第19話「散りゆくものたち」
彼岸花、そしてその組織を中心とした反ギャラルホルン連合とギャラルホルンによる決戦が始まった。
まずは戦艦ギャラルホルンによるダインスレイヴの一斉射によって、ギャラルホルン月面基地は壊滅。
合流したテイワズに求められたミッションは戦艦ギャラルホルンの破壊である。
「アドオンによる追加ステージか…。こいつの試運転にはちょうどいい」
シミュレーターに乗り込み、格納庫でバルバトスゲーティアのそばに置かれているサポートメカに目を向ける。
GNアームズをベースとしているものの、粒子貯蔵タンクの代わりに通常のスラスターとプロペラントタンクを搭載し、左右と上部に橙色と白、ピンクのコンテナがそれぞれ設置されている。
「主殿、コンテナの中には武装が…?」
「まあ、いろいろと入れてあるよ。これからのバトルで見せられる…かな」
バルバトスゲーティアに乗り込んだ勇太はコンソールでサポートメカ『グリモワール』の状態をチェックする。
こちらからの遠隔操作は問題なくできそうで、あとはステージを進む中でどのようにサポートメカを動かしていくかが課題になる。
「よーし、私もパワーアップしたアザレアの力を見せてやる!!」
気合を入れるミサのアザレアはこれまでのアカツキをベースにしたものと変わり、頭部がジャスティスに変更されているが、スタンスそのものはこれまでと同じで、純粋の性能も向上しており、トランザムも引き続き使用可能となっている。
世界大会が終わり、勇太とウィルの決戦を見たことがミサに新たなモチベーションを与えていた。
いつか、一緒に戦ってくれている恋人の勇太に勝つ。
チームである以上はこれからも一緒に戦うが、同時にライバルとしても勇太と立っていたい。
そんな思いを今のミサは抱いている。
「よーし、井川美沙、アザレアリバイブ、行きまーす!!」
「沢村勇太、ガンダムバルバトスゲーティア、出るよ」
「ロボ太、バーサル騎士ガンダム、出撃する!」
3機がカタパルトから射出され、その後でグリモワールも発進する。
戦艦から飛び出して見えてきた光景はこれまでもよく見ているジャブローだ。
「ステージそのものは変わっていなくて、追加機体があるっていうのがイラトおばあちゃんが言ってたことだけど…」
「新しい機体か…それって、『水星の魔女』とか、『クロスボーン・ガンダムDUST』のミキシングビルドのモビルスーツとか…?」
いずれの作品の機体も、最近になってガンプラの種類もそろいだしてきて、シミュレーターでも出すことが可能になった作品ばかりだ。
他にも、昔勇武が遊んでいたゲームであるGジェネレーションシリーズで登場するトルネードガンダムやフェニックス・ゼロ、フェニックスガンダムなども最近になって注目されだし、ガンプラも登場している。
そんな機体が出てくるとばかり思っていた勇太だが、バルバトスゲーティアに映る敵機体はリーオーやサーペント、マラサイなどのこれまで登場したモビルスーツばかりだ。
「そう簡単に新機体を見せてはくれない…か!!」
上空から降りてくるバルバトスゲーティア達にビームライフルやドーバーガンで迎撃を仕掛けてくる。
「そんなもので!!」
スラスターを吹かせ、一気に地上へ降りたゲーティアが両手で握ったバスターソードメイスを振るい、マラサイを一撃でバラバラにする。
地上に降りたゲーティアのその攻撃力に脅威を覚えたOZ仕様のリーオー複数機がドーバーガンをゲーティアに向けて放ち、その弾丸をバスターソードメイスの刀身を盾替わりにして受ける。
上空への攻撃が弱まっている間にミサは地上に隠れるように設置されているトーチカを探しだし、それらをレールキャノンで破壊していった。
今回のステージのクリア条件はジャブローのトーチカをすべて破壊し、現れるターゲット機を破壊すること。
もしかしたら、それが追加機体の一つかもしれない。
「うーん…歯ごたえがない…」
地表のモビルスーツを撃破しつくし、バスターソードメイスを肩に担がせた勇太は消えていく敵機の残骸を見て、新ステージであるにもかかわらず拍子抜けな状態に少しため息をついた。
少し前まで世界レベルの相手と幾度も戦ってきたせいなのか、こうした普段のシミュレーターのステージの難易度では満足できなくなっていた。
ミサやロボ太も同様で、アザレアも騎士ガンダムも目立った損傷がない。
「これじゃあ、あとは侵入ルートを見つければ地上でやることはなくなっちゃうね」
「確かに、もう敵機の反応は…うん??主殿、ミサ、敵機だ!!」
「敵機…?でも、これって…」
ゲーティアのセンサーにも新しい敵機の反応をキャッチしたものの、妙な反応に困惑する。
その敵機の反応は1つだけだが、それが現れたり消えたりを繰り返していた。
ゲーティアに麒麟を手に取られ、勇太はその奇妙な敵機に警戒する。
「どこだ…どこから攻撃してくる…」
引き続き反応は出現と消滅を繰り返し、カメラで追いかけてもその姿を見つけることができない。
探している次の瞬間、上空から一条のビームが麒麟に向けて振ってくる。
「何!?」
嫌な予感を感じ、麒麟を手放した勇太の目に映ったのはビームで撃ちぬかれる麒麟が爆発する姿だった。
