ガンダムブレイカー3 彩渡商店街物語   作:ナタタク

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機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ第3期(勇太のノートより)
第5話「第2次ドルトコロニー動乱」
タービンズ及びテイワズ非正規組織オンブラによるゲーティア奪還作戦が開始された。
オンブラの突入部隊が起こした混乱に乗じて暁はゲーティアを奪還するも、彼の前に新たなガンダム・フレームが姿を現す。
そのパイロットは『三日月・オーガス』と名乗り、暁を襲う。



第48話 炎の戦士VS骸骨騎士

「ん、んん、ん…はぁぁ、よく眠れたな…」

ベッドから降り、着替えを始めた勇太はさっそくテレビをつける。

日本語吹き替えされたニュース番組が流れ、それをBGMにして着替え終えると、冷蔵庫に入っているペットボトルのコーラを手にして、飲み始める。

そうしていると、ベッドそばの小さなテーブルに置いてあるスマホが振動する。

「メールかな…もしかして」

メールとなると、かかってくるのは両親以外にはわずかしか思い浮かばない。

そのうちの1人はおそらく、ロボ太のメンテナンスと仕事のため、連絡することすら難しい状態だろう。

誰かはある程度見当がつくものの、今日までまったく連絡も何もなかったため、珍しい連絡に勇太の心が躍る。

『久しぶり!!んもう、ずっとメールもしてくれないなんてひどいよ!まぁ、私も連絡しなかったけど…。今、どうしてる?私は明日には日本に戻るよ!早く勇太君とロボ太に会いたいなぁ。勇太君、絶対にウィルに勝とうね!!』

「…カドマツさんが抜けてるよ、ミサちゃん」

「勇太ー!朝ごはんに行こうぜー!」

ノックと共にツキミの声が聞こえ、勇太はスマホをポケットにしまう。

「台湾での最後の朝ごはんか…」

決勝戦が終われば、そのままホテルを引き払って今日中には日本へ戻ることになる。

ツキミとミソラとも、そのままここでお別れになる。

(また会える…けれど、一緒に戦えるかはわからない。だから、この決勝戦をしっかり楽しもう)

ただし、その相手はそんな悠長なことを許してくれるとは思えない。

相手は勇太にとってはよく知っている強敵なのだから。

 

「参加者のみんな、そして観客のみんな、このアジアツアーも今日で最後だ。数多くのバトルを見せてくれた奴らの中で、今ここで最強が決まる!さあ、勝っても負けても文句なし!今回は日本チーム同士のバトルだぁ!!」

MCの流暢なトークと共に、会場には歓声が上がる。

「まずは赤コーナー、骸骨がトレードマークの死神軍団!景浦武率いるチーム・スカル!!さすらいのガンプラファイターはここで嵐を起こして去っていくのかーーー!!」

タケルを先頭にして、3人のファイターがそれぞれのガンプラを手に入場する。

注目が集まっているのはタケルが握るトトールギス・スカルウィングだ。

最近新設された『GUNPLA』というガンプラそのものの6項目、10段階でのステータス評価でも、その機体の性能が高く評価されている。

完成度を現す『Gread』が8と高い評価を受けており、それが性能にも反映されている。

「そして、青コーナー。ジャパンカップ優勝者と準優勝者がタッグを組んで、アジアに牙を向ける。チーム・クロスレイズ!!」

「クロスレイズ??沖縄宇宙飛行士訓練商店街チームじゃないのかよ??」

「長すぎるから、僕で名前を決めたよ」

「クロスレイズって、たしか前に出たGジェネの…」

「いいでしょ?僕たちの元の機体、全部それに出てるし」

「良くねえ!勝手に決めるなよ!!」

「ああーーー!!こんなところで口喧嘩すんな!恥ずかしいだろ!!」

言い合いながら入場するが、歓声のおかげで聞こえずに済んでいた。

旅の恥は掛け捨てという言葉はあるが、ジャパンカップ優勝・準優勝によって知名度が上がっていて、ネットが世界中を包む今となってはその言葉も死語になりつつある。

他の誰にも聞こえていないとはいえ、それでも間近でそんなのを見せられては臨時の保護者であるモチヅキの立場がない。

なんとか全員がシミュレーターに入り、それぞれが自らのガンプラをセットする。

モニターが起動し、アークエンジェルの格納庫の光景が映り、隣にはガンティライユとエンハンスドデファンスが映る。

だが、2機ともジャパンカップやアジアツアーでの経験を元に改修が施されており、装備にも変化が生じている。

エンハンスドデファンスはストライクノワールベースのものなことは変わりないものの、両腕がガンダムレギルスのものに変更されていて、バックパックにはシュベルトゲベールに変わるヴァルキュリアバスターソードに似た装備が取り付けられている。

