ガンダムブレイカー3 彩渡商店街物語   作:ナタタク

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第7話 自分のできることを

「違う、こうじゃない…!この動きじゃない!」

いつものゲームセンターのガンプラバトルシミュレーターから降りた勇太はハロに記録された今回のバルバトスの動きを見ながら、不満げに漏らす。

タケルの棄権により、生き延びることができ、そのあとはどうにか2機の連携で予選を突破することができた。

初めての予選突破であるものの、喜ばしいものではなかった。

1週間後の本選のため、勇太はこうしてガンプラバトルシミュレーターとミサのプラモショップを行き来し、こうして特訓を続けている。

「勇太君…」

缶ジュースを買ってきたミサは心配そうに勇太を見つめる。

宿題を学校の休み時間ですべて済ませ、ほとんどの時間を特訓に費やす勇太を心配しているのだ。

予選が終わってから4日、勇太の休んでいる姿をミサは見たことがない。

「ねえ、ちょっと休んだら?」

「大丈夫、まだできる。早く…10年前の実力を取り戻さないと…」

10年前に勇太は1度だけタケルとガンプラバトルをしたことがある。

そのときは勇武からブルーフレームを借りて、敗北はしたものの、勝負したタケル自身がいいバトルだとほめてくれたし、自分も満足感に満ちていた。

だが、予選の時は真逆で、自分の本来の動きができず、タケルを失望させた。

兄の死が原因で10年も離れていたとはいえ、それを言い訳にしたくない。

何より、このような情けない結果のまま終わることを自分自身が許せなかった。

ミサから受け取った缶ジュースを一気に飲み干し、空き缶を捨てた後で再びシミュレーターに入っていった。

「だいぶ、予選のことがこたえているみたいだねえ」

「イラト婆ちゃん…」

「ま、こっちとしては金を落としてくれてるからいいけどねぇ、それでぶっ倒れちまったら評判に傷がついちまう」

「評判って…」

この商店街では、イラトは守銭奴として子供たちに評判となっている。

なんでも、ガチャガチャやUFOキャッチャーはレアな賞品がほかのゲームセンターと比べて獲得しづらく、アーケードゲームも難しいものを中心に集めている。

大人であればさっさと見切りをつけて、違うゲームセンターを探すものの、子供たちは自分のプライドがそれを許さない。

そのためか、このゲームセンターで商品を手に入れる、クリアすることは大きなステータスとなっている。

「勇太君…ここは私が!」

ミサはカバンからアザレアを出し、空いているシミュレーターへ走っていった。

 

「はあ、はあ、はあ…」

弾切れになった滑腔砲に最後のカートリッジを取り付け、ウェポンラックに残っている武装を確認する。

乱入を含めて20機以上のガンプラを撃破し、残りはライフル2、バズーカ1、滑腔砲1、バズーカについてはもうカートリッジがなく、3発で弾切れになる。

「これなら…まだやれる!次は…」

息を整えていると、次の乱入者が登場したことを告げる警告音が鳴る。

場所を確認し、上空にカメラを向けるとそこには見知った機体の姿があった。

「アザレア、ミサちゃん…」

(勇太君、勝負だー!)

いきなりバルバトスに向けて2丁のバズーカで攻撃を仕掛ける。

すぐに上空へ飛んで回避すると、そこからビルの上に行き、サブアームに装備しているライフルを滑腔砲と共に発射する。

地上に着地したアザレアは大出力のスラスターで滑走しながら回避し、バルバトスに接近する。

強襲用モビルスーツであるケンプファーのバックパックを搭載したアザレアだからこそできる芸当だ。

滑走を続けたままミサはバズーカを弾切れを気にすることなく連射する。

ビルから飛び降り、直撃コースの弾をライフルで対処しながら回避する勇太は駐車場へと移動していく。

「逃がすかぁーーー!」

弾切れのバズーカを投げ捨て、ザクマシンガンをバックパックに向けて撃つ。

ウェポンラックの存在により、大型化したバックパックでは左右への回避が難しく、何度も被弾する。

(ロケットブースターに当たったら致命的だ。仕方ない…!)

