「くそ…!Iフィールドブラスターが、もたない!!」
ヘイズル・ラーを両断したところでついに限界を迎えたIフィールドブラスターが折れ、もはや武器としての役割を果たせなくなったことで投げ捨てる。
Iフィールドクローも既に限界を迎えたことで強制排除しており、後ろ腰にマウントしているビームライフルで対応している。
ナイトドラゴンと合体しているドラゴニック騎士ガンダムも残存エネルギーを気に掛けるながら戦っている状態で、メガキャノンを失っているアザレアは先ほどまで使っていたトランザムを粒子残量を考えて解除している。
アルケードライに関しては左腕を被弾により失っており、GNバスターソードもない状態で右腕に残っているギガンティックシザースでどうにか応戦している状態だ。
「これでは…主殿の援護に向かえぬ!!」
「覚醒すれば、今いる3割くらいは片付けられるが…」
「それでは解決にはならないわ…それに…」
ここでこの感染したモビルスーツ達を全滅させたとしても、インレに何もできないまま敗れる可能性が高い。
覚醒した勇太でさえ、今のインレによって大きなダメージを負っている状態なのだから。
「八方ふさがり、といったところか…」
「でも、何もできないままなんて…あ…」
ブレイジングストライカーのエネルギーで覚醒する、そのことを考えたところでミサはこのパーツを受け取った時の勇太の様子を思い出す。
結局ウイルスの一件があったため聞きそびれることになったが、アザレアの強化がこのパーツの本来の目的ではないように聞こえた。
それでもそれをミサに渡した理由はわからないが、もしミサの予想が正しければ、今こそ出番に思えた。
「お願い、ロボ太、サクラさん、ウィル!何も聞かないで援護して!!」
「何も聞かないでって、何を…おい、ミサ!!」
モニターに映るアザレアを見たウィルの目が大きく開く。
コックピットが解放され、そこから飛び出したミサがバックパックとなっているブレイジングストライカーへ向かっていた。
動きを止めたアザレアへ飛んでくるビームをドラゴニック騎士ガンダムがドラゴンバスターを盾替わりとして受け止める。
「ミサ!!アザレアを捨てて何をしているのだ!」
「これを…勇太君に届ける!」
ブレイジングストライカーにとりついたミサは装甲の陰に隠れているボタンを押す。
すると、そばにあるハッチが開き、中にあるコックピットが見えた。
乗り込んだと同時にブレイジングストライカーがアザレアから分離する。
「…心得た!ウィル殿はミサを!ここは我とサクラ殿で…!」
「ったく、ミサ!途中で撃墜されても知らないからな!」
覚醒、アームド・アーマーXCが起動したセレネスデルタが変形して勇太たちへの道を阻む敵機に向けて突撃していく。
ビームライフルによって次々と撃ち抜きながら突き進み、開けた道をブレイジングストライカーが突き進む。
その動きに気付いた敵機たちは追いかけようと後ろを向くが、そのうちに複数機がドラゴンバスターとギガンティックアームで切り裂かれ、はさみつぶされる。
「追いかけたいのであれば、われらを倒してからだ!」
「ええ…これ以上、好きにはさせないわ!」
サクラの叫びとともに、虎の子の覚醒をついに発動するアルケードライ。
数多くの分身が出現し、それらが次々と敵機を襲った。
ソロモンに転落したゲーティアはコックピットへのミサイルをどうにかバックパックから取り外したバスターソードメイスの鞘で防御していた。
だが、覚醒は既に限界を迎えたことで解除されており、テイルブレードを使うとしてもそのタイミングをつかめない。
(麒麟と左文字はロスト、覚醒はもう使えない。レールガンの残弾は残り僅か。テイルブレードはまだ使えて、リミッター解除すれば、まだ戦えるけど…それでは殺しきれない)
