『完結』家族ができるよ! やったねモモンガ様!   作:万歳!

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泣いても笑っても最終話です。

万歳!の次回作にご期待ください!

長い間お付き合いいただき感謝です!


最終話

 今日はカルネ村で目出たい出来事がある。そう、ネムと自分の結婚式だ。

 

 バイキング形式で村人たちすべてに料理を提供する。料理長たちが非常に張り切っていた。

 

 ネムを見るとパンドラズ・アクターが用意した装備を付けてウェディングドレスを着ている。

 

 今日はお祝いなのだ。

 

 そして神父役のパンドラズ・アクターがたっち・みーさんの姿で目の前にいる。

 

「鈴木悟、汝、病める時も、健やかなる時も、この者を愛し、支え、共に歩む事を誓いますか?」

 

「誓います」

 

「ネム・エモット、汝、病める時も、健やかなる時も、この者を愛し、支え、共に歩む事を誓いますか?」

 

「誓います!」

 

「今ここに、新しい夫婦が誕生しました。門出の時です、皆で祝いましょう!!」

 

「「おめでとう!!」」

 

「おめでとう、ネム!」

 

「皆、ありがとう!」

 

 それを優しそうにネムの母親がネムを見ている。そして自分には村長夫人が優し気に微笑んでくれている。

 

 嬉しかった。

 

★ ★ ★

 

 カルネ村、いや都市国家『アインズ・ウール・ゴウン』で結婚式を行った。その時ネムとの永遠の愛を誓った。なお神父役はたっち・みーに変身をしたパンドラズ・アクターだった。確かに聖騎士だから相応しいかもしれないが、少しだけ逮捕されるかもと恐怖を覚えた。披露宴もアインズ・ウール・ゴウンで行った。出される料理はバイキング形式でカルネ村に在住する者たちにも振舞われた。

 

 そしてナザリックでの身内だけを集めた2次会の披露宴。シャルティア、コキュートス、アウラ、マーレ、デミウルゴス、アルベド、そしてパンドラズ・アクターとメイドたちがナザリックの出席者である。そして都市国家アインズ・ウール・ゴウンからネム、村長夫妻とネムの家族が参列者だ。どうも村長夫人はパンドラズ・アクターと話があるようで席を離れているがすぐに合流するだろう。

 

 右隣にはネムを筆頭にネムの親族が座る。左側には悟の関係者が座っている。右隣の一番近い席にはネム、それから順にネムの家族とンフィーレア・バレアレ。村長と今は席を外しているが村長夫人。

 

左隣にはアルベドを筆頭にデミウルゴス達が座る。パンドラズ・アクターは村長夫人とともに席を離れている。

 

 談笑しながら待っていると、料理が出てきた。パンドラズ・アクターが一般メイドたちを指揮して全員分に配膳する。

 

 二次会で出された料理を見る。それはこの黄金の宮殿には相応しくなかった。まるで普通の村や町で出るような食事だった。それに対してアルベドが不満を漏らした。アルベドだけではないここに座っている全員が多かれ少なかれ思っていたのだろう。頷いている。ネムを含めた村人たちを除いて。

 

「何、この貧相な料理は、料理長は何をやってるのかしら!?」

 

「黙れ、アルベド」

 

 自分の声は多分に怒気を抱えていた。アルベドだけではない。傍に座るアウラもマーレも少し離れたところで座っているコキュートスもシャルティアも、アルベドの隣に座っているデミウルゴスも右隣に座っているネムやネムの関係者さえも恐怖を覚えさせるような物だった。

 

 そんな中一番最初に復活したのはネムだった。この中で真っ向から批判をできるのはもう一人の主役であるネムだけである。

 

「……どうしたのサトル? ちょっと怖いよ? アルベドさんが言ったように料理に問題があったの?」

 

「……すまない、問題はない、問題はないんだ。頂こう」

 

 全員が静かに頷く。

 

 そして一口食べた。ああ。間違いない。この味は……。

 

「かあさんの味だ……俺の好物だ」

 

 その言葉に全員が驚愕を覚えているように感じている。皿と自分を交互に見ている感じがする。

 

「どういうことだ! パンドラズ・アクター!?」

 

