ガンダムブレイカー3 彩渡商店街物語   作:ナタタク

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第75話 お台場ウイルス合戦

カドマツが運転する車がレインボーブリッジを進み、お台場へと向かう。

眠気覚ましのコーヒーを口にしつつ、ラジオをつけるカドマツだが、そこから聞こえるニュースにげんなりした様子を見せる。

「やっぱそうなるよな…今回のウイルス騒動のせいで、シミュレーター関係の会社の株価が暴落してっぞ」

「やっぱり、そうですよね…。回収騒ぎにまでなったら…」

インフォのような事例はまだマシな方だと言え、それ以外のゲームセンターやゲームセンターを設置している百貨店やショッピングモールでも様々な被害が出ているという。

急に別の端末においてバグが発生したり、顧客情報の漏洩などが起こっているという報告もある。

そのことを考えると、インフォの暴言とストライキがまだマシだったのかもしれない。

「それにしても、お台場のシミュレーターが回収されずに済んで良かったね。もし、あれがなかったらインフォちゃんを助けられなかったよ」

カドマツの車の後に続くのはユウイチが運転している車で、後部座席にはイラトとインフォが乗っている。

昨夜の食事会の後、カドマツは急いでお台場のシミュレーターを抑えるようにミスターガンプラに依頼をした。

その返事が来たのは翌朝であり、GBN博物館から了承の連絡が来たため、さっそく出発して今に至る。

なお、あの食事会で酒を飲んだのはモチヅキとウルチだけで、カドマツとユウイチはノンアルコールの飲み物で済ませている。

 

博物館に到着し、シミュレータールームではミスターガンプラが待っていた。

「お久しぶりです、ミスター」

「ああ、決勝以来だね。みんな」

勇太と握手を交わしたミスターガンプラのそばで、カドマツとユウイチの手によって運ばれたインフォがシミュレーターに接続される。

「シミュレーターは一時的に最新データにアップデート済みだ。存分に使ってくれと館長さんの伝言だ。それから、一人援軍も来てくれているぞ!」

「援軍?」

「私よ、勇太君、ミサ」

「「サクラさん!」」

ニコリと笑うミサが右手を上げて挨拶をし、二人の元まで歩いていく。

「ミスターガンプラから連絡があったのよ。ちょうど暇だったから、顔を出したわけ。それに、次の大会の予行練習にもなるし」

「次の大会…ああ…」

勇太が思い出したのは先日届いた招待状だ。

宇宙エレベーターにおいて、太陽光発電施設(SSPG)の着工記念のセレモニーが行われることにより、その1プログラムとしてガンプラバトルSSPG記念大会が開催されることになった。

当然、世界選手権決勝にまで勝ち進んだ勇太たち、そしてウィルの元にも招待状が届いているという。

「サクラさんも出るんだね」

「もちろんよ、ウィリアムのチームに入って戦うことになるわ。ミサ、次は負けないわよ」

「それは私のセリフ!次だって、勝つんだから!」

「2人とも、燃えてるねえ…。まったく、私もあと10年若ければ…」

ミサとサクラの燃え上がる闘争心を見たミスターガンプラの脳裏に浮かぶウィルとのガンプラバトル。

和解した後、ウィルに2代目ミスターガンプラにならないか聞いたことがある。

しかし、ウィルは既に会社経営者であり、多くの社員の生活に責任を持っている状態であることから丁重に断られた。

だが、その中で自分にできる範囲でガンプラの普及に努めていきたいと言ってくれた。

(私の後を継いでくれるのは…もしかしたら、君になるかもな。私のアフロと共に)

ミスターの視線がカドマツを手伝う勇太に向けられ、脳裏にはグラサンとアフロ、そして派手な衣装で身を包んだ勇太が浮かぶ。

(いや…さすがに勇太君にそれは厳しいか。勇太君に合いそうなものを考えなければ…。メイジンのようなものもいいか…)

 

「こうして改めてみると…すごいな、サクラさんのガンプラ」

シミュレーターに入り、出撃準備に入る勇太とミサはメインカメラに映るサクラの新たなガンプラに苦笑いを見せる。

来るべき大会に備えて新たに作ったサクラのガンプラはアルケーをベースとしたものとなっており、カラーリングは桜色に変わっている。

しかし、機体パーツの一部がアルケードライのものとなっているうえ、搭載されている武装についてはGNバスターソードとGNファングはそのままに、両腕にはこれまでのサクラのガンプラの象徴といえるハサミが搭載されている。

