「それでは、王国を滅ぼすことについての細部を詰めたいと思うのですが? ジル殿?」
「ああ、構わないとも、パンドラズ・アクター殿」
あの後、何とか返事を返すことができたジルクニフは飲み物を用意させ、4騎士とフールーダ・パラダインがいる中、王国をどう占領するかの話し合いが行われた。
決まったことはカルネ村というところ以外は帝国がすべて占領していいというのだ。恐らくその村には何かがあるのだろう。今後のことを考えれば誰かに調べさせるべきかもしれないが……のっぺらぼうの顔を見る。やめておいた方がいいだろう。下手につつけば蛇がいや、龍が出てくることになりかねない。
「今回の帝国への出兵はカルネ村に住む人たちの革命を手助けするという名目で侵攻して頂きたい」
「うむ? それは構わないが、どう王国を滅ぼすのかな? 帝国全軍を以てしても全ての王国軍を撃破したうえで王国領を占領するのは難しいが?」
「その点についてはこちらも把握しております。毎年出兵することで王国の国力を弱めていることも把握しています」
こちらの作戦は知れ渡っているということか。
(フールーダがすべて喋ったか、洞察して分かったか知りたいところだが……難しいだろうな)
少しの会談ではあるがジルクニフは悟っていた。このパンドラズ・アクターという存在は自分以上の智者であるということを。
恐らくは王国の化物に匹敵する存在であるということを。
「革命の合言葉はこうです。『これ以上搾取されるのか?』 この点を持って王国兵の士気を挫こうと思っております」
「ふむ、確かに革命を起こせるほど怒りがたまっているのであるなら、士気はくじけそうだが……思考を放棄して王国兵として戦う者も多いのではないかな?」
「その点はご安心くださいというのも変ですが、魔法を使って兵士たちを操って武器を手放させそうと思っております」
なるほど。フールーダを超える
「なるほど、それなら王国は簡単に支配できそうだ。しかし我々が手伝うだけで王国の大半を頂いていい物か……少し悪い気がするな?」
「いえいえ、我々としても帝国が大きくなるのにはメリットがありますから。後はそうですね、得た税金の幾らかをこちらに回して頂けると嬉しいのですが」
なるほど、名目上は対等であるが、実質的には従属を強いる訳か。帝国としてもフールーダを超える
もしくは法国を頼るか。人間以外を悪としている法国であれば協力は可能かもしれない。
「それともう一点帝国側にお願いしたい事があります!」
さて一体何を言われるのか? 予測がつかない。
「帝国領では結婚か成人するまで。男の子は女の子の格好を、女の子は男の子の格好をして欲しいのです」
「――はっ?」
まったく、本当に予想がつかなかった。なぜそのようなことを言うのか? 変態なのか? 彼の身なりをもう一度見る。高級感あふれる衣装だ。だがそこには性別的な要素は見て取れなかった。というより彼には性別があるのだろうか?
「この事は予想外のようですね?」
「……ああ。さすがに予測できなかった。理由を聞いても良いかな?」
大きく腕を振りながらパンドラズ・アクターが熱弁する。
「ではまず我々のことを語らなければなりませんね」
我々……組織があるのか。これは法国と協力しても打倒するのは難しいかもしれない。となると大人しく従うのが良いのかもしれない。
「我々の所属はアインズ・ウール・ゴウンという物です。その中で私は、外回りを任されております。そして我々が奉ずる神が41人存在します。その中に男の子は女の子の格好を、女の子は男の子の格好をと主張している神が存在しています」
「――ほう、パンドラズ・アクター殿が奉ずる神々か」
「元は異性装をさせることで小さい子どもを災厄から守る事から端を発しています」
なるほど、そう言う意味で異性装をさせるのか。十分に納得できる理由だ。だがパンドラズ・アクターを従える神が41人もいる。
(これは敵対しては駄目だな。勝ち目がない)
今まで自分たちが王国に仕掛けてきた策略などは無駄になるが、王国の大半を支配下における……どう支配下において反乱を起こさせないか、そっちを考えたほうがいいかもしれない。
後、今まで話したことから察するにパンドラズ・アクターが奉ずる神は人間に対して悪感情を抱いていないようだ。災厄から守ろうしているのだから。
