今日はネム・エモットと私たち村長夫妻がナザリックという村の救世主のお住まいに招かれている。
前回もエンリは招待されていなかった。そして今回もエンリは招待されていない。今回エンリが招待されていないのは、ネムが新しい友達を作るためだからだろう。それと多分だが、ネムがいない間に彼女はンフィーレアと仲を深めるのだろう。もしかしたら若い二人が仲を深めることができるようにとの配慮で招待しなかったかもしれない。優しい方と知っているから少しだけそう思ってしまう。
不思議でもある。村長である主人が招かれるのは必然であると考えられるが、妻である私まで招かれることは村のことを話し合うと言っても少し不可解ではある。むしろ村の今後を話し合うとしても、主人だけで十分のはずである。それとも優しさゆえに一緒に招待してくださっているのだろうか?
そしていつものようにと言っていいのだろうか? ゲートが開かれる。いつもと違うのはゲートが2か所ある点であろうか? 片方のゲートから出てきたのは、よく村に来てくれるユリ・アルファというメイドの方と、以前白湯をお出ししたアルベドという方である。尤も防具ではなく目を見張るような美しいドレス姿であるが。前回の殺気があるので少しだけ恐怖を感じる。
「お久しぶりです、奥方様!」
前回は怒りと殺気を出していた人が今回は、とてもやさしげに私に話しかけてくる上に手を取ってくる。恐怖を感じるが何とか表情には出さない。そんな失礼な真似は出来ないからだ。
「では、こちらへどうぞ……私はこの少女を一旦アウラの下へ送ってきますので、いらっしゃいネム・エモット」
「はい! じゃあおじさん、おばさんまた後でね! お姉ちゃん行ってきます!」
一旦アルベドという方とネムと別れた。ネムの無邪気さには驚嘆する。恐怖を覚えていないことに、あと、ほとんど話す合間すらつかずにつれていかれて、ネムは驚いたかもしれない。いやあの調子だと驚いていないだろうか。
「では村長様、奥様、私ユリ・アルファが先導させて頂きます」
ユリ・アルファの先導に従い、小さくなりながら恐々と門をくぐる。目の前に現れたのは白亜の宮殿であった。ネムから話だけは聞いていたが……実際に見るのと聞くのでは全然違うと実感する。この宮殿の凄さに触れながら歩いて付いて行く。歩いて行くとユリ・アルファと似たような服装のたくさんのメイドたちが畏まっている。メイドたちに畏まられながらこの素晴らしい宮殿を歩く。正直に言って心臓に悪い。ただの村の村長夫妻である我々にとって荷が重すぎることだ。
部屋に入ると、それはまた、とても綺麗な椅子やグラス絨毯など高級品が惜しげもなく置かれている。座るように促され、小さくなりながら座る。本当に自分が座っていいのか、何か間違えているのではないかと感じる。飲み物を用意されるがとてもじゃないがこの状況では飲めない。
そのため戸惑っていた。とにかくも村長夫妻、特に村長夫人は戸惑っていた。
なぜ自分が救世主の黄金のような家に招かれているのかということを。
彼女の体感ではこの宮殿の主とそこまで話してはいないのだ。主に話したのは彼女の主人である村長であり、エンリ、ネムの姉妹なのだ。
一緒に招かれるのはまだ分かる。だが、王族と言ってもいいような体験をすることになるとは思ってもいなかった。ただ招くだけで王族のような体験をさせるだろうか。いやありえない。何かあるはずだと緊張する。
多くのメイドたちから頭を垂れられ、先程あったアルベド様というこの白亜の宮殿の主の側近である方が以前とは違い優しかったのだ。何かが可笑しいと感じてしまう。
不思議であった。何よりも主が出てこない。すぐに現れるかと思っていたが何故か現れてくれない。そのため感謝も述べられない。それも重荷であった。なので部屋で休ませてもらうことになった。精神的には休めないが。
小さくなりながら椅子に座って待っていると、目と口がないのっぺらぼうで帽子をかぶった存在が現れた。
「カルネ村でもご挨拶させていただきましたが、改めてご挨拶させていただきます。私、パンドラズ・アクターと申します。お二人方今後はよろしくお願いしたします」
