはその油をたっぷり胃に納めてしまったせいで、胃もたれを起こしてしまっていた。
その様子に呆れるミソラだが、顔を青くするツキミを放っておくことはできなかった。
「馬鹿だろ。あんなデカイフライドチキンをたっぷり食うなんてよ」
「若さゆえの過ちっすよ、姐さん」
「おい、今その言葉ぐっさり来たぞ。私がもう若くねえとでも言いたいか!!」
「そういう意味じゃないっすよ、姐さん。まったく…」
ただ単にシャアのそのセリフを言いたかっただけなのに、突っかかるモチヅキにウルチはため息をつく。
そんな2組のじゃれあいを見つめる勇太は苦笑しつつも、どこかで寂しさを感じていた。
(ミサちゃん…勝っているかな?)
今はハワイの大会で戦っているであろうミサの姿を思い浮かべる。
もし彼女が今のこの状況を見たら、楽しそうに笑っていただろうか。
強くなって帰ってくることを信じているのは確かだが、やはり彼女がそばにいてほしいと思ってしまう。
それだけ、勇太にとってミサと一緒だということが当たり前になったというのだろう。
「ああ、そういえば勇太はタピオカは飲まないのか?台湾といえば、タピオカだろ!」
「いや、その…タピオカは、苦手なんです」
「そうなのか?意外だよなぁ。あんなうまいものを」
「好き嫌いは人それぞれ、ですから…」
ネットでも、台湾へ行くのであれば絶対にタピオカミルクティーを飲むべきだというサイトがあるが、勇太はそれでもそれを飲む気にはなれなかった。
一度だけ、タピオカが入った紅茶を飲んだことがある。
その感想は紅茶もタピオカも甘すぎた、というものだ。
甘すぎて胃がむかむかしてしまい、それから一日元気が出なかったというトラウマが勇太に焼き付いている。
おすすめのタピオカで慣らしていくことを学校の友人から教えられてはいる。
それでも、あの甘すぎて気持ち悪くなったあのタピオカ紅茶が頭から離れず、結局今は売店で買ったジュースを口にしている状態だ。
それを飲むくらいなら、野菜ジュースを飲んでいる方がましだ。
「おお、やっぱりガンプラっていうなら、こうだよなぁ」
「いきなりどうしたんだい?ツキミ君」
突拍子もない言葉が気になった勇太に答えを示すように、ツキミが正面にある大きな店舗についている大型テレビに指をさす。
そのテレビには西門通りで行われているイベントの紹介や店舗CMがいつも流れている。
「さあ、アジアツアー開催記念のガンプラバトル大会を開催中でーす!!」
「大会参加者でも観光客でも、みんなで参加できるバトル大会!ただいま、西門紅楼前の特設会場にて大会中!!今も、バトルで盛り上がっているぞー!!」
ドモンとレインそっくりなMC2人がその場所で現在行われているザクⅡ改とシン・フェデラル仕様のフルアーマー・アレックスのバトルの光景を紹介する。
サイド6リボー・コロニー内部の森林がステージとなっており、ザクⅡ改のザク・マシンガンによる攻撃をフルアーマー・アレックスが装備している増加装甲で受け止めながら直進していき、手にしているビームサーベルで両断する光景が描かれていた。
「まずい倒し方をするなぁ。それであのザクが大爆発したら、コロニーの空気が…」
「いや、あくまでガンプラバトルだから心配するなよ」
「今回のバトル大会、5勝したファイターには商品として、現在リバイバル上映中の機動戦士ガンダム閃光のハサウェイに登場するモビルスーツ、Ξガンダムとペーネロペーのガンプラをプレゼント!!なお、ペーネロペーについては外部パーツを取り外すことで、オデュッセウスガンダムにすることもできるスペシャルモデルになっておりまーす!!君は、ガンダムを受け継ぐことができるか―!!」
「こいつはいいな!!なあ、勇太も出るだろ!」
「それはもちろん…」
ツキミが出したエンハンスドデファンスにつられるように、勇太もはにかみながら第3形態のゲーティアを見せる。
「こんな時にもガンプラをもってきてやがる…あのガンプラバカども」
「へっ…ちょろいモンだぜ。さあ、次のバトルで勝利して、商品のガンプラをもらってやるぜ!」
ザクⅡ改に引き続き、サイサリスをも倒した、色黒な肌でガンダムカタナでフルアーマー・アレックスのパイロットを務めるコテヅそっくりの髪形をした青年があと少しで手が届くそのガンプラに思いをはせる。
「じゃあ、僕を倒して手に入れないといけませんね!」
「んなぁ!?」
通信機から聞こえる次の対戦相手の声を聞き、相手の位置を探す彼は上空にいるガンプラを見て、口を大きく開く。
