ガンダムブレイカー3 彩渡商店街物語   作:ナタタク

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第76話 再生

「はあああああ!!」

左文字でダナジンとクラウダを真っ二つに切り裂くと同時に、左手で保持している麒麟から発射される弾丸がトーチカを破砕する。

ルナベースへと道が切り開かれつつあり、先行するゲーティアに注意が向いたレガンナーが背後からメガキャノンの一撃を受けて沈黙する。

周囲には撃破されたウイルス側のモビルスーツ達の残骸が漂うが、それでもまだ数多くのモビルスーツが次々と基地から出撃する。

その数はさきほどまで撃破したモビルスーツよりもはるかに多い。

「内部に突入する道を作らないと!」

「私に任せて!トランザム!!」

トランザムを起動したアザレアがメガキャノンのリミッターを解除し、出力をさらに上昇させていく。

メガキャノンの最大出力がツインバスターライフルに匹敵するのはあくまでも通常時での話。

トランザムによってさらに上昇した出力による発射の場合は、それを超える。

「いっけえええええええ!!」

ラファエルガンダムのGNビッグキャノン最大出力を思わせるほどの大出力のビームがルナベースの壁を貫き、施設内へ突入する道を作り出す。

ビームは壁だけでは飽き足らず、ビームの近くにいたウイルス側のモビルスーツ達も消し飛ばしていった。

だが、それだけの出力のビームを発射したことでメガキャノン側にスパークが発生し、強制排除して月面へ落ちると同時に爆散した。

「無茶をするわね、ミサ」

トランザムを解除したミサの元へ飛ぶサクラがGNバスターソードを手渡し、その後でハイタッチをした。

 

基地内に突入した4機はビームが穿った穴を通して地下へと進んでいく。

基地内では敵からの攻撃はなく、まっすぐ進むのみだった。

「勇太君、これは…」

「ええ、サクラさん。妙な感じがします…」

基地外部にいるモビルスーツ部隊が追撃してくる様子もなく、基地内部から抵抗の動きもない。

ただ、まっすぐと進んでいるだけの今の状況があまりにも都合がよすぎるような気がして嫌な予感がする。

(グランドマスターガンダムはもう苦戦するような相手じゃない…でも、今回のウイルスの場合は、それ以上の存在かもしれない…)

グランドマスターガンダム以上のモビルスーツとすると、デビルガンダムが頭に浮かぶ。

もしくは、デビルガンダムの末裔であるデビルガンダムJrだ。

デスアーミーの残骸達が集合・合体し、自己再生、自己進化することで新たに誕生したそれはデビルガンダム四天王を模したビット兵器が搭載されているだけでなく、生身の人間を操るスレイブコントロールシステムが搭載されている。

そんな機体をさすがに公式が出すことはないだろうと思うが、相手はウィルスであるため、そんな公式の考えなど通用しない。

「もうすぐ一番奥だよ!!」

ミサの言葉通りに、穴を抜けた勇太たちがたどり着いたのはジェネシス内部のようなフィールド。

その中央にはターンAとターンXが眠りについた繭のようなものが安置されていた。

「これが…ウイルスのコア?」

「間違いないわ…。この繭から大きなエネルギー反応があるわね」

「それじゃあ、さっそくそれを破壊し…」

(侵入者に警告する。侵入者に警告する)

「これは…!?」

急に全員の通信機に割り込んできた複数の男女の声が融合したかのような奇妙な音声。

「だ、誰…!?」

「オープンチャンネル…」

(警告する。速やかに立ち去れ。立ち去らないのであれば、お前たちをここから実力をもって排除する)

「ふざけるな!インフォ殿にウイルスを流し込んだ者を倒しに参ったのだ!それを果たさずに戻れるものか!姿を現せ!」

(いいだろう…)

ロボ太の言葉にあっさりと応じる返事をした音声の後で、繭が土くれとなって砕けていく。

その土くれの中から現れたのは最終形態となったデビルガンダムだった。

「デビルガンダム…」

「でも、このバックパックって!!」

ミサの目に留まったのはデビルガンダムの背中にとりついている蝙蝠のようなパーツ。

それには誰もが見覚えがあるものだった。

「シド…」

(我が実力をもって排除しよう。このデビルガンダム・シドで)

