『完結』家族ができるよ! やったねモモンガ様!   作:万歳!

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ぶくぶく茶釜「やめてー!?!?!?!」(今回の事案要素)


事案5

 エンリ・エモットの朝は早い。

 

 ネムやゴブリンさん達、コロちゃんの食べる物の準備をしないといけないからだ。

 

 とはいえ、今日はネムがいない。あんな事があってから常に一緒にいたため少しだけ不安が募る。やはり仕方ないのだろう。

 

 朝食の準備は少しだけ楽になるかと思ったが、一人いないのは誤差である。ついでにンフィーレアや冒険者の人たちの朝食も準備をしたが慣れていたためかそこまで大変ではなかった。

 

 朝の日課が終わり、昼ご飯の準備をする頃異変……昨日ネムが出かけた時と同じようなゲートが開いていた。そして中から二人の人間?がでてきた。

 

「ただいま―お姉ちゃん! ただいまコロちゃん!」

 

 元気よく挨拶するのは妹のネム・エモットだ。今はペット?のコロちゃんに手を舐められながら擽ったそうにしている。

 

「おかえりなさいネム。失礼なことはしなかった? それといらっしゃいませ、パンドラズ・アクター様」

 

「お邪魔いたします、エンリ嬢!」

 

 いきなり入ってきたが驚きはあまりなかった。事前にメッセージという魔法で帰ってくると連絡がパンドラズ・アクター様から連絡がされていたからだ。そしてネムから話があった。

 

「えっと、これ水で濡れちゃったお洋服と、お土産! お土産は生ものは村の皆で食べてだって!」

 

「私が持っているのもお土産でございます!」

 

 アインズ様からのお土産……一体何があったらお土産を貰えるのか不思議である。確かにネムは気に入られていたが、それと濡れた服のことも気になる。

 

 

「こんなにたくさんのお土産ありがとうございます。それとネム、慌てないの。まず何があったか教えて、失礼なことはしなかった? それに今着ているお洋服はもしかして頂いたの?」

 

「……失礼なこと何て、し、してないよ! ただ一緒にお風呂に入ったり一緒のベットで眠っただけだもん、お洋服は頂いたよ!」

 

 エンリは固まった。一緒にお風呂に入って、一緒のベッドで寝た。異性と親以外で。普通に考えたらアウトだろう。だが人間ではないからセーフなのだろうか。それとももしかして村の救世主であるアインズ様はそう言う気があるのだろうか。分からないが、考える時間を妹は許してくれなかった。

 

「お姉ちゃん早く! アインズ様から頂いたお土産がさめちゃうよ! 村の皆に持っていこう!」

 

「分かったわ、ネム。だから引っ張らないですぐに行くから」

 

 素早く考えをネムに付いて行く方法にシフトする。思うのだ。アインズ様はそう言う人ではないだろうとエンリは思う。何かが重なって一緒にお風呂に入る結果になっただけだろうと、特に不安に思うことは無いはずだ。

 

 それに打算的ではあるが仮にそうであったとしてもあれだけ優しい人であればネムが不幸になることも無いだろうと考えてネムに付いて行く。後ろからはパンドラズ・アクター様がお土産を持ってついて来る。

 

 エンリはネムと話しながらだったためうしろで何かしゃべっているのを聞き取れなかった。

 

「無垢さ……いえ純真さ、素朴さゆえですか……その純真さが父上の救いになることを願います」

 

★ ★ ★

 

 ネムを帰しアウラと話をして暫く本を読んで時間をつぶしているとパンドラズ・アクターが意気揚々と帰ってきた。かなり元気そうである。

 アインズはパンドラズ・アクターからシャルティアの件で有耶無耶になっていた捕虜の件に関して報告を受けていた。

 

「それで、捕虜たちはどうするのだ?」

 

「はい、シャルティア殿から逃れた者はカルネ村の護衛にしようと思っております」

 