積極的に従うのが吉だろう。
「―それでは一旦私は帰らせて頂きます!! さらに細部を詰めに何度か訪れますのでよろしくお願いいたします! あとフールーダ殿!」
「はっ、何でございましょうわが師よ!」
元気よく背景に徹していた、フールーダが答える。その顔には喜色が浮かんでいた。
「あなたは良く働いてくださいました、報酬としてこちらの魔導書をお渡ししようと思います」
そういうとパンドラズ・アクターは空間からいくつかの書物を取り出した。恐らく魔導書なのであろう。
「――おお、感謝致します、わが師よ!」
「その魔導書は第7位階と第8位階の魔導書です、存分に研究にお使いください! それでは私は帰らせて頂きます!」
そういうと、入ってきたときと同じように空間に亀裂が入るように何らかの門が出てきた。恐らく転移魔法の……8位階以上の魔法なのだろう。フールーダが使えない以上そう推測できる。
そして帰るためにパンドラズ・アクターが一歩を踏み出した。ジルクニフは止めない。何故ならこれからのことを腹心たちと話し合わなければならないからだ。だからその声はジルクニフにとっても、恐らくパンドラズ・アクターにとっても予想外だったに違いない。
「――お待ち下さい。パンドラズ・アクター様」
その言葉にパンドラズ・アクターの踏み出しかけていた足が止まる。
ジルクニフは少し焦っていた。もし万が一レイナースが機嫌を損ねるようなことをしたらと。
(いや大丈夫なはずだ。レイナースが望むのは顔の呪いの除去のはず。それだけだったら怒りくるうはずもないはずだ)
表情を変えない様にしながら必死に思考を続ける。ジルはレイナースのことを知っている。それ以上のことを望むはずがない。そして人間に寛大であるパンドラズ・アクターであれば、悪い結果にはならないはずだ。
ここまでを一瞬で思考する。そして同時に思う。レイナースが万が一虎の尾を踏もうとも、我々には関係ないはずだ。特に皇帝である自分の生命は保障されている。王国を滅ぼすのに利用するのだから。むしろ、虎の尾を踏んだ時の対応を見守るべきかもしれない。
ただし他の4騎士は目に見えて緊張している。そしてフールーダは苛立っている。今すぐにでも書物を読みたいと顔に書いているが、パンドラズ・アクターを見送るまでは我慢するのだろう。
「なんでしょうか? Frau?」
「答えて頂き感謝致します。私、レイナースと申します。実はパンドラズ・アクター様にお願いがございます」
「――ほう、願いですか?」
「はい、願いです」
そういうとレイナースが髪に隠れていた顔をパンドラズ・アクターに見せる。
「この忌まわしい顔の呪いを解呪して頂きたいのです」
今まで門から振り返るように見ていたパンドラズ・アクターが初めて興味を見せたかのように振り返りレイナースに近づく。
そして何かを呟く。
「――これは、なるほど。カースドナイトですか。しかしレベル制限で60以上でなければ習得できなかったはず……面白い、面白い」
そしてその呪いをパンドラズ・アクターは直接触る。それをレイナースは嬉しそうにしている。興味を引けたことに、呪いを解除できる可能性がでたことに内心では喜んでいるのだろう。
「――呪いの解除でしたか……確かに私の手にかかれば簡単でしょう。数秒すらかかりません……ですが!?」
大げさな動作を取りながら、パンドラズ・アクターが話す。そして――
「――あなたは私に何をして頂けますか?」
その言葉を待っていたかのようにレイナースはパンドラズ・アクターに頭を下げて、心からの願いをかなえるための言葉を口にする。
「――すべてを、私のすべてを捧げます!」
「良い返答です。良いでしょう、あなたが何らかの成果を挙げれば呪いを解呪いたしましょう!」
「ありがとうございます! パンドラズ・アクター様!」
「では、当面の間ですが、フールーダ殿の補佐をよろしくお願い致します。彼も自分の実験に掛かりきりになるかもしれませんので」
「承知しました。パンドラズ・アクター様」
(最悪だ)
ジルクニフは思う。従属しようとは考えている。逆らうことに意味はないとも理解している。だがしかしこれでこちらの情報はより筒抜けになることが確定してしまった。
