「そんな…麒麟が、効かない!!」
加減無しで発射された麒麟のHEIAP弾だが、変異体のサタンガンダムが展開するバリアが受け止め、装甲に傷一つ与えることができない。
あの巨大なビームの刃を回避できたのはいいが、あの機体はあまりにも異常といえて、左文字も通用しなかった。
「バリアを貫通できるだけの火力がないと…だけど…!」
更に、恐ろしいのはサタンガンダムのスピードだ。
蝙蝠の羽根をはためかせ、デスティニーのように分身を作りながら高機動を発揮しつつ、血塗られた剣で切りかかってくる。
出力もスピードも防御力もすべて上回っているその機体はかつて戦ったスクランブルガンダム以上に思えた。
勇太に切りかかるサタンガンダムの側面からレールガンとビームが飛んでくる。
「私だって…いるよ!!」
麒麟すら無傷だったその機体にいくらアザレアの火力をぶつけても効果がないことはミサ自身よくわかっている。
だが、少なくとも勇太から気をそらすことくらいはできる。
その間に勇太が立て直してくれればいい。
ギロリとアザレアを睨むサタンガンダムが彼女に迫り、剣で切りかかる。
GNフィールドを展開するアザレアだが、徐々にGNフィールドを突破していくサタンガンダムの刃が右腕を切り裂く。
「キャアアアアア!!」
「ミサ、この…!!」
地面を転がるアザレアを見た勇太はゲーティアをサタンガンダムへと向かわせる。
麒麟と左文字を合体させて大剣モードにして鍔迫り合いを演じる。
(こうなったら、覚醒して…!)
出力で負けるなら、強引にそれを高めるしかない。
バリアを突破し、サタンガンダムを倒すにはそれしかない。
「ああああああああ!!!」
声を上げるとともに炎のようなオーラに包まれるゲーティア。
だが、サタンガンダムが放つ黒いオーラが泥のようにゆっくりとゲーティアに伸びていく。
「なんだ…この気持ち悪い感覚は!?あ、ああ、あ…!!」
黒いオーラがゲーティアに触れると同時に炎が消えていき、勇太にも胃の中を根こそぎ追い出しかねないほどの不快感を襲う。
「勇太君の、覚醒が…」
覚醒エネルギーが消えていき、元に戻っていくゲーティア。
それと同時に振るわれる血塗られた刃が大剣を粉々に砕いた。
「主殿…ミサ…」
倒れているロボ太の目に映るのは武器を失い、テイルブレードも砕かれたゲーティアとそれをかばうアザレア、そして彼らを襲うサタンガンダムの姿だ。
あのサタンガンダムを生み出してしまったのはほかでもない、自分自身。
(私が…私のせいで、二人が…)
とうとう、人に奉仕する自分の存在意義すら、失ってしまった。
こうして二人を傷つけているのだから。
「カドマツ…頼む、私を、消去してくれ…。二人を、助けてくれ…!」
「ロボ太…」
確かに、消去しないとしても初期化をすることでこの状況から2人を救うことができ、ロボ太自身の問題も解決するかもしれない。
だが、これまで共に戦ってきて、成長してきたこれまでのロボ太を完全に失うことになる。
そんなことは、勇太もミサも、カドマツも認めたくない結末だ。
(だめだ…!)
