「ふああ…いよいよタウンカップだぁー!楽しみだね、勇太君!」
「うん、けど…これはただの通過点だ。ここで勝てないようだと、日本一にはなれない」
「うう…万年タウンカップ予選落ちのリーダーの私にとっては耳が痛い…」
彩渡駅から北へ徒歩10分の場所に位置する彩渡小学校の体育館には多くのガンプラファイターが集まっていた。
リージョンカップやジャパンカップと比べると人数は少ないが、その分気軽に参加できるのがタウンカップのポイントだ。
だが、ここで勝ち切るだけの実力がなければ、リージョンカップは夢のまた夢。
ハロを抱え、意気込む彼女と共に、勇太も少しうれしそうに体育館を見る。
(もう2度とこういう日が来ることはないと思っていたけど…)
「よぉ、新しいチームメンバー見つかったのか?」
2人の前に若干目つきの悪いTシャツ姿の少年がやってくる。
ミサに気軽に話しかけていることから、彼が彼女と知り合いなのがわかる。
「カマセ君…。ここにいるということは、新しいチームが見つかったんだね」
「ん…?新しいチーム?ってことは」
「うん、彼は私のチームのメンバーだったの。抜けちゃったけど」
「ああ…」
後半の発言のトーンが低くなったことから、そのことを根に持っていることがよく分かった。
しかし、元とはいえ同じチームに入ったということで、あいさつしないわけにはいかない。
「沢村勇太だ。よろしく」
「おう、俺は鎌瀬竜吾。ま、どうせ対戦することがないだろうけど、一応挨拶しておくぜ」
「おい、新入り。こんなところで油売ってないでセッティングしろ」
カマセを呼びに来たのか、今度は白衣を着た男がやってくる。
「わかってるよ、元チームメンバーに挨拶してたんだ。じゃあな、ミサ。決勝まで残れればいいな」
嫌味全開の言葉を残し、カマセは体育館へ入っていく。
(カマセ…かませ犬…)
「勇太君、カマセ君に失礼なこと考えたでしょ?」
「悪いな、嬢ちゃんたち。邪魔しちまって」
さすがにカマセの言動が相手チームへの敬意がかけらもない、失礼なものだと思ったのか、チームメイトとして男が詫びを入れる。
「いえ、むしろありがとうございます。えーっと…」
だが、彼女には詫びは不要だったようだ。
カマセの挑発により、より一層ファイティングな気持ちになったのだから。
しかし、男の名前を聞いていないことから何と呼べばいいのかわからないミサが言葉に詰まる。
「おっと失礼。俺はハイムロボティクス、チームエンジニアの角松和平だ」
「ハイムロボティクス…確か、トイボットやワークボットのシェアが関東地方では上位を争っている企業で…」
「で、去年のタウンカップ優勝チームだよ。カマセのヤロー…」
「…何か目つき怖いよ、嬢ちゃん。んじゃ、俺は仕事があるから」
彼女の目を見ていられないのか、カドマツは逃げるように体育館へ向かう。
「あの…ミサちゃん…」
「勝とう…」
ぎゅっとハロを握りしめながら、低い声で言う。
「ミサ、落ち着け。ミサ、落ち着け」
「まずは、その…落ち着いたほうが…」
「勝とう」
「…はい」
理由が何であれ、タウンカップを制覇する大きな理由ができて、モチベーションが上がったならもういいか。
勇太はそう思い、肯定する言葉を出すしかなかった。
ビグ・ザムが爆発する直前にドズルが見せたプレッシャーのようなものを感じて怖かったのも理由にあるが。
30分後、体育館内にすべての参加チームが集まり、放送が流れる。
(えー、それではタウンカップ予選を開始させていただきます!今回のルールはモノリスの破壊です!今回フィールドとなっている月面に設置されているモノリスを多く破壊した上位8チームが本選への出場権を獲得できます!)
「今回の出場チームは20…。ということは、ここで12チームが一気に消えるってことか…」
(なお、攻撃できるのはモノリスだけではありません。もちろん、相手チームへの攻撃も可能です。なので、当然チームが全滅した場合も敗退となります。また、制限時間は1時間ですが、すべてのモノリスが破壊された、もしくは全滅したチームが12チームとなったときはその時点で予選が終了します。相手チームを倒すか、それとも戦闘を避けてモノリスの破壊に徹するか、その選択が勝敗を左右することになります!)
「これは…予選落ちも仕方ないって思えるな…」
モノリスの破壊は単純に人数の多いチームが有利となる。
サウザンド・カスタムのような、一騎当千ができるガンプラとファイターで出るならまだしも、1人が2人だけでは勝ち目があまりない。
前もってミサから予選のルールが教えられたとはいえ、確かに厳しいものがある。
(それでは、これから30分後に予選開始となります。皆さま、準備をお願いいたします!)