また新しい方が黄金の部屋にやってきた。確かに村で挨拶をした片田。その方も私に対して敬意と優しさをこめているように思える。不思議であると同時に重圧を感じる。後身振りが大きく感じるのは気のせいだろうか。なぜ自分にアルベドという方や今目の前にいるような方が敬意を示すのだろうか。戸惑いを感じざるを得ない。
「あなたが戸惑っているのはこちらも把握しております。ですが、あなたは賓客であり我が主が何を犠牲にしても守ろうとしております。それに倣うのが臣下の務めです」
なぜ主人である村長ではなく、自分を何を犠牲にしても自分を守ろうとするのだろうか。せめて村ではないだろうか。守るなら。それに賓客? そこまで仲良くなっていただろうか? その事を不思議と問いかけていた。
「なぜ、私に? ただの老母にすぎない私が……」
なぜ私を守るのか。村ではなく、私にそこまでの価値はない。どちらかといえば主人である村長の方が価値が高いと思うのだが。いやこの宮殿の主からすれば、我々が住む村一つと比べても価値がないだろう。
そしてパンドラズ・アクターからお耳に入れるか最後まで悩みましたがとの前置きがされる。何か危険なことであるのだろうか。
「答えは簡単です。あなたが我が主が生者であったころ……産んで育ててくれた母君に似ておられるからだそうです」
今まで無言で控えていたメイドたちが息を呑む声が聞こえ、私自身も呼吸が止まった。同じように自分の主人も息が止まっているようだ。私が救世主の母君に似ている。驚くべきことである。ただ納得もいった。アルベドという方も、私にはかなりの礼を尽くしていたが、主人に関しては最低限の礼儀であったように見えた。この違いはそういうことだったのだろう。自分が主の母君に似ていたから敬意だけでなく優しさも醸し出していたのだろう。そして主人だけでなく私が招かれたのは優しさなどではなく、必然だったのだ。
「主はご自身の感情をただの代償行為に過ぎないと言っております。ですので、もし叶うのであればこのまま何も考えず、何も知らずに、何も聞かなかったことにして、我が主の歓待をお受けいただきたい」
だが、それを聞いたとしても、自然体で振舞うのは難しい。ここは宮殿である。ここで自然体で振舞えるのは生まれながらの王族ぐらいだろう。いや、王族でもこんな歓待を受けて自然体で過ごすのは難しいだろう。しかしその言葉は発言できなかった。パンドラズ・アクターののっぺら顔の表情で、真剣に頼み込んでいるのが分かるからだ。
「――それこそがあなたができる最大の感謝の表し方です。もしアインズ様に救われたとお思いなら、どうか何も聞かなかったことにして、自然体で主とお話しされることを願います」
自然体で過ごすことが感謝。確かに母君と重ねられているのであれば、それが一番の感謝の表し方なのかもしれない。つまり疑似的な親孝行を受けろということなのだろうか? ただ親切にされるだけと考えても、とても難しく感じてしまう。
「我々はあなたを守ります。主自身も自身を捨ててでもカルネ村を救おうとされているからです。理由はあなたがいたからです。他にも救う理由はあったでしょう。いえありました。ですが最終的にあの村を救う一番の理由はあなたです。どうかお体大切に」
それとと前置きしたうえで、さらに重要なことを話した。思いもがけないことを。あるいは当然だったのかもしれない。
「アインズ様の母君は幼いころのアインズ様をお守りして御落命されております。ですからどうか、アインズ様にあなたは……いやあなた方は守られてください」
幼いころに亡くなっている……少しだけ私に執着している理由が分かった気がする。そしていつの間にか私が重要人物になったように感じてしまう。疑似的に宮殿の主の親として存在するという重圧感を感じる。
「ここにいる者たちは全てアインズ様にとって親友の子どもたちのような者で家族です。そのため、アインズ様は命をかけてナザリックに住む者たちをお守りになるでしょう。親友たちの御帰りを共にお待ちするでしょう。ですがあなたは別格です。もし仮にアインズ様と同格レベルの存在があなたを害そうとした場合、ナザリックに所属する者を逃がして、自分一人であなたを守るために立ち向かわれるでしょう。そしてそれを私は止められません……アインズ様の気持ちを知っているが故に」
