第23話「生き延びた意味」
サタナエルが破壊され、すべてが終わるはずだった。
だが、サタナエルが隠された機能を発揮し、ガンダム・レライエと一体化する。
モビルスーツとモビルアーマーが融合したそれは厄祭戦を上回る悪夢となる。
「カジノのルーレットの上でのバトル…これは、確かボーナスステージの…」
「そうだ、特定の条件をクリアすると入ることができて、レアなパーツが手に入るから、みんな入りたがっていたよ」
「私たちが入れたのは1度だけだったけど、いい思い出だわ。みんなが欲しかったパーツを1つずつだけど手に入れることができて…」
「ま…その分、敵の数はあったけど…な!!」
襲い掛かってくる敵モビルスーツをビームラリアットでバラバラにしたマチオは次々と飛んでくるZガンダムのビームを両腕のビームラリアットの出力を上げて生み出したビームシールドで防いでいく。
ただ、ユウイチ達が少年時代に経験したシミュレーターとは異なり、現行のシミュレーターでは変形機構を使うことができる。
ZZガンダムやZガンダムの集団は変形し、ガンダムMk-Ⅱがその背に乗る。
跳躍してそのうちの一組を正宗で両断した勇太だが、これまでいくつかのステージを回って感じたのは登場する敵機の種類の少なさだ。
初期は扱えるデータ量の限界などの事情で、採用できるガンプラの種類が限られていた。
そのため、主人公機を中心とした人気上位のガンプラを中心に採用せざるを得ず、量産機についてはザクやジムなどの一部のみとなってしまった。
他にも、人気があるものの複雑な機構を持つガンプラもそれ一つを採用するために多くのデータ量を必要とすることから泣く泣く不採用とするか、一部をオミットする形をとらざるを得なかったケースもあるという。
確かに現行と比較すると見劣りのあるものがあるかもしれないが、それでも自分が造ったガンプラを動かせることそれ自体に大きな意義があったといえる。
一方、そのころの綾渡商店街のゲームセンターはというと…。
「へえ、今回は一人で日本に来たんだね」
「はい、久しぶりに休暇を頂きましたので。この国は興味深い話がいくつもあって、退屈しませんね」
隣に座っているドロシーの話を興味深そうに聞くミサはきれいなティーカップに入った紅茶を口にする。
テーブルにはアップルパイやケーキなどがいくつも置かれており、遊びに来た子供たちの中にはうらやましそうにそれを眺めている子供も存在する。
「でも…休暇中もなんでそんな格好なの?」
ミサが気になるのはドロシーがメイド服姿のままだということだ。
休暇なら、もっと別の私服を着てもいいはずで、購入できるはずの給料はウィルからもらっているはず。
こんな姿で秋葉原へ行ったならコスプレとして溶け込むだろうが、そこ意外では浮いてしまうだろう。
「これは普段着です」
「そうなの?てっきり、ウィルの趣味かと思った」
「そんなに特殊な性向は持っていませんよ。坊ちゃまは。少々中二病を患ってはいますが…」
どこでそんな言葉を覚えたのか、と思ったミサだが、なぜか納得できる気がした。
まともそうに思えるが、どこかかっこつけというかなんというか、そんな気がする。
そんなことを本人の前で言うつもりはないが。
「それで、ウィルとドロシーさんって、どんな関係なの?」
「は、雇用主と従業員の関係ですが?」
「ええー、本当にー?」
ポーカーフェイスのままのドロシーだが、どうにも二人がそういう関係以上の物とミサには思えた。
ウィルの財力があれば、ドロシー以外にもメイドを雇うことができるだろうが、ウィルと同行しているにはドロシーのみだ。
年ごろの男女が常に行動を共にすれば、ミサが想像する関係に変化しても不思議ではない。
「ふう…なるほど、そういうご質問ですか。ミサさんはいかがですか?今日はおひとりのようですが」
「え?わたし?」
「はい。あんなに恥ずかしいカップル成立を見せつけて…。あの後も人目もはばからずにイチャコラされているのですか?」
あの時のことを思い出したミサが一気に顔を赤く染めてしまう。
軌道エレベーターでの告白の際、実はコックピット内でのやり取りについても音声のみではあるが、ハルによって全世界に生中継されていた。
かのGガンダムでのドモンの世界一恥ずかしいプロポーズに匹敵するそれは音声のみで、さすがに二人のキスを含めて映像まで出ることはなかったものの、動画配信サイトを中心に拡散されることとなり、コメント欄には目いっぱいの祝福の言葉で彩られる事態になった。
それを知った時はもう外を歩けないと思えるくらいの衝撃を受けた。
