補足:グレイズシェッツエ…次期主力MS開発の為に、試験的に開発された機体。
拠点制圧と拠点防御を目的としており、近接格闘能力はグレイズよりもやや強力程度のスペックしかないが、阿頼耶識システムの併用により、恐るべき威力を振るった。
四足型になったのは、新武装ライトニングボウの安定射出を狙っての部分が大。
ギャラルホルンの本拠、洋上基地ヴィンゴールヴにある、セブンスターズ専用の会議室。
そこには今、セブンスターズのトップが集結し、今後のための話し合いが行われていた。
今正装を身にまとい、議席に着席しているのは五名の男達である。
第一席に復帰したイシュー家当主であり、地球統制司令官たるガロウ・イシュー。
第二席にはエリオン家当主であり、アリアンロッド司令官たるラスタル・エリオン。
第三席にバクラザン家当主であり、総務局局長を務めるネモ・バクラザン。
第四席、クジャン家当主であり、警務局局長に就いたアリー・クジャン。
第五席、ボードウィン家当主であり、監査局局長であるガルス・ボードウィン。
「では、会議の前に新たなセブンスターズのメンバーを紹介しよう。入ってきなさい」
技術開発部で作られた車椅子上であり、また病み上がりでありながら、それを感じさせぬ重々しい声で、白髪の老人であるガロウが宣言すると同時に、会議室の扉が開かれ、二人の青年が入室し、着席している五人の前で敬礼する。
一人は金髪碧眼の美丈夫であり、残る一人は銀髪の整った顔立ちをしていた。
「二人とも、皆に名乗りなさい」
ガロウの声に応じ、二人の青年が言葉を発する。
「第六席、ファルク家当主を継承しましたグルーガ・ファルクであります。以後よろしくお願いします」
「第七席、ファリド家当主を継承致しました、マクギリス・ファリドです。どうぞよろしく願います」
短い紹介を終え、ガロウが頷くと同時に、グルーガとマクギリスは着席する。
この席次は、今回起きたマクエレク・ファルク事件に基づき、職務に不備があったとしてボードウィン家を第五席、事件を起こしたファルク家を分家より養子を迎え当主を交代させ第六席に、事件被害者であるがその根源となる不祥事を起こした責として、ファリド家を第七席としたことによって決まった。
だが、実際には名声を落としたギャラルホルンを立て直すために、最適な配置を行った結果でもあった。
無論、事前の着席する五名の談合により、通知と了承はされており、反対するものはいない。
ともあれ新たにこの場に集う七名の会議は始められる。
「クジャン殿の迅速なる対応にて、我らギャラルホルンの信用は幾分かは回復された。だが、今回の事件を奇貨とし、ギャラルホルンを本来の組織意図へと改善するべきである」
第一席として、この会議の議長を務めるガロウの言葉から開催された会議、事前の打ち合わせにより決められた議題に基づいてはいるが、いくつかの変更点や時期尚早として取り下げられたものもあったが、以下のことが決定される。
最初に決定されたのは、ギャラルホルン職員の採用基準の変更、とそれに伴う貴族枠の廃止である。
地球出身者である事を前提とし、セブンスターズ縁(ゆかり)のものを優先していたものを改め、本人の才覚と忠誠があれば出身を問わないものとした。
これまではセブンスターズ縁のものや功績者の血縁を優先する事で、外部勢力からの工作や介入を防止し、内部においてはセブンスターズの権威を確実とするための貴族枠であったが、今回の事件により、戦力として期待できない事が露呈し、逆にその弱兵を優遇するセブンスターズに恨みが溜まると判断されたのだ。
次に、警務局を廃止し各経済圏に警察権を譲渡し自治警察の設置を認める事。
その上で、外部勢力への捜査組織として情報局を新たに設置し、局長としてアリー・クジャンが就任する事もあわせて決定される。
これは、それに伴い行われる人員や設備の整理し少数精鋭による諜報活動に専門化させ、経費を削減と事前の事態察知能力を向上するための方策だ。
そして上の二つは、技術開発部を技術開発局へと昇格させ、その局長にグルーガ・ファルクが就任する事に繋がる。
これは、これまで停滞気味であった、MSを初めとする武装開発をより強力に推し進める為に必要な措置であり、その為の予算と人材を拡充させる目的を含めて、上の二つの処置が必要とされたのだ。
副局長をギザロ・ダルトンとすることも決定されたグルーガには、特に反論はない。
最後の一つは、これまでほぼ機能していなかった地外艦隊の職務を一新し、即応艦隊として再編成する事。
司令官は前任者であるマクギリスが就任する事が決められたのは、今回の事件解決への貢献と、一番苦労する部分を担当させる懲罰の両方が加味されてのものである。
加えていうならば、技術開発局の試作武装を実戦での実験をする事と、情報局との連携任務も見越しての事であった。
危険はあるが、その分今後人々の耳目を集めるであろう組織のトップになることは、己の力量を確信するマクギリスにとっては、むしろ望むところであった。
「このアリー・クジャン、新たな任を謹んで拝命しよう」
「グルーガ・ファルク、身命を賭して一任を全ういたします」
「マクギリス・ファリドたる私の、全能にて当たらせていただきます」
各々が異なる表現にて、就任の了承を表明し、今回の会議は終了となる。
この新たなる四つの変更により、ギャラルホルンはより精鋭の、強力な軍事組織としての道を歩むことになる。
その途上でどれほどの混乱が起きるとしても、彼らはその役目を果たす為に動き出す。
例え、それがギャラルホルン以外の誰もが口を揃えて、お前らは要らないと叫ぼうともその歩みは止まらないし、止められない。
魔の狼を紋章とする黄金の青年は、自らを輝かせる舞台の為に、邪の竜の紋章を持つ男は、自身の権力を浸透させるために、そして世界蛇の紋章を持つ銀の青年は、実父の目的を果たす為に、残る者たちも、使命、義務、友情、愛情を胸にこの新たな演目へと心を躍らせる。
そこには、ギャラルホルンの創設者たちの人類の守護者たる意思は、どれほどに反映されているのであろうか?
だからこそ、同じ基地内で銀髪の脚本家は、密やかに笑う。
「笛吹きどもも、悪魔も、天使も、ワシの創造物の為に踊り果てるがいい。人類はワシがワシの為に統治してやろう」と。
-マルバ・アーケイ、再起する- 完
『私の目的の為に、お前の力を貸しなさい!ヴォラク!』
『英雄は俺一人でいいんだよ、ガエリオ!』
『ソロモンの指輪、その力にひれ伏すがいい!』
次回作『熱き血潮の、カルタ・イシュー』(仮) 現在構成中
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