「護衛にするのは構わんが……」

 

 カルネ村に人間の護衛が増えるのは良い。しかし捕虜は犯罪者だったはずだ。そこが不安である。犯罪者である以上何をしでかすか分からない。

 

「以前カルネ村に来た王国戦士長を打倒するために人生を捧げた者です。強くなれるのであれば何一つ文句を言わない人物ですので表向きの護衛にはうってつきでしょう。この世界で考えれば法国を除き最強格なのですから。また彼自身求道者であり、敵わないと知りながら、シャルティア殿との再戦を望む程度には貪欲ですので裏切りの心配はないかと。また、裏向きの護衛にはコキュートス殿を指名しようかと考えております」

 

 なるほど確かにそう考えると安全に見える。それにパンドラズ・アクターが認めている以上、問題ないだろうと納得した。シャルティアと戦っているのが少し気になるが横に置いておこう。万が一があってもコキュートスが入れば安心である。問題はコキュートスが外に出る以上危険な点だろうか。それはセバスと同等であると思い直す。よりNPC達の護衛を増強しなければならないだろう。直近の課題である。

 

「次にエ・ランテルで捕虜にした者たちですが。多くの者はどうでもいいような内容でしたが一人は法国に対して恨みを抱いている存在です。友人が目の前で死んだことや、弱い頃に陵辱を受けたり、親の愛情が優秀な兄だけに向けられたことで、法国に恨みを持っているため利用可能です。そのまま捕虜にして置き、何れ活用したいと考えております。そしてもう一人――」

 

 法国に恨み……きっと法国の被害者なのだろうと同情する。親からの愛情を得られなかったことも同情に値する。自分は愛されていたと迷いなく言える。その女性の傷がパンドラズ・アクターの計画の過程で癒えることを願おう。

 

 そして一度パンドラズ・アクターの言葉が切られた。恐らくもう一人の願いは想像を絶する願いなのだろう。パンドラズ・アクターが言葉を切るぐらいなのだから。だがその言葉はアインズの予想の範疇を大きく上回っていた。

 

「母親を蘇生させたい。その願いのために街を生贄にする方向で動いていたようです、いえ母親を蘇生させる、その事だけに人生を捧げていたようです」

 

「――」

 

 呼吸していないのに息が止まった気がした。無いはずの心臓が止まったかと思った。母親に会いたい。だってそれは鈴木悟と似た願いじゃないか。生贄を捧げる。最低な行為で犯罪者に過ぎない。そんな言い訳を押しのけてその夢を目指す。アインズにはできない。できる訳がない。それ程熱い覚悟なんて持っていない。

 

 それに試したら母に怒られるだろう。だがそれでも……。きっと、その捕虜も蘇生に成功すれば。今までしてきた悪事を母親に叱られるのだろう。だが、その思いには、母親を蘇生させるために人生を捧げた覚悟には敬意を払おう。彼にとって叱られてはじめて、人生を新しく始めることができると信じて。

 

「――パンドラズ・アクター。その人物がどれほどの犯罪者だとしても、私にその報告を挙げたということは利用価値があるのだな?」

 

「はい、この世界での基準で言えば中々の強者であり、利用方法はいくらでもあります。特に外貨を得るために身分を偽らせ、私が現地で作ったアイテムを売らせる方向で活躍させようかと思っております」

 

 成程、現在のナザリックは現地の金貨などを容易に用意できない状態である。その捕虜を使い外貨を獲得するのは大きなメリットだろう。母親を蘇生させるためなら、裏切る心配がないというのも安心点だ。自分の精神状態を除けばとつくが。

 

「……そうか、ならできる限り支援してやれ。それと私が母親に会えるといいなと言っていたと伝えてくれ。すまない、少しだけ少しだけでいい、一人にさせてくれ」

 