サブアームのライフルを左手で持ち、ウェポンラックとロケットブースターをパージする。

そして、急旋回しながらライフルを連射する。

再現されるGが体を襲うせいで照準が定まらないが、それでも数発目でロケットブースターに命中、ウェポンラックに残った弾薬と共に大爆発を起こす。

「うわわわ!!」

びっくりしたミサだが、それでもスピードを緩めることなく、そのまま直進していく。

この爆発の目的は機体を軽くすることと目くらましによる時間稼ぎのためと踏んだからだ。

だが、爆発による光から抜けたミサを待っていたのは…。

「そこ!!」

「ひゃわあああ!?!?」

滑腔砲とライフルを捨て、メイスを手にしたバルバトスだった。

目の前に現れてくれたアザレアの横っ腹にそれを叩き込もうとするが、ギリギリのところでバックステップしたことで正面の装甲をかする程度にとどめることができた。

「ミサちゃんのことだ、この程度ではひるまないと思ったら、正解だったよ」

「うう…なんだか複雑…でも!!」

もはや必要ないとザクマシンガンを投げ捨て、ビームサーベルを手にして切りかかる。

取り回しと攻撃スピードではメイスよりも上、反撃を終える前にアザレアの攻撃が命中する。

そう考えた勇太はメイスを手放し、腕を直接つかんで攻撃を止めようとする。

「う…まずい…!」

急に眠気を覚えた勇太の反応が遅れ、ビームサーベルがコックピットがバルバトスの左腕を切り裂く。

(反応が遅れた…。やっぱり、勇太君は)

「まだだぁ!!」

斬られた左腕を右腕でつかみ、それを振り上げてアザレアの右腕を攻撃する。

予想外の攻撃にミサの反応が遅れ、ビームサーベルが手から離れてしまう。

一度バルバトスを距離を置いたミサは左腕を持つバルバトスをじっと見る。

(勇太君。やっぱり休もうよ!さっきの動き、いつもの勇太君なら…!)

「けど…今の僕は…」

(もう!今は勇太君1人で戦ってるんじゃないよ!私も一緒に戦ってるってこと、忘れないでよ!)

「ミサちゃん…」

(一緒にガンプラバトルをやろうって言ったじゃん…。もっと、私のこと…頼ってよ…。そりゃあ、勇太君のほうが強いし、うまいよ。でも、それでも…!)

ミサの必死な声を聞いた勇太はアザレアをじっと見る。

自分は10年前までチームを組むとしたら、兄しかいなかった。

本当の意味で、ほかの人とチームを組むのはミサが初めてだ。

彼女の言葉で、タケルに負けた影響により、すっかりミサも一緒に戦っているのだということを先ほどまで忘れてしまっていたことを悟った。

「ごめん、ミサちゃん…じゃあ、お願いしていいか…な…」

(勇太君!?)

「…」

返事をしなくなり、動かなくなったバルバトスに近づき、接触回線をつなげる。

バルバトスのコックピット内の姿を見ると、そこには座ったまま眠ってしまった勇太の姿があった。

そんな彼を見て、安心したミサはシミュレーターを終えた。

 