空には決勝進出を決めた日本のチームのエースであるガンプラ、ゲーティアがいて、2本のブレードが展開されたバックパックによって空を飛んでいた。
「ガンダム・フレームが空を飛ぶぅ!?」
「アスタロトオリジンだって、空を飛ぶんだよ!!」
だとしたら、ガンダム・フレームのプロトタイプという設定のこのゲーティアでも、それができても不思議な話ではない。
2丁のピストルを手にしたゲーティアがフルアーマー・アレックスに向けて連射する。
「ふん!!そんなピストルの弾丸なら、この増加装甲で…うわ!!」
発射された弾丸の一部が爆発を起こし、急な爆発にフルアーマー・アレックスが思わず体勢を崩しかける。
「炸裂弾が混ざっていたか!!くそ、ついてないぜ!!」
「これで…!!」
体勢を立て直そうとするフルアーマー・アレックスに向けて、ゲーティアがバックパックを展開させたまま突撃する。
すれ違いざまに両翼のブレードがフルアーマー・アレックスの腹部に接触、機体を両断させた。
「う、嘘だあぁぁぁぁ!!」
「翼部も立派な武器なんだ、今のゲーティアは」
真っ二つに両断されたフルアーマー・アレックスがわずかな時間差で爆発を起こし、消滅する。
推進剤節約のため、ブレードを収納したゲーティアが地面に降りる。
「よし、次だ!」
「次は…俺だぜ!!」
ピピピ、と警告音が響くとともに真上からエンハンスドデファンスが対艦刀で斬りかかってくる。
前のめりになる形でその刃を避けたゲーティアはピストルをしまうと、腰に差してある鞘から太刀を引き抜く。
「なかなかの反応だよな。そのゲーティアって。どうなんだよ、ヘルメットでの阿頼耶識って」
「背中からじゃないから、ちょっとバルバトスの頃と違和感があるけど、大したものじゃないよ」
「だったら、手加減はいらないよな!!」
対艦刀に内蔵されているビームライフルを撃ちはじめ、大きく飛び上がったゲーティアは再びバックパックのブレードを展開し、飛行形態へと変化する。
「ツキミ!地上から援護するわ!」
「気を付けろよ、相手はあの勇太だからな!」
「分かってる。もう、あんな目にあうつもりはないわ!」
アグニの上半分が折りたたまれ、その中のリボルバー状の弾倉が白日の下にさらされる。
モニターに映る、エンハンスドデファンスと鍔迫り合いを演じるゲーティアを姿にかつてのリミッター解除したバルバトスの姿がだぶる。
あの時は何もできなかったが、あの悔しさを力に変えるためにここに来ている。
そして、伊達にツキミと勇太と一緒に戦ってきたわけではない。
「私だって!!」
リボルバーバズーカから発射された、赤いラインの入った弾頭がゲーティアを襲う。
「くぅ…!!」
胸部の装甲の一部が展開するとともに姿勢制御用スラスターがむき出しとなる。
それが火を噴くと同時にゲーティアが一気に後方に下がり、それを見たエンハンスドデファンスも被弾を避けるために後ろに下がる。
ゲーティアに命中しなかった弾丸は上空でさく裂し、その中に蓄えられていた1200度以上の熱が拡散していく。
「もしこれに当たっていたら、ナノラミネートアーマーが焼かれていた…」
ヘルメット内蔵モニターに表示される熱源反応の温度を見た勇太は明らかに対ナノラミネートアーマー用の弾頭に冷や汗を流す。
そのリボルバーバズーカ形態のアグニを手にしたまま飛行形態に変形したガンティライユが飛翔する。
「先にミソラちゃんを始末したいけど…うん!?」
再び別方向から、今度は実弾やビームが次々と飛んできて、避け切れない部分をシールドで受け止めて受け流していく。
「いやいや、これはちょっと…」
ゲーティアが次々と拾ってくる敵機の反応に勇太は思わず苦笑するしかなかった。
現在進行形で敵ガンプラが増えていき、中にはレグナントベースのモビルアーマーの姿さえあった。
「ジャパンカップチャンピオンが乗ってるってガンプラだってよ!」
「これ、倒したら自慢できるんじゃないか!!」
「数で押したらなんとかなる!」
「おお、ガンティライユってガンプラ、あれもジャパンカップ決勝戦で…!!」
それらのガンプラに乗っているであろう人々の声が通信機に響く。
先ほどまでゲーティアと戦っていたエンハンスドデファンスも周囲の光景を見て、何かを察したかのようにゲーティアと背中合わせになり、モビルスーツ形態に戻ったガンティライユもアグニを元に形に戻したうえで照準をそれらのガンプラに向ける。
「ねえ、勇太君、ツキミ、これって…」
「有名人になりすぎたのかな…これ」
「なんだよ、俺たちはジャパンカップで戦っただけで…」
「そのジャパンカップだから、じゃないかな…?」
