SAO~if《白の剣士》の物語   作:大牟田蓮斗

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 少し間が開いてしまいました。その上今回は.5で短いです、申し訳ない。
 前半はGGO編で割愛になった部分です。入れるかどうか迷った末に放置した部分ですね。後半は打って変わってBoB後の女子会の話です。どうぞ。


#39.5 割愛/女子

~#1:明日奈~

 

「はぁ」

 

 私はそっと安堵の息を吐いた。ここは和人君と翔君がダイブしている病室。菊岡さんにここの場所を聞いた後、できる限り急いでこの病室に来たのだ。和人君が心配で、心配で。彼は今回の死銃の件で責任を感じているかもしれないし、優しい彼のことだ、死銃に自分から突っ込むのが容易に想像できた。

 しかし予想とは違い、死銃に突撃したのはレント君だった。心配していたキリト君は《闇風》というプレイヤーの足止めに向かった。

 闇風にキリト君は押されていた。それでも岩陰から飛び出てからの攻撃で何とか相討ちに持ち込んだ。そこからは私はレント君を必死に応援した。

 レント君は無事に勝ったが、その後戻ってきた翔君は私達に目もくれずに外へと駆け出してしまった。何かあったのだろうか。

 

******

 

~#2:菊岡~

 僕は電話越しに部下からの報告を聞く。作戦の失敗の報告を。

 作戦とは、死銃の実行犯確保作戦のことだ。レント君から死銃の殺人方法についての推測を聞いた段階で、僕らは実行犯確保の計画を立てた。死銃の実行犯は被害者の家に現れるはずなので、そこで捜査員が待ち伏せするという実に簡単な計画だ。しかし、誰が死銃に狙われるかはある程度の推測はできても、確定はできない。そのため候補者全員の住所を調べ上げるのは時間的な問題でも、法律的な意味でも不可能だった。だからこそ、家主の許可が取れたレント君の自宅を待ち伏せ場所にしたのだが。

 取り調べで新川昌一が言うには、《ペイルライダー》、《ギャレット》の二人は金本が。《シノン》、《レント》の二人は恭二が殺害を行う予定だったそうだ。それぞれに予備含めて三本ずつの毒薬が渡されていたらしい。

 後に恭二からも話を聞いた。彼が言うには、《シノン》と《レント》が生き残ってしまったため《レント》の殺害は金本に連絡して頼んだそうだ。その彼はレント君の自宅には現れなかった。捜査員を見破ったのか、実際に撃たれるまでは侵入を行う気がなかったのか。

 それにしても、今回はレント君に随分助けてもらった結果になった。今回の事件をBoBで解決できなければ、VRへの忌避感が世間で更に広がってしまうところだった。そうなってしまえば日本は諸外国に技術面で遅れることとなってしまう。彼の身を守るためでもあったのだが、金銭でしかお礼ができないのが悲しいところだ。

 彼からのBoBの直後の電話も驚きだった。あの彼が息を切らしていたのも驚いたが――恐らく走りながら電話していたのだろう――、それ以上にその内容に目を剥いた。今から住所を伝えるから逮捕権を持つ人間を急いで寄越してくれ、電話口でそう捲し立てられてとても困惑したのを覚えている。

 結果から言えば、実行犯の一人であり、危険人物になっていた恭二を確保できたのはこの連絡があったからで、もう頭が下がる思いである。

 レント君はVRでの実地調査もでき、仮想世界の中で問題解決のために十分すぎる活躍ができる。少ない情報から真実を推測することに長けていて、対策を考えるのも上手い。

―――仮想課にスカウトしたいなぁ。

 そんなことを考えながら時間は流れていった。

 

******

 

~in:ALO~

 ALOのアスナの家、そこには五人の女子が集まっていた。

 その五人とは、ALOにニューデータを作ったシノン――ちなみにケットシーだ――、家主のアスナ、それからリズベットとシリカとリーファだ。シノンの歓迎会――ただの女子会――をしているところである。

 初対面のシノンとシリカとリーファが軽い自己紹介をしてから、ガールズトークに花が咲き始める。敵を銃で撃ち殺す話だったり、剣で斬り払う話がガールズトークに入ればだが。

 最初はALOの話だったり、GGOの話だったり、現実世界の話だったりと二転三転したが、結局は分かり易い共通の話題に収束していった。要するに、黒白コンビとBoBの話である。一応シノンの歓迎会だから、シノンが主役で喋るのは間違っていないのかもしれないが。

