「制御AI!応答しろ!」
「セキュリティシステム、応答なし!カメラも起動しません!」
「くそ…どうなっているんだ!?」
軌道エレベーターを管理しているNASAの職員たちは突如として発生したトラブルへの対応に走り回る。
SSPG着工記念セレモニーのような大々的なイベントがテロの標的となることはよくある話で、それに備えてFBIも招集している。
特にエレベーター入り口についてはドローンも含めて選りすぐりの精鋭を配置していた。
だが、ドローンも含めて彼らはすべて倒されてしまっていた。
奇妙なのは彼らは全員テーザー銃もしくはスタンガンによって気絶させられたうえで、結束バンドで縛られているだけで、全員生存している。
普通のテロリストであれば、ためらいなく彼らを殺傷している。
犯人が誰なのか、犯人の目的が何かわからない中では当然大会を継続することなどできない。
決勝戦を観戦する予定だったアメリカ大統領も、安全を考慮して現在引き返しているという。
大会中止の話は、試合を終えてシミュレーターを出てすぐに観客や選手たちにも伝えられた。
「まったく、とんだ災難になっちまったな」
「どうするの?これだと、決勝戦できないじゃん!」
「今はそれを言ってる場合じゃないよ。けど…」
既に警備員たちによって避難誘導が開始されていて、既に客席からは続々と観客が退席していく。
今はガンプラバトルどころではないことはわかっているが、それでも悔しい気持ちがあることはミサと同じだ。
(けど…いったい何が…)
「綾渡商店街ガンプラチーム…ですな?」
「ああ、あんたは…」
「ジニン、さん…?」
勇太が声をかけてきた男を見て、いきなり名前を口にする。
服装はFBIの制服姿だが、顔立ちと髪型はガンダム00で登場したバラック・ジニンそっくりだった。
ちなみに、部下として同行している2人の職員についても、それぞれセカンドシーズン時代の沙慈とルイスそっくりだ。
「ん…?確かに私はジニンだが、なぜ知っている?」
「あ、ええっと…勘、というかなんというか…」
妙な返答に首をかしげる職員。
ただ、ガンプラバトルがブームになってからというものの、急に見知らぬ誰かからいってもいないのに苗字を言い当てられるようになった。
ガンダムと関係するのかと思ったが、仕事人間のためそういったことには疎い。
なぜこうなるのか、家に帰った時に妻に聞いたのだが、はぐらかされてしまった。
「…まぁ、いいか。私はバラク・ジニン。君たちの力を借りたい」
ジニンらに案内され、勇太たちが到着したのは地上にある軌道エレベーター制御室だ。
そこにはウィルとサクラ、そしてミスターガンプラの姿もあった。
「サクラさん、どうしてここに?」
「ウィリアムの特権のおかげよ。さすがは、タイムズユニバースCEOでここの最大の出資者ね」
「今はそんなの関係ないだろ。それより…ありがとう。ジニンさん。みんなを呼んでくれて」
「知り合いなの?」
「ああ、死んだ親父のボディガードをしていたんだ。ジニンさんがここにいてくれてよかった」
「まったく、私としては君たちを巻き込むことには反対なのだがな」
ウィルの言うことが正しいのであれば、勇太たちに協力を仰ぐのが制御AIとコンタクトをとるのに有効な手段となる。
だが、国家と国民の安全を預かる立場であるFBIとして、彼らを巻き込むことをよしとしない自分もいる。
もしウィルや彼の父親以外の人間が言ってきたとしたら、突っぱねて無理やり避難誘導していた。
「ハレヴィ、クロスロード、説明しろ」
「はい、クロスロードの調べによると、制御AIからの通信を阻む障壁が存在し、それによって制御室からもコンタクトが取れない状態になっています。まずはその障壁を取り除くことで、軌道エレベーターの異変についての情報をつかむことができるかもしれません」
「障壁を作り出しているプログラムについてですが、以前拘束したバイラスがかつて作成したウイルスプログラムに近い設計であることがわかっています」
「だから、僕たち…というより、君たちの出番というわけだ。そのウイルスを除去した経験があるからさ」