その言葉の後で、大きく口を開いたデビルガンダムの叫びが超音波のように勇太たちを襲う。

「くうう…なんて、音だ!!」

「来るわよ、みんな!!」

サクラの言葉と共に、シドのパーツから次々と出撃するモビルスーツの数々。

これらはずべて、マスターガンダムなどのデビルガンダム四天王だった。

「シドのパーツから生産された…シド・スレイヴのデビルガンダムバージョン!?」

「シドとデビルガンダム、大量に出てくるデビルガンダム四天王の全部が相手だというのか!?」

あいさつ代わりと言わんばかりの6門のビームライフルが勇太たちを襲い掛かる。

名称こそビームライフルであるものの、それらのすべてがフォビドゥンやレグナントと同じくビームを屈折させることができる上に照射状態を維持することで大型ビームサーベルやビームの鞭に転用することができる厄介なものだ。

おまけに、そのビームの屈折は1度では終わらず、命中しなければ何度も何度も角度を変えて勇太たちを襲う。

「うわわわわ!!」

「何度も屈折するビームなんて、そんなのあり!?」

いくらよけたとしても追いかけ、おまけに減衰しないそれはもう受け止めるしかないことを教えてくれる。

ゲーティアとアザレアはそれぞれナノラミネートアーマーとGNフィールドでビームを防ぐことができるが、問題なのはトライシザースとバーサル騎士ガンダムだ。

「くううう!!」

自らを襲うビームを盾で受け止めるが、サブフライトシステムとしていたナイトドラゴンはビームを受けて地面に墜落する。

トライシザースはファングを盾にすることでかろうじてビームを防ぐことができた。

だが、このビームはあくまでもシドの兵装。

デビルガンダムのものが待っている。

胸部から発射される大出力のビームであるメガデビルフラッシュと両肩の拡散粒子砲が続けざまに襲い掛かる。

「この弾幕じゃ…近づけない!!」

「せめて、両肩とシドのパーツをつぶさないと!!」

麒麟を手にしたゲーティアが左肩に向けて弾丸を発射する。

上空での発射で反動については機体へのダメージを最小限に抑えることしか考えておらず、発射と同時に機体が回転する。

急速な回転によってこみ上げる不快感と吐き気を抑え込み、スラスターで強引に機体を落ち着かせる。

弾丸は確かに左肩に命中し、左腕を吹き飛ばしていく。

だが、デビルガンダムのDG細胞が失った左腕を再生させていく。

「くそっ…足を止めないと、アザレアブラスターも使えないとなれば…」

どんなに損傷を与えたとしても無傷になるのであれば、コアであるコックピットを直接つぶしてけりをつけるしか選択肢がない。

今いる機体の中で、それができる可能性があるのはGNフィールドを展開できるアザレアか、ナノラミネートアーマーを持つゲーティアくらいだ。

「サクラさん!トランザムミラージュは!?」

「ええ…!いわれなくても!!」

生き残っているファングを周囲に集め、トランザムしたトライシザースから放出される高濃度なGN粒子。

かつてのネオジオングとの戦いでは、これによって敵機体の能力の大半をつぶした。

(ウイルスで制御されたガンプラ…人が乗っていないなら、これで!!)

これでデビルガンダムが動けなくなると思われた。

だが、その希望は両肩から発射されるガンダムヘッド達に裏切られることになる。

ガンダムヘッドはまっすぐにトライシザースに襲い掛かる。

「嘘!?」

センサーをつぶしているはずなのに、どうしてこちらの位置がわかるというのか?

突っ込んでくるガンダムヘッドの口から放たれるビームが周囲のGNファングを破壊していき、トライシザースをかみ砕こうと口を開く。

やむなくトランザムミラージュを解除してその場を離れようとするが、間に合わない。

(やられる…!?)