今年のジャパンカップはミスターガンプラによるエキシビションマッチも手伝い、有名になりすぎた。
特に勇太はそのミスターガンプラを激闘の末に下し、それゆえに多くのファイターのターゲットになってしまった。
おそらく、決勝戦とエキシビションマッチの映像は現在進行形でネットに拡散していることだろう。
「こうなったら、あれだな…バトルの方法はこいつらを一機でも多く倒す競争ってことで」
「そうしよう…そうじゃないと、こっちの身が持たないから!!」
「んもう、なんでこうなるのー!!」
現在進行形で増えていく敵ガンプラに向けて、ゲーティアは覚醒を発動する。
炎を纏い、刀を手にしたまま目の前のガンプラに向けて高速で突っ込んでいった。
「はああ、疲れた…明日が決勝戦なのに…」
「ったく、せっかく息抜きさせてやろうと思ったのに、これじゃあ息抜きにもなってねーぞ」
ホテルに戻り、くたくたに疲れた3人は食堂の席に着くと同時に机に突っ伏していた。
どうにか野次馬たちを退けることはできたが、その時には全員のガンプラがボロボロになっているうえに推進剤も弾薬も残りわずかな状態になっていた。
長時間の戦いでくたくたになったため、結局ここでの決着はお流れとなり、景品である2つのガンプラを受け取った。
決勝前にここまで疲れると、一晩寝るだけで回復できるか正直に言うと不安になる。
「ま、こういう時はメシを食って回復するだけ。あ、店員さん、ビールお代わり」
「コラ、ウルチ!!お前がお代わりすんなよ!っていうか、私の金だぞ、これ!!」
カドマツからある程度旅費は受け取ったが、もう底をついており、今はモチヅキのポケットマネーで支払いをしている状態だ。
その部分は帰国したら必ずカドマツから徴収してやると心に誓うとともに、メニューとにらめっこを始めた。
「明日が決勝戦、勇太は決勝戦が終わったらどうするんだ?」
「もちろん、日本に帰るよ。それで、世界大会の準備をするよ。2人は帰らないの?」
「俺らは夏休みを使って、台湾の国家宇宙センターで研修をするんだ。2週間だけだけど、外国の宇宙センターでの知識は大きなものになるって、ロクトさんが言ってたんだ」
台湾宇宙センターは最近、日本とも連携するようになり、沖縄宇宙飛行士訓練学校ともつながりがある。
そのため、そこでは短期間であるとはいえ、研修が行われるようになった。
現にロクトも、台湾宇宙センターでの研修を受けたことがあるという。
そこには日本だけでなく、アメリカなどの他国の訓練生とも交流することができるという。
「確かに、俺たちはお前に勝てなかった。けど、それですべてが終わったわけじゃない。まだほかにも宇宙飛行士になる道があるなら、それに向けて走っていくだけだ」
「そうか…だったら、明日の決勝戦は勝って、その弾みにしないとね」
「ああ、そしてお前は未来の世界チャンピオンだな!」
「それを言うなら、僕とミサちゃん、ロボ太とカドマツさんが、だよ」
「謙遜するなよ。あんな炎を纏ったような覚醒、いつからそんなことが…」
「覚醒できるだけでもすごいのに、どうしてそこまで…」
トークが盛り上がり、それは閉店時間になるまで止むことはなかった。
機体名:ガンダム・レライエ
形式番号:ASW-MS-14
使用プレイヤー:なし(物語上ではモンターク夫人)
使用パーツ
射撃武器:左腕部大型試作レールガン
格闘武器:ナイトブレード
シールド:なし
頭部:ガンダム・バエルとトリアイナのミキシングビルド
胴体:ペイルライダー
バックパック:ガンダムバルバトス
腕:ペイルライダー
足:ライジングガンダム
暁を捕らえた海賊組織が所有するガンダム・フレーム。
特徴的なのは左腕の装着されている大型レールガンで、使用する際は外側から内側へ移動した後、巨大な弓矢のような形に展開し、右手で制御して弾頭を発射する形となっている。
バックパックにはダインスレイヴ装填のためのサブアームが装備されており、単独での発射と装填を可能としていたものと思われる。
パーツそのものはダインスレイヴ発射の際の反動を考慮して頑丈な設計であるため、通常時は盾替わりにすることができるものの、可動部を狙われると分解するという弱点がある。
アリアンロッド艦隊が使用するレールガンはこのガンダム・フレームのレールガンのデータを参考にされており、エリオン家で保管されていたが、ラスタル・エリオン暗殺事件の1週間前に強奪されており、モンターク夫人が運用するようになった。
その際の装備はレールガンは取り外されており、ナイトブレード1本でゲーティアを圧倒した。