左文字と一体化させ、大太刀としてふるうことも想定して設計している麒麟は通常のライフルよりも強固に設計しており、本来なら並のビームライフルでは破壊が難しいはずだ。
だが、このビームは一撃でその麒麟を破壊してしまった。
ナノラミネートアーマーでビームへの守りがあるとはいえ、それでもその出力のビームにどこまで耐えられるかわからない。
「!!ロボ太、下がって!!」
「うおっ!!助かった、ミサ!」
ロボ太が下がった直後、彼がいた場所にビームが落ちる。
アザレアのレーダーのおかげで、かろうじてビームライフルらしきものを発射する直前の敵機を捉えることができた。
だが、その反応はすぐに消えてしまう。
「円陣を組むんだ!死角をできる限りなくすんだ!」
3人が背中合わせに円陣を組み、勇太は森の中に隠したグリモワールの状態を確認する。
(この距離なら、こちらから命令を出せる。敵機は多分、グリモワールじゃなくて僕たちを狙ってる。今のゲーティアで無理なら…)
「ふふふ、いいデスね。さすがです」
タイムズユニバース百貨店5階にあるネット喫茶。
鍵付きの部屋の中でナジールは手持ちのノートパソコンから戦闘を行っている勇太たちの様子を見る。
ナジールはキーボードを操っている様子はなく、ただ単に彼らの戦いぶりを見ているだけだ。
「多くのファイターの戦闘データを参考にしたAI、そしてあなたたちとの戦いを想定して作り上げたガンプラ。さあ、どこまでやれるデショウか…」
「へええ、これはたまげた難易度のミッションだねぇ。あの3人でも防戦一方だなんてねえ」
ミッションの様子をインフォが用意したお茶を飲みながら見るイラトはその様子を見てニヤニヤと笑う。
大会に出ていないファイターでも、こうした高難易度ミッションには挑みたくなり、同時にそれをクリアするファイターの姿を見たくなるというもの。
苦戦が避けられず、いまだクリアできていないということが分かれば、なおのことだ。
いいものを置いて行ってくれたとあの営業マンには感謝しかない。
「にしても、ちょっと不満なのが…相手がよく見えないことだねえ…」
ビームを撃ってくることはわかるものの、それ以外で敵機の正体がイラト達観戦者でさえも分からない。
ほんの一瞬、シルエットみたいなものは見えたが、それだけだった。
「くっ…耐え忍んでも勝機はない。それに…僕もどうにか捉えられる状態にしないと!」
となれば、今の装備ではだめだ。
勇太はバルバトスゲーティアをグリモワールに向けて走らせる。
「ええ!?勇太君!?」
「主殿、何を!!」
突然の敵前逃亡のような動きを見せた彼に2人は困惑する。
だが、ミサは勇太が向かっている先にあるグリモワールに目が留まる。
「そっか…なら、足を止めないと!!」
左腕に装備されているシールドに内蔵されているビームサーベルを引き抜いたミサは上空に向けてそれを投げる。
これまで撃たれてきたビームの軌道からわかることは、少なくとも敵機は上空から撃っているということ。
曲がる軌道がないため、ゲシュマイディッヒパンツァーやレグナントの疑似GNフィールドの心配は少ない。
投げたビームサーベルに向けてビームマシンガンを1発撃ち込むとビームサーベルは爆発とともに内蔵されたビームがまばゆい光とともに拡散する。
これが効果があったのか、ビームが撃たれる様子が見られない。
その間にグリモワールにたどり着いた勇太がコマンドを入力する。
「換装開始、アーマー…フラウロス!」
入力完了と同時に低空飛行を開始したグリモワールがコンテナをリボルバーのように回転させ、真上にピンク色のコンテナが配置される。
コンテナが開くと同時にレールガンが装着されたバックパックが排出され、共に両腕パーツと両足、頭部に外付けする装備、2丁のマシンガンも同時に排出される。
バルバトスゲーティアのバックパックと両腕が外れ、排出された各パーツが装着される。
変更されたばかりの両手でマシンガンを握り、浮遊を終えたグリモワールを移動させるとともにゲーティアにツインアイを覆うように青いスクリーンが展開され、網膜投影された勇太の目に敵の正体が映る。
「見えた!!」
機体各部に青い水晶状のパーツが取り付けられた、オレンジ色のガンダム。
こちらに視認されたことに気づいたのか、そのガンダムはライフルをこちらに向けてくる。
麒麟を破壊するほどの破壊力のビームが襲い掛かるが、ホバー移動を開始したゲーティアはそのビームを避け、同時に2丁のマシンガンをその機体に向けて連射する。
襲い掛かる銃弾を見たガンダムは鳥のような姿に変形するとともに弾幕を回避していく。
「主殿!その装備は…」
「うん、フラウロスアーマー。おかげで分かったよ。相手はスクランブルガンダムだ。ガワだけは…だけどね」
ビルドファイターズシリーズにおいて、新型バトルシステムの実験機として作られたガンプラ。
アドオンの登場とシミュレーターアップデートによる新しい可能性が生まれた今の環境にふさわしい追加ガンプラと言えるが、気になるのは姿が消える手品だ。
プラフスキー粒子の暴走により、原作ではコロニーレーザー攻撃やフィールド変化などを見せたスクランブルガンダムだが、これはシステムの影響であり、スクランブルガンダムそのものによる攻撃ではない。
だとしたら、どうして消えたり現れたりの芸当ができるのか?