インレの大元であるウーンドウォート・ラーとファイバーⅡ、ダンディライアンⅡ、そして外部装備であるキハールⅡ残り3機を倒しきる前に、リミッター解除の負荷と累積ダメージでゲーティアが自壊することは目に見えている。
おまけにグリモワールウイングが大きく損傷しているため、機動力が大幅に低下している状態だ。
リミッター解除の本領を発揮しきれない状態なのは明白だ。
その状態のゲーティアに向けてインレから残りのファンネルミサイルが発射される。
膨大なミサイルの雨が襲い掛かる中、そのうちの数基が側面から飛んできたビームで破壊される。
「勇太、まだ生きているな?」
「ウィリアム…それに、ミサ!」
「持ってきたよ、勇太君!早くドッキングを!!」
「ドッキングって…了解!!」
ブレイジングストライカーのみでやってきたミサの様子ですべてを察した勇太は既に限界を迎えているグリモワールウイングを分離する。
跳躍してファンネルミサイルから逃れ、上空でブレイジングストライカーとのドッキングシークエンスを開始する。
ミサの操作によってドッキングしていく中、コックピット内のミサのノーマルスーツがプラウドディフェンダーに乗っていたラクスのものへと変わっていく。
ドッキング完了と同時にゲーティアのモニターに表示される各ゲージが一気に回復していく。
それと同時にミサイルとビームの嵐にゲーティアは包まれていった。
「勇太、ミサ!」
「よそ見とは…ずいぶん余裕ですね、ウィリアム・スターク!」
インレから分離したキハールⅡ3機がセレネスデルタを襲い、コンポジットシールドブースターを手に襲い掛かる。
まだ覚醒エネルギーが残っているセレネスデルタがビームライフルと頭部バルカンで迎撃するが、次の瞬間に襲い掛かったのはキハールⅡから分離した2基のファンネルだった。
ファンネルから展開されたビームサーベルが胴体に突き刺さり、爆発が起こる。
「くっそ…ナーイフ、さん…」
かろうじてコックピットに刺さることだけは避けたものの、このダメージの影響で覚醒が解除されてしまった。
メインカメラの機能の大半を喪失も、もう撃墜されるのを待つだけ。
「…この、エネルギー反応は!?」
セレネスの状態よりも気にしていたことを確認できたウィルはにやりと笑う。
そして、その変化した反応はインレのサイコミュセンサーも捉えていた。
「この反応は…なんなのですか!?」
徐々に増大していく熱源反応はとても満身創痍な機体が放つものとは思えない。
ナジールの目に映るのはオレンジの粒子によって包まれ、ハイパーモードのように黄金の光を全身から放つゲーティア、そしてその肩に乗るミサの姿だった。
損傷個所はそのままであるが、新たな翼となったブレイジングストライカーからはオレンジ色の粒子が放たれ、武装を手にしていない状態であるにもかかわらず、その姿にナジールの本能が警戒心を最大限まで高めさせた。
「こけおどしではないですね…ですが!!」
もう戦闘が行えないセレネスを無視した3機のキハールⅡがコンポジットシールドブースターとファンネルからビームを放ち、インレからは拡散ビーム砲とビグウィグキャノンで攻撃を仕掛ける。
だが、放出されている粒子に触れたと同時にビームが消滅していき、ゲーティアは無傷の姿を見せる。
その間にゲーティアの肩に乗っていたミサは勇太によってコックピットに招かれる。
「ミサ…」
「えへへ…来ちゃった…」
真上から飛びつくような形となったミサはニコリと笑い、間近でそれを見た勇太は顔を赤く染める。
お互いにバイザーをやさしく当てて、抱きしめる形で仮想空間ごしにお互いの存在を確認する。
