SAO~if《白の剣士》の物語   作:大牟田蓮斗

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 はい! ほのぼの編です! 全編戦闘ですが!
 ユウキが生存中の#48 記憶の間の出来事ですね。はい、つまりはデュエルトーナメントです! どうぞ。


リダンダンシー編
#61 大会-緒戦


『勝者ァ、キリト選手!!』

『勝ったのは《絶剣》のユウキだぁぁ!!』

「「「アスナさーん!!!!」」」

『やはり《白い悪魔》は勝ち上がりますね……!!!』

 

わあああぁぁぁぁぁぁぁぁ

 

 ALO内の競技場。いつかの決闘場のようなコロッセオだ。そこの中は様々な声で溢れている。マイク越しに伝わる実況と解説の声、観客の歓声、声援、その他諸々が聞こえてくる。

 今この場で行われている催し物の名は『東西統一デュエルトーナメント』。わざわざ東西統一などと標榜しているが、実際はプレイヤーに東西の縛りは無いため単純に古今東西的な意味を含ませているのだろう。

 このデュエルトーナメント、簡単に言えば最強を決める大会だ。そのネームバリューは大したものでかなりの数のプレイヤーが参加する。が、最初は僕に出場する気はなかった。

 理由はいくつかある。まず単純に興味が薄かった。最強を決めるといってもそれは所詮正面戦闘だ。実際には戦闘を行う前の諜報戦や戦闘中の策も重要だと僕は考える。アルゴを知っているから特にだ。

 ま、そんなことを並べ立てたからとて、本当の理由が変わるわけではない。

 実際デュエルトーナメントなのだから、直接戦闘においての最強を決める趣旨に文句をつけるのは筋違いだろう。僕とて男だ。デュエル最強、その称号に憧れがないわけではない。

 しかし、しかしだ。最近は収まってきたが、一時期はチートだと騒がれた者が優勝を獲って良いのだろうか。最近は自重しているが、ただでさえ恨みを買い易いプレイスタイルなのに目立つこと――レイド潰しは大目に見てほしい――は避けなければならない。

 そう、要するに勝手に我慢して勝手に拗ねていただけである。

 我ながら情けないことだとは思うが、リアルによく似たアバターである弊害だと諦めてもいた。

 それがなぜ出てきたのか。簡単な話だ。そんな諦めを許してくれるほど、ユウキは物分かりが良くなかった。

 彼女にせがまれ、いつもの皆も困ったような、それでいて期待するように微笑むのだ。あれから逃れられるはずもない。

 そういうわけで結局トーナメントに出て、結果勝ち進んでしまっているのだ。

 予選から始まり、二日に渡ったトーナメントももう終盤だ。予選とは比べ物にならない数の人が観客席を埋めている。

 出揃ったベスト八。コロッセオに似つかわしくない電光掲示板には八つの名前が入ったトーナメント表が表示されている。

 八つのプレイヤーネームは左から、《キリト》《アスナ》、《クライン》《ユウキ》、《ディラン》《リーファ》、《レント》《ユージーン》だ。……見事に知り合いばかりである。だがそれもまた必然か。キリトやアスナ、ユウキ、ディラン、ユージーンは充分な実力を備えている。それにこのデュエルトーナメントは正面戦闘、それも地上戦――翅を使うことは可能だが高く飛び上がれないような高度限界が存在する――なため、SAO上がりで正々堂々のタイマン戦に強いクラインにはかなり有利な環境だ。そしてそれはリアルで剣道の強豪であるリーファにも同じこと。リーファは相手も良かった。

 同様に参加していた他の皆は、リズとシリカはベスト六十四、エギルは三十二、シノンは十六まで進んでいた。リズ、シリカは正面戦闘が本領ではないし、エギルもタンク職で大振り専門なところがある。シノンはとても惜しかった。本来後衛である彼女だが、驚異的な見切りと皮一枚で避ける回避力、近接戦闘で相手の動きを読み切る力を身につけていた。弓でベスト十六まで勝ち抜いた彼女は多くの注目を集めていたが、ユージーンに惜敗したのだ。それでもかなり削ったのだから大したものだ。