「確か、サクラさんが言ってた。ミラージュコロイドはミノフスキー粒子と同じ特殊粒子の一種。なら、あのクリアパーツに入っているものが…」
放出されるミラージュコロイドを機体に付着させるためのエネルギー確保のため、展開中は攻撃しない、するとしても消耗の少ないレールガン以外の実弾のみ。
そして、ミラージュコロイドで消せないものもある。
「ミサ、音だ!音で特定して!!」
「勇太君…うん!!」
アザレアが感知したモビルスーツのスラスター音。
それを元に音の発生源を割り出していく。
そして、割り出した機体の位置、そして予測ルートを勇太に送る。
「よし…いける!!」
マシンガンを投げ捨てたと同時にバックパックの下部左右、レールガンの真下あたりに外付けされた銃身を短くしたケルベロスというべきビーム砲2丁が両脇の下を通過し、逆手で持ち手をつかむ。
左右から発射されるビームが予測ポイントへと向かい、そこに出現したスクランブルガンダムがビームライフルを放つ。
麒麟を撃ちぬいたものとは違う、最大出力でのビームが放たれ、2つのビームはぶつかり合う。
「避けれたら…良かったね!!」
ぶつかり合う状況こそが、フラウロスアーマーの最高の状況。
フラウロスの最大の武器である2門のレールガンが最大出力を放つべく足を止めているスクランブルガンダムに狙いを定める。
「いけええええええ!!」
左右から発射された弾丸が動けないスクランブルガンダムに向けて襲い掛かる。
弾丸を受けたスクランブルガンダムは大きく吹き飛ばされるが、装甲が大きくへこんだ様子が見えるだけで致命傷を負ったようには見えない。
スクランブルガンダムがもとになっているのはZガンダムとデスティニー。
それ故にデスティニーのヴァリアブルフェイズシフト装甲があっても不思議ではない。
しかし、スクランブルガンダムが戦っている相手は勇太だけじゃない。
「ミサ、とどめをお願い!!」
「了解!!いっけえええええ!!!」
アザレアの新装備であるメガキャノンが展開し、最大出力でスクランブルガンダムを襲う。
巨大な資源衛星を一撃で破壊できるそのビームはスクランブルガンダムを飲み込み、消滅させた。
「はふううう…やったぁ…」
「見事だ、主殿、ミサ。それにしても、主殿が作ったサポートメカ…ゲーティアの装甲と武装を搭載しているとは…」
「うん、でも…逆に言うといきなり使うことになるとは思わなかったよ…」
まだ使っていないアーマーがあるとはいえ、この追加されたステージの1つ目がまさかの強敵になるとは思いもよらなかった。
ミラージュコロイドの抜け穴のことを知っていなかったら、このままじり貧になって倒されていただろう。
「ふふふ、やはり倒されまシタか。ですが、そうでなければ」
映像を止めたナジールはPDFファイルを開き、そこに描かれている複数のスクランブルガンダムの画像を見る。
それらを見つめつつ、テーブルにあるコーラを口にするナジールはキーボードを操作する。
「まだまだステージは続く。サテ…その間にどれだけの情報を手に入れてくれマスか?スクランブルガンダム…」
機体名:ガンダム・フラウロスゲーティア
形式番号:ASW-MS-00/F
使用プレイヤー:沢村勇太
使用パーツ
射撃武器:マシンガン×2
格闘武器:アサルトナイフ
シールド:なし
頭部:オリジナル(ユニコーンをベースとし、顔部分はバルバトスに近い)(スクリーンガンカメラ搭載)
胴体:ガンダムバルバトス
バックパック:ガンダムフラウロス(ビームランチャー搭載)
腕:ガンダムフラウロス
足:ガンダムバルバトスルプスレクス(外付けホバーブースター装備)
サポートメカシステムの追加に伴い、ゲーティアに追加した換装システムにより、フラウロスアーマーへ換装したもの。
バルバトスゲーティアと比較すると、両腕とバックパックを切り替えており、バックパックのレールガンとビームランチャー、両手のマシンガンにより遠距離戦闘が主体となっている。
追加装備であるホバーブースターにより、地上で水上での高機動での移動が可能。
コンバットパターンの1つとして、相手を2門のビームランチャーで攻撃し、その後で最大出力のレールガンを放つというもので、レールガンについては麒麟や破砕砲の技術が応用されたことで、最大出力での破壊力はダインスレイヴに匹敵する。
その攻撃を行う都合上、フラウロスにあった変形機構については採用していない。