言葉にならない驚愕が顔に現れる。自分を守るために命を懸ける……。信じられないことだ。そして途中の言葉で一緒にいたメイドたちが泣いているのも分かる。ずっと表情を崩さなかった、メイドたち全員が悲し気にそれと同じぐらい嬉し気に泣いている。大事にされていると思ったのだろう。だが少しだけ違和感を感じる。家族と言ってるのに……まるで仕えることが喜びのように感じているように感じてしまう。何故だろうか。いや、このパンドラズ・アクターの言う言葉も疑問である。家族といいながら、部下のように振舞っている。不思議である。
「あなたはこの世界でとても大切な存在です。仮にですが、あなたが寿命でなくなるのは仕方ないと主は許容されるでしょう。ですが何者かに害されて殺された場合、一体何が起こるか私にも分かりません。世界のためにもあなたは長生きするべきです」
私が呆然としている間にパンドラズ・アクターと名乗った方は去っていった。ただ一つだけ変わったのは先程から傍にいる、ユリ・アルファを代表したメイドたちの表情である。先程までも素晴らしい対応であったのが変わった。
より何か間違いがあってはいけないかとより真剣になっているのが分かる。ただし顔は涙で濡れており鼻水も出ている。恐らく自身たちの主の慈悲深さに感銘を受けているのだろう。
……主人を見てみると、こちらを窺うように見ている……。どうするのかと目で問うているのだろう。ここまで聞かされた以上、可能な限りリラックスして過ごすしかないだろう。特に私は。母君と重ねられている以上、できる限り自然に振舞うのが最善策である。
そして思うのだ、以前助けられた時生前では叶えられなかった願いの一部が叶うと言っていた。恐らく。私を助けることで生前助けられなかった、本当のお母様を助けた代わりにしようと考えたのだろう。きっと本物のお母様も生きておられず無念だったろう。アインズの成長を見守ることができずに。アインズの無念も計り知れないだろう。それを少しでも晴らすことができるなら……できる限り自然体で振舞おう。
そう思っていると先程別れた、アルベドが部屋に入ってきた。まるでパンドラズ・アクターと入れ替わるかのように。そして私に対して畏まった。そうただの老母に畏まったのだ。話を聞かされていても心臓に悪い。
「……全員涙目と鼻水を止めなさい。奥方様に失礼でしょう!?」
「そんな、アルベド様が頭を下げる必要はありません!」
胃が少しだけ痛む。先ほど言った通りこの間はかなり怒ってた人だ。理由は分かる。確かにこれだけの豪華な所にお住まいの方に白湯を出すなんて失礼にあたるだろう。いや殺そうと考えていたのも分かる。なので少しだけ腰が引ける。自分に危害が加えられることは決してないと理解していても。
「いえ、この間は大変失礼しました! 改めまして私はアルベドと申します。どうかお見知りおきを。アインズ様の妻となる予定の者でございます。どうぞ楽に我が家と思ってお過ごしください。アインズ様は後で参ります」
妻となる。アンデッドは結婚は必要かは分からない。しかし、母がいたなら昔は人間種であったのだろうと推察できる。もしかしてこの人も私が母親に似ているということを知っているのかもしれない。いや知っているのだろう。やはり救世主の主の疑似的に母君として扱っていると考えるべきだろう。
少しだけ誰もしゃべらない時間ができる。その間に目を閉じて何度か深呼吸をする。ふと力を抜く。自分の中でようやくリラックスして過ごせるだけの用意ができたと思った。
それをまるで察知したかのように、アルベドから問を投げかけられる。
「教え頂きたい事があります。私はより、アインズ様と仲良くなりたいのです。どうすればいいか、ご意見を頂けないでしょうか?」
そう言われ考える。何かがずれていると……違和感はずっとあった。畏まられるのに慣れてリラックスできたからだろう。パンドラズ・アクターの言葉や以前ネムから聞いた言葉を総合して考える。違和感が浮き彫りになった。家族だ。何故、家族と言っているのに部下のようにあろうとしているのか……。
「……一つだけ、疑問に思っていることがあります」
「ぜひお教えください!」
用意されているグラスに手をかけ、一口飲み物を飲み口元を湿らす。アルベドやメイドたちも今すぐ聞かせてほしいというような感じを受ける。それらを受けながら怒らせるかもしれないセリフを呟く。
