魔装機神 THE WIND OF STRATOS   作:バイル77

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第4話「重力の魔神」

Aピット内

 

 

「……はっ!?」

 

 

ぽかーんと口を開けていた一夏であったが、意識を取り戻した。

セシリアを抱えたまま、正樹はBピットに帰還している。

 

 

「正樹、凄いんだな……サイバスター、だっけ?」

 

「ああ。テスラ・ライヒ研究所という企業で開発された新型。こうも一方的とは思わなかったが……それにしてもあの剣技、安藤正樹、只者じゃないな」

 

 

篠ノ之流剣術を納めている箒からすれば、正樹の剣は見たことがない流派のものだ。

もっともそれも当然である。

 

神祇無窮流(じんぎむきゅうりゅう)】は、ラ・ギアスでは【不易久遠流(ふえきくおんりゅう)】と共に広く広まっていた剣術の流派だが、この世界では存在すらしていないのだ。

そのため使用できるのは【真伝】を会得している正樹と、その正樹から直接手ほどきを受けた簪の姉、刀奈しかいない。

 

ちなみに簪は、自分には剣は合っていないとの事で遠慮していた。

 

 

「……勝てるかなぁ、俺」

 

「一夏、そんな弱気でどうするんだっ!この1週間私と共に修練していたじゃないか!」

 

 

箒の怒声に苦笑いで一夏が返す。

するとAピットに真耶が飛び込んできた。

 

 

「来ましたよ、織斑君の専用機がっ!」

 

――――――――――――――

Bピット内

 

 

「お疲れ様、正樹」

 

「おう」

 

 

サイバスターを解除した正樹をドリンクを持った簪が迎える。

それを受け取って一口。

 

ふぅと息をついた正樹を見て、簪は微笑みながら口を開いた。

 

 

「サイバスターの調子、良かった?」

 

「ああ、問題ないと思うぜ。ただそれでも一撃貰っちまったけどな」

 

「うん、でもあれは仕方ないと思う。オルコットさんのあの一撃、剣については素人の私でも凄いと思った。ラ・ギアスの剣士の中でも早々出せるものじゃないと思う。それにあの自爆覚悟の行動、いなされることも計算に入れてなきゃできないよ」

 

「ああ、予想の上をいかれちまったな。ディスカッターも弾き飛ばされてバニティリッパー使うことになっちまったし。こりゃうかうかしてらんねーな」

 

「そうだね」

 

 

正樹と簪が先の試合についての感想を話し合っている場所から数m離れた所で先の対戦相手であるセシリアはその様子を眺めていた。

 

 

(……正樹さんとお話になっているのはもしやテスラ研の更識簪さん?それにあの雰囲気……ああ、最初から勝てない戦いだったのですね)

 

 

先の戦いの中で少なからず正樹に惹かれていたセシリアであったが、彼と簪の様子を見て淡い感情が消えていくのを感じていた。

 

そんな彼女に話しかける人間がいた。

 

 

「セッシー、お疲れさまー。どうしたのー?」

 

「セッ、セッシーとは私の事ですか、布仏さん?」

 

 

丈の余りまくった制服を身に着けたどこかのほほんとした雰囲気を纏う少女、【布仏本音】だ。

簪の侍女であり、幼い頃からの親友でもある。

 

また正樹も彼女には何度か会ったことがあった。

 

 

「うん、セシリアだからセッシー。はい、ドリーンク」

 

「ニッ、ニックネームですの?」

 

 

ドリンクを受け取りつつ、セシリアが尋ねる。

それに気づいたのか簪と正樹が視線を2人に向けた。

 

 

「うん?本音じゃねーか、ピットに来てたのか」

 

「かんちゃーん、マッキー。お疲れー!」

 

「本音、まさかオルコットさんに変なニックネームを……!?」

 

「……いえ、いいのですよ、更識さん」

 

 

本音に詰め寄った簪にセシリアはそう告げる。

 

 

「ニックネームなんて今まで付けてもらったこともありませんでしたから、新鮮な気持ちです」

 

「それならいいんだけど……」

 

「それに、私の事はセシリアで構いませんわ。私も簪さんと呼ばせてもらってもよろしいですか?」

 

「……うん。なら私もセシリアで。失礼だけどなんというか試合前とは別人な気がする」

 

「お恥ずかしながら、先の試合でようやく目が覚めましたわ。そういう一切合切を吹き飛ばしてくれた正樹さんには感謝しています。お二人の仲、応援してますわ」

 

 

セシリアが最後にそう簪に聞こえるくらいの声量で告げると、彼女の顔が朱色に染まった。

 

 

(何だよ、うまくやれてるじゃねぇか)

 

(うれしそうね、マサキ)

 

 

正樹の足元にいた2匹のファミリアの内の1匹、クロが正樹に念話を送ってきた。

 

 

(そりゃな。試合前にはバリバリの女尊男卑って態度だったからな)

 

(試合の中でそういう考えを全部捨てれたってことニャ?)