最も一番帝国に詳しいフールーダが裏切っている時点で、機密情報もあったものではないが……それでも、これから部下たちと話し合って、パンドラズ・アクターいやアインズ・ウール・ゴウンと関わるか決める過程も見られるのは不都合だ。
フールーダだけであれば監視の目は薄かっただろう。何より魔導書に固執してこちらを見張る作業はおざなりになったはずだ。だがレイナースは違う。しっかりと自分の価値をパンドラズ・アクターに提供するだろう。情報漏洩という形で。
だがそれがかえって、良いのかもしれない。
(逆らうことは出来ない……なら従属する過程も見せることで信頼を確保すればいい……後はなるようになれだ)
レイナースから距離を取りもう一度門の前にパンドラズ・アクターは移動する。
「――では皆様ごきげんよう! またお会いする日を楽しみにしております!」
「――ああ、こちらも次に会える日を楽しみにしているよ……本当に」
そしてパンドラズ・アクターが去る。それと同時に本がこすれるような音がする。見れば、フールーダがパンドラズ・アクターから貰った本を読みだしていた。
無駄だとは知っている。これは自分の我儘にすぎないと。だが思わず声を出してしまう。
「ジィ、いや、フールーダ、よくも裏切ってくれたな」
その言葉を聞くと、フールーダが本から目を上げる。そして自分を見ながら笑い出す。
「ふぉふぉふぉ。儂が自分より強大な
「まぁそうなんだがな……。もう少しためらいを見せてくれてもいいと思うんだが? そこに関してはどう思う?」
その問いかけににっこりとフールーダは笑う。
「無理ですな。私を遙かに超越した
言いたい事を言いきったのだろうフールーダは魔導書に視線を戻す。もうこちらには用がないかのように。
そして、不気味な沈黙がフールーダの部屋に満ちる。そしてそれを断ち切るようなレイナースの手を叩く音が。
「では陛下、フールーダ様は魔導書を読むのに忙しいようですので、王宮に戻りましょう。これから話し合う事はたくさんあるはずですので、忙しくなりますわね」
「ああ、そうだな。レイナース」
「……陛下よろしいんですか?」
バジウッドが質問をしてくる。その質問の意味の真意をジルクニフは寸分たがわず、受け取っていた。
間違いなくレイナースはこれから行われる会議でのことをパンドラズ・アクターに報告するだろう。我々が隠れて会議を行なえばその事も報告するだろう……つまり事実上彼女がいなければ会議ができない。そう、我々が裏切ろうとしていると思われてはならないのだから。
「――構わん。我々は、パンドラズ・アクター殿……そしてパンドラズ・アクター殿を従えるアインズ・ウール・ゴウンの神々に従属するのだから」
★ ★ ★
「シャルティア、貴方は本当にモモンガの側室になる気があるの?」
今現在、シャルティアはアルベドと二人でシャルティアの階層で話し合っていた。内容は今アルベドが言うように自分が伯父上の側室になるかどうかである。このサキュバスは何を当たり前のことを言っているのだろうか? というより呼び捨てで呼ぶ……自分も必ずそっち側に行く。
「もちろんでありんす! アルベド、負けないでありんすよ」
その言葉にアルベドが俯く。まるで何かを恥じるかのように……そして躊躇いがちに話し出す。
「――本当にいいのね?」
「――何がでありんす?」
アルベドが何を言いたいのか、シャルティアには全く分からなかった。至高の御方の側室になる。これ以上の栄誉はナザリックの者には無い。だからこそアルベドが何を言おうとしているのかが全く分からなかった。
「モモンガの側室になる……。つまり、あなたはペロロンチーノ様が帰還なされた時に、ペロロンチーノ様の妻になるという権利を放棄するということなのよ?」
――電流が走った。確かにそうだ。アルベドの言うとおりだ。伯父上の側室になるということはペロロンチーノと結婚することは不可能になる。
なぜ今までその事に気付かなかったのだろう。
「そ、それは……私はどうすればいいんでありんすか!?」
悩む悩む。知恵熱が出るほど悩む。だが答えは出ない。そこに優しげなアルベドの言葉がかかる。
「ゆっくりと悩むといいわ。私はあなたの考えを尊重するわ、ただしモモンガを傷つけては駄目よ」