 そう言って会話を終わらせた。静かにパンドラズ・アクターは退出するのを見届けてから呟く。他の人物を生贄にして蘇生させようとするなど、言語道断だろう。しかし、それでも否定できなかった。もし自分が同じ立場だったら……そう考えてしまう故に。

 

「母親の蘇生か……羨ましいよ。この世界ではそんな願いが持てるんだから」

 

 悲しかった。無性に。泣きたかった。泣けない体が恨めしかった。大声を出して悲しみを表現したかった。だが沈静化が邪魔をして何もできない。何度も繰り返してるうちに思う。何故だか人の体温、心臓の鼓動を聞きたいと思った。自分が無くしてしまった物だからだろうか。先日一緒に眠ったネムの温かさがとても切なく思い出された。

 

(邪魔だ、沈静化は。重要なスキルで自分を助けてくれるのは分かる。ないと困るのもわかってる。だがこの先のことを考えれば……星に願いを(シューティングスター)に願ってでも人間に変身できるようにするべきかもしれない、今俺が抱いている感情を忘れてしまう前に)

 

 今自分が抱いている感情をなんと表現すればいいかは分からない。だがこの感情は捨ててはいけないと思う。忘れてもいけない、理解しなければならないと強く思う。アンデッドのままでは忘れてしまいそうで怖い。そんなことを考えながら悶々とした時間を暫く過ごした。

 

☆ ☆ ☆

 

 

「パンドラズ・アクター、先程は醜態を見せた。すまなかったな」

 

「いえ、構いません」

 

 1時間程度した後、冷静になったと信じてアインズはパンドラズ・アクターを呼んだ。軽く頭を下げるとパンドラズ・アクターから先程の続きの話を切り出された。

 

「では今後に関してなのですが、できれば早急にカルネ村の村長や奥様方を招待ください。ネム嬢などの主だったものも招待すべきです」

 

 まだ少しだけ母に似た人にパンドラズ・アクターをみられるのは恥ずかしい。だがそれ以上にカルネ村に固執している理由が気になった。カルネ村はどこにもあるような村に過ぎない。それなのに固執する理由は自分の妄執しかないと思うからだ。そんなことでナザリックの行き先を決めていいと思えなかったからだ。だから聞かずにはおれなかった。

 

「パンドラよ、それは構わぬが、一体どのような計画を考えているのだ? 私の妄執に付き合う必要はないのだぞ? それは本当にナザリックの益になる事なのか? コキュートスを護衛にする点を含めてだが……」

 

「はっ。ではまず、状況からお話しさせて頂きます。まず第一になのですがカルネ村は王国戦士長暗殺の場となる場所でありました。そして王国の貴族が一枚噛んでいたのは武器を奪われていたこと等から明白でしょう」

 

 沈静化が起きないほどのちりちりとした不快感が募る。ガゼフという男にも……それ以上に貴族に対して。ガゼフはまともだったからだ。立場が異なれば友になる事を望んだだろう。その道は分かたれたが、あの男の人となりは認めている。罠に嵌められながらも必死になって村を救おうとしていたことに関しては認めている。暗殺事件を回避できなかったことは許せないが。

 

「そのため恐らくですが王国戦士長の報告の仕方次第でですが、カルネ村は貴族たちに謀殺されるでしょう。」

 

 くそが。くそがくそがくそが。弱い物を殺して口を封じるつもりなのだ王国は。許せないそんな国、滅んでしまえばいい。滅ぼしてしまいたい。だが自分は動けない。下手に動けば法国やシャルティアと戦ったまだ判明していない強者にやられかねないからだ。ナザリックを私情で危険に晒してしまう訳にはいかない、絶対に。手遅れかもしれないがそう思う。

 

 だが確信がある。きっとその時が来てしまえば自分は救いに動いてしまうだろうと心の奥底で思ってしまっていることを。

 

