ガンダムブレイカー3 彩渡商店街物語   作:ナタタク

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第67話 原点へ

ガンダムバトルシミュレーター発祥の地、お台場。

30年前に行われた大型イベント、ガンダム・グレート・フロントにて初めて公開され、自分で作ったガンプラを操作し、実際に戦うことができるというコンセプトに多くのファンが熱狂した。

もちろん、現在と比較すると操縦性などが粗削りで課題も多く存在したが、これがあったからこそ、今のガンプラバトルがあり、数多のガンプラとファイターが生まれることとなった。

その跡地には現在、GGF博物館が建てられており、ガンダムの歴史のすべてをそこで知ることができるという。

そして、この週末が博物館の完成記念日であることから、とあるイベントが開催される。

 

「おおーーー!もうすぐお台場、GGF博物館!なっつかしいなーー!」

レインボーブリッジを渡る車の中で、マチオは窓から見えてくるGGF博物館を目に焼き付ける。

隣に座るミヤコも声には出していないが、緩んだ表情で当時を思い出していた。

「確かに、懐かしいね。30年前を思い出すよ。親に内緒で一緒にお台場まで行って、ガンダムバトルシミュレーターで遊んで…」

「今日は30年前のステージの一部を遊べるのよね。操縦は今の物と同じだけれど」

「あの、ユウイチさん。ここまで来てなんですが、僕も来てよかったんですか?」

助手席に座る勇太の手には今日のイベントのパンフレットが握られており、それにはかつてのイベントで実際に行われた戦闘の画像の一部が掲示されている。

ガンプラバトルの始まりを見ることができることについては勇太も楽しみだが、大の大人3人に自分が混ざっていることは場違いなように思えた。

「いいさ、君がいたらどんなステージもクリアできると思うから。それから、いい加減『お義父さん』とか、呼んでくれていいのに」

「待ってください、ユウイチさん。まだミサとはそこまで…。ああ、でも、ミサは残念がると思いますよ、一人だけお留守番なんて…」

「まぁ…仕方ないよな。あんなやらかしをしちゃあ…」

 

数日前の夕方、店の営業時間が終わった店内で、珍しく怒っているユウイチと首をかしげるミサの姿を勇太は目撃している。

勇太は今日、商店街のイベントとして行われる小学生向けのガンプラ製作教室の手伝いに参加しており、それを終えて帰ってきた時だ。

「ミサ、父さんがなぜ怒っているのか、わかっているね?」

「んん…?」

「帰りました…ユウイチさん、どうしたんですか?」

「ああ…おかえり、勇太君。…ミサ、勇太君のところへ逃げるのは、だめだよ」

帰ってきた勇太に笑顔を見せかけたミサだが、ユウイチに釘を刺され、不満げに頬を膨らまれる。

勇太の記憶において、怒った顔を見せるユウイチを見るのは世界選手権での軌道エレベーターの騒動以来だ。

「胸に手を当てて、よく考えなさい。自分が何をしたのか」

「ええっと…棚に展示してあるガンプラを勇太君のものを除いて、全部旧キットに変えたとか?」

「え!?そうなの!?」

目を丸くしたユウイチが大急ぎで展示されているガンプラを見に行く。

一つ一つ棚から出して確認するが、確かにミサのいう通り、旧キットのガンプラがいくつも入っていた。

勇太が造ったターンエーガンダムと手をつなぐ旧キットのカプル。

メガライダーに乗っているガンダムMk-Ⅱについても、Mk-Ⅱが旧キットに差し替えられている。

いつの間にそんなことをしたのか、全く気付くことができなかったユウイチが感心して眺めているが、そんなことじゃないと切り替えて再びミサの前へと向かう。

「え…?もしかして、違う?じゃあ、どれだ…?」

「ミサ…どれって、何をしたの?」

「仕入れの発注書、勝手にいじっただろう?」

「げっ!?ばれちゃった…?」

「今度発売されるPGアルビオン、あんなの店に入らないだろう!」

放熱板を除くと300メートル近い全長を誇るアルビオンの六十分の一のガンプラとなると、それ一つで店の多くのスペースを使うことになる。

「だってー、1回見たかったんだもん。勇太君と一緒に作りたかったからー」

「問屋から確認の連絡があったからよかったものの、そのまま届いていたらどうなっていたか…」

「ごめんなさーい」

「罰として、今週末は店番していなさい。父さんはお台場へ行ってくるから」

「えーーーー!!!」

 

「ひどいよねー。自分は勇太君と一緒にお台場へ行って、私だけ置いていくなんてー」

「確かに、ひどいですよね」

「でしょー!」

「無いものに手は当てられませんよね」

「…何の話?」

「なんでもありません」

ゲームセンターでインフォ相手に愚痴をこぼすミサの手には勇太が今持っているものと同じパンフレットが握られている。

本来なら同じ日時に大人たちとは別に勇太と二人でイベントを見て回っていたはずなのに。

そして、イベント終わりの夕方には二人きりでかつてのカミーユとフォウのようなキスをしたかったのに。

不満を隠さずにはいられない彼女だが、店番の約束をしていながらなぜゲームセンターにいるのだろうか。

「ところで、店番は良いのですか?」

「ロボ太に任せてるから平気!」

「それは…平気なのでしょうか…?」

トイボットで、おまけにシミュレーターの中でなければコミュニケーションをとることすらできないロボ太のことを心配せずにいられなかった。

きっと、ばれたら店番だけでは済まされないだろう。

 