放送が終わると、各チームが壁側に設置されているテーブルへ向かい、自分たちのガンプラの最終チェックを行う。
あるチームは武器の換装を行い、あるチームはミーティングを行って作戦を立てる。
様々なチームが異なる行動をとっている。
勇太とミサはテーブルへ行き、ガンプラの整備を始めていた。
「ミサちゃん、武器のカートリッジはどれだけある?」
「んーっと、マシンガンが3つでバズーカが4つくらい。長期戦になるから、つけれるだけ付けたよ。勇太君はどうするの?」
「30分あるし、今のバルバトスでは長期戦が難しい…。少し、改造を加えてみるよ」
そういって、リュックサックからミサの家で購入したガンプラの箱を出す。
「といっても、ほんの少し手を加えればいいだけだけど」
(それでは、時間になりましたので、予選を開始させていただきます!各チームはガンプラバトルシミュレーターにガンプラをセットしてください!)
「よーし、しっかり見ててね。ハロ!」
「了解!了解!」
ハロの頭を撫でたミサはそれをバトルシミュレーターに接続する。
システム起動と同時に周囲の光景がアカツキのコックピット内と同じになり、服装もノーマルスーツへ変わる。
「よーし、井川美沙!アザレア、いっきまーす!」
カタパルトが起動し、アザレアがフィールドへ放り出される。
飛び出してすぐにバルバトスの合流し、彼の肩に手をのせて接触回線の会話を始める。
「んじゃあ、がんばろっか!でも、その装備で大丈夫??なんか不安定そうだけど…」
「正攻法だけが戦いじゃないさ。それに、これくらい操縦できなきゃ、日本一になれない!」
「そうだけど…うわぁ!!」
急に銃弾とビームが2人を襲い掛かり、急いで2人は左右に離れて回避する。
「てめえらーー!!ここでいきなり会えるなんてなぁ!」
「タイガー…」
2機のシュヴァルベ・グレイズとガーベラ・テトラベースのガンプラを見て、勇太はファイターの名を呼ぶ。
「弱いやつにモノリスを渡す必要なんてねえ!そいつらは全部片づけ…「どけ!!」え…??」
目の前まであっという間に接近したバルバトスがタイガーのガンプラにメイスを突き立て、そのまま大出力で近くに浮遊している隕石に突っ込む。
隕石に衝突し、めり込んだタイガーのガンプラはぐしゃぐしゃになり、そのまま爆発した。
「うわあ!?タイガーさん!!」
いきなりタイガーがやられて、動揺する2機のシュヴァルベ・グレイズ。
それを2人は見逃さない。
ミサがそのうちの1機をビームサーベルで両断する。
「んもぉ、邪魔しないでよ!あんた達はタイガーっていうより、ただのハイエナじゃない!」
「え…うわ…!?」
残った1機もライフルの銃弾を浴びる形でバラバラになっていった。
これで、開始から1分足らずで1チームが失格となった。
「それにしても、見てみたらヘンテコ装備だよねー…」
改めて、バルバトスを見たミサは苦笑する。
両手足と胴体はバルバトスと変わりないものの、背中の部分だけがサイコ・ザクの2基のロケットブースター付き大型バックパックとなっている。
2つのサブアームが持っているライフルはすぐにバックパックに収納される。
「重力下ではバランスが悪いのは確かだけど、機動力はかなりあるし、おまけにリユース・サイコ・デバイスの代わりに阿頼耶識でサブアームの操作を代替できる。悪くないと思うけど…」
「ま、まぁいっか。じゃ、モノリスを探そっか」
「了解。しっかりつかまって」
バルバトスの両肩にアザレアが捕まったのを確認すると、ロケットブースターが起動して一気に加速していく。
コックピットに伝わるGに耐えながら、2人は月面を目指した。
機体名:バルバトス(第3形態)
形式番号:ASGT-00B
使用プレイヤー:沢村勇太
使用パーツ
射撃武器:滑腔砲
格闘武器:メイス
頭部:ガンダムバルバトス
胴体:ガンダムバルバトス
バックパック:サイコ・ザク(ライフル(グレイズ)×4、バズーカ(グレイズ)×2、滑腔砲×2、及び各武装のマガジン搭載)
腕:ガンダムバルバトス(第4形態)(腰部に太刀をマウント)
足:ガンダムバルバトス
盾:ガントレット
タウンカップ予選のために、バックパックをサイコ・ザクのものに変更したもの。
彩渡商店街ガンプラチームのアセンブルシステムはビルダーズパーツに非対応であり、バルバトス自身は追加装備がなければ長期戦に耐えられないという弱点がある。
そのため、バックパックを武装が豊富なサイコ・ザクのものに切り替えることで、長期戦に対応できるようになったものの、それと引き換えに重力下でのバランスが悪化した。
搭載されている武装はすべてギャラルホルンや鉄華団が使用する武器に入れ替えており、阿頼耶識システムによりサブアームの操作が容易となっている。
なお、火力に関して勇太は不満に思っており、決勝までにはその問題を解決したいとのことだが、バランスの悪化については別に問題としていない。