ガンティライユには上下に稼働するバイザー型のガンカメラが追加搭載され、腕パーツは両肩にバルバトスルプスをモチーフとした廃熱機構がついた、新設したものに変更されている。

他にも主武装がヴァルデバスターの複合バヨネット装備型ビームライフルに、以前のバトルでアグニに追加していたリボルバー形態を追加したものに変わっている。

「いいか、お前ら!泣いても笑っても、これが最後なんだからな!勝って帰れ!いいな!!絶対だぞ!!」

「分かってますよ、モチヅキさん。負ける気はありませんから」

緊張はするが、ここはまだまだウィルとの決戦へと続く通過点に過ぎない。

ここで立ちはだかるタケルに勝てないようでは、ウィルに勝つこともできない。

「さあ、このバトルはギアナ高地でのガチンコ真っ向勝負!!さあ、勝利の女神はどちらに微笑むのか、ハッチが開くと同時に、試合開始だ!」

発進シークエンスに移行し、まずはガンティライユがカタパルトに乗る。

ハッチが徐々に開き、真夜中のギアナ高地の緑が映し出される。

そのところどころには宇宙世紀のモビルスーツの残骸が残されており、おそらくそれはリギンド・センチュリーにおけるものだと思われる。

「さあ…行こうか!!」

ガンティライユ、エンハンスドデファンス、ゲーティアの順番にアークエンジェルから発進していき、3機の発信を見届けたアークエンジェルが姿を消す。

小高い丘の上にはすでにトールギスがヒートランスを手にした状態で待ちかまえていた。

「見えた!まずは私が!!」

さっそくミソラがトールギスを撃とうとするが、その前に警告音が響き、同時に三方向からビームが飛んでくる。

バヨネット部分でビームを受け止めたミソラはその犯人を逆探知する。

「ガデッサタイプのガンプラ…あれが撃ってきたの??」

モニターに映ったのはアルケーガンダムのような赤で塗装されたガデッサで、両肩両足にGNファングが装備されたものとなっていた。

既に手持ちのGNメガランチャーのチャージが完了しており、足を止めたミソラに向けて発射してくる。

「ミソラ!!」

割って入ったツキミのエンハンスドデファンスが両手を伸ばしてビームシールドを展開し、大出力のビームを受け止める。

ビームシールドに完全に出力を回し、身動きが取れない状態であるにもかかわらず、肝心のトールギスは動き気配を見せない。

「あの機体…やっぱり、勇太を…」

「私たちのことは眼中にないってこと!?」

「だからだろうな…ミソラ!!まだ来るぞ!!」

「んもう!!せっかくしっかりガンプラを改造してきたのに!!」

メガランチャーが止まるが、同時に再びファングが襲うとともに森の中から今度は水色に塗装されたバイアラン・カスタムが飛び出してくる。

「ミソラちゃん、ツキミ君!!」

「勇太、こいつらは俺たちがやる!お前はあの骸骨と決着をつけて来い!!」

「あのガンプラも…同じ気持ちみたいよ!!」

接近してくるバイアラン・カスタムベースのガンプラが両腕に接合された形のGNソードⅢを振るい、それをツキミがバックパックから手にしたバスターソードで受け止める。

ミソラもガデッサのGNファングを数発受けてはいるものの、対ビームコーティングでしのいでいた。

「…頼んだよ、2人とも」