「疑似太陽炉じゃないみたいだけど…」

「IF設定というもの…っていえばいいのかしら」

得意げに笑うサクラの前に、4機の中では機動力が低いアザレアがカタパルトに接続される。

「待ってて、インフォちゃん。今度こそ助けるから…。井川美沙、アザレア行きます!」

射出されていくミサの後を勇太たちが続く。

「いいか、お前ら。例のウイルスはシミュレーターを攻撃している。だから、シミュレーターを動かしていれば、ウイルスが見つけて侵入してくるんだ」

「それは…私たちは大丈夫なの?カドマツさん」

「ああ、別にシミュレーターが爆発したり閉じ込められたりするわけじゃない。ウイルスが攻撃してくるまで普通にプレイしてみてくれ」

そして、可能な限り同じ状況を作るためにインフォをシミュレーターと接続した状態で、通常のステージで遊ぶ形にしている。

この状況はまさに釣りという状態だろう。

竿はシミュレーター、生き餌が勇太たちとインフォ、獲物はウイルス本体。

釣り上げて、本体をつぶしてウイルスのこれ以上の拡散を阻止する。

「さあ、少し楽しませて…」

ユーゴーの背後を獲ったトライシザーズの右腕の鋏で挟み込む。

3つに増えたとしても、鋏1つ1つのパワーは健在であり、ナノラミネートアーマーと超硬度レアアロイをも挟みつぶして破壊する。

更に、アルケーをベースとしたことで増加したファングは周囲にいる敵CPUを次々と撃破していく。

「それにしても、なんでサクラさんってあんなにハサミにこだわってるんだろう…?」

忍者のように姿を消すのを最大の武器としていながら、このハサミについてはアンバランスに見えて仕方がない。

確かに、ハサミの防御力と攻撃力には苦戦することにはなるが。

「最初に見たガンダム作品がガンダムXで、アシュタロンに興味を持ったからだって」

そのため、初めて作ったガンプラもアシュタロンだ。

やがて自分でガンプラを作り、ファイターとして戦っていく中でミラージュコロイドなどの絡め手で戦う形が確立されていったものの、初心を忘れないためにギガンティックシザースを使い続けているという。

「だが…もどかしいな。こうして遊んで待つことしかできんとは」

インフォの中に入ってウイルスと戦っている時は少なくともインフォのために戦っていたという実感があった。

今は本体を特定するためとはいえただ遊んでいるだけということがロボ太にとっては心苦しい。

「大丈夫、カドマツさんを信じて」

 

「さあ、来い…。大元への道を教えてくれよ…」

シミュレーターのプログラムなどの変化を見逃さないように監視するカドマツ。

入社したばかりの時に教育係として面倒を見てくれた上司のことを思い出す。

彼の趣味は釣りで、休日にたまに誘われて一緒に釣りに行ったことがある。

その時の言葉を思い出す

(落ち着け…獲物が食らいつくその時までひたすら静かに…そして、食らいついたら一気に引き上げる…)

まだプログラムにウイルス関係の変化は生じておらず、勇太たちは次のステージのプレイを開始している。

ひたすらに時を待つ中で、ようやくシミュレーターに反応が出る。

「こいつだ!よし…!さあ、どこから来たのか教えてもらうぞ!!」

わずかに見せたウイルスプログラム。

インフォをシミュレーターから切断し、その情報を割り出し、IPアドレスを特定していく。

「よし、お前らご苦労さん!発信元を特定した!戻ってこい!」

 

ステージを終え、シミュレーターを出た勇太たちを集めたカドマツがノートパソコンでウイルスのIPアドレスを彼らに見せる。

「ええっと、この番号がわかればいいの?」

「ああ。俺たちのこれからやることを考えれば、住所なんかよりはるかに役に立つ。迷惑なウイルスに反撃するためにもな。まずは、このIPアドレスを元に、目標のマシンへつながる転送ポートを作成する。そこを通って、俺たちは相手のマシンにハッキングをかけるんだ。当然、反撃はあるだろうが…」