 パンドラズ・アクターには母親のことを少しは話しているが料理の詳細は話していないと断言できる。そして、そんな自分を無視するように扉の前まで無言で移動する。無視されてしまった。思わず立ちあがった。席を離れているパンドラズ・アクターに怒りをぶつけるため、ドアの外に移動しようしたときドアが開きパンドラズ・アクターが誰かを招き入れた。まず村長夫人が入ってきており……えっ? 体から力が抜け座っていた。顔が青白くなっていると断言できる。

 

「——御母堂様、どうぞお入りください」

 

 そして入ってきた人物を直視する。時が止まった。その姿は村長夫人によく似ていた。だが二人いる。片方は村長夫人だろう。だがもう一人は……誰だ? いやそんなことわかっている。

 

「嘘だ」

 

 母はあの日に死んだ。確定した過去だ。覆せるわけがない。

 

「嘘だ」

 

 大昔の記憶。だが決して母の顔は忘れない。理性が叫んでいる。この料理を作ったの母だ。それ以外ありえないと。

 

「嘘だ」

 

 また呟いていた。だがそれ以上言える言葉は無かった。

 

「——悟? 大きくなったわね」

 

「かあ、さん? ありえない、だってあの日母さんは死んだんだ」

 

 ナザリックの者もネムもここにいる大半の者が驚愕の表情をしている。ただ一人パンドラズ・アクターと村長夫人を除いて。

 

 

「はい、御母堂様は間違いなくなくなっておりました。モモンガ様から下賜していただいたシューティングスターと村長夫人を蘇生の触媒にすることで、蘇生に成功いたしました。ご報告が遅れたこと謝罪いたします」

 

 何を言っているかはよく理解できない。だが分かったことがある目の前にいるのは間違いなく自分の母なのだ。ゆっくりと椅子から立ちあがる。幽鬼のように。

 

 机を押しのけゆっくりと母の傍に向かう。身長は自分の方が高くなってしまっている。見下ろす形になる。だが関係がない。

 

「母さん、会いたかった、会いたかった!」

 

 涙を流しながら抱き着く。

 

 感動の再会であった。守護者たち全員が涙ぐんでいるのが分かる。自分の目からもネムの目からも涙が零れ続けている。

 

 しかし愛する母から帰ってきたのは唐突の平手打ちだった。

 

 痛みは無い。恐らくレベル差のせいだろう。しかし呆然としてしまった。

 

★ ★ ★

 

 時間はパンドラズ・アクターが村長夫人を霊廟に招いたころに戻る。

 

「では、魔法を行使させて頂きます」

 

 その言葉が終わった瞬間村長夫人を両手を組みひたすらに祈る。彼の願いが叶うように。

 

 そして――

 

「——指輪よ、私は願う(I wish)、サトル様のお母様を復活させろ!」

 

 村長夫人を媒介にするかのように周りに光が広まり、気づけば村長夫人の隣に裸の女性が横たわっていた。

 

「——成功した!!」

 

 彼が大きな動作を伴いながら喜びを表している。自身に光がまとわりついた時は驚いたが、上手くいったようで良かった。ここに倒れているのが本当のお母様なのだろう。確かに私に似ている。

 

「——ここは? あれ何で裸なの!?」

 

 そう言うとパンドラズ・アクターが準備していたであろう、下着や服類を彼女のそばに置いた。

 

「お初にお目にかかります。混乱されていると思いますがまずは服を纏いください」

 

 とても不安そうにしている。気持ちは分かる。ここは私が動くべきだろう。

 

「混乱されていると思いますが、まずは服を着ましょう」

 

 その言葉に従うかのように彼女は服を着始めた。だが混乱は解けていないようであった。後パンドラズ・アクターは視線を逸らしていた。まるで彼女の裸を見るのは不敬であるかのように。

 

「——さて服を着おわりましたね。では、話を始めましょう。時にあなた様の記憶はどこで終わっていますか?」

 

 そう言われると少し彼女は考え始める。

 

「……確か、悟の好物を作ろうとして……いえ、そんなことよりここはどこですか? それより、あなたは何? いえ、悟は無事なの!?」

 

 まるで食って掛かるようにパンドラズ・アクターに問いかけている。どうやら自分が拉致されたように感じているのだろう。また彼の存在もおかしく考えているようだ。確かに彼ののっぺらぼうの姿は不安感を増大させているのかもしれない。