「アインズ様は……本当にあなた達の在り方を望んでいらっしゃるのですか?」
「と、申しますと?」
メイドたちを含めた全員から強い視線が集中する。旦那からは、頼むから止めてほしいというような懇願の目が届くが。私は本物の母君に似ているらしいのだ。であるならば私が代わりに指摘してあげないと、いけないだろう。それが私ができる恩返しになると信じて。
「アインズ様は、何度もあなたたちをご友人の子どもと仰られていたと人づてに聞いています。またパンドラズ・アクター様からも家族であると聞いております。ですがあなた達の態度は主従関係にあるように私は思います。違いますか?」
「はい、アインズ様は唯一このナザリックに、ただお一人残ってくだされた慈悲深い至高の御方でございます」
「そこです。アインズ様はあなたたちと家族になりたいと考えていらっしゃるのでは? だからこそことあるごとに家族であることを仰られておられるのでは? それに妃になるのであれば、それは家族なのでは? 私にはよくわかりませんが、私はアインズ様は家族を欲しているのではないかと考えます」
目の前に座るアルベドが驚愕の表情をしている。いや彼女だけではない、メイドたちを含めた全員が目が飛び出すほど大きく見開いている。実際ネムに聞いた話ではあるが、ユリ・アルファを姪のような者であると発言している以上、間違いではないだろう。何故ここに住む人たちはそんな簡単なことに気づけないのか少しだけ不思議である。
「……ですが我々はお仕えするために創造された――」
「――アインズ様はあなた方の変革を望んでいるのではないかと、思います。だからこそ、私を本当の母君と重ねて親孝行の真似をしようとしているのでは? アインズ様は恐らく孤独なんだと思います。ご友人の方々が去られ、ご友人の子どもたちが主従の壁を作っている……これは孤独ではないでしょうか?」
私の思うところは全て話した。彼女たちは全員が驚愕の表情をしているが、これが私なりの恩返しになるだろうか……? 私は本物の母にはなれない。当然である。ただ実母と似ている面を重ねられているだけ……それで救われた私、私たちが言うのも何であるが、歪である。
できれば、ここにいるナザリックの人たちが、救世主の本当の家族になってくれることを、ただ望むだけである。そうなれるように言葉は紡いだつもりだ。
それから暫くすると、アインズ様がこちらに来られた、仮面を外したアンデッドの姿で。即座に立ちあがり礼をしようとして悩む。疑似的に母親と扱われている以上どうするのが最善か悩んで……それでも礼儀を示すため立ちあがろうとしたが、しかしそれは途中で身振りで止められた。
「お久しぶりです、村長。それに奥様」
「お久しぶりです、アインズ様、今日は妻共々このような素晴らしい場所にお招きいただき感謝しております」
「ありがとうございます、アインズ様」
一旦言葉が途切れる。そして言いにくそうに発言する。
「できれば仲良くなった証に……様付けはやめてほしいと思います」
やはり先程の母君ということが真実なのだろう……主人は無理だろうが既に私は腹をくくっている。こういう土壇場においては女性の方が元々覚悟を決めやすいのだ。
「では……アインズさんと」
「……ええ、それでお願い致します」
さすがに呼び捨ては出来ない。もしかしたら、それを望まれているのかもしれないが、私はただアインズ様の母君に似た存在である老母に過ぎない。一線は守るべきだろう。周りの視線を見ると全員が笑顔を作っているが私の話のせいか少しぎこちない。だが普通であれば咎めるべきである呼び方を周りが咎めないところを見ると、黙認しているのだろう。
……私が母君と似ていることを知っていることは黙っていたほうがいいだろう。そうでなければきっとより重ねようとしてしまうだろうから。それはきっとこの方にとって良い事ではないと思う。
私や村のことだけを考えるなら、いっそのこともっと仲良くなるべきなのかもしれない。何かあれば必ず守ってくれるのだろうから。しかし、そこまで人間性は腐っていない。