「まとめてやっつける!」

「そうだ。んで、相手のマシンをぶっ潰してウイルスを作れなくしたら作戦成功だ」

「ウイルスを退治するためのもので、今度はウイルス役になる…か…」

確かに、カドマツが造ったシミュレーターによるウイルス除去システムを応用すれば、そういったことができるのは確かだ。

問題なのはその相手のマシンがどれだけの抵抗を見せるかだが、その点についてはカドマツは何も心配していない。

ここにいるのは世界選手権で戦った世界一のファイターたちだ。

「あ、カドマツさん。お願いがあるんですが、そのIPアドレスの情報をウィリアムにも教えてもらえますか?」

「ん?まぁ、いいが…」

「彼も今回のウイルスのことを知りたがっています。彼が言うには、もしかしたら…彼が犯人の可能性もあると」

「なるほど…そういやぁ、モチヅキも言っていたな。今回のウイルスは前にインフォを襲った奴と似てるとか」

となると、犯人の可能性が高いのはバイラスということになる。

IPアドレスから追跡をしていくことで、もしかしたら現在逃走中のバイラスの情報をつかむことができるかもしれない。

「わかった。あいつにも送っておく。だから、お前らはさっさとマシンをぶっ潰してこい」

「「了解!」」

 

オーガスタ基地をモチーフとしてステージで、基地から発進する緑色のホワイトベースというべき戦艦、サラブレッド。

かつて、水天の涙作戦で宇宙へ逃亡したインビンジブルナイツを追跡するため、ファントムスイープ隊が乗り込んだその戦艦に、勇太たちが搭乗している。

上空には転送のためのワームホームが開いていて、その先にはインフォたちを苦しめたウイルスたちが待っている。

モニターに映る敵地へ向かうサラブレッドをカドマツとミスターガンプラはじっと見つめていた。

 

ワームホールをくぐり、月面のフィールドにサラブレッドが突入する。

月面はウイルスのコアが存在するためか、紫色に染まっており、それがあると思われるルナベースには数多くの紫色のヴェイガン系を中心としたモビルスーツ部隊が存在する。

「すごい数のモビルスーツね…あのIPアドレスはビンゴということね」

「なら、全部やっつける!」

「ルナベースを陥落させて、ウイルスのコアを破壊する。いいね」

「了解!」

「いいわ」

「承知した!」

「出るよ…みんな」

サラブレッドのハッチが開き、勇太たちが次々と発進していく。

全機出撃後、サラブレッドは後方へと下がり、敵の来襲に気づいたモビルスーツ部隊が迎撃を開始する。

「先制攻撃、いっけえええええええ!!」

アザレアの右腕に装備されているメガキャノンが最大出力で発射される。

最大出力であればツインバスターライフルに匹敵する出力を誇るその一撃は高い防御力を誇るはずのザムドラーグを蒸発させ、着弾した月面にクレーターができるほどだった。

その火力を見せたアザレアに注意が向き、接近戦を仕掛けようとしたクラウダの背後に突然アルケーが出現し、両腕のギガンティックシザースをクラウダの上半身と下半身を挟み込む。

「いくらいい装甲でも、このギガンティックシザースに挟まれたら、終わりよ」

バキバキと音を立てながら砕けるクラウダの装甲。

背後から攻撃しようとするドラドとガフランに対してはファングでけん制し、撃ち漏らしはバーサル騎士ガンダムとナイトドラゴンが仕留めていく。

「僕たちの目標はルナベース!突破することだけ考えて!!」

 

「ほうほう…まさか、お台場のシミュレーターを使って、IPアドレスを手にして逆に突入してくるとは…想定外デシタ」

高速道路を走るトラックのカーナビ画面に映る勇太たちの戦っている姿に運転中のナジールは不敵な笑みを見せる。

最も、そんなことをしなくても目標は達成するのは目に見えている。

だが、こうも彼らに出し抜かれ続けるのは面白い話ではない。

(しかし…簡単にウイルスを止めることができるとは思わないことデス)

カーナビの画面がルナベース内部へと切り替わり、そこで出撃準備をしている大型モビルスーツが映る。

最終形態のデビルガンダムだが、その背中には節足動物を思わせる異形な形状の追加パーツが搭載されていた。

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