 

「ご安心ください。サトル様は御無事でございます。私はパンドラズ・アクターと申します」

 

 それを聞いて少しだけ彼女は安心したのだろう。息を吐いていた。だが混乱からは抜け出せていないようであった。

 

「良かった。でもここは本当に何処なんですか? ここにある物全て高級品に見えるのですが……」

 

 その言葉に嘘は無い。確かに霊廟は先程までいた宝物殿には劣るが高級に見える物がたくさん置いてある、いや安置されている場所である。

 

「——まず大前提を話させて頂きます。あなた様はサトル様の好物を作ろうとしてお倒れになりお亡くなりになっております」

 

「え? そんな馬鹿なことある訳……私はこうして生きているし……」

 

「はい、魔法を使って蘇生させました」

 

 彼女はぽかんとした表情をしている。まるで大嘘を言われたかのように。

 

「魔法って、そんなのある訳」

 

「はい、リアルには存在しません」

 

 リアル? 初めて聞いた名前だ。だが彼女には通じているようだ。しかし魔法がない世界とは驚きである。この世界では魔法は当然のように存在しているのだから。だが恐らくリアル出身なのだろうあのサトルは。

 

「もう一度。自己紹介させて頂きます。私はパンドラズ・アクター。サトル様に作成された、NPC、ノンプレイヤーキャラクターです」

 

「NPC、それって……」

 

「良かった。NPCとは何かはご存じなのですね。話が早く説明できそうです」

 

 そうすると彼は大きな動きを伴いながら敬礼をした。まるでそれが正しい敬意の表し方であるかのように。

 

「サトル様はあなた様……御母堂様が亡くなられた後、小学校を卒業し社会の歯車として生きてこられたようです」

 

 あの絶大な魔法を使うサトルが社会の歯車? リアルとはそれほどまでに恐ろしい世界なのだろうか。話を聞いているだけなのに少しだけ身震いをしてしまう。

 

「その後社会の歯車であることに疲れたサトル様は一つのゲームを始めますその名前こそ『Yggdrasil』」

 

 ゲーム? 遊びのことだろうか? 彼女は落ち着いたのかパンドラズ・アクターの言葉に耳を傾けている

 

「その中で40人の仲間と出会いともに冒険をし、絆を作られてきたのでございます!!」

 

 大振りな動作を伴いながら彼は、自分が知らない物語を語り続ける。

 

「ですが何事も始まりがあれば終わりがあるのが悲しい事なのです。長い年月を経てお仲間、御親友の方々は一人また一人と徐々に去っていき、最後に残ったのはサトル様ただ一人でございます」 

 

 舞台役者のように悲壮に演技を続けながら重要な情報を彼は語り続ける。ここは霊廟。亡くなったと言ったのに去って行ったとはどういうことなのだろうか? だが自分が口出しは出来ない。これは彼と彼女の会話であり、蘇生が上手く言った以上、既に私は部外者に過ぎないのだから。神話の話を聞けるだけで満足すべきだろう。

 

「そしてYggdrasil最後の瞬間、奇跡は起きました! そう、サトル様はゲームの中の能力とアバターのままこの新世界に転移したのでございます!」

 

 歓喜を表すかのように彼はくるくると回りながら言葉を発する。

 

「そして我々NPCもYggdrasil時代に設定された情報を元に自分の意思を持って動きだしたのでございます! そうその時初めて我々は生まれたと言えるでしょう! 私はサトル様に作成されたNPCでサトル様を父上と呼ぶ許可を得られております!」

 

 ここで一旦会話が切られる。彼女は情報を少しでも多くしろうと集中しているのが分かる。

 

「この世界に来られてサトル様は幸いにも幸福に暮らされております。しかし心の中ではずっと悲しみを抱いておられていた。そうあなた様が傍にいないことによって!」

 

 確かに私に母を感じるほどに余裕が無かったのだろう。だが今は二人の女性と結婚して幸せになっている。そこに母親が蘇生される。喜ばしい事だろう。

 

「まずは、ゲームの世界から転移したということを信じて頂けたでしょうか?」

 

「……まだ少し混乱しています。完全に信じることは出来ません」

 