なにより最初は私ではなく別の理由で村を助けてくれていたのだ。これ以上この方に集るような行為は恥ずべきことだろう。ただ今回は恩返しも含めてできる限り、普通に過ごそう。最初にパンドラズ・アクターに言われた通り、普通に過ごすべきなのだろう。後は、このナザリックに住む人たちの行動のしかた次第だろう。より私に母君を重ねられるか、ナザリックの人たちが家族になるかを。機会があれば少しだけ家族になれるように背中を押してあげようと思いながら。
★ ★ ★
アインズは柄にもなく緊張していた。いや常に緊張を強いられる支配者の役割はあるが、今回の緊張は別のことである。そう、自分が母と重ねている人と面会することである。恐らくパンドラズ・アクターを見られているのも恥ずかしいが……それ以上に自分がまともでいられるかが不安である。
まず最初の時点で名前の呼び方を変えてほしいと頼んでしまった。様付けはやめてほしいと。
意外にも村長夫人は簡単にさん付けで呼んでくれることになった。少々意外ではあるが……少し物足りなくも感じてしまう。一度だけでいい、呼び捨てで『悟』と呼んでほしいような気持ちがある。だがそれは表に出すべき感情ではないと理解している。ナザリックの支配者として。
「ネムを通して、送ったピッチャーは役に立っていますか」
「はい、おかげさまで安全な水をいつでも楽に飲めるようになりました。本当に感謝しております」
「水汲みは女性の仕事でしたから、私も楽に過ごさせてもらっています。ありがとうございます、アインズさん」
村長は以前と余り態度は変わっていない。しかし村長夫人は以前より柔らくなっているのが分かる。自分の姿に慣れてくれたのかもしれない。嬉しい事である。
(……やはり別人だ。だが似ている)
違いを探すかのように彼女を見てしまう。そして思う。本当の母との相違点は2割ぐらいしか見つけられないと思う……つまりかなりの点で似ていると思ってしまうのだ……。カルネ村革命計画はパンドラズ・アクターに全面的に一任している以上、彼女と会う機会も多いと考えると恥ずかしいが、あれだけ働いてくれているので少しは誇るべきなのかもしれない。パンドラズ・アクターはアイテムが好きだったから、折を見て何か送ろうと考えながら。その後、2時間ほどアルベドも含めて4人でできる限り普通に談笑した後、扉が叩かれる。丁度会話の種が付きかけていたので嬉しい事である。入室の許可を出すと入ってきたのは二人の子どもであった。アウラとネムである……。親しげに見えるところを見ると、狙いは上手くいったようだ。
「アインズ様! ご歓談中お邪魔いたします。それと村長様、奥様、お初に御目にかかります!私アウラ・ベラ・フィオーラと申します。アウラと呼んでください!」
アウラは自分に挨拶をした後すぐに村長夫妻に挨拶をしている。村長夫妻が目をパチクリしているのが面白く感じてしまう。
「この子もご友人の方の?」
「ええ、友人の子どもです。というよりナザリックにいるほとんどの者が親友の子どもたちです」
そう言うとアウラの耳がぴくぴくと嬉し気に動いているのが分かる。心なしかメイドたちやアルベドも嬉しそうにしているのを感じる。そして村長夫人がアウラの頭を優しく撫でているのを見守る。
「やはり、アインズさんにとってこの娘たちは部下ではなくて、家族なんですね」
……優し気に呟かれた一言に大きく頷く。たとえ彼女たちが部下でいることを望んでいるとしても、自分にとっては親友たちの忘れ形見であり、家族である。
それを聞いた後……一拍おいてからであろうか……ここにいるメイドやアルベド、冷静沈着であるユリ・アルファ等……全てのNPCが泣き始めた。最初は泣いていなかったアウラも気づけば村長夫人に身を預けながら泣いている。
「お。お前たち、どうしたんだ? 何か私はお前たちが寂しがるようなことを言ったか?」
「な゙ん゙でも゙な゙い゙ん゙でず……ただ嬉しくて……そして恥ずかしくて泣いているだけです」
代表するかのようにアルベドが返事をする。息も絶え絶えになりながら。
★ ★ ★
アルベドは少しだけ後悔していた。前回殺気を振り回したせいか若干ではあるが、村長夫人に怯えられているからだ。だが話の結果。色々有用な情報を入手できた。
主が望んでいるのは間違いなく対等で一緒にいてくれる家族だというのが、村長夫人との会話で認識できた。だが、どうすればいいのかが分からない。どうすれば家族になれるかが分からない。妃になれば家族なのだろうか?