仮にも、2人とはジャパンカップで優勝を争ったファイター同士。

負けることはないだろうと思い、ゲーティアに刀を2本抜かせた後で地上に降り、トールギスと対峙する。

「優勝には興味がない…そうですよね、タケルさん」

「当然じゃ。俺はやりたいようにやる。今は本気になったお前と1VS1で真っ向勝負がやりたい…それだけのこと」

ちょうど、今のゲーティアなら短時間は飛行可能となっており、空中戦も可能。

「まずはどうだ…空で銃撃戦というのは」

「…」

「そうだ、それでいい」

納刀すると同時に2丁のハンドガンを手にしたゲーティアに応えるように、ヒートランスを地面に突き刺したうえでドーバーガンを構える。

翼をはためかせ、飛翔すると、ゲーティアは上空へ飛んだあとでブレードウィングを展開する。

両者がスラスターを吹かせるとともに互いの機体に向けて手にしている火器を撃ち始める。

連射性能に優れるハンドガンを連続発射する中で、トールギスは優雅に飛び回りながら弾幕を切り抜けていく。

途中途中で炸裂弾が爆発し、煙が空を汚す。

「火力重視の破砕砲からだいぶおとなしくなったじゃないか!あのバカみたいな火力でナノラミネートアーマーを貫くんだろう?」

「確かにそれもいいですけど、手数があるのも悪くないでしょう!?」

ビームと実弾の打ち分けのできるドーバーガンは早々に破壊しなければならず、勇太は狙いをドーバーガンに絞ろうとするが、翼があるためにできる変則的な動きのせいで中々タイミングを合わせることができない。

「だったら!!」

右手のハンドガンをホルスターに入れると、足に取り付けてあるハンドガン用のホルスターの1つを手にして、上空に向けて投げる。

そして、それを1発で撃ち抜いた。

破裂した弾倉から出てきた弾丸が重力に引っ張られて落ちていくとともに、中に混ざっている炸裂弾が爆発し、周囲を明るく照らす。

「即席のフラッシュバンか!!」

こうなったときにまっさきに狙ってくる。

タケルは頭の中で勇太のここからの動きをシミュレートする。

ハンドガンの弾倉の中には確かに一定確率で炸裂弾が入っているが、次に撃つそれが炸裂弾かどうかはこちらからは予想できない。

むやみに動くと上から降ってくる銃弾の雨を受けるだけ。

止まっていたら、撃ち抜いてくる。

炸裂弾を撃つ場合と通常弾を撃つ場合の二通りで、彼の動きが分かれる。

「だとしたら…ここかぁ!?」

見えないなりに彼の動きを追いかけ、動きの変わるギリギリのコースに向けて通常弾頭のドーバーガンを発射する。

「くう…でも、この程度なら!!」

ドンピシャの位置に飛んできた弾丸に驚く勇太はやむなくハンドガンの1発をその弾丸に向けて発射する。

2つの弾丸がぶつかり合い、爆発を起こすもその中を突っ切ったゲーティアがドーバーガンを至近距離でとらえる。

トリガーを引くと同時に通常弾が発射され、それがドーバーガンの弾倉に命中する。

「へっ…やっぱり、こうでなくちゃあなあ!!」

ドーバーガンはもう持たない状態だとわかり、笑みを浮かべるタケルは迷うことなく爆発しようとするドーバーガンを投げ捨て、一気に後方に下がりながら頭部に増設されているバルカンポッドでそれを撃ち抜く。

