ガンダムブレイカー3 彩渡商店街物語   作:ナタタク

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第69話 過去の特権 未来の特権

GGF博物館完成記念日の目玉といえるのは再現された30年前のステージの再現とかつて実際に採用されたガンプラの復刻版の販売。

だが、あくまでもこれらは目玉であり、それだけがこの記念日のすべてではない。

 

「すげえ…これ、マジモンなのかよ!?」

「この1枚1枚が…」

ホワイトベースの艦内を彷彿とさせる廊下を通り、その先の広間に展示されているものにマチオだけでなく、勇太も食い入るように見ていた。

展示されているのは1979年に放送された『機動戦士ガンダム』から続く歴代のガンダムアニメの絵コンテやラフ画などで、他にもボツとなった案のイラストなどもある。

平成のファーストガンダムであるガンダムSEEDで登場したジンも、別の案としてマッシブな体つきで灰色の装甲、ザクのような頭のような形もあった。

かつてのザクの古き良きデザインを引き継いだといえるそれは採用されなかったが、おそらくそこからザクウォーリアなどのモビルスーツにつながっていったのだと思いたい。

現在、シミュレーターは満員となっており、どうにか最終ステージの手前まではクリアできた勇太たちだが、そこからは順番待ちとなったため、今はこうして展示物を楽しみ、あとは食事をして待つことになる。

「撮影禁止なのが残念ですよ、ミサに見せたかったのに…」

「今度みんなで行けばいいさ。もちろん、今度はあんなことはしなければ…だけどね」

「あははは…」

そんなことをしない保証がなさそうで、乾いた笑いを見せる勇太の脳裏に、おそらくは店番をしているであろうミサの姿が浮かんだ。

 

 

しばらく展示物を楽しみ、お土産のイラスト集を購入した勇太たちはアークエンジェルの食堂を模したフードコートでそれぞれが気になった料理を購入し、席に合流する。

「おいしい…やっぱり、GGF博物館なら、こういうのが一番おいしいわ」

ミヤコが口にしているのはサンダーボルトで登場したいなり弁当にガンダム作品ではよく登場するスープとサラダだ。

サラダの材料は各作品によって異なるが、よくあるのはキャベツとトマトで、スープについてはコーンスープとなっており、皿に入っている形だ。

ミヤコがそれらはゆっくりと咀嚼している一方、マチオはガツガツとトレーにたっぷり入った料理をほおばっていた。

こちらは鉄血のオルフェンズで三日月が食べたアトラ特製のごはんであり、アスパラガスにハム、ミートボールにコーンペーストだ。

サラダはミヤコのものとは異なり、きゅうりやニンジン、ミニトマトとジャガイモをぶつ切りにして放りこんだ食べ応えのあるもので、『イサリビスタミナセット』という名前らしい。

なお、さすがにコーンペーストだけでは主食としては足りないと思ったのか、追加のハンバーガーも食べかけの状態で置かれていた。

なお、ちょっとしたネタメニューとして存在するのが『ケバブダブルソース』で、こちらはキラが食べることになってしまったチリソースとヨーグルトソースがぶちまけられたケバブで、キラ曰く『ミックスもなかなか』らしい。

ちなみに、ケバブをパンで挟む形はドイツが発祥であり、それがケバブの本場であるトルコにも逆輸入され、更に世界に広まったものだ。

ハンバーガー風やサンドイッチ風、春巻き風など様々な食べ方があるが、作者の記憶の範囲においては、ケバブが出てきたのはSEEDのそれのみだ。

実際にそれがおいしいか否かについては、勇太たち4人は手を付けていないため、誰にもわからない。

なお、フードコートにはいくつもモニターが設置されており、現在のシミュレーターでのプレイ映像やガンダムビルドシリーズのアニメが流れている。

「そういえば、僕たちの順番の時間はどうなってましたっけ?」

「1時間後だね、食べ終わったらガンプラの手入れをしておかないと」

「だな!あ…ちょっと待ってくれ、おかわりを…」

おかわりの1品を求めて席を立つマチオを見送り、グラナダ名物の月面ピザを食べ終えた勇太は待っている間にデモンズフレームの確認を行う。

このガンプラを使うのはこの機会しかないかもしれないが、自分で作った以上はもっといい感じに仕上げたいと考えていた。

月面ピザが登場したガンダムZZにおいてはトッピングもソースもないただの生地のみのピザとして映っているが、このフードコートにおいては無重力化でも食べられるように生地の中にトッピングやソースを入れた、サンドイッチのような構造のピザだと解釈されているらしい。

ただし、そんな映像だったのは当時のアニメにおける技術の限界、もしくはモビルスーツなどに労力を割いた事情といったところがあり、実際はそんな形ではなく、細かく刻まれたトッピングのピザだという意見もあるという。

 

「はあーーー、おいしかったぁー。おなか一杯!」

一方のゲームセンターでは、お茶会の次に始まった昼食会を終えたミサたちがくつろいでいた。

ピザにゼリー、ポテトサラダなどを食べ終えた食器がドロシーによって片付けられ、テーブルも拭かれている。

なんでお茶会だけでは飽き足らず、昼ごはんまでするのかと言いたかったモチヅキだが、おいしかったことから突っ込むのをやめていた。

「ミサさん、そろそろ店に戻られてはいかがです?」

「いいのいいの、ロボ太が頑張ってるんだし、私はここで…」

「ミサ!!」

自動ドアが開くとともにズンズンと足音を鳴らしながら迫る何者かの気配。

ミサの正面に立ったその何者、サクラが目の奥に真っ赤な光を宿しており、ミサは見たことのないサクラの姿に戦慄する。

(な、ななな、なんでサクラさんが!?なんで、怒ってるの!?それに、こんなの、バトルでも見たことがないよ!!)