「勇太…」
「ダメだよ…僕もミサも、カドマツさんも…ロボ太をあきらめない…!」
武器を失い、傷ついたゲーティアがサタンガンダムにできるのは殴ることだけ。
いくら殴っても、バリアを突破できない状態であることには変わらず、それでも彼を援護すべくアザレアもアロンダイトで切りかかる。
「そうだよ!友達を助けるのは…当然じゃん!」
「友達…私、が…?」
ありえないという結論に達したはずの自分の存在位置。
心に突き刺さるその言葉にロボ太の目にかすかに力がこもる。
「そうだよ…ずっと、一緒に戦ってきた…友達を、見捨てないよ!僕たちは!」
「主殿…私は、一緒にいても、いいのか…?倉庫に、しまわれることも、ないのか…」
「当り前…でしょ、キャア!!」
アロンダイトが砕け、ライフルもレールガンの弾切れ。
もはやデッドウェイトになるそれらを投げ捨てる。
「充電も、されず…脱いだ上着を、被せられたままにも…されない、のか…?」
「するわけ…ないよ…!」
「主殿…ミサ…そうか、私は…」
どうしてもっと早く、素直に勇太たちに聞かなかったのか。
ネガティブな答えを恐れて逃げてしまっていたのか。
(そうだ、私は…私が勝手に生み出してしまった幻想と戦っていたのか…)
それが暴走して生まれてしまったあのサタンガンダム。
あのガンダムに引導を渡さなければならないのは自分自身。
ようやく立ち上がったロボ太に恐れるものはない。
倒れるアザレアをかばうゲーティアにサタンガンダムの刃が襲う。
「サタンガンダム!私を見ろ!!」
ロボ太の叫びが耳に届いたのか、刃を止めたサタンガンダムの視線が彼に向けられる。
「ロボ太…何を…」
「お前は、私が生み出してしまった化け物。答えを恐れ、背中を向けてしまった私自身…。それが、このようなことになってしまうとは…」
恥ずべき事態といえるかもしれないが、きっとこれはいつか向き合わなければならなかったこと。
だが、これに一人で向き合う必要はない。
「だが、もうお前を恐れない!お前を正面から受け止めて見せる!私はロボ太!カドマツが生み出したトイボットであり、主殿とミサの友達だ!!我が友を…これ以上傷つけさせはせぬ!!」
「へっ…ロボ太の奴…って、おいおい、こいつは…」
いきなり啖呵を切ったロボ太の姿をモニターで見たカドマツがニヤリと笑うが、それと同時に表示される設計図。
ガンプラの設計図のようだが、自らガンプラを設計するようにまでなったロボ太の成長に驚くと同時に、その成果と思われるものがロボ太の頭上に出現するのが見えた。
「これは…すげえ…」
ロボ太の頭上に出現する魔法陣から出現するのは騎士の鎧を身にまとったドラゴンのようなガンプラ。
「現れよ、ナイトドラゴン!!」
咆哮するナイトドラゴンの背中に乗ったロボ太がバーサルソードをサタンドラゴンに向ける。
「さあ、決着をつけよう!もう1人の私よ!!」
その言葉と共に、ドラゴンの胸部に埋め込まれているオーブのようなクリアパーツが光り輝く。
その光は勇太たちの攻撃を阻み続けてきたオーラを消滅させていき、隠された禍々しいサタンガンダムの姿をあらわにする。
だが、いくら援軍としてナイトドラゴンが現れたとしても、その大きさはロボ太とさほど変わらず、彼専用のサブフライトシステム兼火力サポートにはなるだろうが、そこまでだろう。
巨大化している今のサタンガンダムに、勇太とミサの助けなしで戦えるのかどうか。
「いくぞ、ドラゴン!」
ロボ太が飛び立つと同時にドラゴンが分離し、ドラゴンの頭を模した兜と四肢のパーツ、そしてドラゴンを模した両手剣へと変貌する。
バーサルソードとナイトシールドを手放したバーサル騎士ガンダムに接続されていき、頭部パーツが後ろへ開くと同時に内蔵されたガンダムヘッドがあらわとなり、兜が装着される。
合体を終えたロボ太の姿は18メートル級のモビルスーツと化していた。
龍の爪をもした手甲とドラゴンの兜、そして両手でドラゴンの剣を握るその姿はこれまでのロボ太が使ってきたガンプラとは大きく異なる印象を抱かせる。