「ちょ、なに言ってるの!?ないないない!何もないよ!!」
「本当ですか?インフォさん」
「いえ、あの後、お二人は同居されています。ユウイチさんも歓迎されていて、ゆくゆくは勇太さんにはミサさんと結婚して、ガンプラショップを継いでほしいと…」
「うわあああああああ!!!インフォちゃん、言わないでー!!」
「なるほど、もうそんなところまで…」
さすがに別々の部屋ではあるだろうが、同じ年ごろの男女が一つ屋根の下で生活するとなると、いつもユウイチをはじめとした大人の目があるとは限らない。
そんな時に恋人同士でやることとすれば…。
「果たして、どちらが先でしょうね?」
「ああああああ、勇太君助けてー…」
「ハクション!!」
「あれ?どうしたんだい?風邪でも引いた?」
くしゃみと同時に一瞬動きの鈍ったデモンズフレームの様子にユウイチが通信をつなげる。
さすがにシミュレーターの中で埃があって、それに反応してくしゃみをするなんてことは起こるはずがない。
確かに今いるステージは密林だが、そんなことも関係ない。
「大丈夫です、風邪とかじゃありませんから」
一度バイザーを開き、鼻をこする勇太には風邪を引いた気はしていない。
「誰か僕のこと、噂してるの…?」
「もうそろそろマウンテンサイクルだ」
「ここからだよなー、俺らが何度も撃墜されるようになったのは。敵が強くてなぁ」
「撃破されるとせっかくこのステージで手に入れたパーツデータのいくつかを失うことになってしまうから、クリアしてほしかったパーツデータがなくなったってリザルトが出たときは頭を抱えたよ」
「一応、町一番のチームだったんだけどなー」
「仕方ないわよ。私たち、まだ小学生だったんだし」
「今の実力であの頃に戻りたいよ」
密林を抜け、マウンテンサイクルが見えてくる。
ターンエーガンダムにおいて、ナノマシンの残滓が大量に堆積し、長い時間をかけて形成された山岳地帯にはカプルやボルジャーノンをはじめとした機動兵器が眠っており、それらはミリシャの大きな戦力を提供してくれた場所。
マチオ達の言う通り、そこからはストライクフリーダムをはじめとした高性能のモビルスーツがいくつも登場するようになり、勇太にとっては歯ごたえの増す場所となった。
特にスーパードラグーンは近接武器しかないデモンズフレームにとっては脅威であり、ジェスタ・コマンドカスタムがカバーに入る。
「勇太君は本体を狙って、ドラグーンはどうにかするから」
「お願いします!」
ジェスタコマンドカスタムのバックパックに増設されているガトリングガンが火を噴き、スーパードラグーンを撃ち落としていく。
撃ち落とすことができずとも、弾幕によってドラグーンの動きを制限させることができ、その間にデモンズフレームは本体であるストライクフリーダムに接近する。
しかし、ストライクフリーダムの武器はスーパードラグーンのみではない。
腹部に搭載されているビーム砲にエネルギーが集中していき、それが正面にいるデモンズフレームに向けて発射される。
「おおおおお!!!!」
勇太が声を上げてスラスターを全開にさせ、デモンズフレームがバッタのように空中で飛んで射線上から逃れる。
そして、手にしている正宗を逆手に握り、右肩のあたりから胴体に向けて突き刺した。
正宗を引き抜き、機能停止したストライクフリーダムを蹴り飛ばすと、地上に落ちたその機体は爆散した。
まだまだ難易度についても粗削りなところがあるのか、そうしたストライクフリーダムをはじめとした数多くの高性能のモビルスーツがいくつも出現するようになっては、たとえ強い小学生でも挫折するようなことがあってもおかしくはない。
これでは、最終ステージに到達することのできたチームが少ないのも納得できるだろう。
一方、そのころのガンプラショップでは…。
「そう、こういう感じに切れば、きれいにパーツが切れるわよ」
「わあ…」
ロボ太が子供たちと一緒に遊び、サクラはガンプラや工具を購入した子供たちに作り方を教える。
最初は戸惑うばかりだったサクラだが、ガンプラづくりを教えることについては慣れたもので、ガンプラが上手にできた子供がお礼を言ってくれた時はうれしいと思えた。
「ほーぉ、妙なサプライズがあったもんじゃのぉ、まさかお前がこんな場所でガンプラ教室やるなんてなぁ」
「あなた…タケル」
「よぉ、サクラ。なんじゃ、アイツはおらんのか」
ズカズカと店に入ってきたタケルが背負っていたナップザックを乱雑に置き、置かれている勇太作のジオラマを見ていく。
「なかなかいい出来じゃなぁ」
「でしょう?もしかしてあなた、勇太と戦いに来たの?なら、残念ね。彼は今、お台場よ」
