「ここから…静止ステーションまで行けますか?」
(可能か不可能か、といえば可能です。許可か不許可か、といえば不許可です)
作業着姿のナジールがエレベーターへの扉を前にどこかからみている制御AIと対話をする。
周囲には警備をしていたと思われる警官たちの姿があり、全員が昏倒している。
「そこを何とか…どうしても、静止ステーションまで行かねければならないのですよ」
(大会ファイナルステージの会場となっております。ステージが開始するまでは、誰も通れません)
「誰もいない今だから、行きたいのです」
(申し訳ありませんが、お引き取りください)
やはりAI、人間とは異なり柔軟な回答をすることができない。
頑固なまでに拒否を繰り返す。
こんな問答はナジールにとっては茶番だ。
もうここを開くすべはある。
「では…仕方ありませんね。ここは、魔法に頼るしかありません。イフタフヤー、シムシム!」
(開け、ゴマ…ですか。アリババ気分で申し訳ございませんが、そんな言葉では…)
だが、想定外の動きがあれば、さすがのAIでも動揺する。
実際に、ナジールの放つ古の呪文はエレベーターへの扉を開き、彼を迎え入れる準備を整えてしまった。
(何をしたのですか?)
「あなたにバックドアを仕掛けただけですよ、ドアだけに」
デビルガンダムやそれが生み出した数多くのモビルファイターの残骸であふれたランタオ島。
PGのマスターガンダムがその巨体に見合わぬ軽快な動きでビームをかわしつつ、掌を前面に突き出し、大きく円を描くように動かしながら梵字を出現させる。
気が生み出す小型の分身によって敵を攻撃する十二王方牌大車併だが、PGのガンプラが生み出すそれらの分身はすべてHGに匹敵する大きさだ。
更に、その分身たちはダークネスショットやマスタークロスなどの技や武装で勇太たちを襲う。
「くっ…やっぱり、世界大会クラスのPG機体はすごい…」
今の状態はPGを含めた複数のガンプラを相手にしているようなもので、本来であればこの大きさの分身を複数形成、なおかつ維持して攻撃させるとなる、その分だけ気の消耗も激しくなるはず。
だが、PGのマスターガンダムは問題なく動き、なおかつ分身と連携して攻撃を仕掛けている。
「だったら…!」
取り回しを考えると不利になることから、バスターソードメイスから引き抜いた左文字でダークネスショットをさばいていく。
「足を止めないと…ロボ太、できる?」
「うむ、やってみせよう!!」
ナイトドラゴンと合体し、ドラゴニック騎士ガンダムとなったロボ太がビームマントで分身を生み出しながら分身のマスターガンダム達に襲い掛かる。
「分身であれば、分身で対抗するのみ!我が新たな奥義を見よ!」
ドラゴンバスターを握るロボ太のビームマントの出力が上昇し、同時に数多くの分身が出現する。
「DUPE粒子!?」
「おおおおお!!!」
蝶の群れのような数多くの分身とともにロボ太が突貫していき、マスターガンダムの分身たちはその数多くの分身荷動きが鈍る。
突撃してくるロボ太をマスタークロスで捕まえようとするが、分身に対してそれは無力であり、真正面から突っ込むロボ太本体のドラゴンバスターで真っ二つに切り裂かれる。
別の位置にいるマスターガンダムの分身は四方八方から発射されるドラゴンバスターのビームで焼かれ、撃破されるたびに本体のマスターガンダムのパイロットは消耗する。
「くそぅ…奴も同じ武器を持っていたか。だが、これだけの分身を同時にコントロールするとなると、奴も…」
「はあ、はあ、はあ…」
