特に何もない素晴らしい1日だった。   作:緋月夜

4 / 14
久々にこんな早く投稿出来たかもしれない……((
地霊殿編これで完結です、中身は言ってしまうと古明地姉妹がメインですはい。
シリーズ史上初めてのあのシーンも…?

それではどうぞ。


地霊殿の場合 その2

―――地霊殿 さとりの自室

3度ノックをし、中からどうぞ、と声がかかったのでそのまま扉を開けて中へと足を踏み入れる。

中には、書斎机と、それを取り囲むように大量の本が詰まった本棚が並んでいた。

「久しぶり、ね、飛我」

と、読んでいた本を閉じ、こちらへ顔を上げて、さとりはそう言った。

「さとりさん、久しぶり」

こちらも一言挨拶を返す。

「わざわざ地霊殿まで来るなんて……あなたも物好きなのね」

くすくすと可笑しそうに笑う彼女は、本当に歳上なのか疑わしくなる、それくらい無邪気な子供のような笑顔をしていた。

「そりゃあ、私だって笑うことはありますよ」

と、こちらが何か言ったわけでもないのに考えていた事について答えられた。

だが、これは彼女の能力だ、心を読むサトリ妖怪の代表的な能力。

「さとりさんの笑う顔って、子供みたいに無邪気で可愛いなって…ちょっと見蕩れちゃいました」

と、素直に思ったことを口にした瞬間、彼女の顔が一気に紅く染まった。

「か、かかか可愛いなんて…そんな…からかわないで」

と、手にしていた本で顔を隠し、しかし目だけはちらっとこちらを覗いている。

「からかってないです、本心ですよ」

と、少し真面目に答える。

そうすると、一層彼女の顔が真っ赤に染まっていき、少し目が潤み始めていた。

「…そんな、真っ直ぐな好意で心を一杯にしてるなんて……」

心を読むことで、こちらの心に浮かべた想いをしっかりと受け入れてくれたようだ。

「…貴方が、この幻想郷の色々な人から好かれているのも…わかる気がするわ……」

「僕は、この幻想郷に住んでいる皆のことが好きです…大切な存在なんですよ」

言葉でも、心の中でも、強い想いを乗せて彼女に伝える。

「……っ…!」

そして、顔を赤く染めたまま立ち上がってこちらへとさとりが近付いてきた。

「さとりさん…?」

名前を呼ぶ、その瞬間――

 

「……えい…っ」

 

彼女が自分から抱き締めてきた。

「えっ…と、さ、さとりさん?」

思わずびっくりしてもう1度名前を呼んでしまった。

「…貴方も、私のこと抱き締めて」

「え?…で、でもいいんですか…?」

恐る恐る聞いてみると、言葉の代わりにさらに強く抱き締めてきた。

これ以上の言葉は無粋というものか、彼女がいいと言ってくれたのなら、お言葉に甘えさせてもらおう…かな。

「…やっぱり、女の子ですね」

「えっ…どういう意味よ…?」

抱き締め返し、ふと思ったことを告げる。

「いや…その、抱きしめてみると…意外と華奢で小さいんだなって」

「…あ…なるほど…」

それに、いい香りがするし、女の子の身体だけあって柔らかい。

何だか離したくなくなってしまうような……。

「飛我…1回離して」

「あ、は、はい」

パッと手を離すと、その手を握られ、さらに手を引かれる。

「ここに座って」

と、ソファに座らされた。

「えっと…次は何を…?」

目の前に立っているさとりに、そう声をかけた。

「…もう少しだけ、抱きしめさせて」

そう言ってから、彼女は再度こちらへと抱き着いてきた。

覆いかぶさるように抱きつく彼女の背中に手を回して、こちらも抱きしめ返す。

「ねぇ、飛我…」

「はい…なんでしょう」

こちらの胸に顔を埋めながら、彼女が言う。

「…私も…私も、ね…貴方の事が…好きなの」

「…あー…えっと…はい…」

どうしよう、こちらの顔も熱くなってきた。

「……好きよ…でも、あなたに私を選んでと…強要するつもりは無いわ」

「…………」

誰かを選ぶ…か、そんな事…僕には出来ませんよ。

「分かっているわ…貴方は優しいから」

ふと、顔を上げてこちらの目をじっと見てくる。

綺麗な目の色だった、薄い紫色の…アメジストの様な綺麗な瞳。

そんな目で見つめられたら、自分の全てが彼女に筒抜けになってしまっているような気がしてくる。

「…でもね、今だけは…私のわがままを受け入れて…」

そのまま、顔をこちらに近付け――軽く、触れるようなキスをした。

 

 

―――数分後。

まさに、思考停止という言葉がぴったりな程、頭の中が真っ白になってしまった。

想いを告げられ、更には唇を奪われてしまった。

彼女以上に、顔が真っ赤に染まったのが分かる。

「…ごめんなさい…いきなりキスして」

と、申し訳なさそうに謝ってくるさとり。

言葉は届いていたが、どうしようもなく頭の中がぼんやりしてしまっていた。

とくん、とくん、と胸の鼓動が高鳴る。

そして、思ってしまう。

「あ、あの……さとりさん…」

「え…あ…何?」

「もう1度…キスしていいですか…?」

彼女とのキスは、切なさを残すような儚いものだった。

このまま止まっていたら、彼女はどこか遠くへ行ってしまいそうで。

「……して…ほしい」

「…っ……」

彼女がしてほしい、と言った瞬間に、僕は彼女にキスをしていた。

触れるような、一瞬だけのキスではなく、唇同士を触れ合わせたキスだった。

互いの想いを通わせ合うように、2人はキスを交わした。

永遠のようで、一瞬のようで。

どちらからともなく、唇は離れた。

「……」

「……」

どちらも言葉を発することなく、顔を赤く染めたまま固まる。

さとりが、ソファにこちらの体を押し倒してきた。

仰向けになり、覆いかぶさるように抱きしめてくるさとりを受け入れるように、抱きしめ返す。

そのまま、二人の間に言葉は無かったが、確かにお互いの心は繋がっていた。

 