「わ、分かったでありんす」
本当にどうすればいいのだろう。答えは出なかった。
――そしてシャルティアは最後のアルベドの表情を見落としてしまった。そう、その顔にはまるで、計画通りと書いているかのようであった。
★ ★ ★
今現在、ネムはナザリックの闘技場である第6階層に来ていた。一緒にいるのは、サトルではなく、パンドラズ・アクターである。でも信じられなくておもわず問いかけてしまう。サトルはアルベドと執務があるらしい。
「ここも本当にナザリックの中なんですか? 本当に外じゃないんですか?」
思わず間近にいるパンドラズ・アクターに問いかけてしまう。自分をまるで壊れ物のように行動させるパンドラズ・アクターに対して。
「はい! サトル様の正室であるネム様に嘘は申しません! ここは間違いなくナザリックでございます!! もう少し言うとアウラの住居がある階層でございます!」
「アウラちゃんの? ……本当だよく見ると。森がある!」
「はい! 御納得頂けましたでしょうか?」
「はい!」
元気よくネムは返事をする。そして今日ここに連れてこられたことへの疑問を、パンドラズ・アクターに投げかけた。
「今日は何をするんですか?」
「はい! 本日はネム様にレベルアップをしてもらおうと思いまして」
「? レベルアップ?」
まるで聞き覚えがない言葉だった。村長や両親、冒険者の皆なら知っているのだろうか?
「はい!レベルアップでございます。ネム様に分かりやすいように言えば強くなって頂こうと思いまして」
「? 何で強くなるんですか?」
強くなる? ネムは私には必要ないと思う。それとも必要なのだろうか? 闘うということがこれから先ネムにはあるのだろうか? ネムには分からない。ただパンドラズ・アクターの水晶のような眼を見る。
「はい、簡単に言えばネム様に不老になっていただこうと思いまして!」
「? 不老ってなんですか?」
不老とは一体何か? ネムには見当もつかなかった。これも両親たちであれば知っていたのだろうか? 自分が幼いということは自覚しているだけにネムはいろんなことを吸収しようとしていた。サトルに恥じない奥さんになるために。
「失礼いたしました。不老とは年月が経っても年を取らなくなるということです!」
「えっと、よく分からないですけど、私に必要なんですか?」
「はい! 必要でございます!」
そこで一拍おかれる。そして大きくお辞儀をしながらパンドラズ・アクターが話しかけてくる。
「モモンガ様は永遠の命を持っております。そのため現在のネム様は定命のままでは何れモモンガ様はネム様を失ってしまいます」
「――そんなの嫌です! ずっとずっとサトルと一緒に暮らしたいです!」
「はい、わたくしも同じ思いでございます! なのでネム様にはレベルアップをして頂き不老になってモモンガ様と永遠に生き続けて頂こうと考えております」
「分かりました! でも具体的には何をすればいいんですか?」
「御納得頂き感謝いたします、それでは始めさせて頂きます!」
パンドラズ・アクターが指パッチンをすると、それに合わせたかのように多くのアンデッドが闘技場の中に入ってきた。
「ネム様には今入ってきた、アンデッドたちをこの鞭を使って倒して頂ければと思います。使い方に関しては指導係がお教えいたしますのでご心配なく!」
鞭の使い方はネムは良く知らないから感謝すべきである。だがアンデッドを倒す。気が進まないでいた。何せサトルと同じ職業なのだ。
「えっと、本当に倒さないといけないんですか? 可哀そうです!」
その言葉にパンドラズ・アクターが笑ったような気がする。
「ネム様はお優しいですね。ですが! これは倒される者たちも望んでいることです!! ぜひお願いします!」
「むー分かりました」
「ご納得いただき感謝致します。それでは、アウラ!!」
その言葉に従うかのようにアウラが現れた。
「アウラちゃんこんにちは! もしかして私の指導係ってアウラちゃん?」
「――そうよ! 厳しくいくから覚悟しなさい!」
「うん!」
「では後はお任せいたします」
そういうとパンドラズ・アクターは去って行った。
★ ★ ★