「サクラ殿ーーー!!」

襲い掛かるガンダムヘッドをバーサル騎士ガンダムが側面から体当たりをして阻止し、バーサルソードで切り捨てる。

「助かったわ、ロボ太」

「礼には及ばぬ。しかし…」

倒したガンダムヘッドだが、やはりDG細胞によって再生していく。

なぜトランザムミラージュをしたにも関わらず、こちらの位置を把握することができたのかはわからない。

だが一つだけ言えるのはもうトランザムミラージュはこのデビルガンダム・シドには通用しないということだ。

「勇太君!ここは…あの作戦だよ!」

「あの作戦??」

「鉄華団が地球へ降下した時、あれをやろ!後ろからついてきて!」

GNフィールドを展開したままのアザレアが攻撃が来るのを無視して正面から突っ込んでいく。

「ミサ!」

「あれか…ああ、もう!!」

ろくに打ち合わせもせず、いきなり始めたミサに少し文句が言いたくなったが、もうこうなっては仕方がない。

ミサの後ろについた勇太が彼女に守られながら弾幕の中を突入していく。

動かないデビルガンダムだが、その機体も馬鹿ではない。

シドのビームとフェザーミサイル、デビルガンダムのメガデビルフラッシュによる攻撃を集中させるとともに、両肩からガンダムヘッドを出現させる。

拡散粒子砲のビームならともかく、ガンダムヘッドのような質量攻撃を前にしてはGNフィールドを突破される恐れがある。

「ミサ!」

「トランザム!!」

一気に放出されるGN粒子が生み出すGNフィールドはより強固となり、かみつこうとするガンダムヘッドを阻み、動きが鈍ったそれらをゲーティアの左文字が切り落とす。

前へ進みながら、ミサはトランザムの持続時間とアザレアのスピードを計算する。

(これなら、届けることができる!もって、アザレア!!)

「ミサ!」

「信じて!!」

距離を詰めるアザレアとゲーティアに向けて、デビルガンダム・シドがメガデビルフラッシュを放とうとしている。

強固なGNフィールドを打ち破るべく、先ほどよりもはるかに高い、限界に近い最大出力による発射だ。

それを受ければ、たとえGNフィールドに守られたとしても、粉砕されるのが目に見えている。

「勇太!ミサ!!」

「さらに覚醒!!」

トランザムを維持したままブレイジングストライカーのエネルギーで覚醒するミサ。

直撃するメガデビルフラッシュをはじきながら突き進んでいくが、その中でアザレアの期待にヒビが入っていく。

(やっぱり、トランザムしたままの覚醒がこんなに負担がかかるなんて…!)

覚醒を使うことを想定した勇太の機体とは異なり、ミサの機体はトランザムはともかく、覚醒を使うことを想定していない。

トランザムと覚醒に重複掛けによって、機体そのものへの負担が一気に高まり、各所から警告を告げるアラームが聞こえてくる。

だが、それでもメガデビルフラッシュを耐え抜き、勇太に道を作った。

「行って、勇太君!」

「おおおおお!!!!」

機体内の太陽炉に小規模な爆発が発生すると、トランザムが停止したと同時にアザレアの機能が停止する。

その背後から飛び出したゲーティアの左文字がデビルガンダム・シドのコックピットに刃を突き立てる。

深々と刺さった左文字によって、コアが破壊されたデビルガンダム・シドが機能を停止させる。

同時に、基地内の電源も次々と停止していった。

「よし…!みんな戻れ!ウイルスが止まったぞ!」

「やったぁーーーー!!」

ゲーティアに抱えられたアザレアのコックピットの中で、ミサは両手を挙げて勝利をかみしめる。

ロボ太も駆け寄り、3人が勝利を分かち合う。

(それにしても、なんで私のトランザムミラージュが奴に効かなかったの…?これは…)

「お前ら、これか…」

カドマツの通信が急に切れ、同時に周囲の映像がブラックアウトしていく。

視界がシミュレーターの中へ戻っており、突然のことに勇太は周囲を見渡す。

「勝手にログアウトされた…?」

カドマツの指示を受けたが、まだ誰もログアウトの操作を行っていない。

違和感を抱きながらコックピットから出る。

「カドマツさん」

「おお、勇太、お前らも。どうやら…通信機器が落ちたらしい。だが…これは…」

落ちたのがシミュレーターだけではなく、カドマツが使用していたパソコンや勇太たちの持っているスマホも同じで、強制的に電源が停止している状態になっていた。

「ええ、どうなってるの!?」

「ウイルスからのシャットダウンコマンド…最後っ屁か??まさか、世界中で…?」

ネットワークから切断されているため、ほかの場所での状況を把握することはできないが、ウイルスの根本を絶ったことでその動きが出たならば、ほかの場所でも同じことが起こってもおかしくない。