「そうでしょうとも、ではこちらについて来てください。まずは宝物殿を見てもらい、その後私が魔法を使いましょう」

 

 そして宝物殿の金銀財宝を見て彼女はかなり驚いていた。当然である。私も同様に驚いていたのだから。そして魔法が実演される。どうやら何者かを召喚したようだ。いつ見ても凄いと思う。それと火の魔法が発動される。少しだけ熱い。

 

「いかがでございましょう? 信じて頂けましたでしょうか?」

 

「……とりあえず、信じることにします。ですがそれならまずは、悟に会わせてください。そうでなければ信じることは出来ません」

 

「はい早速にもお会いして頂きたいのですが……」

 

「嘘でないのであれば、今すぐ悟に会わせてください。いいえ、悟に会わせなさい! あなたは悟が作ったNPCで息子扱いされているのでしょう? だったら私の言うことを聞きなさい!? 孫になるんだから!?」

 

「――実は明日サトル様はご結婚なされるのです。可能であれば御母堂様には披露宴の途中で参加して頂き、サトル様をサプライズとして驚かせようと考えておりまして……可能であればサトル様の好物を作って」

 

 目を大きく見開いている。明日結婚式ということに驚いているのだろうか? 確かに長い間死んでいていきなり息子が結婚するとなればかなり驚くだろう。実際何十年も蘇生までに時間があったようなので年はサトルと比較して10歳ぐらいしか違わないように感じる。私よりもかなり若い。

 

「――分かりました、明日、悟の結婚式に私が料理を作って悟を驚かせます。ところであなたはどういった方なのでしょうか? 少し私に似ている感じがしますが?」

 

 私の方を見て言葉が投げかけられる。これは私が答えることだろう。パンドラズ・アクターも黙っている。

 

「初めましてサトル様のお母様。私はしがない村の村長夫人に過ぎません。私があなた様に似ているということで、疑似的な親孝行をされていた者です」

 

「それと、御母堂様の蘇生時に触媒になっていただいた方で。この御方がいなければ蘇生は成功しなかったでしょう」

 

「そうなんですね。私を蘇生させてくれてありがとうございます」

 

「いいえ、私は何もしていません。パンドラズ・アクター様が魔法を行使されたからこそ、蘇生が成功したんだと思います」

 

 そこで言葉が終わる。少し重い雰囲気である。それを消そうとしたのかパンドラズ・アクターが大きな声で言った。

 

「それでは私は明日の結婚式の準備に戻らなければなりません。御母堂様、村長夫人今日はお二方でここでお過ごしください。もしかしたら村長夫人が離れれば蘇生が無効になってしまうかもしれませんから。後サトル様を驚かせるため、こちらの指輪を装備ください。これをしていれば誰にも気づかれませんから……」

 

 そう言ってベッドを二つ分用意した後パンドラズ・アクターはこの場を後にした。二人だけ。重い沈黙が発生する。それを断ち切るように御母堂から言葉がかかる。

 

「ところで奥様はどうやって悟に出会ったんですか?」

 

「はい、悟様と出会ったのは半年ほど前になります。今でも思い出します。帝国に。いえまずはこの世界のことを説明したほうがいいでしょうね」

 

 そして村長夫人は出来る限り丁寧に自分とサトルが出会ったときのことを説明する。その前提条件となることを先に話して。カルネ村の近くには王国、帝国、法国という3つの国があることを。自分たちが王国に所属していたことを。

 

「あの日のことは今も覚えています。いきなり帝国に偽装した法国の兵士たちが我々を虐殺しに来たんです。その時我々はモモンガと名乗られている、サトル様に救われました。それが最初の出会いです。尤も、外見がアンデッドでしたから恐怖を覚えましたが。今では笑い話です」

 

 興味深そうに聞きながら村が虐殺された時のことを話すと痛ましいような表情に変わってくれた。優しい方である。若しかしたらサトルも似ているのかもしれない。親子なのだから。いやむしろ似ていて当然なのかもしれない。

 

「その後、村人たちは全員サトルの手によって全員が蘇生されました。そして王国民で虐げられた者たちを集めて我々に革命を起こさせ、見事独立を成し遂げたのです」

 

「革命、ですか」

 