 昼休憩が終わった今、準々決勝の一試合目、キリトVSアスナが始まろうとしていた。

 ……キリトはSAO以来、滅多なことでは二本目の剣を抜かない――と言うわりにはダンジョン戦ではよく見る気がするが――。その自己ルールに従って彼は一本の黒い剣を構えている。対するアスナはALOでの後衛スタイルを捨て、SAOのように細剣を騎士の如く構えている。

 デュエル開始の合図。同時に二人は駆け出し、一合目を交わす。キリトの斬り上げとアスナの突きがかち合い、金属の音が高く鳴った。

 その音が発されるか否か、二人は既に数合を交わしている。アスナの高速の突きに本来であればキリトは速度で劣るが、先読みと片手剣の厚みを活かして防御して剣身に突きが直撃する。

 たとえ戦闘中に武器が壊れたとしても試合は継続される。試合後になれば試合前の状態にデータが復元されるため武器は戻ってくるが、武器破壊があればその試合は負けたも同然だ。試合中にウィンドウは開けないのだから、次の剣を既に装備していない限り素手で戦うこととなる。それを考えると剣で受けるしかない現状はキリトにとって好ましくなかった。

 そこでキリトは敢えて一歩下がる。アスナもその程度で体勢を崩すような剣士ではないが、細剣使いの彼女は片手剣のソードスキルを完全に把握しているわけではない。キリトの足の形、体勢がソードスキルの起動モーションになっていることに気づくのが一呼吸分遅れた。キリトのソードスキルの間合いから抜けられないと察したアスナは前転してキリトの脇を抜けようとする。そこにキリトが突き出してきた片手剣にブーツを合わせて反動で跳びすさった!

 ソードスキルを警戒しつつもそれをブラフとして用いるキリトの策を見破り、逆用して間合いから離れる。ここまでならアスナの読み勝ちと言えただろう。だがそれで終わるキリトではない。

 作用反作用の法則で後ろに流れた剣がそのまま光を纏う。ソードスキルを使いこなすキリトならではの二段構えの発動準備だった。そして発動するソードスキルは突撃系。後方に跳ぶスピードと突撃系ソードスキルのどちらが速いかなど問う価値もない。

 キリトのソードスキルの斬り上げ。それをアスナは敢えて体勢を崩すことで鼻先で躱すが、その先でキリトのスキルコネクトによる足払いを食らう。キリトは《体術》のソードスキルもスキルコネクトに組み込めるようになっている。それはアスナにとっても予想外であったようで、強かに体を地面に打ちつけたアスナは驚愕の表情を浮かべる。

 キリトはそこでスキルコネクトを止め、その一瞬のディレイでアスナは立ち上がって距離を取った。最初の攻防はキリトの取りだ。

 取って取られて、攻守を目まぐるしく変えて二人の戦闘は続く。両者共に笑顔だ。だがいつまでも続くと思えた剣戟にも終わりはやって来る。

 アスナの方がHPの減りが大きく、赤色へと落ちた。対するキリトは黄色のままである。アスナは荒れた呼吸を一息で整えるとキッと顔つきを変えた。それを見てキリトも真剣な表情になる。

 アスナに主導権を握らせまいとキリトが先に斬りかかる。そのキリトにアスナが選んだ対抗策は《リニアー》だった。

 初級の簡単なソードスキルにキリトは面食らいつつそれを躱すが、次の瞬間にはその脅威に気がついた。

 基本技のリニアーだが、アスナが放てば正に《閃光》とも言える一撃となる。狙いの正確さは言わずもがな。更に言えば基本技である分ディレイも短く、クールタイムなど存在しないに等しい――これらはスキル熟練度も関わってくるが――。

 回避に時間を使えば次の一撃に襲われ、回避しなければクリティカルでHPを持っていかれる可能性もある。キリトは敵わないと一歩退き、それがアスナの狙いであったことに気がついた。そう、リニアーの間合いの一歩外、そこはアスナのOSS――《スターリィ・ティア》の間合いだ。

 すかさず放たれた星型の五連撃。背面に重心が寄っているキリトに有効な手立てはない。ソードスキルのほとんどは技の構えから始まるため、押し込まれたような体勢から放てるものは少ないのだ――《神聖剣》のアレはやや卑怯な部類だ――。それでも何とか身を捻り、左肩、左肘、左腰の三ヶ所の被弾に抑える。

 しかしアスナの見せ場はそこからであった。《スターリィ・ティア》の終了モーションから一転、光を纏ったハイキックでキリトを狙う!