 

―――地霊殿 2階 廊下

さとりとしばらくの間抱きしめ合い、時折キスもして二人の時間を過ごした後、二人同時に眠りについた。

そして飛我が先に起き、さとりに毛布をかけて出てきた所である。

時刻は夕方、まだ帰りたくないな……。

と、そんな事を考えながらふらふら歩いていると、突如耳に声が飛び込んでくる。

「ね、ひゅーが」

ふと前を見ると、そこにはこいしが居た。

「お姉ちゃんの気持ち、ちゃんと知って受け入れてくれたんだね」

「…二人でいる時くらいじゃないと、あんなことできないよ」

と、ほぼ無意識的に顔を背けてしまった。

「それでも、ね」

こいしが、こちらの頬に両手を添えて真っ直ぐに目を合わせる。

「お姉ちゃんはね、ずっとひゅーがに会いたがってたの、ずっと想いを募らせてばっかりだったんだから」

「そ…そうなんだ…」

何だか、最近驚かされてばかりかもしれない。

「だから、ありがとね、飛我」

こいしに初めて、真っ直ぐ目を合わせて“飛我”と呼ばれたかもしれない。

姉とは違い、深く、それでいて透き通った緑色の瞳に見つめられる。

「でもねー、一つだけ不満があるの」

「え…?」

思わず聞き返す、何故なら、目の前のこいしの顔がほんのりと赤く染まっていたから。

頬に添えられた手が引き寄せられ、自然とこいしの唇に触れる。

「な…なぁ……!?」

「えへへ…しちゃった」

唇を離した後、照れ笑いしながら手を離すこいし。

「いきなり…とは」

呆然とする飛我の手を引いてこいしが、

「私の部屋、行こ」

と誘う。

この先に起きることを予想し、また胸が高鳴るのを感じつつ、こいしについて行った。

 

 

―――2階 こいしの自室

手を引かれるままこいしについて来て、入ったのはこいしの部屋。

ベッドと机と椅子のセット、クローゼット以外は特に何も無い。

「ここが、こいしちゃんの部屋?」

「そう、でも特に何も無いでしょ?」

さ、座ってとベッドを指差す。

言われた通りにベッドに腰掛ける、意外とふかふかで寝心地は良さそうだ。

「ふふーん♪やっとひゅーがを部屋に招待できたー」

「部屋に連れ込んで何する気なの……((」

とても不安ですよ僕、同時に少し期待してたりして……ます、はい。

「まぁ、ね、お姉ちゃんには先譲った訳だし……私だってひゅーが独り占めしたいもん」

と、抱きついてくるこいし。

「いい匂い…なんか、落ち着くね」

「そ…そうかな?」

こちらの胸元にに擦り寄って匂いを嗅いでは幸せそうな顔をするこいしに、思わずこちらの表情も緩む。

「それにあったかいしねー…このあったかさ、丁度良すぎて寝れちゃうよ…」

目を細め、微睡んだ様子、そんなこいしの髪をゆっくり撫でる。

「んん…気持ちいい……その撫で方好きかも」

「撫でてるこっちも気持ちいいよ、髪の毛柔らかいし、猫みたい」

「えへへー、髪は女の子の命だからねー」

気は使ってるんだよー、とニコニコしながら甘えてくる。

自分に妹が出来て、仲がいいならこんな感じなんだろうか……。

――いや、違うか。

 

「ふぁ…んんー…眠くなってきちゃったぁ」

欠伸をしながらこちらへ体を預けてくる。

「おかしいな…僕もさっき寝たはずなんだけど」

何故だろう、眠気を呼び起こされたのかな…。

「んんー…じゃあ…もう1度寝ようよ」

耳元で囁くこいし、多分それが1番だろうな…と思ってしまうのも仕方ないのかもしれない。

「あ…でもその前に……」

こいしの顔が近付いてくる、拒む必要もなくそのまま唇を重ねる。

お互い目を閉じて、唇の繋がりの感触だけを感じている。

どちらからとも無く唇を離すと、二人の唇の間には、光を受けて輝く糸が引いていた。

お互い、それに気付き照れ笑いしながらもう1度キスをし、抱きしめあって眠りについた。

 

 

―――翌日 早朝

昨日1日で、とても濃密な時間を過ごしてしまったと赤面する。

…幸せな気持ちで、心が満たされた。

来てよかったな、と心から思う飛我であった。

少し歩き、街並みの中程まで来たところで声をかけられた。

「やぁ、飛我じゃないか、久しぶりだねぇ」

振り向くとそこには、昨日姿を見た鬼の四天王の1人、星熊勇儀が居た。

「あ、勇儀さん、お久しぶりです」

「堅いよ、挨拶が」

微笑みながら、近付いてくる。

「どうだい、今度一杯やらないかい?」

「勘弁してください…あまりお酒得意じゃないんですから」

苦笑しながら、そんな会話を交わす。

また今度、と別れた後、そのまま地上へと続く穴まで移動し、地上へと戻った。

こんな日があってもいいな、と思いながら帰路についた。

 

平和な日常、彼が望んだ世界が実現されつつある。

 

 




自分はこれを書いていてほっこりしました、いいですねこういうの。
皆様には楽しんでいただけたでしょうか、それではまた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。