「ん、んん…」

目を開けた勇太は自分の上にかかっている掛け布団、そして白い壁紙の天井を見る。

「寝てたのか、僕は…」

ゆっくりと顔を横に向けると、そこには両腕を折り畳みテーブルの上に置き、それを枕代わりにして座ったまま寝ているミサの姿があった。

机の上にはハロと彼女のガンプラノートが置かれている。

玄関と居間の間にある台所からは誰かが料理をする音が聞こえた。

「誰か、いるんですか…?」

眠っているミサに薄い毛布を掛けた勇太は台所へ向かう。

そこにはきんぴらを作るユウイチの姿があった。

「ユウイチさん!?」

「やぁ、台所使わせてもらってるよ」

「ユウイチさんとミサちゃんが僕を…」

「うん。初めての予選突破だから、ちょっとだけお祝いしようって思ってね。そう考えていたら、ミサが君を家へ連れていくのを手伝ってって頼んだから…」

「そうですか。その…ご迷惑をおかけしました」

チームメイトであるミサだけでなく、彼女の父親であるユウイチを巻き込んでしまったことを申し訳なく思い、謝罪する。

「いや、いつもミサが世話になってるし、恩返しだよ。そろそろ出来上がるから、盛り付け、手伝ってくれるかい?」

「…はい」

3人分の皿を出し、ユウイチのきんぴらを盛り付ける。

途中で目を覚ましたミサが台所へやってくると、お茶碗にご飯をつけて居間まで持って行った。

ここに引っ越してからはいつも1人で食べており、彩渡町で初めてほかの人と一緒にご飯を食べることになる。

学生の1人暮らしを前提とした部屋であるため、3人入ると狭く感じ、ユウイチの作った料理は一般的なものだったが、一人で食べている時よりもおいしく感じられた。

 

そして、タウンカップ本選の1回戦…。

本選では1チームVS1チームの勝負によるトーナメントとなっており、どちらか一方のチームが全滅するまで試合が続く。

「うおりゃあああ!!」

炎上するサンクキングダムで、アザレアがバルバトスから借りたメイスを投げ、上空から攻撃を仕掛けるエアリーズを撃破する。

だが、地上には2機のビルゴⅡが存在し、それぞれプラネイトディフェンサーで多くの攻撃を防ぐ厄介なガンプラだ。

「奴の最大の攻撃力はメイスだ!手元にないなら…!!」

さすがにメイスでは防ぎきれないが、それが手元からなくなったことで安心したビルゴⅡのパイロットが丸腰のアザレアに攻撃しようとするが、横から飛んできた弾丸を受け、バラバラになり、爆散する。

「何!?ビルゴⅡをバラバラにするだと…!?」

急な攻撃に驚きながらも、もう1機のビルゴⅡのパイロットは逆探知を行い、攻撃したであろうバルバトスの位置を把握する。

感知されたのを知った勇太はスコープのついていない、ドーバーガンのような構造の対物ライフルを持ったまま山を下り、その相手に向けて接近する。

プラナイトディフェンサーを展開しながらビームライフルを連射するビルゴⅡに向けて接近し、目の前でそれを発射する。

プラネイトディフェンサーの電気フィールドを突き破った弾丸はビルゴⅡの頭部を吹き飛ばした。

「ふうう…」

(タウンカップ1回戦第4試合、勝者は彩渡商店街ガンプラチーム!!)

「やったー!やったね、勇太君!」

アザレアが近づき、武器を置いたバルバトスは彼女とハイタッチした。

(一緒に戦ってこそのチーム…か。やるべきこと、少しだけ見えてきた気がする…)

まだタケルのいう動きには戻っていないものの、勇太には焦りの色がなくなっていた。




武器名:500mm破砕砲
勇太のバルバトスに滑腔砲に変わり、新たに装備されたライフル。
トールギスのドーバーガンをもとに、ミサと勇太がほかのモビルスーツの長距離ライフルのパーツを利用してミキシングビルドされた。
口径は滑腔砲の1.5倍以上となっており、連射性能を犠牲にしたうえ、反動も大きいものの、滑腔砲以上の弾速・プラネイトディフェンサーやナノラミネートアーマーをその名の通り『破砕』できる破壊力を実現している。
また、取り回しと連射速度の問題の解消として、銃身は取り外し・再取り付けできるようになっているが、銃身を外して発射した場合の反動は相当なもので、高硬度レアアロイ製のガンダム・フレームでも無理に発射を続けると腕が破損する。
なお、勇太自身により、鉄華団がダインスレイヴなしで遠距離攻撃でモビルスーツを撃破するのを容易にするために独自に作ったものの、ガンダム・フラウロスを手にしたことと反動によるフレームのダメージが問題視されて不採用となったという設定が加えられている。
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