SAO~if《白の剣士》の物語   作:大牟田蓮斗

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 結局.5話を投稿することになってしまいました。
 今回は前回の続き、忘年会からです。どうぞ。


#42.5 忘年/年末

 ALOからログアウトした僕は、少し身支度を整えると家を出た。ヨツンヘイムから出てからもしばらくプレイしていたので、聖剣獲得からは大体一時間ほど経っている。

 忘年会をALOでやるか現実でやるかで相談があった結果、現実――例の如くダイシーカフェだ――で行うことになったからだ。

 ダイシーカフェに着くと趣のある扉には【CLOSED】の札がかかっていたが、気にせず入ってカウンター席に腰を下ろす。

 店内には誰もいなかった――閉まっているのだから当たり前か――が、すぐに奥からアンドリュー――忘れられているかもしれないがエギルの本名だ――が出てきた。

 

「おっ、レント。クエスト行けなくてすまねぇな。昼までは店閉められなくてな」

「別に気にしてないですよ。学生の予定に合わせてもらうのは社会人には申し訳ないですから」

 

 そのタイミングで扉が開き、詩乃が入ってきた。

 

「あら、ある程度集まっていると思ったけど翔さんだけ?」

「そうだね、まあみんなもそろそろ来るはずだから座って待ってなよ」

 

 そう言いつつ僕は隣の椅子を引く。アンドリューは既に忘年会の料理の仕込みに行ってしまった。

 詩乃が椅子に座るのを横目で見ながら、僕は持ってきていた大きめのバッグを開ける。

 訝し気な表情を見せる詩乃の隣で中身を出していく。と言っても、レンズ可動式のウェブカメラが四台とノートパソコンだけなのだが。

 

「それ、何?」

「ユイちゃんの端末。ちょっと手伝ってくれる?」

 

 ユイはALOでならば確実に参加できたのだが、明日から予定が入っていて確実に会えなくなる僕と明日奈のことを考えてリアルになったのだ。ユイが忘年会に参加できないのは可哀想ということでこんな器具を持ってきたわけである。

 ダイシーカフェの店内に四つのウェブカメラを死角が出来ないように設置する。ノートパソコンでそれらがきちんと接続されているかの確認を行う。

 ここで和人と直葉がやって来たので、続きは和人に任せる。僕はあくまでも場を調えるだけの役割だ。

 動作チェック中に続々と皆が集まってきたので、それぞれにこの《視聴覚双方向通信プローブ》の説明をする。これは簡単に言えば仮想の3D空間を作り上げるものだ。そこをユイは自由に移動することができ、それに応じて現実世界のカメラなんかも動いてユイに情報を伝えるという技術。ここ最近帰還者学校にて制作していたものだ。

 そちらの調整も終わり、全員が揃ったので和人が音頭を取る。

 

「それでは、ええ、今年の終わりと二つの伝説級武器の獲得を祝して、――乾杯!」

「「「乾杯!」」」

 

 あとは皆思いのままにわいわいやるだけだ。アンドリューの料理を頬張り、ドリンクを流し込む。里香と珪子はアンドリューに今日のクエストのことを身振り手振りをつけ加えて教えている。和人とユイと明日奈はこれから――たしか一週間――会えなくなるため、その分なのか甘い雰囲気を醸し出している。

 その雰囲気に弾き出された僕と詩乃、直葉、遼太郎は動画サイトに上がっていたALOのプレイ動画を眺めていた。

 

「うわぉ」

「――トンキーが無事でほんと良かった……」

「これは、地獄絵図ね……」

 

 それは今日のスロータークエストの様子で、丘巨人の眷属で地上におらず飛行していた個体の狩り動画だ。

 ヨツンヘイムでは飛行できないため手を出せないと思っていたのだが、やはり人間――妖精か――は恐ろしいものである。地上にいたものはすぐに狩り尽くされてしまったようで、僕らが三階層のボスに挑む頃には空に挑み始めたようだ。

 たくさんの妖精が組体操のピラミッドのように階段を作り――その高さは異常だ。最も高いところでは四桁に届きそうな高さがある――、そこを上ったユージーン将軍などの凄腕プレイヤーが眷属の背中に飛び乗り体力や機動力を削る。メイジや霜巨人の眷属などの力によって地上に落とし、数の暴力で一瞬で屠る。

 ヨツンヘイムの広大な大地に巨大な人による塔が出来、そこから人が飛び、魔法が飛び、落ちた怪物が一瞬で消滅する。これが地獄絵図でなくて何になるというのだろうか。本当に間に合って良かったと心の底から思った瞬間だった。

 

******

 

「それじゃ、僕はこの辺で」

 