「大丈夫なの?もしかして、もうネットが…」

「大丈夫だ、こういったところは自動的にリカバリーできるようにできている。俺のパソコンもな。スマホを貸せ、俺がリカバリーしてやるよ」

「え、ええ…」

勇太たちのスマホにカドマツは復旧したばかりのパソコンとケーブル接続し、外側から操作をする。

ものの数十秒でコマンドが解除され、電源が入った。

その間に、停止していたシミュレーターも自動的に電源が入っていく。

「よし…あとはインフォだ。待ってろ」

電源が落ちたインフォにノートパソコンを接続し、操作を開始する。

ウイルスの根元を絶ったことで、もう続けてウイルスが入ってくることはないため、あとはそれを除去するだけ。

もうすでにウイルスのデータはとっており、対策プログラムも作っているため、それを入れればウイルスの除去は簡単だ。

ウイルスが除去されたインフォに電源が入り、ツインアイが緑色に光る。

「インフォちゃん!」

「ミサさん、皆さん…ここは…?」

目覚めたインフォはキョロキョロと周りを見渡す。

彼女にとっては身近なゲームセンターでも商店街でもないため、少し混乱している様子だ。

「ここはお台場のGBN博物館。ここの人に助けてもらって、君のウイルスを除去したんだ」

「そうなんですね、また…皆様にご迷惑をおかけいたしました」

「いいよ、それよりもインフォちゃんさぁ、何かこう…普段からストレスをためてない?」

2度のウイルス感染の中でインフォが見せた言動は胸のことはともかく、それ以外は仕事に対する不満や愚痴ばかりだった。

ほかのワークボットについてはどうなのか、モチヅキやカドマツに聞いた話では、言語を話すワークボットはウイルス感染した際にはもっと支離滅裂なことをいうことが多いらしく、インフォのようなケースは稀らしい。

どこか、忙しいサラリーマンのような言葉の数々がどうしてもミサの耳から離れなかった。

「さあ…なんのことでしょう?」

「今の間は何?」

「今度、婆さんに言っとかねえとな。いくらワークボットとはいえ、あんまり負担をかけるなってよ」

 

「どうだったかね?ナジール君。私のウイルスは」

高速道路のとあるサービスエリアの誰もいない喫煙室の中で、たばこを吸うナジールがバイラスからの電話を受ける。

机にはタブレット端末が置かれており、そこの映像を見ているナジールは笑みを見せていた。

「スバラシーですねぇ。おかげで、例のアレに通じるネットワークルートがわかりました。通信の回復が最も早い場所…それはすなわち、宇宙エレベーターなのですから、おかげでずいぶん楽に特定できマシタ」

端末に表示されるネットワーク経路。

これが手に入ったなら、もうウイルスもシミュレーターも用はない。

あとは修正されたシミュレーターが各地へ戻っても、もう彼らにとっては関係のない話だ。

「満足いただけたなら結構、それでは…報酬のほうは頼むよ。逃亡生活は何かと物入りだからね」

バイラスが電話をしているのはシカゴにあるとあるホテルの中。

彼の手には前金として受け取った偽装の身分証がある。

今のバイラスはマルバス・テラモーンで、シカゴにあるタイタンズカンパニーとの取引のために入国したフランスのフレミングス社の役員。

なお、タイタンズカンパニーもフレミングス社も法人としての籍も本社も存在するが、いずれもすべてペーパーカンパニー。

表向きのCEOも現地で雇ったホームレスだ。

あとは、入ってくる報酬で顔と指紋を整形して、経済成長の著しい新興国へ向かう。

そこで再びビジネスを始めるだけでいい。

すでにビジネスプランは完成している。

「ええ、もうすぐ届きますよ」

「そうかい。じゃあ…」

通話状態のまま、スマホを操作してネットバンキングの口座を調べようとする。

だが、それと同時にドアが開く音が聞こえ、バイラスは思わず視線をドアのある方向へ向ける。

そこにはシカゴ警察の姿があり、複数人が部屋に突入してきていた。

「な、なんだ!?」

「警察だ!バイラス・ブリングス!逮捕する!」

「ど、どういうことだナジール!これは…!?」

通話状態がそのままであろうスマホに声を荒げるバイラスだが、通信はすでに切断されていた。

通話履歴にも、彼とこれまで通信した情報はすべて消滅していた。

(まさか、謀ったというのか!?)

呆然とするバイラスに手錠がかけられた。

 

「…よかった、無事に届いたみたいですね。ナジール…その名前も、記録から消えることでしょう」

スマホの電源を切り、端末を手に喫煙室を後にするナジール。

彼の前には黒ずくめの男が立っており、彼はナジールにアタッシュケースを手渡す。

「例のブツだ」

「感謝しますよ、ここからは…私も戦わなければならない。こういうことで頼りになるのは…あなたたちです。ガンプラマフィア」

「追加料金を支払うなら、傭兵をしてやってもいい」

「いいえ、あとは…私の問題です。機会があれば、またお願いしますよ。既に報酬は振り込まれておきましたから」

アタッシュケースを手に建物を出たナジールはそれと一緒にガンプラマフィアに手配させていた車両に乗り込み、発進する。

このウイルス騒動で使ったトラックはこのまま置いていくことになる。

「さあ…すべての準備ができました」

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