数多くの分身をコントロールすることによる消耗の発生は人間もAIも変わりない。
「ロボ太、大丈夫?」
「ああ…少々、はりきりすぎた…」
AIであることから、疲れるという概念はないものの、やはり稼働できる容量の限界というものは存在する。
限界ギリギリかそれ以上の分身を生み出し、同時に制御するとなると高熱を起こす。
だが、マスターガンダムの分身を大きく減らすことができたため、それで十分と言えるだろう。
「あとは…任せて!!」
覚醒したゲーティアが左文字を手に真正面からマスターガンダムへと吶喊する。
「接近?馬鹿なやつめ!PGとはいえ、マスターガンダムはモビルファイターだぞ!!」
モビルトレースシステムによって制御されているマスターガンダムの反応速度であれば、HG機体相手でも有利に格闘戦に持ち込むことができる。
リーチの差もあり、懐に入り込まれる前に最大出力のダークネスフィンガーで握りつぶすことができる。
「これで、終わりだあああ!!」
エネルギーが放出される右手を伸ばし、ゲーティアをつかもうとするマスターガンダム。
だが、つかもうとした瞬間に急にゲーティアが炎のオーラに包まれ、同時にマスターガンダムの手から逃れる。
懐に入り込むと同時にオーラが消え、左文字の刃がマスターガンダムの頭部に突き刺さる。
「な…にぃ!?」
「1秒トランザムならぬ、1秒覚醒だ…!」
その一言と同時に、左文字を振るう。
マスターガンダムに頭が切り裂かれ、それによってマスターガンダムのコックピットのモニターが消えていく。
「くっそぉ…」
管制システムを頭部に集中させているモビルファイターにとって、頭部は生命線であり、それが破壊されると操縦不能となる。
つまり、この時点で撃墜判定となる。
「ふううう…」
あおむけに倒れたマスターガンダムから離れた勇太が息を整える中、鞘を回収したアザレアがやってくる。
「お疲れ様、勇太君!ロボ太も」
「うむ、これでまた一歩、本選に近付いたな」
「うん、あともう少しポイント…を?」
各ブロックのこれまで撃破した敵ガンプラの数が上位5位のチームが決勝ステージへの出場が認められ、現在は4位。
時間を考えると、まだまだ安心できないが、あと1チーム倒せば安全圏まで行けるだろう。
だが、勇太が気になったのは現在3位のチームだ。
「見間違いじゃないよね…これ…」
「どうしたの?」
「ええっと、3位のチームが…」
(おい、勇太、ミサ!)
急に通信モニターに表示されたのはウィルとサクラだ。
そばにはカドマツもいて、おそらくはオペレーターをするカドマツのノートパソコンから通信をしているのだろう。
「ウィリアム?どうしたの?試合は?」
(ああ…無事決勝ステージ通過が決まったんだ。それよりも…ドロシーを見なかったか?今日になってから、一向に連絡がないんだ!)
(私も探しているけれど、見当たらなくて…。みんなはどう?
以前のような正義の暴走を起こすようなことはなくなったウィルだが、それでも実業界は戦場であることには変わりない。
隙あらば蹴落とそうとする存在もあり、場合によっては汚い手段を選ぶ連中もいる。
そんな人間が犯罪組織を使ってドロシーを誘拐するようなことがあってもおかしくない。
ドロシー自身、そういうことがあってもある程度対応できるように護身術を学んでいる。
これはウィルだけでなく、彼の先祖に仕えている使用人たち全員が共通していることだ。
それでも、こうして連絡がないことは初めてで、さすがのウィルも焦りを隠せない。
「勇太君!」
「あ、ええっと…多分、心配いらないと思うよ…」
「え?」
(どういうことだ?)