「お店、戻るわよ…」

「え、お店?いったい何のことか…」

「戻るわよ」

「…はい」

言っている意味が分からないミサだが、今のサクラに逆らうのはまずい。

シュンとしたミサを引きずるようにサクラは連れ出していく。

その様子をインフォ、イラト、モチヅキ、ドロシーは何も言わずに見送った。

 

最終ステージ、お台場。

かつてのお台場をそのままステージとしたその場所にデモンズフレームをはじめとした4機のモビルスーツが降りたつ。

「このステージはラスボスを倒した参加者の中の、更に選ばれた人だけが参加できたんだ」

「それ以外の参加者はこのステージを外で見ていたのよ。お台場を投影した実物大のホログラフ映像で」

「すごかったよなぁ!まるで、目の前でマジでガンダムが戦ってるみたいでよぉ!ま…本当は参加したかったけどな」

「確かに、実際にそこで戦っていた人たちを見て、うらやましいって思ったよ」

そのホログラフで流れた最終ステージでの戦闘の光景はガンプラの新しい未来を示したといえるだろう。

感傷に浸るユウイチ達だが、まもなくセンサーが出現する敵ガンプラを示す。

現れたのは2機のPG機体、ユニコーンとνガンダムだ。

ユニコーンはさっそくデストロイモードへと変化し、νガンダムはフィンファンネルを分離し、執拗なオールレンジ攻撃を仕掛けてくる。

「この程度のファンネルなんか!!」

刀一本のみが武器ではあるが、襲ってくるフィンファンネルはあのネオ・ジオングの猛攻と比較するとまだマシだ。

それに、大型化した分、動きも読みやすい。

フィンファンネルが動く位置に先回りして刀で両断して、数を減らしていく。

「すごいパワーとスピードね…昔の私たちで、勝てたかしら?」

「どうだろう…ハハ…」

「んだよ、ユウイチ。急に笑いやがって」

「まさか、30年ぶりの悲願が達成できるってことで、感傷に浸っているとか?」

「いや、そうじゃないんだ。確かに、30年前に立てなかったこの場所に立つことができたのはうれしいよ。ただ…なんというか、30年前に最終ステージをクリアして、今日それを思い出すのと、今のこの気持ちは、きっとイコールじゃないんだよ」

「30年前と同じじゃないから…ですか?」

30年の時間は、かつてはガンプラを愛する子供だったユウイチ達を大人にした。

そして、このステージはあくまでも再現されたのみで、30年前のようにホログラム映像でお台場に映し出されるわけではない。

参加者たちが確かに感じた熱まで再現できるわけではない。

「うん、うまくいえないけどさ。子供のころに残した特別な思いって、大人になってからじゃ取り戻せない。そう感じたんだ」

「んじゃあ、来ない方がよかったってか!?」

あおむけに倒れたνガンダムの胸部に拳をたたきつけてトドメをさしたマチオの言葉にユウイチは首を横に振る。

「今日、みんなで今、この場所で味わっている気持ちは、やっぱり今日しか得られないものだ」

「クリアできなかった昔、最終ステージに参加できなかった悔しさを思い出すのも、俺は悪くないと思うぜ」

「そうだね…それもクリアしていたら味わえなかった思いだ。それも、きっと特別なものなんだ」

「なーに、それ!結局、なんでもいいじゃない…の!!」

ユウイチがシールドを破壊したのを確認したミヤコはリミッター解放したスナイパーライフルから放たれる大出力のビームでユニコーンの胴体を撃ちぬく。

2機のPG機体が撃破されたものの、それで終わりなはずがなく、続けてゴッドガンダムとウィングゼロのPGが出現する。

「苦い思い出も、苦いなりにいいものさ」

「だな、人生ってのはそういうものさ!」

「人生、か…」

「だからさ、勇太君も、もしこれからもずっと、ミサと一緒にいてくれるなら、どんな味であったとしても集めてほしい。思い出を。それができるように、僕たちが助けるから」

「…はい」

 

「おーい、ミサー、おーい」

イベントが終わり、帰宅した勇太たちをまず待っていたのは、真っ白になったミサだった。

椅子に座り、勇太がいくら呼んでも反応を見せない。

そして、タケルとサクラ、ロボ太にユウイチは笑顔を見せる。

「すごい…君たちが手伝ってくれたおかげで、一日の売り上げが今回最高記録だ!」

「そんな…私たちは、ただ簡単なガンプラ教室をやっていただけで…」

「俺は、ロボ太の接客をサポートしただけです」

「謙遜しないで、ほら、3人とも、これバイト代。よかったら、またよろしく。それから…ありがとう。ミサを連れ戻してくれて」

「あははは…」

ゲームセンターから連れ戻されたミサはその後、2人と1機によって馬車馬のように働かされることになった。

営業時間が終わり、閉店準備を終えた時、電池が切れたかのようにこんな状態になってしまった。

「(思い出…か…今日のことも、いずれいい思い出になるのかな…)おーい、ミサー、しっかりー。お土産あるよー」

「ゆ…た…く、ん…」

「あはは…一日、お疲れ様」

 

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