「なるほど…確かに」
そういう話であるなら、ここに来させられた理由はわかる。
確かに、2度にわたってバイラスのウイルスを除去した経験のあるカドマツのプログラムであれば、対応できる可能性が高いといえる。
「判断に関して、責任は私が持つ。協力してほしい」
FBIとNASA職員の協力のもと、シミュレーターと制御システムの接続が開始される。
シミュレーターには勇太たち5人が乗り込み、ガンプラをセットする。
カドマツはノートパソコンで障壁までの道筋を探し、ドロシーは職員たちのための茶菓子を用意する。
「まったく、せっかく決勝でこの機体を使おうと思っていたが…」
ヘルメットをかぶり、操縦桿を握りしめるウィルはこの以前にもあったようなトラブルに舌打ちする。
かつてのバイラスの一件がいまだに付きまとうというなら、もうここで一気に清算する。
今のウィルのガンプラ、ガンダムセレネスデルタはガンダムデルタカイをベースとしており、現在はウェイブライダー形態となっている。
nitroとプロトフィンファンネルを撤去し、アームズ・アーマーXCを搭載したうえでフレームについてはフルサイコフレームを採用。
シールドについては取り回しと耐久性を鑑みて、ZガンダムのIフィールドブラスターに変更されている。
そして、追加装備であるテールブースターによって両足が隠れている。
「ミサ、君が先に行け。重たいからな」
「女の子に重たいっていうなぁ!もう…アザレア、行きます!!」
「沢村勇太、ゲーティア、出るよ」
ミサとそのあとに続く勇太が出撃し、かつてのロボ太の中のような青白い空間へと飛び込んでいく。
その空間の中にファウンデーション王国のグルヴェイグ以外の大型艦および中型艦によって構成された艦隊が存在し、そこから次々とファウンデーション王国仕様のジンや同じカラーリングのシグー、ゲイツ、ザクが次々と出撃する。
「先制攻撃を開始する!ロボ太!」
「いけーーーーー!!」
バーサル騎士ガンダムを乗せるナイトドラゴンの口から放たれるビームとセレネスデルタのテールブースターから次々と発射されるミサイルが敵モビルスーツを焼き尽くし、爆散させていく。
モビルスーツが破壊されたことでできた陣形の穴にめがけてアザレアから発射されるメガキャノンが敵艦を貫く。
フラウロスアーマーを装着しているゲーティアがレールガンとビームランチャーで次々とモビルスーツを倒していくが、勇太たちにとっての目的は彼らではない。
(トランザムミラージュなら、本来であれば止められるけど…)
ジンをギガンティックシザースで握りつぶすサクラの脳裏に、お台場での戦いが浮かぶ。
あの時はトランザムミラージュは確かに発動したが、それでもデビルガンダム・シドには何も影響を与えることができなかった。
あれから、なぜそのような事態になったのかをウィルと一緒に調べた。
その際に、ウィルが言っていた彼なりの結論を思い出す。
(サクラ…あくまでもこれは僕の予測でしかないが、君がそのウイルスの親玉と戦った場所が問題だと思う。このガンプラバトルシミュレーターを使ったウイルス除去を敵のネットワークの中に入って行うということは、相手の土俵で戦うことと同じだ。シミュレーターのような中立の空間で戦うわけじゃない。そうなると…フィールド全体が奴らの目と耳になっている可能性が高い。それが、奴をサポートして、君の手を封じた。大きな海に石を投げ入れてもなんともないのと同じようなことになっていたのかもしれない)
ガンダム00本編でも、スローネドライのGNステルスフィールドは敵軍の動きを封じたものの、砂漠全体をそれで覆ったわけではない。
仮にタクラマカン砂漠全体をGNステルスフィールドで覆ったとなると、十数秒でGN粒子を使い果たしていただろう。
(けど、それはGN粒子が有限で、大量に作れなければという話。今の私のガンプラ…アルケーガンダムライズシザースなら…)
お台場での戦いのときのサクラのガンプラをエクシアとすれば、今のガンプラはダブルオーライザーだ。