できればキスもできればと思ったが、今はその場合ではない。
勇太の操作によって右隣りに出現したサブパイロットシートにミサが座り、勇太は視線をインレに向ける。
「ブレイジングゲーティア…沢村勇太、井川美沙…未来を切り開く!」
勇太の宣言に呼応するようにオレンジの粒子がビームとなって周囲のファンネルとキハールⅡ、そしてインレに襲い掛かる。
プロヴィデンスが見せたような容赦のない弾幕の中でキハールⅡとファンネルが次々と撃破され、インレを構成するファイバーⅡとダンディライアンⅡをも貫いていく。
「馬鹿な!?Iフィールドとマスフレームのバリアが機能しない!?」
インレを傷つけるその攻撃が持つ熱はビームによるものではなく、太陽熱。
ゲーティアに宿る膨大な覚醒エネルギーが太陽熱に変換して撃ち出すことを可能にするほどとなっており、これではIフィールドは何の意味もない。
同時に、ゲーティア本体から放たれる光を浴びたことでインレのマスフレームの力も消滅していく。
「これほどの力…いったい、どこから!」
「そんなの…決まってるでしょう!」
飛び立ったゲーティアが接近してくるのを見たナジールはやむなくウーンドウォートを分離してその場を逃れる。
同時にゲーティアの拳がダンディライアンⅡの装甲を貫き、攻撃を受けた箇所を中心に大爆発を引き起こす。
ファイバーⅡとダンディライアンⅡを失うことになったナジールだが、コアユニットであるウーンドウォートに爆発の炎の中から飛び出した2機のフルドドⅡがドッキングし、ウーンドウォート・ラーとなる。
撃破されたキハールⅡが手にしていたコンポジットシールドブースターを2つ手にしてゲーティアに襲い掛かり、拳と刃が交わる。
「もうやめろ!!」
「やめられませんよ…なぜ、こんなところで…そこまでの力を!!」
「…あなたと、同じですよ。ナジールさん」
そのつぶやきと同時にウーンドウォートの横っ腹にゲーティアの蹴りが入り、その衝撃でウーンドウォートが側面に吹き飛ばされていき、戦艦の残骸に突き刺さる。
「主殿!!」
「ミサ!!」
ゲーティアのモニターに映るロボ太とサクラの顔、そして大きく傷ついた2機の姿。
両足と頭部、左腕を失い、右腕のギガンティックアームズのみがかろうじて動いている様子のあるアルケードライと四肢は健在ではあるものの各部からスパークが発生している状態のドラゴニック騎士ガンダム。
まだ機能しているドラゴンバスターがドラゴニック騎士ガンダムの手から離れ、ゲーティアの元へ飛んでいく。
「行って、2人とも!」
「最後の一撃を託す!」
「了解!」
「うん!!」
勇太とミサが互いにうなずき、ゲーティアがドラゴンバスターを両手で握ってウーンドウォートに迫る。
残骸から出たウーンドウォートが2本のヒートソードで分厚いドラゴンバスターの刃を受けるが、もう勝ち目がないことはだれの目にも明らかだった。
覚醒エネルギーが伝達され、太陽のような輝きを放つ刃はヒートソードを砕き、ウーンドウォートに迫る。
「やはり…ガンプラバトルでは、勝てませんか…」
真っ二つになる前にすさまじい熱によって消えていくウーンドウォートの中で、観念したかのようにナジールはつぶやいた。
「みんな…」
ナジールを倒したと同時に制御プログラムの権限が制御AIに復帰していくのをカドマツはノートパソコンから確認し、シミュレーターから出てくる勇太たちを迎える。
全員がボロボロになってしまったガンプラを握っていて、勇太に関してはよほどの疲労のせいなのか眠っており、ウィルに背負われている状態だ。
「よくやった…本当によくやってくれたよ、お前ら…」
「カドマツさん、落下は止まったのか!?」
「ああ…確認した。制御AIも元に戻った。俺たちの勝利だ」