内部のEパックに引火すると同時に爆発を起こし、間近にいたゲーティアがそれに飲み込まれる。

「お返しの即席ナパームだ。そして!!」

更に追撃で爆炎の中にいるゲーティアに急速接近と同時に腹部に蹴りを叩き込む。

コックピットを激しい衝撃が襲い掛かり、勇太の体を激しく前後させる。

ゲーティアが地面に落ち、降り立ったトールギスが地面に刺しているヒートランスを引き抜く。

「銃撃戦は確かにお前の勝ちだ。だったら、今度は接近戦だ。まだ動くだろう?」

「くぅ…!!」

強い衝撃で、下手をしたら電子系統が駄目になってしまったかと思ったが、まだ操縦桿はしっかり反応してくれており、メインカメラにも支障はない。

刀を1本だけ抜き、左腕の盾を前面に出して守りの構えに入る。

今の勇太の脳裏には2人のことは消えていた。

今ここにいるのは自分とタケルの2人のみ。

槍を構えたトールギスが翼をはためかせると、正面にいるゲーティアに向けて突っ込んでいく。

盾で受け流し、その隙に刀を突きさすことができれば倒すことができる。

ただ、そんな行動をとることはタケルも分かっている。

必ず正攻法でそれを許してくれるとは思えない。

翼だけを使って飛翔したトールギスが真上から槍を鈍器のように振るい、それを盾でしのぐ。

接触と同時にヒートランスの高温が盾の表面を焼く。

そして、それを地面に突き刺した状態で今度は横蹴りを仕掛けてくる。

「グリフォンビームブレイド!?」

「接近戦こそ、こいつのウリだ!」

よく見ると、トールギスの下あご部分が開き、強制排熱が始まっていた。

エレガントな騎士からかけ離れた、血に飢えた骸骨。

ドクロにこだわるタケルらしい機体に思えた。

だが、このような廃熱が行われているということは、ここから始まるものが容易に想像できる。

「さあ、始めるぜ…極限の接近戦という奴を…」

盾を踏み台代わりにして大きく跳躍したトールギスのスーパーバーニアに火が付くとともに翼を大きくはためかせる。

「はあ、はあ…極限、なら…僕だってぇ!!」

空を舞うトールギスをにらむゲーティアも装甲が青いオーラで包んでいく。

ブレードウィングを展開し、食いつくようにトールギスに迫った。

 

「くっそ!!あのガデッサ、接近戦に持ち込んでもこれかよ!?」

エンハンスドデファンスがバスターソードを分離し、大小の2本剣に変化させると、それに内蔵されているビームライフルで牽制する。

どうにか接近することに成功したが、やはり相手はタケルと共にアジアツアー決勝まで上がって来たということもあり、一筋縄ではいかない。

両腕に内蔵されているGNビームバルカンがサーベルを展開し、グリムゲルデのような小回りの利いた高機動戦闘を見せつけてくる。

ミソラと連携して戦うはずだったが、ミソラもまた別の機体への対応に当たっている。

鍔迫り合いをする中、2機を側面から激しい余波が襲い掛かる。

嵐が過ぎ去ったかのような衝撃に一瞬2機の動きが止まる。

「これは…まさか、勇太か??」

「ツキミ!あれって…あの嵐って…」

同じくそれを感じたミソラと彼女の相手をするバイアラン・カスタムもまた戦うのを忘れていた。

「最大稼働状態で戦っているんだ、どちらも」

「けど、そんなことしたら、どっちもバラバラに…!!」

「それでも、やるつもりなんだろうな、勇太も…勇太の相手になっているタケルさんも」

おそらく、この嵐の中で2機は互いに機体がボロボロになるのを覚悟で戦っているのだろう。

せっかく対ウィルのために完成させたであろうゲーティアを失うこともいとわずに。

実際、ひび割れた破片が飛び散っていて、ツキミの脳裏にかつてリミッター解除をして2機に襲い掛かったバルバトスの姿がよみがえる。

あの時のバルバトスはまさに脅威で、狂戦士ともいえたが、今はその狂戦士同士がぶつかり合っている。

仮にゲーティアがリミッター解除し、おまけにトールギスが覚醒をして見せたらどうなるか、もう考えるのも予想とさえ思ってしまう。

「日本一も…世界も…遠いんだな…」

 

「うおおおおおおお!!!」

「はあああああああ!!!」

もう既に盾を投げ捨てたゲーティアの2本の刀とトールギスのヒートランスがぶつかり合う。

お互いにもう避けることをやめていた。

互いの攻撃を武器と装甲で受け止めあっていた。

避けずにぶつかり合い、強靭な守りのはずのナノラミネートアーマーとガンダニュウム合金装甲が傷ついていく。

お互いに強烈なGを全身で感じており、指先の感覚もあいまいになっていた。

「ありがとうな、勇太。もう1度ガンプラバトルに戻ってきてくれて」

「タケルさん…?どうしたんですか!?急にしんみりして!!」

「たまにはそうなることくらいある!特に…あいつがいなくなってからな」

タケルの脳裏に浮かぶのは今は亡き勇武とのバトルの日々だ。

互いにガンプラでぶつかり合い、作りあい、分かりあってきた。

それについては、勇太も勇武の遺したハロのデータからわかっており、彼の着想や戦い方、戦闘データの多くにタケルの名前があった。

だが、勇武がいなくなったことで勇太がガンプラバトルから身を引いたように、タケルもどこか糸が切れてしまった感覚があった。

「どんなに各地を回っても、どんなファイターとバトルを繰り広げても、俺は満たされなかった。あいつと戦った感動はなかった。馬鹿な話だよな、死者にいつまでも勝てるわけがないってのに」