 しばらく忘年会を楽しんで僕は一足早くダイシーカフェを後にした。

 自宅のアパートに帰ると、荷造りの仕上げをする。

 そう、明日から一週間ほど出かけるのは明日奈だけではないのだ。僕も、大切な用事の入ってしまった従兄の代わりに、養父母と共に親戚参りに京都に行かなくてはならなくなってしまった。養父母とは明日東京駅で合流する予定だ。

―――憂鬱だなぁ。

 ハァと息を吐く。

 なぜ、今まで何の関わりもなかった親戚に挨拶に行かねばならないのだろうか。そもそも養父は実母の妹の旦那なわけだから、養父の親戚とは本当に何の血縁関係もないのだ。特に、何よりも、一週間ほどの間フルダイブできないというのが本当に辛い。

 どうやら養父の実家は途轍もないエリート集団な名家らしく、そこにゲームを持っていくというのは不用意にやるべきではないと諭されてしまった。ゲームという娯楽を下に見ているため、ネチネチと嫌味を言われる可能性があるのだとか。

 結局はどんな文句を言おうとも、お世話になっているのだから行くべきなのだけれど。

―――はぁ、憂鬱だなぁ。

 僕はもう一度大きく溜め息を吐いた。

 

******

 

 そして新幹線の中である。

 車窓から外を眺めていると、養母が申し訳なさそうに言った。

 

「本当にごめんなさいね。私達だって本当は行きたくないのよ」

「……どうして?」

 

 少しつっけんどんになってしまっている。気をつけねば。

 

「ははは、翔。実はな私達は駆け落ちしたんだよ。あの家の重苦しい雰囲気が嫌いで、その上文子(ふみこ)との結婚にも反対されてね」

 

 僕の質問に養父――一仁(かずひと)が照れ笑いながら答える。文子とは養母の名前だ。

 一仁の言葉に文子が反応する。

 

「いいえ。あれは反対なんてもんじゃなかったわよ。私なんて人格から否定されたようなものよ!」

「……ああ、確かに君は当時はただの駆け出し作家だったからなぁ。――それが今や日本一の児童文学作家だ! よっ! 日本一!」

「どんなもんよ!」

 

 嫌な記憶を思い出したのか、若干不機嫌になった文子を一仁がおだてる。実際に文子は今年の上半期も下半期も児童文学作家の中でトップの売り上げを誇っているのだが。

 僕は少し引っかかったことを聞く。

 

「じゃあなんで今年は呼ばれたの?」

 

 一瞬の沈黙。

 

「さ、さぁ、ほら、そろそろ生前の最後の別れがしたくなったんじゃないかなー」

「そ、そうよ。……多分」

「いやいやいや、二人とも隠すの下手過ぎでしょ!」

 

 怪しんでくださいと言わんばかりの反応だ。僕は目線で真実を言うように促す。

 視線で行われた言葉の押しつけ合いに負けた一仁が口を開く。

 

「実はな、これは、その…………私の弟の娘の婚約相手を選ぶのが目的なんだ」

「――なるほど、義兄さんはそれが嫌で逃げたのか」

「まあ、そうなるな。あいつは立場もあるからな」

「その立場のせいで狙われてるんじゃない」

 

 義兄は東関東で最も利用されているという大手銀行のエリート社員だ。その伝手を狙われているということだろうか。

 

「へぇ、それで、その義父さんの実家ってどんなところなの?」

 

 僕は余りにも養父の実家に対しての知識がなさ過ぎる。大きな名家でエリート思考、息苦しい雰囲気で京都にある。そのくらいしか知らないのだ。流石に知らな過ぎだ。

 

「ん? まだ言ってなかったか?」

 

―――はい?

 どうやら説明を忘れていたようだ。ここで聞いていなければ教えてもらえなかったかもしれない、良かった。

 

「えーとね。一仁さんの実家は、関西圏の大手銀行会社の経営者一族なのよ。その関係で親戚筋には社長だとか、高級官僚だとかがゴロゴロ」

 

 今度の説明は文子が行うようだ。

 

「現在の当主は一仁さんのお父さんで、長男の一仁さんが出奔したから、次の当主は次男だって話よ」

「ああ、私は三人兄弟でね。一番下の弟はお前もよく知っているだろう、《レクト》の元CEOの結城彰三だよ」

「えっ…………」

 

 ここで衝撃の事実が発覚。衝撃の度合いが大き過ぎて一周回って冷静になった。

 

「婚約相手を探しているお嬢さんってのはその娘さんのことだよ」

 

―――明日奈ちゃん………………マジ?

 こうして僕は結城家の問題に踏み込んでいくことになってしまったのだった。




 キャリバーで回収し忘れていた小ネタを回収してマザロザへの導入でした。
 関西一円に力を持った地方銀行の一家からしたら関東圏の大手銀行のエリートなんて取り込みたくて仕方ないですよね、確かに。
 次回からは本格的に結城家と関わっていきます。お楽しみに。
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