「勝利、か…」
「やったーーーー!!」
ミサが笑顔を見せて勝利を喜び、サクラとカドマツも喜びをかみしめる。
だが、ウィルは喜ぶを感じながらも、どこかでしこりのようなものも感じていた。
(ナーイフさん…あなたほどの人が、道を誤るなんて…)
戦っている中で感じたが、やはりナジールはウィルが知っているかつてのナーイフその人だった。
そんな彼が、希望の光のはずの彼がこうなってしまうビジネスの世界の過酷さを感じずにはいられない。
ミサがベンチに腰掛け、眠る勇太を膝枕する。
そして、カドマツとウィルは最後にやるべきことを実行する。
「制御AI、ナーイフさんは…ナジールがどこにいるかわかるか?」
(了解、全区域のサーチを開始します…)
今の制御AIはこのステーション全体を見ることは朝飯前。
軌道エレベーターを使ってここにきていて、現在エレベーターを封鎖している以上、自前のシャトルかロケットを確保しない限りは脱出できない。
すぐに居場所がわかるため、あとは彼を確保するだけのはずだった。
(該当の人物、なし)
「なんだと…!?」
(ステーションに該当する人物は存在しません)
「まだ…まだ終わっていません!」
「その声…ナジール!?」
(周辺宙域のスキャンを行います。周辺宙域に反応あり…RX-78-2ガンダム」
「ガンダムだって!?」
モニターに表示されるガンダムの姿にカドマツの目が大きく開く。
夏の騒動の後、ガンダムを軌道エレベーターや救助用シャトルで回収することができなかったことからステーションに保管されていた。
今回の大会の後でユニットごとに分解して、少しずつ地球へ戻される計画だった。
「もう終わりだ、ナーイフさん!これ以上、無様な姿をさらさないでくれ!!」
「それ以上は言わないでください、ウィル君…。あなたも、人の上に立つのであれば、まず優先すべきことが何か、分かっているはずです。私は…愛する人々を悪夢の未来から解放する!」
ビームサーベル替わりに搭載されている電動のこぎりであれば、テザーを切断できる。
そして、あとはガンダムでステーションを押して誘導すれば、あとは地球の引力に引っ張られて落ちるだけ。
「さあ、皆さん…。今すぐ地球へ降りてください。皆さんを巻き込みたくありません」
「巻き込みたくない…あんなことをして…」
「カドマツ…どうにかならないの!?」
「…」
自分たちの夢の象徴であったガンダムがあのようなことに使われたショック、そしてそれに対抗する手段のない今の状況で、カドマツの脳裏には何も浮かばない。
できるのは素直に地球へ降りることだけ。
だが、それはナジールの勝利を意味するだけだ。
「あれ…そういえば、ロボ太は!?」
「あいつ…どこへ行ったんだ?」
先ほどまでは一緒にいたはずのロボ太の姿がどこにもなく、周囲を見渡すが、どこにも彼の姿がない。
(制御AI!ロボ太は…)
「カドマツさん、ロボ太が…!」
サクラが指出した方向にウィルたちの視線が向かう。
そこには騎士ガンダムの装備となっているロボ太が宇宙を飛んでいた。
「皆、あきらめるのは早い!ナジールよ、すまぬが…我々の未来は…貴様の悪夢はまだ終わらぬ!」
「どういうつもりですか?そんな小さな体で何ができるというのです!?」
「どうなっているんだ…!?あいつが宇宙空間を飛べるように作ってなんていないぞ?!」
(備え付けの簡易スラスターと無重力下における姿勢制御プログラムをロボ太さんに提供しました。カドマツさんがどうしてもとおっしゃられていたとロボ太さんが…)
「あいつが…そういったのか?俺は、そんなことを言った覚えはないぞ!?」
(…ロボ太さんは、人のために嘘をつくことができるのですか…?)