 BoB初日のキリトとの遭遇から、シノンは話し出した。ゆっくりと未だに自覚が薄いBoBの出来事を自分でなぞりながら。

 

******

 

~side:シノン~

 

「大体こんな感じよ。二人がいなかったら私の命もなかったでしょうね。凄い感謝してるわ」

 

 私はそう話を締め括った。これで満足してくれるかという淡い期待を込めて四人の顔を覗くも、案の定だった。

 

「しーののん、今、言わなかった部分あるよね?」

「シノン? 隠し事は良くないわよ?」

「シノンさん! 私達、ばっちり中継で見ちゃってますから!」

「そうですよシノンさん! し、師匠とどんな関係なんですか!?」

 

 彼女達は口々に疑問をぶつけてくる。ここからはいかに躱しきるかの戦闘だ。

 

「師匠ってレントさんのこと?」

「え、えと、色々と教えてくれたので、師匠って呼んでます」

「私もそれと同じようなものよ。レントさんには色々教わったわ」

「へぇ? 具体的に何を教わったのかしら?」

 

 取りあえずはリーファを撃ち落とす。リズベットが揚げ足を取るが、それには事実を答えれば良い。

 

「本当に色々よ。GGOのシステムに関してだとか、対人戦のコツだとか。……あの洞窟では精神的外傷(トラウマ)の乗り越え方を教えてもらったわ」

 

 全て厳然たる事実だ。最後に少し顔を曇らせることで、リズベットに追撃を躊躇させる。

 

「へえ、そうだったんですか。でもレントさんにトラウマとかなさそうですけどね」

 

 ここでシリカから思いがけず援護射撃をもらう。ここで上手く話題を変えられれば私の勝ちだ。

 

「それがそうでもないわよ。彼も結構傷ついてる人だから」

「「…………」」

「そう、だね。レント君はSAOのときのこととかもあるし……」

「へぇ、例えばどんなのがあったのよ、明日奈」

 

―――よし!

 話題を変えることに成功した。一瞬リズベットとリーファが変な顔をしたが、矛先が明日奈に向かったので私は休息を取る。

 

「それは私からはちょっと……」

「そこを、なんとか!」

「そんなに聞きたいなら本人に聞けばいいじゃない。それにこれは、彼に許可を取らないといくらリズでも話せません!」

「ちぇっ」

「でも私も気になります、()()レントさんが抱えてる過去とか」

 

 私にも火の粉が飛んできそうだったが、無事にそのポイントを抜けて女子会は続いていった。

 

******

 

 私とシリカは他の三人よりも先に席を立った。だからここからは私も後から聞かされた話なのだが、本人がいなくなった後に恋バナは活発化したらしい。

 

******

 

「ところで、二人はどう思う? シノンとレント」

「しののんはまず確定だろうね」

「あのトラウマの話のときなんて凄い顔でしたよ」

「何か、本気で想ってる、って顔だった」

「そういえばリーファちゃんもレント君だったよね?」

「いやぁ、あれを見ちゃうと……。それに私はまだお兄ちゃん諦めてませんから」

「へぇ、でもレントの方はまだ一人よ? 勝てるかもしれないじゃない」

「私にとって師匠は二人目のお兄ちゃんみたいな存在なんです! 恋愛対象じゃないですよ」

「「いやいやいや、お前が言うな」」

「それにしても、しののんは応援してあげたいよね」

「レントの奴はシノンのことどう思ってるのかしら」

「膝貸してましたし、完全に脈がないわけじゃないと思いますよ」

「ここで明日奈! あんたはキリトをどうやって落としたのよ。シノンの参考までに」

「えー、その話は……」

「何よあんた。体で誘惑したの?」

「…………」

「えっ、明日奈さん。まさかそうなんですか?」

「あっ、あれはその、向こうから……だし……」

「うーん、じゃああんまり参考にはならなそうね。ここはやっぱり王道展開かしら」

「そうですよ! ちゃんと少しずつ好感度を上げてって、タイミングを見て告白するのが一番ですよ」

「今度しののんとも作戦会議しなくちゃね」

 

******

 

 大体はこんな感じだったそうだ。私はこの日から頻繁にアドバイス――大抵は不明確過ぎて役に立たない――を受けることになるのだが、それはまた別の話。




 女子と書いて好きと読む。まあそういうことです。なんか詰め合わせで統一感のない一話になりましたね。
【朗報】
 しののん、恋に落ちた模様。

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