リボーンズガンダムのように両腕に搭載されたエクシアとオーガンダムの太陽炉によるツインドライヴをオーライザーで制御し、二乗となった膨大なGN粒子によってステルスフィールドを形成する。
理論上ではフィールド全体を包むだけのステルスフィールドを形成することが可能ということで、思い切って採用している。
だが、それを見せるのはまだここではない。
襲い掛かるゲイツの放つビームライフルをファングを円状に展開して形成したGNフィールドで防ぎつつ、ギガンティックシザースに内蔵されたビームキャノンで打ち抜く。
「なめないでほしいわ…この機体がただの隠れるのがうまいだけのガンプラじゃないことを…教えてあげる!」
「障壁を生み出す存在、やっぱりこれか…」
艦隊を撃破しながら進む中、ゲーティアのカメラが見つけたのはアルテミス要塞だ。
幾重もの陽電子リフレクターによって守られた鉄壁の要塞とそれを守るグルヴェイグ。
グルヴェイグから出撃するモビルスーツ部隊に残りのレールガンとビームランチャーの斬弾をすべて放った後で、フラウロスアーマーを強制排除する。
「次!!」
後方からアザレアに守られながら進んでいたグリモワールから射出されるグシオンリベイクアーマー。
後方に下がりつつ、マニュアル制御によって射出されるグシオンリベイクアーマーとリンクし、本体と接続させる。
時間差で射出された麒麟を手にすると、まずはアルテミス要塞に向けて徹甲弾を発射する。
しかし、やはりアルテミスを守り続けた傘であることは伊達ではなく、フェイズシフトをも粉砕するその弾丸をたやすく受け止めた。
今の麒麟とグシオンリベイクアーマーであれば、ゼウルシルエットのリニアキャノンに匹敵する威力で攻撃することもできる。
それであれば、SEEDFREEDOMで見せたように地表からレクイエムを直接攻撃によって反応炉ごと破壊するといった芸当もできる。
最も、それは邪魔をしてくる敵機を排除してからということになるが。
「やっぱり、出てきた…」
グルヴェイグから出撃する4機のブラックナイツスコード。
アコードの力とフェムテク装甲、残像を生む高機動を生み出すビームマントを装備したそれらはコンパスのモビルスーツ部隊を壊滅に追い込んだ。
カルラとシヴァがおらず、ルドラのみではあるが、それでも圧倒的な性能のモビルスーツであることには変わりない。
「でも、それはSEEDの世界での話だ!!」
ビーム兵器に対して高い防御力を持つフェムテク装甲はレールガンのような実弾攻撃に対してはフェイズシフト装甲と比べるとまだマシな程度の防御力でしかない。
そして、グシオンリベイクアーマーのゲーティアであれば、負けることはない。
4機のルドラが分身しながら放つビームライフルをバスターソードメイスとナノラミネートアーマーで受け止めていく。
「助太刀いたす、主殿!!行くぞ、ナイトドラゴン!」
ナイトドラゴンと合体し、ドラゴニック騎士ガンダムとなったバーサル騎士ガンダムはドラゴンバスターを手にし、ルドラに匹敵する高機動を発揮する。
ドラゴンバスターと対艦刀がぶつかり合うが、単純な力のぶつかり合いになると、ナイトドラゴンのバーサル騎士ガンダムの2機分のジェネレーターを持つドラゴニック騎士ガンダムが上回り、対艦刀ごとルドラを切り捨てる。
いきなりルドラが1機撃破され、わずかに動きが鈍ったルドラにテイルブースターを切り離してモビルスーツ形態となったセレネスが切りかかる。
2機のルドラがビームライフルで攻撃するが、セレネスの右手のクローが展開し、そこから発生するバリアがビームを受け止める。
「これがIフィールドクローってやつか、確かに利き手の方が使いやすい!」
Zガンダムに装備されたIフィールドクローとIフィールドブラスターについては、サクラに勧められて採用したものではあるが、これまで使ってきた刀と比較すると取り回しや利き手でない方が武器となるIフィールドブラスターを装備するということには難色を抱いていた。
だが、展開したクローで受け止めるという要領で防御する形、そして追加で仕掛けたものの存在がウィルの中の評価を変える。
Iフィールドクローと称されているこの装備だが、これは防御のためだけの武器ではない。