アウラは悩みに悩んでいた。パンドラズ・アクターからネムに鞭の使い方を教えて挙げてほしいと言われているのだ。それは構わない。アンデッドを倒させることにも異存はない。
何でもパンドラズ・アクターが集めた情報によればこの世界では本来レベル制限で所有できない職業を修得できるのだという。つまりネムはレベルアップして不老になってもらうのと同時に、この世界でのレベルが一体どのように得られるのか……最終段階の実験らしい。なお失敗した場合はウィッシュ・アポン・ア・スターを使用して不老にする予定とのことである。
それはいい、それはいいのだ。
ただ一つ自分の中の考えが無ければ。この娘といるとどうしてもおじさんのことを意識してしまう。具体的に言うと一緒にお風呂に入ってアルベドに乗せられててしたことを意識してしまう。
意識してしまうと顔が真っ赤になる。それを見咎めたネムが話しかけてくる。
「どうしたのアウラちゃん?」
それに対して慌ててアウラは否定の言葉を発する。
「何でもない!? 何でもないの!? 本当に気にしないで!」
「? うん、分かった」
何とか意識を逸らすことに成功した。だが自分の中では顔は真っ赤なままだ。それに普段ネムとおじさんがどうしているのか気になる? もちろんHな意味で。妃になったということはそういう事もしているのだろうか? 気になるので聞いてみることにした。
「そういえば、モモンガ様―-おじさんとは普段どんなことしているの?」
「普段? 一緒にご飯を食べたりおしゃべりしたり、後はHなことをしたりしてるよ!」
顔がさらに真っ赤になってしまう。そんなに元気よく言われるとその困る。
「……もしかして、アウラちゃんもサトルとエッチなことしたいの?」
ネムから問いかけが発せられる……そして否定の言葉ではなく……肯定の言葉を発してしまう。恥ずかしがりながら小さくではあるが。
「……うん」
「なら、サトルに言って一緒にエッチしよう!」
その言葉にアウラは驚いた。寵愛は独り占めにしたいはずだ。自分が同じ立場だったら恐らくそうすると思う。最低でも独占したいと思うはずだ。
「なんで、誘ってくれるの?」
その言葉にネムは笑顔を浮かべる。
「だって仲間外れは寂しいもん!」
……この言葉で分かった。理解した。この娘は本当に純真無垢なのだ。
愛する御方が彼女と友達になれと言った事も、ハートを射止めたことも必然だったのだ。孤独を癒せたのも運ではなく必然だったのだ。
そしてアウラの返答はきまっている……。
「なら、お願い。私も伯父さんの、モモンガの側室になりたい」
「分かった!」
★ ★ ★
「ふぅ」
悟は達成感のある疲れの中、充足感を感じていた。自分がパンドラズ・アクターがいなくてもある程度なら組織のトップとして行動できると確信を持てて。
既にアルベドは去った。
今日の後の予定はネムとの夕食とお風呂ぐらいだ。そこにドアをノックする音がかかる。
「入れ」
「只今、戻りました! 父上!」
「うむ、よく戻った。パンドラズ・アクターそれで帝国はどうなりそうだ?」
「はっ帝国の皇帝は思慮が深く、こちらに反抗することは無いかと。実質的に臣下になったとみなして問題ないはずです」
「そうか、さすがだな。パンドラズ・アクター」
「保険も二つ用意しております。帝国に関しては問題ないかと問題は――」
「――法国だな?」
パンドラズ・アクターが頷く。シャルティアを洗脳したナザリックに敵対した愚か者たち……処断しなければならない。
「父上、捕らえた部下の者から聞いたことを総合して考えたのですが、法国に関しては私に全権を委任して頂けないでしょうか?」
「ふむ」
自分で処断できないのは業腹だが、実際今の自分が人間を殺せるかと言えば微妙だろう。モモンガならば人間を殺せた。アインズ・ウール・ゴウンなら虫けらのように足で踏みつけられた。だが鈴木悟はどうだろうか? 同じ人間に報復をできる自信が無かった。
「分かった……法国に関してはお前に一任する。シャルティアを操った者たちに地獄を見せよ」
「――はっ! では私は下がらせて頂きます。」
そしてパンドラズ・アクターがドアから去って行った。
そして時を置かず、またドアがノックされる。恐らくネムだろう。
「空いてるぞ」