サイコフレームやバイオセンサー、ニュータイプの力もない以上、死者とつながることは空想の中でしかない。

アムロとシャアがララァという死者に翻弄されたように、ハサウェイが自らの手で殺める結果となってしまったクェスの亡霊にとりつかれ、破滅へと突き進んだように、死者にはどうやら生者に絶対に勝てるような何かがあるらしい。

しかもそれは、生者には絶対に手に入らないものだ。

「だが、お前が戻って来た。一度は捨てたはずの、あいつが進めなかった道をお前が進んだ。そして、俺はそんなお前と正面から闘える」

「けど…たとえ弟だとしても、僕は…」

「ああ、分かってる。お前は勇太だ。勇武じゃない。けれど、ようやく会えた。結局、一番身近にいたんだな…新しいライバルってものが」

「ライバル…タケルさん、それって…」

「おいおい、手が止まってるぞ!!」

思いもよらばい言葉をかけられ、思わず動揺してしまった勇太の手が止まり、隙ができてしまったゲーティアがヒートランスの薙ぎ払いを受けて左手の刀を落としてしまう。

両手で刀を握り直したが、側面からの強烈な攻撃に弱い弱点を突かれる形で、今度はそれを折られてしまう格好になってしまった。

「だから本気でやる。新しいライバルになったお前を今度は正面から倒して、前へ進む!!」

「くっ…勝手な、人なんですね…あなたは!!」

「当たり前だろう!これは…遊びなんだからな!」

「それについては…同意しますよ!!」

トールギスが武器を失ったゲーティアめがけて、ヒートランスを構えて突撃を仕掛けてくる。

そのヒートランスを両手で受け止めたゲーティアのオーラが徐々に紅蓮の炎へと変わっていく。

「僕は…勝つ!!」

「何!?」

白羽取りしたヒートランスを力づくで折り、動揺するトールギスにお返しと言わんばかりに腹部へ蹴りを叩き込む。

今度はトールギスが地面に転落し、タケルは痛みに耐えながらダメージを確認し、その間にゲーティアが降り立つ。

本当なら、そのまま追撃をすることで勝てるはず。

だが、タケルが勝手なことをするのであれば、それをお返ししてやりたいという思いがあった。

「これで…お互いに使える武器は…ない…」

リミッター無視の高機動戦闘の影響で、ブレードウィングとして採用しているデモリッションナイフはコントロールが効かなくなっており、ただのオブジェと化している。

もはや邪魔となったそれを強制排除し、燃え上がる機体をそのままに拳を向ける。

「はあはあ…こちとら、今の攻撃で、翼は故障している…」

お互いにもう、殴りあう以外に使える武器はなく、今の状況を考えると全力の攻撃は1発くらいしかできない。

上空でぶつかり合う4機は消耗しつつも、なおも決着がついている様子はない。

立ち上がったトールギスはこれから行うことで邪魔になる翼を排除し、強制排熱を続行したまま拳を向ける。

「もう小細工はなしだ。最後は拳と拳、どちらが強いかの真剣勝負だ」

「小細工はなしって…最初からないでしょ、そんなものは」

「そうではあるけどなぁ」

フウウとお互いに深呼吸をし、ただ目の前にいるライバルに全神経を集中させる。

そして、お互いにスラスターを吹かせて接近していく。

残っている力をすべてその拳に注ぎ込み、必殺の一撃を叩くことだけに力を向ける。

「はあああああああああ!!!」

「うわああああああああ!!!」

燃え上がる拳と青く光る拳が目の前のライバルに向けてまっすぐ伸びる。

タケルの目には拳が確かに燃えるゲーティアに届いたように見えた。

「やっ…!?」

勝利を一瞬だけ確信したが、次の瞬間バリバリと周囲から音が響き始める。

同時に周囲の電子機器がスパークを起こしはじめ、コックピットにひびが入り始める。

「何ぃ!?」

「タケルさん…あなたの拳はゲーティアに届いていない。届いているのは…僕の拳です!!」

「マジ…かよ。こんなギリギリのところでカウンター…へへっ…」

この一撃を、このようなタイミングで受けたのは何年ぶりか。

一瞬、肉眼に映るゲーティアの姿が勇武のブルーフレームと重なって見える。

心の底から伝わる満足感に身を任せ、目を閉じたタケルは機体の爆発と同時にログアウトした。

 