受け止めたビームはクローの中央へと収束していき、吸収されていく。
「ちょうどエネルギーが欲しいと思っていたところだ!」
宇宙世紀において、モビルスーツが機体全体を包むようなIフィールドを展開可能となったのはクロスボーン・ガンダムの時代になってからで、ディキトゥスやフルクロスの登場を待たなければならなかった。
ユニコーンガンダムをはじめとしたフルサイコフレーム搭載型モビルスーツもIフィールドを搭載することには成功しているものの、あくまでもシールドに内蔵する形となっており、防御できる範囲もシールドの表面にとどまっていた。
Zガンダムに搭載されているIフィールドクローについては、一説ではモビルスーツに搭載するIフィールドの現段階の出力が戦場においてどこまで有効かを確かめる目的もあったらしい。
高速戦闘が主体の百式に対しては、シールド装備を見送るほど軽量化が追及された機体であり、当時のシャアの戦闘スタイルともかみ合わず、リック・ディアスやガンダムMk-Ⅱの反応速度では即座にクローで防御することが難しい。
そうなると、白羽の矢が立つのがZガンダムで、特に当時のエゥーゴの象徴として最前線で戦うことになるため、戦闘データの収集についても申し分がない。
最も、攻撃手段が左手に集中し、右手の汎用性が失われることから仮に最大火力となるハイパーメガランチャーを使用しようとする場合はクローとブラスター双方を排除しなければ使用できず、冷却時間の問題から使用できない時間が存在するなどの問題の多い装備と言えた。
また、実際にビームを防御する目的に関しても展開範囲が狭く、実用性については疑問符の付く結果となった。
しかし、クローから直接Iフィールドバリアを展開していることからビームサーベルを受け止めて防御することが可能であることから、それがユニコーンガンダムのIフィールド搭載型シールドに生かされた可能性がある。
ウィルも、ただ単にビームを守る手段だけであればこの装備は突っぱねていた。
だが、受け止めたビームを制御する機能もあるのであれば、話が変わる。
「力をくれてありがとう!黒騎士!」
吸収された2発のビームライフルのエネルギーを用いて、Iフィールドを起動したクローでビームの触媒を形成し、それでルドラの頭部をつかむ。
先ほど、自らを殴るために参戦したドロシーのメイドガンダムゼロと同じ攻撃手段であることは気が引けるが、それでもこれはフェムテク装甲を持つルドラには有効な手立てだ。
「これがセレネスの…シャイニングフィンガーだ!!」
圧縮されたビームの指で頭部を握りつぶされたルドラのコックピットをブラスターの実体剣で貫く。
あっという間に3機のルドラが撃破され、残る1機をしり目にアザレアがグルヴェイグの真上をとる。
「いっけえええええ!!」
最大出力に調整したヴェスバーのビームが艦橋と中央部を撃ち抜き、小規模の爆発を引き起こす。
母艦がつぶされた影響なのか、戦闘を行っていた各モビルスーツが機能を停止する。
そして、グルヴェイグを中心に巨大な人型のシルエットが形成されていく。
それは地球侵攻直前にネオ・ジオンでハマーン・カーンが演説を行う時のようだった。
「やはり、私の邪魔をするのはあなたたちですか…」
「お前か!この騒ぎを起こしているのは!」
「ええ…。ですが、運命を感じますよ。世界選手権において、軌道エレベーターを…ある人の言う夢見た未来を守った者たち、そしてその未来のために出資をしたもの、そして…夢を語った者。私を最後に阻む存在として、君たち以上にふさわしい者はいません」
声が判別されることがないように、デュランダルやイゼルカント、プロスペラなどの黒幕と言える複数のキャラクターが混ざったような声がシルエットから響く。
同時に、カドマツのノートパソコンと勇太たちのモニターにフォルダーが送付され、そこにはパスワードと思われる文字の羅列が封入されていた。
「何のつもりだ?」
「宣戦布告ですよ。決着の舞台は…因縁の宇宙ステーションです。そこで…ガンプラバトルで決着をつけましょう。お互いの夢見るみたいのために」