「そう言った点を考慮して、表向きの護衛を用意していて時間稼ぎをさせている間にセバス殿に王国で苦しんでいて、尚且つ父上の正体を知っても普通の対応ができるものを探します。父上の正体に関してはある程度の妥協は必要ですが、最終的には人口を増やした後にあの村には王国に対して革命を起こさせます」

 

「革命、だと」

 

「はい。革命によりカルネ村の名前を改めさせアインズ・ウール・ゴウン国、若しくはナザリック国の名称にして至高の御方々を探すための目印としての特徴を作ろうと考えております」

 

 ……成程、カルネ村を護衛しつつナザリックを危険に晒さないための手段か。恐らくカルネ村の件はパンドラズ・アクターが骨を折ってくれたのだろう。自分の妄執とナザリック両方を救える方法を導き出してくれたのだろう。感謝しかない。

 

 そしてその方法は確かに有用だ。我々が常に陰に徹して情報収集などし革命を起こさせることで強者のあぶり出しを図るのだろう。だが思う。それは彼女が危険に晒されるのではないかと。幾ら表向きの護衛がいたとしても危険ではないだろうかと。

 

「革命を起こさせるのは分かった。だが誰を旗頭にするべきなんだ? 余り言いたくないが彼らは無学の農民に過ぎないんだぞ? それに……彼女は安全に過ごせるのか?」

 

「その点に関しては、ンフィーレア・バレアレを革命軍のリーダーに。それとネム嬢にも革命軍の象徴になっていただこうと愚考しております。子どもが国に対する不満や不正を糾弾する。時と場合を整えればそれだけで王国を滅ぼすことが可能です。後は帝国も巻き込んでしまうかとも考えております。その点はもう少しお時間を頂きたいと思います。また護衛に関してなのですが先程は言いそびれましたが、アルベド殿やデミウルゴス殿と話し合った結果で、コキュートス殿に裏向きの護衛をお願いしようと考えておりますので、問題ないかと」

 

 コキュートスが護衛する。成程、彼は武人としての側面もある上、護衛としての任務なら手を抜かないだろう。万全を期すのであれば守護者最強のシャルティアだが、性格的に少々不安である。よって人選は適任と言えるだろう。そう言ったことも考えているのであればアインズから異存はない。NPCを外にだすのは少し恐怖を覚えるが、大丈夫だともう一度思い直す。パンドラズ・アクターに任せていれば問題ないだろうと。

 

「分かった、委細はお前に任せる。任せたぞ?パンドラズ・アクター」

 

「お任せください、父上! 必ず結果を出して見せましょう!」

 

 最近はパンドラズ・アクターの行動で沈静化が起きる率が少なくなってきた。つまり慣れたのだろう。良いかは分からないがいい方向であると考えよう。そして先ほど言い忘れていたことをいう。

 

 母親を蘇生させたいと願っている捕虜の件について。

 

「先程、母の蘇生のために命を懸けている者がいると言っていたな……ナザリックに対する働き次第でペストーニャを派遣して蘇生させてやれ」

 

「はっ! 畏まりました!」

 

 敬礼が出ているがもう突っ込むのも疲れたから黙認しているアインズであった。何より今はその捕虜が母親と再会できることをただ願おう。自然に目を閉じて何かに祈りながら。

 

★ ★ ★

 

 モモンガが眠れないながらも一人で横になってる時間、パンドラズ・アクター主催で階層守護者全体の話し合いがもたれた。

 

 その席でアウラは少しだけ顔をしかめていた何故か分からないが……いや本当は分かってる。ただ一人創造主がお隠れになっていないからだろう。単純な嫉妬だ。

 

 実際にはマーレやシャルティアを筆頭にNPC全員が多かれ少なかれ内心ではそう思ってるはずだ。シャルティアは前回の失敗があるから絶対に表に出せないだろうが。 

 