「うわあああん!!アジアツアー優勝、すげえぜ、お前らぁ!うわあああん!!」

「姐さん、泣きすぎっすよ。それに、周りが…」

空港の中で、子供のようにワンワン大泣きするモチヅキをあやすウルチだが、その周囲からの視線があまりにも痛い。

中には迷子の子供と誤認してスタッフに声をかけようとする人さえもいる状態だ。

「泣かないでくれよ、モチヅキさん。感激してるのは分かるけど…。ああ、そういえば大丈夫なのかよ?ゲーティア。直せるのか?」

「あれだけ派手な戦いをして、それ自体作るのもすっごく大変だったんじゃないの?」

モチヅキをひとまず彼女に任せたツキミとミソラは勇太のカバンの中に眠るゲーティアを心配する。

勝利したとはいえ、手ひどく損傷した機体を修理しなければならず、日本から帰ってから2週間後には世界大会が始まる。

それまでに満足な状態でできるのかどうか、それが2人には心配だった。

「大丈夫。あの戦いでまたデータが手に入ったから、ここから第3形態を作るだけさ」

「第3形態を作る!?まったく、どこまでパワーアップさせるつもりだよ、ゲーティアを」

「まだまだ足りないさ。彼に勝つためにも…」

そのためにも、早々に日本に戻って作りたいと思っている勇太だが、唯一気になるのがタケルの行方だ。

一言お礼を言ってから帰ろうと思ったが、表彰式ではもうタケルの姿がなく、彼のチームメイトにも聞いたものの、帰ってきた答えはもうすでに台湾を発っていることだった。

彼らしいと言えばそこまでだが、チームメイトをないがしろにし過ぎではないかとも思ってしまう。

「じゃあな、勇太。一緒に戦えて楽しかったぜ」

「負けないでよ。ミサちゃんにも、よろしくね」

「うん…2人とも、ありがとう」

ツキミが差し出す手を勇太が笑顔でつかみ、握手をする。

ここから当分会えなくなる。

次に会うときは2人は宇宙飛行士の夢に、勇太はミサと共に世界を獲る夢に近づいているはずだ。

その未来への期待に胸を膨らませていた。

 

「えーーー、それでは久しぶりにみんな揃ったということで…かんぱーい!!」

「「「かんぱーい!!」」

綾渡商店街の夜、小料理屋みやこに面々がそろい、乾杯と同時にそれぞれがコップに入れている飲み物を飲み始める。

そして、ミヤコが出す手料理を口にしながらそれぞれが思い思いに語り合う。

「いやー、しかしすげえな。国際大会で勝ちまくりだろ?」

「ミサちゃんもアメリカツアーで準優勝だったんでしょう?」

「あとちょっとで優勝だったんだけどねー、やっぱり強かったなー、ロクトさん」

「確かに…あの人は強いよ」

成田空港行の飛行機の中で、勇太はミサとロクトのバトルの録画映像を見ていた。

ミサも善戦したものの、ほんのわずかな差で彼が上回っていた。

ただ、ここからは勇太たちの知らないことだが、国際大会における日本人の快挙が各地で話題となっているようだ。

「でも、これならあの百貨店の頭領だって、敵じゃねえな!」

「それはないですよ、マチオさん。彼に勝つにはもっとパワーアップしないと…あ、パワーアップとしたら、カドマツさん。ロボ太はどうなんです?」

「ああ、ばっちりだ。あいつもしっかり修行している。早くお前らと一緒に戦いたくてウズウズしているみたいだぜ。あと…モチヅキ、お前なんだよ。この金の使い方は。5人分使うってのは聞いてはいて、俺もOKしたが、滅茶苦茶だろ?」