そうすると予測した通りネムともう一人アウラが入ってきた。ネムはこちらに駈け出してきて、受け止める。
「サトル~ただいま~!」
「ああ、御帰りネム。そしてよく来たアウラ」
「はい第六階層守護者、伯父さんの元に参りました」
うん? アウラが酷く緊張しているように見える。何故だろう? 悟には分からなかった。
「サトル―今日は3人でご飯を食べよう!」
「ああ、構わないともネム」
そして口づけするかのようにネムが耳元でささやく。
「お酒も飲みたいなー」
苦笑してしまう。アルコールに関してもネムもサトルもアウラも対策している。だがあえて言うということは酔いたいのだろう。
特段異存は無かった。
「分かった。今日は酔おう」
メイドたちにメッセージを送る。今日はアルコールを用意するようにと。そして3人で談笑しながら食事が来るのを待つ。
こんなに会話が楽しいと思うのはいつ以来だろうか……そう、まるで仲間たちがいたころのようだ。
(いや、仲間たちは確かに
そう自分は一人ではないのだ。ネムもいる。もうモモンガは孤独ではないのだ。ただ自分を襲いかねないアルベドには別の意味で警戒が必要だが……これ以上仲間たちの子どもに手を出さない。それがサトルの願いなのだから。
そして食事が運ばれてくる。
「さて、それでは頂こう」
「はーい、頂きます」
「い、頂きます」
料理に手を伸ばす絶品だ。そしてアルコールもいいように効いてくる。気が高まってるのが分かる。
(まずいな、食べ終わったらすぐに
さすがにみられながらプレイするのはネムも恥ずかしいだろう。そこにネムから一つの疑問が投げかけられた。
「そういえば、アウラちゃんを創造したぶくぶく茶釜様ってどんな方なんですか?」
それにアウラが顔を赤くしながらこちらを見ている、酒が回っているのだろう。
「そうだな、ぶくぶく茶釜さんは――」
悟は自分が知る限りのぶくぶく茶釜のことを話す。リアルのことをぼかしてだが、だがそれでもアウラの食いつきようは凄かった。まあ自分の創造主のことだ。シャルティアも自分よりもペロロンチーノの方が上と考えていたのだから、心のどこかでそう考えているのかもしれない。それは別に構わない。
「――という訳でぶくぶく茶釜さんは偉大な人物なんだ。分かったかな? ネム、アウラ?」
「うわー! 本当に凄い人なんですね!!」
「伯父さん、ぶくぶく茶釜様のことを話して頂いてありがとうございます!」
アウラの顔には満足そうな顔が浮かんでいる。ふむ、これは労りとしてそれぞれのNPCに創造主の話をしてあげたほうがいいのかもしれない。
問題はどこで話すかだが。やはり食事中であろうか? その疑問をネムに話してみる。
「それだったら、お風呂で話すといいと思う!」
その言葉にアウラの顔が真っ赤に染まる。以前の惨劇を思い出したのだろう。自分も思い出した。気まずい。
(うん? でも男のNPCとだったらありなんじゃないか? よし、男性守護者と裸の付き合いと行くか)
思わずいい案が浮かんだから気まずくなってしまったが、よい結果なのだろう。
そして食事が終わるとネムがいつものように自分に体を寄せてくる。
「待つんだネム。アウラがまだいる――」
――その言葉は最後まで続けることは出来なかった。気づけばアウラが自分の唇に唇を当てていた。キスであった。
思わず茫然としてしまう。
「――あ、あたしもモモンガの側室になりたいです!!」
そして時は流れ――
ベッドには赤い血が流れていた。そして右手にはネムが、左手にはアウラが抱き着いていた。
動かせない腕をもどかしく思いながら悟は言葉を発する。
「ごめん茶釜さん……俺は取り返しのつかないことをしてしまった……」
その顔には涙が流れていた。
ペロロンチーノ「この裏切りもんが!! たっちさん、モモンガです!!」
たっち・みー「モモンガさん、あなたはいい友人だったが……ロリコンだったのがいけないのだよ」正義執行
クリスマスとクリスマスイブ、どっちが最終話に相応しいですか?
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クリスマス
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クリスマスイブ