「さて、アルベド殿、デミウルゴス殿、コキュートス殿以外は、改めて御初に御目にかかります! 私、パンドラズ・アクター、宝物殿領域守護者にしてアインズ様に創造されたNPCでございます。アウラ殿、マーレ殿、シャルティア殿、以後お見知りおきを。では早速ですが、今後我々がどう動くべきか相談させてもらおうと思います」

 

「ちょっと待って、何であなたが仕切るの? こういうのは普通、守護者統括であるアルベドか、ナザリックの防衛責任者であるデミウルゴスがやるべきことじゃないの?」

 

 思わず怒りの声を出してしまっていた。アルベドやデミウルゴスなら納得できた。自分より賢いのは分かっているからだ。ナザリック運営の実質的な差配を行っており、また親交もある。しかし彼は別だ。二人に並ぶ智者とは知っている。だが二人ともここにいるのに何も言わずにこちらを奇妙な目で見てるのが癪に障る。

 

「これは失礼いたしました。実は以前3人で話し合ったことなのですがアルベド様は妃候補ですので雑事は私とデミウルゴス殿が取り仕切ろうとの取り決めがありまして」

 

「パンドラズ・アクターが内で私が外でね……ああ、アウラ安心すると良い君も妃候補だよ、もちろんシャルティアもね」

 

「えっ、私も!……良いよ続けて」

 

「妃……悔しいでありんす……」

 

 

 妃候補と言われて少しだけ嬉しい。確かにNPCで選ぶなら私かアルベド、シャルティアが妥当だろう。後は一般メイドやプレアデスたちだけだろうが。だが、アルベドの可哀そうな物を見る顔がむかつく。そしてシャルティアの泣きそうな顔が嫌な予感を助長させるが、まずはパンドラズ・アクターの話に集中する。

 

「まずアインズ様が救われた村ですが、あの村に王国に対しての革命を行わせようと考えております。そのため十分な援助をします。そしてカルネ村が建国した時の名前は『アインズ・ウール・ゴウン』若しくは『ナザリック』としたいと考えております」

 

 奇妙な沈黙が下りた。いや怒りを内包した沈黙である。至高の御方の名前を国名にする。このナザリック地下大墳墓の名前を冠する。人間たちの手によって。不快感が募るし受け入れることは到底できない。それも知識人を除いた全員が。

 

 

「え、えっとそれはちょっとやりすぎじゃ」

 

 

「ソノ通リダ」

 

 

「不敬でありんす!」

 

 

「3人の言うとおり、不敬だよ!」

 

 

 

 階層守護者が異口同音でパンドラズ・アクターを非難する。しかし当の本人であるパンドラズ・アクターの表情は変わらず、アルベド、デミウルゴスの智者二人は飄飄としているのが気にくわない。まるで想定通りと言っているかのように

 

「確かに、不敬かもしれません。いえ不敬にあたるでしょう。ですがモモンガ様の願いは世界征服の先にある、他の至高の方々と合流することです。世界征服が完了していればすぐに合流できますからね」

 

 それには4人とも驚いた。だがなるほど世界征服の目的はそれだったのだ。思わず合流できた時のことを考えて笑顔を浮かべてしまう。すぐに会議の途中だと思い笑顔は引っ込んだが。

 

「ですが世界級(ワールド)を複数所持している敵が存在していること等から考えるに、我々が表に出て世界征服をするのはリスクが高すぎます。よって代理人に目印として存在して頂こう。これが我々3人の考えであります。それともう一点こちらはモモンガ様の私事になりますが――」

 

 シャルティアを倒した危険な存在……二十の一つを持った敵は確かに危険だとアウラにも分かる。そう考えるとパンドラズ・アクターの言は正論である。だが次の言葉は予想していなかった。いや予想できるほうが異常だろう。それほどまでに予想とかけ離れた言葉だったのだ。

 

「――まだ、ここだけの話にして頂きたい。カルネ村にいる村長夫人はモモンガ様が生者であった頃、産んで育ててくださった、亡くなった母君に似ているとのことです」

 