「行くよ、ミサ。多分、ドロシーさんはあそこにいる」
「う、うん…??」
勇太から送付された座標情報に首を傾げながらも、ミサは勇太にしたがってついていき、ロボ太もそれに続いた。
ランタオ島最深部の谷底には撃破されたガンプラたちが落ちていき、地上では思わぬ強敵の姿に誰もが戦々恐々としている。
谷というには語弊があるが、そこで行われたガンダムマックスターとガンダムローズ、そしてグランドガンダムの激しい死闘がそこを谷というべき地形へと変えていた。
「なんだよ、あの機体、なんだってんだよ!!」
ギュネイのノーマルスーツ姿のファイターの乗る緑と金のカラーリングのシナンジュは既に右腕を失っており、左肩のファンネルラックは空になっている。
仲間のピンク色のシナンジュ、黄土色のローゼン・ズールは既に谷に沈んでおり、強敵の出現によって一時的に手を組むことになったチームも生き残りは強化型ウォドム1機とドルメル2機のみだ。
「いい加減になさってください。私はあなた方を殴りたくて参加したわけではありませんよ」
髪が黒くなったノーベルガンダムをベースとして、メイド服のような外装姿をしたPGのガンプラのファイターが丁寧な口調をしながらも、オイルで濡れた超大型メイスを握っている。
「ですが…邪魔立てするのであれば、落とすだけです」
「くっそおおお!!なんでこんなやつがいるんだよ!」
今のランキングと残り時間を考えると、あのPG機体を倒さなければ決勝へ行くことはできない。
意を決したファイターが左手でサーベルを握り、突撃を仕掛ける。
ライフルがなく、残ったのがサーベルのみではこれしかできることはない。
つまらなそうにその様子を見たメイド服のガンプラはその機体を踏みつけて黙らせた。
そして、メイスを手放すとウォドムを右手でつかみ、頭上へと持ち上げる。
「な、なんてパワーだ!PGとはいえ、ノーベルガンダムだろう!?」
「ちょっと…やってみたかったのですよ。これですよね、シャイニングフィンガーというものは」
無機質な一言と同時に右手から放出されるエネルギーが持ち上げたウォドムを粉々に打ち砕く。
「ヒートエンド…で、ございます」
「こんなの…こんなの勝てるわけないだろ!」
「くそ…逃げろーーー!!」
生き残った2機のウォドムが逃げ出していく。
その2機に対して彼女が行ったのはメイスを手にした状態での恭しいお辞儀だった。
「つまらないですね…関係ない相手を殴るというのは。おや…?」
新たにエリアに入ってくるチームの姿をモニターで見たファイターは機体の向きを向かってくるチームたちにあわせる。
「メイドみたいなPG機体…もしかして、ドロシーさん!?」
「お久しぶりです、皆さん」
コックピットに座る、普段着用しているメイド服と同じカラーリングのソレスタルビーイング風のノーマススーツ姿をしたドロシーは感動のない挨拶をする。
(ドロシー!?出場しているなんて聞いてないぞ!)
さっそくウィルの通信が入り、モニターにウィルの顔が映るがドロシーは見ようとしない。
「お伝えすると、止められますから」
(止める…?なんで?)
「私、以前より常々ガンプラバトルに興味津々でございました。坊ちゃまに内緒で、こっそり秘密裏に特訓をし、このガンプラ…メイドガンダムゼロを作っていたのです」
「なんで!?もしかして、私たちを倒してウィルを優勝させたいとか?」
そういう意味での出場理由なら、ウィルが止めようと動くかもしれない。
ウィルに合流せずにこっそり参戦というなら、こうした行動に出ることも納得できる。
(ドロシー、誰がそんなことを頼んだ!?僕は彼らと戦いたいだけだ!優勝が目的じゃない!)
「は…?そんなことのためではございません。ガンプラバトルであれば…合法的に殴れるのですよ…坊ちゃまを」
(…は?)