「おーし!ファーストステージの準備はOKだ!頼むぜ、猛烈號!!」

シミュレーターに入り、ガンダムAGEシリーズの連邦軍のノーマルスーツ姿となったマチオがハンガーにかけられている自分の猛烈號を見つめていた。

軌道エレベーターの一件では急いで家から持ち出し、ろくに整備をする時間がなかったため、塗料が剥がれていたりなどしていたが、今日のために修復したそれの姿にかつてのガンプラバトルを楽しんでいた自分を思い出す。

それはミヤコとユウイチも同じで、3人とも今日のためにこうして準備をしてきた。

「勇太君はゲーティアでもバルバトスでもないね。それに、サポートメカもなしでいいの?」

「ええ…イベントの時に実装されたのはAGEまでで、バルバトスとか、鉄血のオルフェンズのガンプラは未実装でしたからね。どうせやるなら、同じ条件でって思っただけです」

レッドフレームをゲーティアと同じ配色にしたような姿で、グレーのABCマントで身を包んだそれはクロスボーンガンダムX-0を彷彿とさせるものだった。

コックピットに乗り込んだ勇太の衣装もまた、オーブ軍一般兵のノーマルスーツを灰色にしたものだった。

「行こうか、みんな!!」

ユウイチの号令と共に4機のガンプラは一斉に発進し、ジャブローに降り立つ。

それに前後して敵ガンプラが次々と出現し、それらはザクやドム、グフといった初代ガンダムのジオンのモビルスーツの大群だ。

「おおーーーー!!」

「初めて見たときはびっくりしたわね。テレビの中だけの存在だったモビルスーツが目の前にいるって感じがして」

「ああ…震えたよ。自分のガンプラで戦えることに!!」

ユウイチの乗り込むゼピュロスのユニバーサルブースターポッドが生み出す大出力がドムとザクが生み出す弾幕をかいくぐるとともに、手にしているビームライフルを連射する。

速いスピードで動きながらであること、そしてユウイチ自身もガンプラバトルに対してかなりのブランクがあることから精密な射撃を行うことが難しいものの、それでも3発のビームで確実にザクを撃破することができた。

「あんまりライフルを使いすぎちゃだめよ、Eパック方式じゃないでしょう?」

「わかってるよ。必要なら、自力で調達するさ!」

「ハアアア!!」

水中から飛び出したゴッグを勇太のガンプラの刀が一刀両断する。

両断されたゴッグの爆発を背に、マントをはためかせるガンプラは静かに左手に握る鞘に納刀した。

「デモンズフレーム…これなら、やれる」

納刀している隙をつくべくグフがヒートロッドを放つものの、ビームが根本を貫き、コントロールと動力を失ったヒートロッドが地面に落ちる。

デモンズフレームの腕に内蔵されているビームガンがヒートロッドを撃ちぬいていた。

「遅いよ」

次に発射されたビームがグフのコックピットを正確に撃ちぬく。

撃墜判定となり消えるグフを見届けた勇太は再び抜刀し、まだまだ現れるジオンのモビルスーツ部隊に挑んだ。

「みんな、侵入可能ポイントを送るわ!奥にいるPGのガンダムを倒せば、クリアよ!」

ミヤコの通信と共に送られた座標データ。

3機が戦闘を行っている間に最もステルス性のあるミヤコのジェスタコマンドカスタムがジャブロー侵入口の特定に動いていた。

「よっしゃあ!そういうわけだから…どいてもらうぜえ!!」

ビームラリアットを展開させた猛烈號の一撃がドムの頭部を粉々に砕き、メインカメラを失ったドムはそのまま地面にあおむけに倒れる。

目を失った以上はもう構う必要はないと猛烈號がミヤコの元へ急ぎ、その後をゼピュロスとデモンズフレームが続いた。

 

一方、商店街のガンプラショップでは…。

「…」

「…」

勇太たちの様子を見に来たサクラとしゃべれないロボ太が向き合い、互いに目を合わせているが、しゃべる様子を見せない。

店の営業時間だというのに誰もおらず、いるのはロボ太のみという不用心な状況。

もし泥棒に入られてもしたらどうするのか。

「店を開けているから、勇太かミサがいるとは思うけれど…」

「こんにちはー!」

表から子供たちの声が聞こえ、サクラが振り返った時には数人の小学生が小遣いの入った財布を手に店に入ってきた。

事情を知らず、営業中の看板を置いている以上は客が入ってきても不思議ではない。

「あ、もしかして世界選手権に出てた凛音桜さん!」

「嘘!?もしかして、今日はこの人が店番を!?」

「あ、違…」

「ねえねえ、俺、かっこいいガンプラ作りたいんだー!おすすめのを教えてくれよー!」

「あー、ずるい!私も聞きたいことあるのにー!」

「ま、待って。一人ずつ聞くから…(ミサ…勇太…どっちでもいいから早く帰ってきて…)」




機体名:アストレイデモンズフレーム
形式番号:MBF-P00
使用プレイヤー:沢村勇太
使用パーツ
射撃武器:なし
格闘武器:正宗
シールド:ABCマント
頭部:レッドフレーム
胴体:レッドフレーム
バックパック:レッドフレーム
腕:ユニコーンガンダム
足:クロスボーンガンダムX-1

お台場でのイベントのために用意したガンプラ。
パーツは自作の正宗以外はすべて当時のシミュレーターで実際に採用されたもののみを選抜している。
バッテリー駆動故の行動時間の制限の弱点を武装の可能な限りの最小化によって補っており、正宗についてはゲーティアの左文字を参考に作っている。
左文字は麒麟やバスターソードメイスとの兼用を前提にしているのに対して、正宗は本体のみでの戦いに特化しており、合体・分離機能を排して単純化と強靭化を施しているため、刀単体の攻撃力では左文字を上回る。
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