 

(俺との試合なんて切欠に過ぎないと思うけどな。ま、何はともあれってやつだ)

 

 

そうクロに返した正樹はドリンクを一気に飲み干した。

 

 

――――――――――――――

正樹とセシリアの試合から1時間後

 

セシリアのブルー・ティアーズはパーツ交換に時間がかかるため、先に一夏と正樹の試合が行われることとなった。

 

 

すでにエネルギーのチャージと修復が完了したサイバスターは、ピットから射出されアリーナ上空で待機していた。

 

 

『へっ、ようやくかよ』

 

『待たせたな』

 

 

Aピットから射出された純白の機体を纏った一夏が笑みを浮かべて正樹に返す。

【白式】、それが一夏の纏う専用機の名である。

 

唯一の武装である【雪片弐型】を一夏は構える。

 

 

『今の俺でどこまでやれるかわからないけど、全力で行くぜ、正樹っ!』

 

『当然だ、全力で来いよっ!』

 

 

同じくディスカッターを構えた、正樹。

試合開始のコールが響く直前であった。

 

 

オープンチャネルでアリーナ全体に声が響いたのは。

 

 

『【グラビトロンカノン】発射』

 

 

チャンネルから聞こえた声は若い男性のそれ。

瞬間、サイバスターと白式のセンサーが異常を検知した。

 

機体にまるで押しつぶされる様な重圧が加わる。

 

 

『うおおおっ!?』

 

『ぐぅっ!?こっ、この攻撃は……それに今の声っ!?』

 

 

突然の事態に白式はなすすべもなく落下し、地面に激突する。

シールドバリアのおかげで一夏は無傷であるが、動こうとしても動けないようだ。

 

 

(マサキ、機体全体に大幅な重力異常を検知したニャっ!)

 

(スラスターへのエネルギー供給にシールドバリアの出力上昇、完了。何とか動けるはずニャっ!)

 

 

ファミリアであるシロとクロが細かな調整を行い、サイバスターは機体の出力を全開にして重圧に耐えている。

超高速での機動が可能なサイバスターだから何とか耐えられるレベルである。

現行の第2世代機では恐らく耐えられずに落下してしまうだろう。

だがその影響か、エネルギーは瞬く間に減っていく。

 

しかしそんなことは些細なことであった。

 

正樹はこの攻撃を知っている。

そして先の声を知っている。

 

それは半ば本能に近いレベルで、【誰】がこの攻撃を行っているのか理解していた。

 

アリーナのシールドバリアはまるでガラス細工の様に破壊されており、観客席の生徒たちは混乱に包まれていた。

教師である千冬や、真耶は生徒たちの避難誘導を行っている。

 

そんな中、ピットの簪は自身の【IS】を部分展開して空間投影ディスプレイを高速でタイピングしながら、現在のアリーナの状況を分析していた。

 

 

「なっ、何が起こってますのっ!?」

 

『アリーナのシールドバリアが一瞬で破壊されてるっ。しかも試合エリアに重力異常っ、限定してのにっ、200Gっ、これはまさか……っ!?』

 

 

多種多様に存在しているISでも、重力操作を行うことができる機体は存在していない。

テスラ研で最先端のIS技術に触れている簪でもそんな機体は聞いたことがない。

 

だが、1機だけ、それが可能な機体を知っている。

まだウェンディとして、姉であるテューディと一心同体だった頃、共に戦ったことがあるのだ。

 

 

「じゅっ、重力異常ですのっ!?」

 

『っ、あの機体は……まさかっ!?』

 

 

サイバスターと白式、それを見下ろすように濃紺の機体がいつのまにかアリーナ上空に存在していた。

他のISと比べて重厚な装甲、機体各部にはまるで宝玉の様なパーツが備え付けられている。

 

そしてその機体を纏っているのは、紫髪の美青年。

まるで正樹を試しているかのような笑みだ。

 

 

『【グランゾン】……っ!?』

 

 

【重力の魔神】

かつてラ・ギアスに災厄を振りまく【魔神】として予言されたこともある機体。

 

 

『フフフ……マサキ、貴方は相変わらずですねぇ』

 

『シュウっ! テメェっ! なんでこの世界に居やがるんだっ!?』

 

 

シュウと呼ばれた青年。

稀代の天才【シュウ・シラカワ】が自身のISである【グランゾン】を纏い、現れた。

 

 




更新が大変遅れてしまい申し訳ありません。
ぷつっとやる気が切れていましたが、更新再開します。

ISデスティニーと、ISMDともどもよろしくお願いします。
スパロボX、サイバスター強いですねぇ…。


次回予告

「災厄の予兆」

『これで決めるっ!!』

『フフフ、見せてください。そのサイバスターの力を』


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