超大型メイスを肩に置くメイドガンダムゼロの姿を見たウィルは急に冷たい風を感じ、固まるウィルとドロシーの答えにサクラは言葉を失う。
「ドロシーさん…嫌いなんですか?ウィリアムのこと」
「いいえ、我が主として、親愛の情を感じてはおります。しかし…なんと申しましょうか。坊ちゃまには嗜虐心がそそられるといいますか…時々殴りたくなるのです」
「ああ…」
妙に納得したようなミサの言葉に勇太は頭を抱える。
そして、そんな目的のために犠牲となった数多くの世界大会クラスのファイターとガンプラたちに黙とうをささげた。
(そ、その…ドロシー、あとで…ゆっくり話そう…)
「はい、しかし…大会が終わってからでお願いいたします。では…首を洗って、お待ちくだされ」
(遺言状を書いておいた方がいいわよ、ウィリアム)
(他人事のように言うなよ、サクラ)
画面に表示されるメイドガンダムゼロとバットを持つドロシーがなぜか脳裏で重なって見えてくる。
「それでは…まいります」
超大型メイスを手にお辞儀をした後で、メイドガンダムゼロがスラスターを吹かせて正面から突っ込んでいく。
「早い…!!」
「止めないと!!」
上空へ飛ぶアザレアがビームライフルでメイドガンダムゼロを攻撃するが、ビームがバリアによって阻まれて消滅する。
「Iフィールドでございます」
「けど、PGだからって無敵ではない!」
バーサルソードを手にしたバーサル騎士ガンダムが接近し、それに対してメイドガンダムゼロは箒で床を掃除するようにメイスを振るう。
箒というにはあまりにも物騒な代物である超大型メイスは地面を削り、砂と岩をまき散らしていく。
だが、超大型メイスでPG機体ということもあり、あまりにも大振りでおおざっぱな動きはロボ太にとっては読みやすく、あっさりと懐に入り込む。
「(いくらPG故に強固であったとしても、関節を狙えば…!)何!?」
背後からの警告音に驚くロボ太のコックピットを背後から衝撃が襲い掛かる。
顔面をメイドガンダムゼロにぶつけ、跳ね返るように飛ぶバーサル騎士ガンダムにメイドガンダムゼロの右手が伸びる。
「ロボ太!!」
つかまれる直前に、覚醒したゲーティアがバーサル騎士ガンダムをつかみでその場を離れる。
エイハブウィングが生み出す高い機動力がメイドガンダムゼロの魔の手から救い出し、ミサの元へ向かう。
「ロボ太、大丈夫!?」
「ああ…スラスターへのダメージがあるが、これは…」
「皆様、少々私に注意が向きです」
「ドロシーさん…こんなに強かったの…?」
3機を容赦なく包囲するライフルビットやピストルビットの数々。
更には同じくビット兵器になっていると思われるレールガンもあり、おそらくはそれがバーサル騎士ガンダムの背中を撃ったのだろう。
(でも、これだけの数のビットを、どこから??)
サポートメカについては、PG機体やモビルアーマーの場合は使用が禁じられている。
そして、このわずかな時間の間にメイドガンダムゼロがビットを放出した様子がない。
そのタネを知りたいと思うが、今専念しなければならないのはビットへの対処だった。
GNフィールドを展開してビームやレールガンを受けるアザレアはレールキャノンでビットを攻撃していく。
「サバーニャと同じくらいのビットを制御するとなると、まさか…」
左文字とテイルブレードを駆使してビットを対処する勇太の脳裏に浮かぶのはヒイロ達がカトルの指揮の下でビルゴ達モビルドール部隊と戦っていた時の場面だ。
その時にモビルドール部隊はドロシー(もちろん、目の前にいるドロシーではなくドロシー・カタロニアの方)がゼロシステムでモビルドール達を制御していた。
遠隔操作でそれが行えるため、使用者が死と隣り合わせとなる可能性が低いことから、軍人や戦士ではない彼女でも使うことができた。
なお、シミュレーターにおいてもゼロシステムは未来を見せるシステムであることには変わりないが、あくまでもシステムが見せる未来はガンプラバトルの範囲内のみに制限され、他人や仲間の犠牲、更には自分の自爆についても実際の生死にかかわるものではないため、実際にシステムを使った数多くのパイロットのように精神的に負けて暴走するようなことはない。
ただし、ゼロシステムを搭載したガンプラを使用する場合は新たにゼロゲージが追加され、ゼロシステムの使用や使用中に置ける状況及び見せた未来によってゲージが蓄積されていき、それが最大値になった場合はその場で被撃墜判定となる。
アフターコロニーの時代においてはニュータイプやXラウンダーなどの概念がないことからビットやファンネルのようなオールレンジ攻撃兵器がないが、仮にそのような武装があった場合、ウィングガンダムゼロとガンダムエピオンの戦闘はビットやファンネルも含めた凄惨な戦いになっていた可能性もゼロとは言えないだろう。
「よそ見でございます」
ビットに気を取られる勇太たちにメイドガンダムゼロの超大型メイスが襲い掛かる。
今のメイドガンダムゼロはとあるドラゴン殺しと彼が振るう大剣と重なって見えた。
上半身を後ろにそらすことでどうにか刃から逃れることができたが、それでも衝撃波でゲーティアが吹き飛ばされる。
「がぁ…!!」
背後の大岩に激突すると同時にコックピット内で強い衝撃を受けた勇太。
もしシミュレーター内でなければ、今頃胃の中のものすべてでバイザーを濡らしていたところだ。
「あなた方に用はございません。私に用があるのは坊ちゃまのみです。どいていただけませんか?」
もはや勇太たちなど(最初からかもしれないが)眼中にないといわんばかりにメイスを握る。
その様子をモニターで見ているウィルは祈るように勇太たちを見つめている。
(頼む…本当に頼む!命の危険を感じるんだ、ここでドロシーを止めてくれ!勇太!!)