「ええ革命です、今ではカルネ村ではなく、都市国家『アインズ・ウール・ゴウン』です」

 

「アインズ・ウール・ゴウン」

 

 呟く。その名前を。既にその名前を名乗ることはやめているが事情を説明したほうがいいだろう。

 

「元々、アインズ・ウール・ゴウンはお仲間の方たち全員を含めたチーム名とのことです。お仲間の方も若しかしたらこちらの世界に転移しているかもしれない。それが理由で自身の名前にされていたということです。ですがその役割は我々の都市国家に譲られて今はサトル、若しくはモモンガと名乗られています」

 

「そうなんですか。本当に悟がお世話になったみたいでありがとうございます」

 

「いえいえ、こちらこそお世話になりっぱなしです。亡くなった村人まで蘇生して頂いて感謝の言葉もありません」

 

 自然と顔が笑顔になる。亡くなった二度と会えない家族に会えたのだから。少しだけしんみりとした空気になる。それを嫌ったのだろう。話を変えてきた。

 

「ところで話は変わりますが、悟はどんな方と結婚するんですか? お教えいただけると嬉しいのですが」

 

「はい、ネム・エモットという村人の一人と結婚します」

 

「ネム・エモット」

 

 噛みしめるようにその名を呟く。上手く言ってくれるといいのだが。

 

「純朴な少女で今年で11歳になります」

 

「-—11歳!?」

 

「はい11歳です。とてもいい子で御母堂様も気に入ると思いますよ」

 

 驚きの表情をしている。確かに現在は11歳だがとてもいい縁談だと思う。どちらも愛し合っているのが分かるのだから。それともう一つ説明しなければならない事がある。

 

「それとアルベドという少女の姿をしたNPCの方とも関係を持たれているようです。その方とも結婚式を開くと聞いております。きっと御母堂様に会えると知れば二人とも喜ぶと思いますよ」

 

 笑顔を作る。これは真実だ。きっと二人とも喜ぶだろう。しかし御母堂様の表情は優れない。何かあっただろうか。

 

「もう少し二人のことを詳しく聞かせて頂いていいですか?」

 

「構いませんよ。まずはネムのことから話しますね」

 

 私が知っているネム・エモットという少女は純朴な少女だ。優しくて可愛いだろう。だがそれ以上に重要なのは……。

 

「サトル様は当初、アンデッドの姿で村に降臨されました。その時全員がアンデッドは生者を憎む者という常識がありました。なので皆私を含めて全員が恐怖を覚えていたんですよ。ですがネムは違いました」

 

 最初から恐怖感を覚えず、助けてもらった事に感謝を表した子ども。今思えばその事がネムがサトルの家族になった大きな原因だろう。

 

「ネムだけは最初から感謝を表したんです。アンデッドの姿に惑わされずに」

 

 だからこそ、サトルの心をつかむことができたのだろう。それを最後に付け加えて言葉を切る。次はアルベドのことを説明しなければならないだろう。この時村長夫人は気づいていなかった。気づいていれば何かが変わったかもしれない。しかし気づかなかった以上。当然の帰結であった。サトルが平手打ちされるのは。

 

「アルベド様はここのNPCの中で最高の地位にいる方とのことです。ですが精神的に少しだけ頼りないのでしょうか? それとも幼いというべきなのでしょうか? とにかく少し不安定な方です。ですが今は多少安定しておられます。私のことを義理の母として扱い、サトル様の寵愛を得ることによって。あなた様とサトル様が再開されればネムともアルベド様ともお会いになるでしょう。二人ともいい子ですから気に入ると思いますよ? それに聞いた話によりますと他の方も妃になることを望んでいるとのことですから、御母堂様がいれば皆精神的に安定すると思います。それに小さい子どもの姿のNPCの方もいらっしゃるのでお義母様が蘇生したことを知れば、きっとなつくと思いますよ。一緒にお風呂にも入ってるみたいですし。それにNPCの方は親友の御子息らしいですし――」

 

 その言葉を聞きながら表情は何故か怒りの表情に変わっている。何かあっただろうか?