「ああ…あのイベントのなぁ…。サクラは行かんでよかったのか?」
「行ってもよかったけれど、ここを放っておくわけにはいかないでしょう?」
教えを受けている子供たち、そして世話をするロボ太の様子を見たタケルはああ、と納得した様子を見せる。
言葉でのコミュニケーションが取れないトイボットだけではお金のやり取りをはじめとした接客は難しい上に防犯についても心配がある。
ミサたちの姿がない以上、この状態を放置することがサクラにはできなかった。
「しょうがないのぉ…サクラはこのまま教室をやれ。それ以外のちょっとしたことは俺がやる」
「できるの?」
「ひどい言いようじゃのぉ。俺でもそれくらいできる」
妙なことになったものの、これはこれで楽しみではある。
手が空けば、おそらくは商店街内にいるであろうミサを探しに行こうと考え、二人による臨時のガンプラショップが始まった。
またまた、ゲームセンター。
「なんだこれ…?なんでゲーセンで茶を飲んでるんだ?」
「いやぁ、なんでだろ?いつの間にか、こうなってた、あははは…」
飽きれるモチヅキを後目にミサはドロシーに入れてもらった紅茶を飲み、ドロシーはケーキを口に含む。
もはやここは喫茶店なのかゲームセンターなのかわからなくなるモチヅキにも紅茶が出され、出されたものを飲まないわけにはいかないと口に含む。
「それで…モチヅキさんとカドマツさんは、その後どのような感じなのですか?」
「な、ななななな何の話だ!?」
この流れでその話の意味は一つしかなく、真っ赤になって動揺するモチヅキはもう見た目通りの年齢にしか見えない。
「いーじゃん、教えてよモッチー」
「誰がモッチーだ!!ガキが色気づいてんじゃねーよ!どうせ、お前いつも部屋で勇太とシクヨロしてんだろ!?」
「そ、そそそそそそそんな!べ、別に…勇太君と、その…ええっと…っていうか、大声でそんなこと言わないでよー!」
勇太を話題に出され、一気に劣勢となるミサ。
離れた場所でその様子を見るウルチはうんざりしながら髪をかく。
「ああ…こりゃ、もう女子会だこれ。すみません、姐さん。私、もう失礼します」
「逃げんじゃねえよ、助けろよ!」
「ぶっちゃけ、めんどくさ・・・ちょっと用事を思い出しました」
「なるほど、これが噂に聞く女子会。データベースに登録しておきます」
逃げるようにゲームセンターを後にするウルチを恨めしそうに見送るモチヅキにさらなる追求の毒牙が襲う。
「で、結局のところどうなんですか?少なくとも、勇太さんとミサさんは深く関係を結んでいるのですから、大人としての貫禄を見せてください」
「い…言わない…」
「えーセンパーイ、てゆーか女子会でコイバナ拒否るとか、ぶっちゃけサゲサゲじゃないですかー」
「やめろそのしゃべり方!!」
「で、どうなんですか?」
「絶対言わない!」
「モチヅキさん、そんなに遠慮することはありません。いくら女子というには苦しい年齢だとしても」
「喧嘩売ってんのか!?」
「ぶえっくしょい!!ああ、なんだぁ?埃かぁ?」
カドマツが生活する都内のアパートの一室。
仕事と綾渡商店街ガンプラチームのサポートで多忙だった日々にひと段落がつき、その間すっかり放置していた部屋の掃除を終えたはずなのに襲ってくるくしゃみ。
鼻をさすりつつ、手にしていた掃除機をしまう。
空腹を感じたため、ひとまず遅めの昼食をとろうと冷蔵庫を開ける。
「ああ…そういやぁ、あんまし残ってなかったんだった。仕方ね、カップ麺にするか」
台所に置いてあるケトルに水を入れ、湯を沸かしている間に今日食べるカップ麺を棚の中から選ぶ。
そんな中で頭に浮かんだのはロボ太の様子だ。
今朝、いきなりミサから電話があり、半ば強引にロボ太を借りていったのだが、何に使うのかについては聞いていない。
「大丈夫なのか…ロボ太の奴。無茶なことはさせられてねーとは思うが…」
機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ第3期(勇太のノートより)
第24話「アルミリア・モンターク」
究極のモビルスーツでもあり、モビルアーマーともなったサタナエルの猛攻により、ギャラルホルン・テイワズ連合軍が窮地に陥る。
混乱する戦場の中で、ジュリエッタは一つの決断をする。
第25話「鉄の華」
戦いは終わった。
過去からの因果によって生じた戦いの末、ギャラルホルンは完全に力を失うこととなった。
曉が向かうのは死んだ鉄華団の戦士たちが眠る場所。
そこにはこの戦いを影から操っていた男、タカキ・ウノが待っていた。