「邪魔をするなぁ!!」
レールガンビットをバーサルソードで切り捨てることに成功したものの、まだまだ放出されているビットの数は多い。
(これだけのビットをコントロールして…あれ、待って…?)
ライフルのエネルギーを気にしながらビットを対処するミサはふと、攻撃を仕掛けているビットの陰に隠れるように下がっていくビットを目撃する。
いくらファンネルやビット、ドラグーンがオールレンジ攻撃が可能な武器であったとしても、そこに弱点がないわけではない。
小型兵装であることが多いゆえに火力の拡張に制限がかかり、重力下では推進剤の消耗が激しくなり、稼働時間に制限がかかる。
「(ドロシーさんのガンプラとは違う方向に下がってる…ってことは!)ロボ太!あとはお願い!」
「何!?ミサ!!」
進路を阻むビットをライフルで攻撃したアザレアがメイドガンダムゼロとは違う方向へ進んでいく。
どこへ行くのかと問いたいロボ太だが、ここでビットから注意をそらすわけにはいかない。
(ミサ…何をするつもりなのだ!?)
谷底へと向かうアザレアはエネルギー切れとなったライフルへのエネルギー供給に注意を向ける。
いかに太陽炉が無尽蔵なエネルギーを生み出しているとはいえ、推進剤替わりとなっているうえにGNフィールドや機体そのものの電力の供給にも使われているため、急速にライフルにエネルギーを供給しようとするのであれば、トランザムを使うか、ライフル以外へのエネルギー供給を止める必要がある。
「PG機体なら、大きいはず…すぐに見つけられる…!」
ミサの脳裏に浮かぶのは勇太が言っていたことだ。
(敵が何か想像できない武器を使ったとしても、絶対に種がある。完全にそのタネを隠しきることはできないし、元ネタになるものだってある)
「ビットやレールガンにエネルギーと弾薬を供給できるもの…見えた!!」
隠れるように配置されたその種をアザレアのカメラが見つける。
巨大なバックパックといえるパーツの中に収容されるビットと入れ替わるように射出されるビットがアザレアを攻撃し、パーツが移動を始める。
そのパーツはPG故に大型となっているターンXのバックパック、キャラパス。
本来は携行武器を収納し、なおかつIフィールド駆動であるが故にターンX本体のIフィールドでは防御しきれない場合に盾として機能する存在だが、ドロシーはそれビットのエネルギー供給、および制御パーツとして利用していた。
いわば、キャラパスにゲーマルクのマザーファンネルの機能を追加したものといえるだろう。
重要なパーツ故に、ビットによる抵抗も激しい。
「じゃあ…トランザム!!」
赤く染まったアザレアがビットの弾幕をGNフィールドで防御しつつ、キャラパスに向かって突っ込んでいく。
Iフィールド駆動のキャラパスをビーム攻撃で破壊するのは難しい。
ライフルを捨て、パックパックに搭載されているアロンダイトを抜いたアザレアがビーム刃を展開させつつキャラパスに突っ込んでいく。
キャラパス本体にビット以外の攻撃兵装はなく、トランザムしているアザレアを振り切るだけの機動力はない。
アロンダイトとキャラパスが接触する直前で、一気にアロンダイトへエネルギーを供給し、ビーム刃が大型化していく。
ガンダムエピオンのハイパービームソードに匹敵する刃はキャラパスの強靭な装甲を両断していく。
真っ二つとなったキャラパスが爆散し、周囲のビットは機能を停止して地面に落ちていく。
「や、やったぁ!」