 

「――詳しく教えていただき感謝します」

 

 笑顔だった。だがその笑顔には陰り、いや怒りだろうか? それが含まれていた。だがなぜ怒っているのかは村長夫人には分からなかった。

 

「とりあえず、今日は眠りましょう。私も色々と考えたいですし」

 

「そうですね。ではおやすみなさい」

 

 挨拶をしてからベッドに入る。まるで王族が入るようなふかふかしたベッド。以前泊まった時も利用させてもらったがやはりここは神々がお住まいになるような場所なのだろう。そう思いながら眠りに落ちた。だから彼女の言葉を聞けなかった。

 

「――子ども二人に手を出すなんて、私が死んだのがいけなかった。それに他にも妃になろうとしている子どもがいるなんて、止めなくちゃ。結婚式が明日ならまだ間に合うはず。とにかく被害者の娘たちに謝罪しなくちゃ」

 

★ ★ ★

 

「えっ」

 

 平手打ちの音が響いた時アルベドを含めた全守護者の表情が止まった。まるで時間を止める魔法を使われたかのように。その中にはパンドラズ・アクターも含まれていた。なお村長夫人だけはこうなったかみたいな表情をしていた。

 

 そして御母堂様は堰を切ったかのように話し始めた。怒りながら。

 

「私の、私の育て方が悪かったのねっ!? ううん私が死んだのがいけなかったのね!? あの頃はいい子だったのにっ」

 

 何だこれは。何故愛する方は、モモンガは叱られているのだ? それがアルベドには一切分からなかった。いやアルベドだけではない、全てのNPCたちが疑問に思っているようだ。あの道化師の様に振舞いながらこちらを翻弄するパンドラズ・アクターすらも。

 

「小さな子ども二人に手を出すなんて!! 結婚相手は一人だけで大人じゃなければだめでしょう!!」

 

 ――その瞬間アルベドには天啓がさした。お義母様は一夫一妻で大人でなければ夫婦として認めないと言っているのだ。

 

「一体どんな手を使って小さな子供二人に手を出したの!! 鬼畜に成り下がるなんて。ごめんね。私が早くに死んだから。こんなことになったのよね、ごめんなさい。悟。そしてお相手の二人も本当にごめんなさい。ご家族の方も本当にごめんなさい」

 

「誤解だ、誤解なんだ、母さん!! ロリだから好きになったんじゃない、ネムだから好きになったんだ!」

 

 その言葉を聞きながら、気が付けばパンドラズ・アクターに用意させたミニマムになる指輪を取り外していた。その瞬間アルベドは元の姿に戻る。そう大人の姿に。

 

「お義母様! 私は大人でございます!! モモンガ様が小さな体を望まれていたので小さな姿を取っていただけで、子供ではありません! どうか婚姻をお認め下さい!」

 

「ちょ。おま、アルべッ」

 

 宮殿にもう一度平手打ちの音が響いた。それを誰も止めることができないでいた。マーレもデミウルゴスもパンドラズ・アクターもセバスもコキュートスも一般メイドたちも余りのことに動けないでいた。アウラとシャルティアも混乱から抜け出せないでいるみたいだ。だが私は行動できた。お義母様に気に入られるように行動をできた。

 

「——大人の人をわざわざ魔法で子どもにしたっていうの? 悟、あなた本当に鬼畜になったのね……さっきのネムだから好きになったというのも嘘なのね」

 

 お義母様の主を見る目が心なしかごみを見るような目になっているが、問題ない。このまま行けば責任を取って結婚をさせてもらえるはずだ。

 

「違う、違うんだ母さん、誤解なんだ!」

 

 いける。これは勝った。アルベドは確信していた。お義母様は一夫一妻制を望んでいる。そして結婚相手は大人であることを望んでいる。繰り返すがこれが事実だ。

 

 私が女として一番になる日が来たのだ。ネム・エモットは生きている間は不可能だと思っていた。だがこんなにも早く機会が回ってきた。本当のお義母様を蘇生してくれたパンドラズ・アクターに感謝である。

 

「何が誤解なの!? 11歳の少女を手籠めにした上に、部下を……親友の娘を幼女の姿に代えて手籠めにするなんて!!」

 

★ ★ ★

 

 デミウルゴスは混乱から立ち直りつつあった。パンドラズ・アクターがいまだに呆然としているのをしり目にしながら、アルベドが御母堂様に気に入られるように動くのを見ていた。

 