そのような進化はおそらくはこの世界で最高峰のAIといえる彼女には想定できない。
一昔前に流行したAIチャットでは、人間のような自然な会話が可能となっていたが、時には事実とは異なる情報や、存在しない情報を生成してしまうハルシネーションが問題となった。
だが、それはそのAIチャットそのものが正しい回答をする仕組みではないこと、学習データの不足や得意分野、苦手分野の存在があるがためにそのようなことが起こっており、システムが意図的に起こしたわけではない。
そうしたハルシネーションは幾多の修正や学習データの提供によって徐々に減少していくものだ。
つまりはAIにうそをつく機能はなく、あくまでも間違えた情報を意図せず伝えてしまうだけということになる。
だからこそ、ロボ太のそのような嘘をつく機能など想定できるはずがなかった。
「こうなる可能性は予測できたのだ…。我々は現実の脅威に対してはあまりに無力であるからな」
勇太のような強いファイターでも、結局それはガンプラとシミュレーターの中では強いというだけ。
こうした現実に起こることに対してなんでも解決できるヒーローではない。
だが、その手助けをすることが今のロボ太が自分に命令できることだ。
「人のために作られたロボットが…人の邪魔をすることができるのですか!?」
「できる!人の過ちを止めることも、人のためなのだから!!」
ガンダムの電動のこぎりが横なぎに振るわれ、それを後ろに下がって回避したロボ太が上昇し、視界から逃れる。
「どこだ…どこにいるのです!?この…急造のコックピットモニターでは…」
操縦についてはシミュレーターと変わらないが、このガンダムのビームサーベルが電動のこぎりで代替されているように、すべての性能を再現しているわけではない。
カメラで映る範囲も原作には到底及ばず、モニターもすべて外付け。
こうしたとっさの出来事に対応できるようにできていない。
ロボ太がいるのはガンダムの後ろで、電磁スピアに電力を供給していた。
ただのトイボットが大きな機械を倒す手段は限られている。
その限られた手段をこれから実行する。
「うおおおおお!!!」
ロボ太が一直線に飛び、電磁スピアがガンダムのバックパックに突き刺さる。
そこから放出される電力がガンダムの回路をショートさせ、機能を停止させた。
次々とモニターが消えていき、非常用電源が起動するものの、あくまでもこれは脱出するためのものでしかなかった。
「そんな…馬鹿な…」
なすすべを失ったナジールのコックピットハッチが自動的に開かれる。
だが、脱出する様子はなく、あるのは無念の感情のみだ。
「すまない…私の愛する家族たち…。私は、皆に未来を…」
「ナジール殿、いや、ナーイフ殿。例えば、石油はプラモデルの原料になるそうだ。ほかにも使い道がある。だからこそ、石油が発見されたときは世界に大きな影響を与えたのだろう」
トイボットであるロボ太には浅く表面的な情報しか提供できず、どうすればプラモデルにするかまではわからない。
だが、それでもナジールに伝えたいことがある。
「あきらめずに、一緒に考えよう。みんなに光の当たる未来を。それを、一人だけで考える必要などないのだ」
「一人だけで考えるな、と…」
「そうだ。私も、それを主殿や皆に教えられた」
「あなたは…信じているのですか?そんな夢のような未来を」
「無論だ。人が未来を夢見たからこそ、私は生まれたのだから…」
「…なんとも、説得力のあるお話ですね…」
ナジールの瞳に地球が映る。
今の時間帯と座標であれば、ちょうど祖国であるスライブ共和国の国土が見える。
この宇宙から見るととても小さく見えるが、愛する人々の住まう国。
(夢みたいな未来…ですが、きっとそれが、家族が見たい未来なのでしょう…)
バチ、バチとスパーク音がロボ太の耳に届く。
バックパックを貫いた箇所で起こる爆発。
振り返ったロボ太だが、ほぼすべての電力を今の攻撃で使ってしまった彼に逃れる手段がなかった。
爆発が起こり、それによってロボ太の体が吹き飛んでいく。
それはステーションにいるミサたちの目にも映っていた。
「ロボ太------!!」
「ロボ…太…」
ミサの叫びが聞こえたのか、眠る勇太の目がかすかに開く。