 最初守護者たちは呆然とした。何を言っているのかが理解できなかったからだ。だがその言葉の意味を理解すると守護者たち全員が沈黙の状態になった。パンドラズ・アクターは何と言っただろうか、亡くなった母君。周りを見ると、アルベドとデミウルゴスを除いた全員の顔が、沈黙の状態から青白く変化している事が分かる。自分だってそうだ。

 

 だが一つ謎が解けた。なぜ至高の御方が人間に括るのかが。私を人間と仲よくさせるのはきっとこれが関係していると納得してしまった。なぜ命令で仲良くさせようとしないかはまだ分からない。だが自発的に仲良くできるところを見せる必要ができたのは間違いない。また恩人というのも母君のことなのだろう。

 

 そして思い出す。やまいこ様の妹君であるあけみさまのことを。彼女はエルフであった。それ故にナザリックに加入することは叶わなかった。どんなことでお二方が姉妹になったかは分からない。だがもしかしたらアインズ様も生前人間種、エルフだったのかもしれない。似たような答えを全員得たのだろう。謎が氷解するように感じる。

 

 シャルティアだけ「母性に溢れた。そういうことでありんしたか……」と寂しくつぶやいた後自分の胸を悲し気に見つめているのは訳が分からなかったが。

 

 暫くたち、全員が冷静になるのを待ってからだろう。一度咳払いをした後。もう一度パンドラズ・アクターから別の言葉が切り出される。

 

「まだ詳細は上奏しておりません。それ故に皆さんの意見をお聞きしたい。可能であれば何か至高の御方々の目印になるものを。事前の世界征服から多少変更がある以上、至高の御方々に見つけて頂かなければなりません」

 

「だったら、男の子は女の子の格好を女の子は男の子の格好をすれば、ぶくぶく茶釜様はすぐに見つけてくれると思うよ!!」

 

 場がもう一度シンとした。パンドラズ・アクターが何かを見定めるかのようにこちらを見ている。一体何を考えているのかアウラにはまだ分からなかった。ただ賢いのと何よりもアインズ様を元に考えている事は分かっている。そのため何も言わないでいた。この会談で十分に信頼を得ることができたからだ。

 

 

「なるほど、それなら一目でぶくぶく茶釜様に見つけて頂けるでしょう。ですがよろしいので?」

 

 何がとは何だろうか? これが一番ぶくぶく茶釜様に見つけて頂ける最短の方法だと誰もが分かるはずだ。何故それに疑問を呈するのかアウラには分からなかった。

 

「……何が?」

 

「確かにぶくぶく茶釜様が決めたこととして世界中に広めれば発見は容易になるでしょう。ですがお二方にとってはそれはぶくぶく茶釜様との絆になるのでは? 何よりお二人を特別だと考えて、その恰好を許されたと考えるべきでしょう。もう一度お尋ねします。本当にそれでよろしいので?」

 

 嫌だ。自分たちの特別を人間たちに許すなんて許容できない。だが二十を持つ敵の存在。何より1日も早く抜くぶくぶく茶釜様と合流するためになら認めてみせよう。またマーレに目配せしながら問に答える。

 

 

「……確かに私たちだけで独占したいよ。でもそうしたほうが早く会える可能性が高まるなら私は我慢する。我慢して見せる。後で叱られたとしても、マーレもそうだよね?」

 

「も、もちろんだよお姉ちゃん、早くお会いしたいなー」

 

 

 

 それにパンドラズ・アクターはとてもいい人物と理解できた。大きな身振り手振りだけが少し困惑してしまうがなれれば問題ない。あとマーレもぶくぶく茶釜に会えたことを想像してか顔が笑顔になっている。気が早いが咎めることは出来ない。私だってそうだろうから。

 