にらみつける彼の視線をそらすように、モチヅキがチビチビとビールを飲んでいく。

宿泊費や食事代、レンタカー代などの必要経費についてはカドマツも文句を言うつもりは全くない。

だが、それ以外にお土産代にエステ、化粧品など明らかにモチヅキが使う目的でしかないようなものまで入っていて、その領収書を見たときは一瞬めまいがした。

「別にいいだろー?ボーナス出たっつってたし」

「ボーナスで足りるかよ!?こうなったら、例のものでこき使ってやる」

「やめろぉ!!」

「例のもの…?」

「完成したら見せてやるよ。きっと、びっくりするぞ」

フフンと得意げな笑みを見せるカドマツ。

どのようなものなのかは想像できないが、今はウィルとの決戦が大事なため、特に追及することなく勇太はコーラを口に含む。

「あーあ、私もミソラちゃん達に会いたかったなぁ。ニュースサイトで3人がチームを組んでるって知ったから」

「いや…ごめん。いきなり連絡するのも悪いって思ったから」

「で…どう思った?」

「そりゃあ、私が一緒に出られたらなって思っただけで…」

「ミサちゃんと…かぁ。じゃあ、次のアジアツアーは一緒に…」

「おーおー、なんだぁ、勇太。ガンプラバカのくせにナンパなんて覚えやがってぇ」

「ナ…ナナナナ、ナンパ!?そんなんじゃ!」

「顔に出てるぞ?それにミサもジェラシいなぁ」

「モ、モッチー!そんなんじゃないから!!そんなんじゃ!!」

2人仲良く顔を赤く染めてあたふたと手を動かして否定する姿に周囲の大人たちは見逃さない。

ほんのわずかながら離れていたこともあってか、互いにより意識し始めたように思えた。

「あ、そうだ勇太君。これは君が良かったらの話だけど…世界大会が終わったら、ウチでバイトをしないか?」

「え、あ…バ、バイトですか?」

「そうそう。そして、ゆくゆくは店を君とミサの2人で…」

「な、ななな…!?」

ユウイチの言葉で、一瞬だが勇太はミサと2人でプラモ屋を切り盛りする光景を頭に浮かべてしまう。

子供たちが集まる中で勇太が彼らにガンプラを教え、ロボ太は対戦をするなどして交流を深めている。

そして、夜になって店を閉めたら2階にはエプロン姿のミサがいて、そのそばには勇太とミサに似た子供2人の姿が…。

そんなことをうっかり想像してしまった勇太の視線がチラリとミサに向けられる。

すっかり顔を下に向けているミサだが、分かりやすいぐらいに顔を真っ赤に染めていた。

「ハハハ、ついに娘に春が来たというのはうれしい限り。若さに乾杯!」

「乾杯!!」

「ちょ、違う!まだ、そんなんじゃ…!!」

「まだ…?じゃあ、いつなるんだ?今夜かぁ?」

「んもーーー!!勇太君、何か言ってーーーー!!」

助けを求めるミサだが、もう頭が沸騰してしまっている勇太には助けるだけの力が残されていなかった。




機体名:ゲーティア(第2形態)
形式番号:ASW-MS-00
使用プレイヤー:沢村勇太
使用パーツ
射撃武器:ハンドガン×2(ガンダム・ヴィダール)
格闘武器:太刀×2
シールド:オリジナルシールド(裸の女性のレリーフが刻まれたカイトシールドで、ベースはセイバー)
頭部:オリジナル(ユニコーンをベースとし、顔部分はバルバトスに近い)
胴体:ガンダムバルバトス(後ろ腰にハンドガン用ホルスター装備)
バックパック:ガンダム・アスタロトオリジン(ブレードウィング追加)
腕:ガンダムバエル
足:ガンダムアスタロト(弾倉用ホルスター装備)

設定上はガンダムレライエに敗北したゲーティアを宇宙海賊の手によって改修したもの。
暁を引き入れることを前提としたもので、機動力と安定性の向上のため、入手したガンダム・アスタロトのデータを元に開発された追加スラスターが外付けされている。
大気圏下での飛行については5分程度であれば可能となっている。
また、ブレードそのものは取り外しも可能となっており、2本のブレードに転用可能だが、取り外した場合は自力での再装備は不可能となっている。
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