その言葉を最後に周囲の敵機体がステージともども消えていく。
そして、勇太たちは全員母艦に戻されていた。
「送られたパスワードのフォルダだが、ウイルスは入っていない。こいつを送り付けたやつは、マジで俺たちと決着をつけたいみたいだな」
カドマツだけでなく、NASAとFBIにも調べてもらっているため、問題がないのは保証済みだ。
「皆様、またもこのような事態となってしまい、大変申し訳ございません」
「それだけ相手が巧妙だったってことだ。仕方ねーよ」
どんなに厳重な守りを用意したとしても、バックドアを仕掛けられたとなると無意味になってしまう。
「現在、エレベーターに入ることができるのはパスワードを持っている方のみとなります。そして…現在宇宙エレベーターを占拠している人物から、メッセージを預かっています。閲覧されますか?」
「…見せろ」
「了解です」
ジニンの言葉に従い、制御AIによってモニターに表示されるメッセージの映像。
宇宙ステーション内部の映像で、そこには作業着姿で顔をヴィダールの仮面で隠した男の姿があった。
「この映像を見ている者たちにお伝えします。私は何者でもありません。そうですね…皆様がわかりやすいように、ネモとでも名乗っておきましょう。30年以上の長きにわたって作り上げたこの軌道エレベーター、見事な人類の英知といえるでしょう。しかし、ある人にとっては英知でも、ある人にとっては悪魔の存在です。そして、その未来を閉ざす軌道エレベーターの存在を私は許すことができません。よって、私はこれよりこの宇宙ステーションをギガフロートに向けて落とします」
「何!?」
「ふざけたことを…!」
「ですが…私が求めるのはこの軌道エレベーターの破壊であり、人命ではありません。ですので、これより2時間の猶予を与えます。その間に、ギガフロートとギガフロート付近にいる皆さまは全員避難してください。この警告をしたにもかかわらず、避難を行わなかった者には、私とともにこの軌道エレベーターを運命を共にしていただきます。どうか、早急な避難をお願いします」
メッセージが終わると同時に映像データが自動的に消滅する。
同時にモニターには2時間に設定されたタイマーが表示され、カウントダウンが開始された。
「宇宙エレベーターに動きあり!テザーの強制排除が始まっています!」
「奴は本気か…!」
人工衛星から撮影された宇宙ステーションの様子がモニターに表示され、かつて勇太たちが宇宙漂流しかけたときのように、テザーが外れていくのが見えた。
前と異なるのは、一気にすべて外れていくのではなく、1つずつ順番に外れていっていることだ。
「計算結果が出ました!テザーの強制排除から重力などを計算したところ、宣言通りに宇宙ステーションは2時間後にこのギガフロートに落下します!」
「ただちにギガフロートにいる全員の避難を開始しろ!急げ、2時間しかないぞ!」
「了解!」
ハレヴィとクロスロードが敬礼の後で制御室を後にし、ジニンは勇太たちを見つめる。
「君たちも急ぎ避難をしてくれ」
「そんな…僕たちは…!」
「仮に失敗すれば、君たちもまた宇宙ステーションの落下に巻き込まれる。死の危険がある以上は…」
勇太たちの助力に応じたのは、あくまでも彼らが死ぬ可能性が著しく低い範囲で得られるものであったためだ。
だが、これから勇太たちが向かおうとしているのは敗れると命の保証のない死地。
そこに素直に送り出せるはずがない。
「我々の役目は人々を守ること。その守るべき人を見捨てること、守れぬこと、死地へ送ることは我々にとって、恥なのだよ」
FBIとして数多くの事件にかかわり、その中で数多くの犠牲者を見てきた。
それゆえにこれ以上の領域に踏み込むことをジニンは許せない。
「ジニンさん…。あなたの言いたいことはわかる。でも…僕は負けず嫌いでね、挑戦状を送ってきた相手を無視することなんてできないんだ」
「ウィリアム…だが…」
「それに、まだ日本でいう禊ってのが、済んでない気がしてさ」
ウィルの脳裏に浮かぶ夏の苦い記憶。
自分の行き過ぎた正義が原因で一度、軌道エレベーターを失いかけた。