「よろしい! ではアインズ・ウール・ゴウン国では男の子は女の子の格好を女の子は男の子の格好を婚姻まで続ける方向で調整しましょう!! 最終的な判断はアインズ様次第ですが、何れは世界中にアインズ・ウール・ゴウンが一柱ぶくぶく茶釜様がお決めになったこととして公表いたしましょう!! このように他の方々も意見を出して頂けると幸いです? できる限り至高の御方々が一目で分かるような目印だとなおいいです!」

 

 

 シャルティアやコキュートスだけでない、アルベドもデミウルゴスも全員が思索に耽っているのが分かる。

 

 

「ムゥ……何ガ一番、武人建御雷様ニ分カッテ頂ケルカ……」

 

「ペロロンチーノ様の目印になる物……何が良いでありんすかね?」

 

「……ふむ。ウルベルト様のお好きな物……中々に難しいですね。これはアウラたちの意見が一番わかりやすい目印になりそうです。尤も我々もただ座視するわけではありませんがね」

 

「その通りね……タブラ・スマラグディナ様の目印になる物……何かいい物があるかしら……セバスや他のNPCにも意見を募る必要があるでしょうね。あとコキュートス、あなたには頼みたい事があるの」

 

 今まで沈黙を守り裏方に回っていたアルベドが発言した。妃候補である以上雑事には加わらない。私もある程度ナザリックが安定したらそうなるのだろうか、少し期待を持つが、次の会話でそんなことは吹き飛んだ。

 

 

「私が考えるに今の私たちはアインズ様の重しにしかなっていないわ。それは偏にカルネ村の立ち位置がまだあやふやだからよ。あの村には絶対に守護しなければならない人物がいる。それは分かってくれたわね? アインズ様……モモンガ様は私に自分は私情を優先する愚か者でナザリックを危険に晒していると私に漏らされたわ」

 

 

 沈黙が場を支配する。アルベドが何を言いたいか誰も分からない。いや智者二人は分かってるのかもしれないが私たちには分からない。何れは分かるようになるのだろうか。

 

「私が弾劾すればギルド長の座を降りると叡慮を伝えられたわ。分かる?」

 

 

 目を見開く。私だけでない。シャルティア、マーレ、コキュートス、デミウルゴスまでも目を見開いているそして、アインズ様に重しになってることにわなわなと震えながら自分自身に怒りを抱いている。

 

「パンドラズ・アクターの計画でカルネ村はモモンガ様の次に最重要守護対象がいる村になったわ。そして計画の上からも護衛が必要な状況よ。コキュートス、あなたには陰に隠れてカルネ村を、そしてあの方を護衛してほしいの」

 

「私からもカルネ村の陰に隠れての護衛をお願いしたい。あの御方に何かあればモモンガ様がどうなるか私には分かりません。どうかよろしくお願いします」

 

 

 アルベドとパンドラズ・アクターが同時に頭を下げるのを見守る。

 

 

 

「……分カッタ。アインズ様ノ母君ト似タ方ヲ守ル。名誉ナコトダ。全力デ護衛シヨウ」

 

「待つでありんす! 護衛任務なら、守護者最強の私こそ適任でありんす!!」

 

 シャルティアが立候補したが、上手くパンドラズ・アクター、デミウルゴス、アルベドに言いくるめられ泣きそうになっていた……可哀そうではあるが自業自得である。

 

 

 

 こうして一人の領域守護者を交えた階層守護者たちとの話は夜遅くまで続けられ、その後階層守護者たちから多くの領域守護者に話が伝わり徐々にどういった国になるかの方向性が決まっていった。

 

 

 

 めでたしめでたし。




次話更新は本編の事案ではなく、微妙に名前だけ出てきた人たちが焦点となる外伝となります。更新は来月の予定です(`・ω・´)ゞ
p.s感想あると書くスピードが上がるかもしれません(感想乞食)

クリスマスとクリスマスイブ、どっちが最終話に相応しいですか?

  • クリスマス
  • クリスマスイブ
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