―――スキル・コネクト!

 体術スキルを組み込めることは先程キリトが見せている。それはアスナが練り上げたものと同じだったのだろう。だからこそあそこまで驚いたのだ。

 そのハイキックにキリトは思いきり顎を撃ち抜かれ、HPバーを数ドットまで減らす。

 アスナが放ったソードスキルはハイキックからその場で回転して踵落としまで持っていく技だ。体勢の崩れたキリトにとどめのライトエフェクトが襲いかかる!

 だがキリトもこれでは終わらない。右手首のスナップだけで剣を投擲し踵にそれを撃ち抜かせ、その隙に転がって離脱する。それを追うアスナはそのまま細剣のソードスキルに繋げようとし、しかしその動きを止めた。

 その原因はキリトの投げた剣。あれがアスナの足の下にはあった。ただのソードスキルならまだしも、スキル・コネクトの繊細さはあの程度のものでも崩れかねない。剣一振で崩れるかどうかは怪しいところだったが、キリトは見事賭けに勝ったと言えよう。

 技後硬直に襲われるアスナのHPをキリトは体術のソードスキルで散らした。

 今大会のデュエルでは敗北してもエンドフレイムになったりしてアバターが欠損することはない。あくまでも借り物のHPバーで本人のHPには傷一つつかないのだ――という設定だ――。キリトはそうでなければアスナには手を出さないだろうから、明確に二人の力量差を知れる今回のような機会は貴重なのかもしれない。

 さて、場の熱狂に一区切りついたところで二試合目が始まる……はずだった。

 

「俺には無理だ! こんな可愛い子斬れねぇ!!!」

『…………』

「…………」

 

 競技場に出てきたクラインが戦意を一切見せなかったのだ。その予想外すぎる言葉に場が白ける。瞬間、空気が弾けた。

 

「それでこそクラインだ!」

「はははははは!!!!! 笑わせてくれるぜ、本当に!!」

「ひっひっ、そ、そうだよなっ。はは、あいつに女の子が斬れるわけねぇや!!! ははは!!」

 

 ……それで良いのか、プレイヤー諸君。

 クラインのキャラクター性に、顔の広い彼の肩を持つ人も多かった。そして相手は絶世……かどうかは置いておいて女の子だ。《絶剣》とはいえそれは大きい。それにクラインでは《絶剣》に勝てない、それもまた自明であった。それらの理由が全て揃ったがためのこのムードだろう。

 結局笑いのままにクラインの不戦敗が決定した。ユウキは微妙な顔をしているが、勝ち進めたので一応納得はしていた。

 そんなこんなで一戦目からほとんど時間をかけずに三戦目に突入した。カードはディランVSリーファ。刀使い――リーファは刀のような片手剣だが――同士の戦いだ。

 今回の大会では伝説級武具(レジェンダリーウェポン)が禁止されていない。BoBと同じくレア武器を手に入れるのも実力の内ということだ。と言ってもいくら伝説級武器の数が増えた現在でも獲得した者は限られる。そしてベスト八に残った者の中で伝説級武器を使っている――持っているだとキリトとアスナもだ――のはディランとユージーンだけだ。

 ディランが使う伝説級武器、それは《翳刀(えいとう)カゲバミ》。陽光の射さない冥闇を思わせる色合いの拵。鐔は存在しないが、その代わりなのか羽根――色合いは黒だ――が三枚、三ツ葉葵の如く生えている。かつて見せてもらったときにはその羽根の根本に黒い宝玉が一つずつ填まっていた。

 質素な見た目ながらその内に秘めた力を感じさせる。競技場で対面したリーファはそれを見て唾を呑んだ。

 

「さて、風妖精(シルフ)の《速度狂い(スピードホリック)》。噂じゃ剣道の有段者らしいが、ALOはそれだけじゃ勝てねぇぞ?」

 

 鞘に入れたままの刀で肩を叩くディラン。片目だけを開き、やや偽悪的に話しかける。

 素の彼とはやや違う態度に以前から面識のあるリーファは一瞬戸惑いを見せるが、すぐにその演技に乗った。

 