村長夫人の言葉を聞いてしまうと違う気がする。孤独にさせてしまったのだろうか。我々の在り方が。被支配者でいることが。
(家族、家族……家族、一体どうすればなれるのかしら)
頭の中で家族へのなり方を必死に考えながら雑談にも参加する。パンドラズ・アクターが村長夫妻にも事情を話したおかげで彼女は腹を括っている様で、私以外にはとてもやさしく会話している。もちろん私にも優しく丁寧に話してくれるのは分かっているが、少しだけ恐怖を持っているのも感じる。昔の自分を殺したいレベルである。
家族になる方法は分からない。だが、以前言った通りこの方と仲良くなり、41人の壁を壊す……。恐らくそれが家族になるための必須条件だろうし、最短距離であろう。何よりも家族となりモモンガの孤独を癒す前提条件となるだろう。
何度でも言う。この方に恐怖を植え付けた過去の自分を殺したい。これでは深く仲良くなれず表面的な仲の良さで終わってしまうではないかと。その場合他のNPCたちが仲良くなってしまい、アルベドが考えていたプランを実行される可能性が高い。
そんなことを考えながら時間は過ぎる。気づけば、仲良くなったように見える、アウラとネム・エモットが合流してきた……なぜそこで二人で遊んでなかったのかと怒りを感じる。これでは村長夫人に私だけ取り入る計画が水に流されてしまうと理不尽な怒りを抱えながら。だが、先に会ったというアドバンテージを信じて、何の問題もないと信じていた。
変化は村長夫人の何気ない一言であった。いや……あるいは我々の背を押してくれるためにわざと仰られたのかもしれない。
「やはり、アインズさんにとってこの娘たちは部下ではなくて、家族なんですね」
少しだけ緊張して主を見る。この言葉次第で、主が本当に望んでいることが分かるはずだから。ここにいるNPC全員の視線が頂点に位置する方に集中して、大きく頷かれるのを見る。そして話を聞いていた全員が泣き出す。私とて例外ではない。アウラも一拍遅れて……泣き出す。よく見るとネム・エモットも雰囲気につられてか泣き出しているが余談だろう。
アインズは孤独だったのだ……我々はその孤独を癒すのではなくて、より大きくしようとしていた。泣くしかなかった。
「お、お前たち、どうしたんだ? 何か私はお前たちが寂しがるようなことを言ったか?」
「な゙ん゙で゙も゙な゙い゙ん゙で゙ず……ただ嬉しくて……そして恥ずかしくて泣いているだけです」
自分は寵愛を得たいと考えていた。今だってそうだ。だけどそれじゃ、それだけじゃダメなのだ……何がダメなのかは分からないが、このままではだめなのだ。だが、どう謝罪すればいいか、早く孤独を癒す方法が分からずに泣いてしまったのだ。ナザリックの最高の智者の一人であるアルベドでも、どうすればすぐに家族になれるかが分からないのだ……智者失格かもしれないが涙が止まらない。
時間をかければ村長夫人の力を借りれば、可能だと思うが……その場合自分ではなくて、他のNPCたちが孤独を癒すことになりそうで嫌である。最初に癒すのは私である。そこは譲れない。譲りたくない。
……あと、頭の片隅で村長夫人に慰められているアウラに少しだけイラっとしたのは内緒である。
自分より簡単に仲良くなりやがってなどとは決っっっして思っていない。
次話2週間以内に投下します。
感想や評価お待ちしておりますm(__)m
あと誤字報告いつもありがとうございますm(__)m
クリスマスとクリスマスイブ、どっちが最終話に相応しいですか?
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クリスマス
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クリスマスイブ