「これが私の新たな力、ドラゴニック騎士ガンダム、いざ参る!!」
ロボ太の叫びと共に背部に展開されるビームマント。
先ほどサタンドラゴンが見せたように、分身を作りながら猛スピードで接近し、ドラゴンの剣、ドラゴンバスターを振るう。
サタンガンダムと刃をぶつけ合い、ぶつけ合う刃と刃が衝撃波を起こす。
その様子を地上から勇太とミサが見つめていた。
「すごい、これがロボ太の…」
「ナイトドラゴン、か…」
勇太とミサが後手に回ったあのサタンガンダムと互角以上の戦いを繰り広げ、何度か刃をぶつけ合う中でついにサタンガンダムの剣が粉々に砕ける。
だが、サタンガンダムは折れた剣から赤いビームの刃を生み出してなおも抵抗する様子を見せる。
「終わりだ、我が影よ。私の中で、おとなしくするのだ!」
両手で握るドラゴンバスターに全エネルギーを集中させ、上空の刃を掲げる。
刃に向けて上空に発生した雷雲から雷が落ちると、大出力のビームの刃が形成されていく。
「受けよ、我が魂の一撃!ドラゴニックカリバーを!!」
膨大な力に何かを感じたサタンガンダムが発動前に仕留めるべく突撃する。
だが、既に攻撃準備を終えたロボ太が剣を振るい、巨大なビームの刃がサタンガンダムを盾ごと切り裂いていく。
切り裂かれたサタンガンダムから発生する黒いオーラはロボ太に取り込まれて生き、消えていった。
「はあ、はあ、はあ…やった、ぞ…」
さすがに全エネルギーを込めて放った一撃で疲れたロボ太からナイトドラゴンが分離していく。
元の姿に戻り、地上に降りたのを見届けたドラゴンはどこかへ飛び去って行った。
「ロボ太---!!」
「ミサ、主殿…」
戦いを終えたロボ太の元へ駆け寄る二人にロボ太が手を振ってこたえる。
「2人とも…」
「すごかったよ、ロボ太。まさか、リアルモードになるためのサポートメカか…。そんなのを考えていたなんて」
「実を言うと、力が欲しいと思ったときに、急に頭に浮かんだのだ。おそらく、主殿とミサと長らく戦ってきたおかげであろう」
(お疲れさん、二人とも。ロボ太も回復してよかったぜ。戻ってこい)
「心得た。では、二人とも。また後で」
「あ…ちょっと待ってロボ太、悩みは!?」
「もう解決した。感謝する」
あっさりと消えてしまうロボ太。
あのサタンガンダムを倒して、彼も晴れやかな様子だからいいものの、ミサはどこか納得していない様子だった。
「でも、新鮮な経験だったよ…。まさか、覚醒エネルギーを奪われるなんて。普通のガンプラバトルでは起こらないことだよ」
「そりゃそうでしょ。誰も思いつかないってそんなの…」
私はトイボット、玩具ロボットである。
ハイムロボディクスの商品開発室で初めて起動したときのことを覚えている。
右も左もわからぬ若輩者ながら、彩渡商店街のとある玩具屋で、ロボ太というパーソナルネームと…かけがえのない友を授かった。
サポートメカ:ナイトドラゴン
悩みを乗り越えたロボ太が更なる力を求めて考案したサポートメカ。
バーサル騎士ガンダムと同じ配色をしたドラゴンというべきサポートメカであり、サブフライトシステムとして機能するほか、手足の爪と口から放つビーム砲で攻撃を行うことも可能。
バーサル騎士ガンダムと合体することで、リアルモードであるドラゴニック騎士ガンダムへと変貌し、体内に内蔵しているドラゴンバスターで戦う。
ドラゴンバスターはGNバスターソードのようにライフルモードも備わっており、その出力はバスターライフルに匹敵する。
また、両腕の手甲はビームガン、ビームトンファーとして機能する。
背中のマントは外れるものの、その代替としてビームマントを展開可能となっており、こちらはビームシールドおよびサーベルとして利用可能で、ブラックナイトスコードのような残像を生み出す高機動戦闘を可能とする。
なお、このサポートメカはあくまでもロボ太が考案したばかりで実物は存在せず、現在は綾渡商店街ガンプラチームの総力を挙げて作成することになっている。