「そう言う貴方こそ。かつては鳴らした影妖精(スプリガン)の最強剣士。《黒の剣士》に《白の剣士》、彼らが現れ影妖精一という看板はとうに下ろしたそうですが、領主業で随分と鈍ったのでは?」

 

 挑発的な片頬を上げた笑み。先に仕かけたディランよりも余程辛辣な内容で演技も凝っている。

―――いつの間にあんなにぐれたのやら。

 モニターを見ながら肩を竦めた僕を、同じく選手控室にいたキリトが叩いた。言いたいことは分かるのでじとっと睨んでから競技場の映像に視線を戻した。

 

「はっはっは。この俺も若い嬢ちゃんに舐められるとは落ちたもんだ! ――良いだろう。このカゲバミの錆にしてやる」

「できるものならご勝手に。私をそんな蠅叩きで叩ける虫と一緒にしないでほしいですが」

 

 ……本当に辛辣だな。言うに事を欠いて伝説級武器を蠅叩きとは。あれは完全に役に入り込んでいる。

 二人の舌戦――主にただの挑発――にたじろいでいた審判が、二人に構えるように伝える。二人は腰を落とし、リーファは片手剣を抜いて正眼に構える。ディランは鞘に入れたまま腰に置いて居合の構えを見せる。

 

「試合、始めッ!」

 

 審判の合図がどこか剣道の試合染みていたのは気のせいではないだろう。

 

「貴様の影を断つ」

「貴方に風を通す」

 

 二人がまるで決め台詞かのように言葉を交わす。その次の瞬間には剣が交わされていた。アスナの剣を目視できた者も少なかっただろうが、この二人の斬り合いを全て確認できる者は更に減るだろう。

 速度狂いと呼ばれるリーファは僕に負けてからというもの、更に速度を鍛え上げている。小回りを利かせながらホバリング状態で高速で動き回る技はその途中で会得したものだ。あの動きにおいては彼女は僕の上を行く。

 影妖精唯一の実力者、ディランはかつてそう揶揄された――無論影妖精とて実力者はいた。それが全種族に名前を知られない程度だったという話だ――。彼はいずれ僕と戦うことに備え、対高速機動とも言うべき鍛錬を積んできた。

 それは予測。ただひたすらの予測、推測、推理。していることは僕とさして変わらない。変わるのは持っている情報の量。彼は限られた情報の中で、ありうる可能性全てを推察する。そして高速で動くその残像から可能性を絞り込み、対処する。

 そう、彼はリーファが見えているわけではない。剣道有段者である分攻撃にどこか規則性のある彼女の攻撃、それを全て推測して対処しているのだ。彼の脳内では一体どれだけの情報処理が行われているのだろうか。

 更に特筆すべきことがある。それはディランの対処法だ。リーファの攻撃の全てを彼はその場で受け流している。流石に体重移動や僅かな足捌きは見せているが、大きな動きは存在しない。彼は左手に掴んだ鞘を用いて致命的な攻撃は流している。リーファは技で負けるがゆえにスピードを落とせず、無理に攻め込んで足――翅か――を止めてしまうことも許されない。

 最初に斬り合いと言ったが、それは間違いであった。

 それは風が柳を揺らす光景のようでもあり、実体の無い光の作用を追いかける影踏みのようでもあった。

 息を呑む攻撃と防御に表れる高い技巧。観客席からは声が出ない。それは、一般的なプレイヤーにはこの戦闘はディランの周りを旋風が渦巻いているだけのように見えるからであり、視認できるプレイヤーは皆が皆見入っているからである。

 この試合で初めてとなるHPの変動は唐突に起こった。

 フッと現れるリーファの姿。初めて大きく動いたディランの手には、抜刀されたカゲバミ。電光掲示板には確かに減ったリーファのHPと、無傷なディランのHP。

 ディランの居合がこの試合の初手となった。




 これからのほのぼの編、というか皆でゲーム編は副題があります。それは~伝説級武器の誘い~です(適当)。目指せ! キリト組全員レジェンダリー!(リズ涙目)
 まだ
・キリト―聖剣・アスナ―世界樹の杖・リズ―雷鎚
だけですからねー。

 それはそれとして最近戦力インフレしてきていて自分で怖い……。
 一般プレイヤー<<(越えられない壁)<<実力者
 今回の描写だとリーファですらレイド潰しうるんだよね……ガクブル。
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