その正義の犠牲になるのは自分一人でならいい。
だが、あの夏、確かに犠牲になりかけたのは自分と自分の周りの人々、そして宇宙進出の未来だった。
それを自分一人で解決できず、最後は勇太たちにゆだねるしかなかったことが今も自らの心を締め付けている。
(ま…あくまでもただの自己満足さ。それでも…ここで逃げたら、前に進めない)
「だからさ、僕は…」
「まったく、何を一人でかっこつけようとしているのかしら?だから、ドロシーさんに殴られかけたんじゃないかしら?」
「サクラ…」
「僕もだよ、ウィリアム。やっぱり…僕もファイターなんだなって、今思ったよ。命の危険があることはわかっているけれど、それでも、挑戦してきたならそれに応じたくなる。そして、自分のガンプラの方が出来栄えがよくて、強いんだと証明したくなる」
宇宙進出の未来のためでも、人助けのためでもない。
ただのファイターとしての性質として行く。
とても身勝手で、命がけの場所へ行くにはあまりにも不釣り合いな考え。
だが、それでも勇太にとってそれが行く理由だ。
「私も行く!!」
「ミサ…」
「私だって当事者なんだから…それに、勇太君だけ行かせるなんて絶対に嫌だもん!」
「ったく、となると…俺も行くって流れになるよな。ロボ太も、覚悟決めちまったしな」
「そういうことね。みんなで、終わらせましょう」
再び宇宙ステーションで戦うことを決意する6人。
彼らの様子を見て、心のどこかで希望を感じたジニンは頭を抱え、ため息をつく。
「とめても…無駄だろうな」
「そういうことさ…すまないね、ジニンさん」
規定人数を乗せたクルーズ船がギガフロートを出港し、入れ替わるように次のクルーズ船が観客たちを収容していく。
出港したクルーズ船の展望デッキにはミスターガンプラの姿があり、船内からハルが姿を見せる。
「ミスター…部屋に戻らないんですか?」
乗船してからずっと、ミスターガンプラはここで軌道エレベーターを見つめ続けている。
いくら待っても彼は一度もしゃべらず、ハルは彼の隣に立つ。
「もしかして、考えてましたか?彼らのことを」
「そういう君も、だろう?」
「ええ…なんとなくですが、思ってしまうんです。もしかしたら、彼らならって…」
「…悔しいよ。その中に、もう僕が入る余地がないということがね…」
「ミスター…」
ミスターガンプラの拳に力がこもっているのがハルの目に入る。
ウィルのことがあって引退したとはいえ、彼もまたファイターであることは変わりない。
そして、あの夏のように戦いたかったのかもしれない。
「信じているよ、みんな…勝利を」
機体名:アルケーガンダムライズシザース
形式番号:GNW-20003TO
使用プレイヤー:凜音桜
使用パーツ
射撃武器:GNバスターソード・ライフルモード
格闘武器:GNバスターソード
頭部:アルケーガンダムドライ
胴体:アルケーガンダムドライ
バックパック:オーライザー
腕:リボーンズガンダム(ツインドライブはオーガンダム、エクシアのものに換装)(ギガンティックシザース×2搭載)
足:リボーンズガンダム(ファングラック×2搭載)
盾:リボーンズガンダム
更なる世界との戦いに備えてサクラが作成したガンプラ。
当初、バックパックはアルケードライのものだったものの、お台場でのウイルスコアとの戦いがきっかけでオリジナルのツインドライブを利用した広範囲のステルスフィールド展開および隠密戦闘をコンセプトに変更している。
理論上では、トランザムバーストの発動によって月面一体をジャミングし、フィールド内の粒子ビームを拡散させたり、GNファングのコントロールを途絶することも可能になるという。
また、万が一ジャミングに失敗したとしてもトランザムライザーへのモードチェンジも可能となっており、GNバスターソードを利用したライザーソードも使用可能。
本来であればイオリア・シュヘンベルグの追い求めていた対話のためのツインドライヴをそれとは真逆の目的で運用していることを鑑みて、サクラは機体改良においてはオーライザーと太陽炉以外はイノベイド陣営の機体のパーツのみを使用している。