 そして宮殿にもう一度平手打ちが響く。そしてそれが終わると御母堂様はエモット夫妻の方を向いて謝罪を始めた。

 

「うちの悟が本当にごめんなさい。今からでも結婚は白紙にして頂いて構いません。賠償もさせます本当にごめんなさい」

 

「いえその、私達はこの結婚を喜んでおります。なので白紙にする必要は――」

 

 謝罪合戦が始まっていた。いける。勝った。私が正妻になれる。

 

 手に取るようにアルベドの考えが読める。何しろ勝利宣言をするかのようにガッツポーズをしているのだから。だがデミウルゴスにはそれが悪いことか良い事か判断しかねた。確かにナザリックの者と婚姻していただいてお世継ぎを生んでもらうことをデミウルゴスは望んでいる。

 

 いや、全てのNPCがそう考えているだろう。家族となったがその子供様にも家族になるように行動するつもりではあるが。そして守護者であるアウラとシャルティアはネム・エモットの手を借りてお手付きになっていた。アルベドだけは自力でお手付きになったようだが……それを考えると御母堂様の考える一夫一妻制は問題である。しかし無碍には出来ない。何しろ、伯父上の母君なのだ。その考えには大きな力がある。そしてその場合大人であるアルベドだけが妃になれるということも。

 

 そこまでをデミウルゴスは瞬時に読み取った。アルベドも同様だろう。パンドラズ・アクターだけは混乱から抜け切れていないようだが……こうなるとは予想ができなかったのだろう。自分にも予想できなかった。

 

 そして一拍遅れて……その事実に気付いたのだろう。アウラが猛然と席から立ちあがった。

 

 

「お義母様! 私はサトル様を愛しています! どうか引き離さないで下さい!」

 

 泣きながら優しく御母堂様に泣きつく。それを見たアルベドが伯父上と御母堂様に見えないように顔を般若に変えた。どうやらアウラは本当に子どもであることを逆手にとって婚姻を認めさせようとしているのだろう。優しく抱きしめながら切れた目で主を睨みつける御母堂様。

 

「ああ……こんなかわいい子にも手を出したって言うの!? 悟、あなた何人に手を出したの!!」

 

「ご、五人です」

 

 伯父上に対して御母堂様は怒りの余りか膝蹴りを顔にぶつけていた。そして大声で叫んだ。

 

「正座……正座しなさい悟!!」

 

「うっはい」

 

 そうして次にユリ・アルファが参戦していった。ミニマムの指輪を外してだ。彼女もやはり女になったのだろう。普段であれば混乱を招くようなことを自重したはずなのだから。

 

 彼女も妻になりたいのだろう。

 

「お義母様! 私も側室の一人として認めて頂きたいです」

 

 正座している伯父上に対してさらに冷たい視線が御母堂様から放たれる。

 

「……そう、一人だけじゃなく、二人も魔法で小さくしてたのね……」

 

「この変態!! 鬼畜!! ロリコン!!」

 

 先程から伯父上から助けてとの、アイキャッチをデミウルゴスとパンドラズ・アクターは受けている。だがどう動けばいいのかが分からなかった。そして破局が訪れた。それはネム・エモットの声だった。

 

 

 

 

「お義母様! 私はサトルが大好きです! だから結婚を認めてください!」

 

 

 

 

 

「それに、お腹にサトルの赤ちゃんがいるんです!」

 

 

 

 

「家族が増えるよ、やったねサトル!」




家族ができる。

お母様が蘇る。

子どもができる!

どこからどうみてもハッピーエンドですね!

以上を持ちまして、家族ができるよ、やったねモモンガ様を完結とさせて頂きます!
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六大神を篤く信仰する名家の娘として育ち、漆黒聖典の一員となったクレマンティーヌ。▼兄の歪んだ愛情と法国の在り方に疑問を抱きながらも目を背けてきたが、ある出来事をきっかけに遂に祖国を裏切る。▼彼女が逃亡先に選んだのは、かつて行き倒れた自分に外套と治癒薬を与え、「壊れずに、ここまで来てくださいな」と微笑んだ金髪の少女、第三王女ラナーの居るリ・エスティーゼ王国であ…


総合評価:1509/評価:8.74/連載:46話/更新日時:2026年02月18日(水) 00:00 小説情報


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