そして、宇宙を漂い、どこかへと飛んでいく友達の姿が映った。
(なんとも…しくじったことか…)
飛んでいくロボ太は自分のうかつさを自嘲する。
このような事態が起こることは想定できたはずなのに。
仮に吹き飛ばされたら、このように帰れなくなってしまうことは想定できたのに。
勇太たちと関わったことで、AIとしては出来損ないになってしまったのかもしれない。
だが、それでもナジールを止めることができ、勇太たちを救えたのであれば、ロボ太には後悔はない。
(エネルギーはもうほとんどない…スラスターも、残り1基以外はだめになったか…)
ロボ太が必死に頭を動かし、地球の位置を探る。
自分の目に映る青い水の星。
それに向けてロボ太は手を伸ばす。
(主殿…ミサ…皆…)
エネルギーが切れたのか、徐々に意識が薄れていくように感じる。
その中でロボ太の目に見えたのはナジールに言った、皆に光の当たる未来の光景だった。
(あの事件の後…ナジールさんの身柄はFBIによって拘束された。NASAとJAXAがロボ太の居場所を人工衛星を使って探してくれたけど、今も居場所はわからない。きっと、見つけたとしても迎えに行くことは別問題だろう。でも、僕たちは信じる。未来の光はきっとロボ太にも照らすことを)
ため息をついた勇太はタブレット端末の電源を落とし、背もたれに身を任せて天井を見る。
あの事件から既に2年が経過した。
勇太もミサの受験を終えて大学に入っている。
そして、ロボ太に見せたかった明るい未来の一つがこれから始まる。
「そろそろだ…」
立ち上がった勇太の今の姿は黒いタキシード姿だった。
教会の扉が開き、その先には勇太とミサの両親と勇武の遺影、そしてウィルやドロシー、ツキミ、ミソラ、サクラなどのガンプラバトルでできた友人たちが祝福する。
彼らの姿を見た勇太は隣にいるミサに視線を向ける。
眼に涙を浮かべ、笑顔を見せるウェディングドレス姿のミサ。
これから一緒に未来を見るパートナーであり、妻となる彼女を勇太はお姫様抱っこをする。
(待っていて、ロボ太…。これから君と再会する未来へ行くから!)
そして、年月は流れ、未来へと進んでいく。
「このベータテスト期間が大きな勝負だな」
「ガンプラの新たな可能性、新たな未来だ…」
真っ暗な部屋の中で、スピーカーから男たちの声が聞こえてくる。
ここは仮想空間の中で、そこに入ってきたのはシャアのような浅黒い肌とオールバックをした黒いジャケットの青年だ。
青年の髪は白く染まっており、赤いサングラスをした彼は今、新たな未来の一歩を踏もうとしている。
青年は部屋の中央にあるノートパソコンにパスワードを入力する。
「中枢AI起動…GBBBB、GUNPLA Battle Blaze:Beyond Borders…開始」
機体名:ブレイジングゲーティア
形式番号:ASW-MS-00B
使用プレイヤー:沢村勇太、井川美沙
使用パーツ
射撃武器:なし
格闘武器:なし
シールド:なし
頭部:オリジナル(ユニコーンをベースとし、顔部分はバルバトスに近い)
胴体:ガンダムバルバトス
バックパック:ブレイジングストライカー
腕:ガンダムバルバトスルプスレクス(強制冷却機能追加)
足:ガンダムバルバトスルプスレクス
ゲーティアがブレイジングストライカーを搭載したもの。
アザレアの強化装備とされていたブレイジングストライカーだが、元々はゲーティアの覚醒を補助する目的のものだった。
作成してから幾度もテストを行ったものの、想定した性能を発揮できなかったことから、部分的に覚醒の行えるミサの補助パーツとして用途を変更していた。
インレとの戦闘においては武装を喪失していたが、ブレイジングストライカーによって想定をはるかに超える覚醒エネルギーの制御が可能となっており、それを太陽熱へと変換することでミサイルやビームから身を守るだけでなく、ストライクフリーダムのようなハイマットフルバーストに似た攻撃をも可能とする。
このような性能になることは勇太も想定しておらず、テストのときとの最大の違いはインレという最大の脅威の存在と、ミサが隣にいることが大きな原因と思われる。
なお、これ以降も改良を進めているものの、インレを相手した時のような性能にはいまだに達していない。