ビットを止めることに成功し、コックピット内でガッツポーズを決めるミサはトランザムを停止する。
ただ、キャラパスを両断するだけの圧倒的な出力を受け止めたアロンダイトはところどころスパークが発生しており、投げ捨てると同時に爆発してしまった。
捨てたライフルを回収すると、ミサは勇太たちのもとへ急いだ。
「あら…もう看破されてしまいましたか」
モニターにキャラパスからの反応が消えたことを告げるメッセージが流れたことで察したドロシーはメイスを握ったまま、ようやく起き上がったゲーティアに近付いていく。
近づいてくるメイドガンダムゼロの様子をカメラで見つつ、勇太はヘルメットを脱いで口元で腕で拭う。
スラスターの出力は低下しているとはいえ、継続戦闘は可能な程度だ。
「じゃあ、倒させてもらいますよ…ドロシーさん。ウィリアムの心の安寧のためにも」
「私も、負けられません。坊ちゃまを殴るためにも」
超大型メイスを振り回すメイドガンダムゼロだが、その場で大きく跳躍して逃れるゲーティアが炎のオーラに包まれるのを目の当たりにする。
炎をまとった左文字の刃が超大型メイスの持ち手を襲い、切断された超大型メイスが地面に落ちる。
「どういたしましょう…これほどとは」
「動揺しているなら…まだまだ経験不足!」
覚醒したガンプラを前に、少しでも動揺を相手に見せたらそのまま敗北につながる。
エクシアによって解体されていくアルヴァトーレのように、切り裂かれていくメイドガンダムゼロ。
何もできないドロシーは目を丸くし、そのあとでとどめを刺そうとするゲーティアを見つめる。
(これが…覚醒。これが、坊ちゃまが認めたファイター…)
静止ステーションの制御用コンソールを操作するナジール。
ニヤリと笑う彼の姿をカメラから見つめる制御AIには彼を止めるすべがない。
彼によって、既に制御システムは掌握されてしまったのだから。
(あなたは、何をするつもりなのですか?)
「この静止ステーションを…地上へ落とします」
(おすすめしません。あなたの安全を保証しかねます)
「そんなものは必要ありません…宇宙太陽光発電開発を止めれればいい。そのために、私はここへ来たのですから」
機体名:メイドガンダムゼロ
形式番号:設定なし
使用プレイヤー:ドロシー
使用パーツ
射撃武器:なし
格闘武器:超大型メイス
頭部:ノーベルガンダム
胴体:ガンダムMk-Ⅱ
バックパック:ベアッガイⅢ(キャラパス搭載)
腕:ウィングガンダムゼロカスタム(マニピュレーターのみシャイニングガンダムのものに換装)
足:ガンダムAGE-FX
盾:なし
ドロシーがウィルを殴るために作ったガンプラ。
チームでの運用を想定していないことから最初からPG機体として設計しており、武装に関しては主目的のみを想定して超大型メイスを採用している。
無論、殴れなかったとしても別の手段をとることができるように両手部分はシャイニングガンダムのものを採用し、シャイニングショットやシャイニングフィンガーの発動を可能としている。
ゼロシステムも採用しているものの、あくまでもそれはキャラパスとそれに内蔵されているライフルビットやピストルビット、レールガンビットなどの各種ビットを制御するためのものとしてのみ使用しており、キャラパスに関しては弾薬や推進剤を補給する機能が搭載されている。
仮にドロシーが戦闘経験を積み、このような機体をHGでも開発できるようになれば、彼女の夢は現実のものとなるだろう。