魔装機神 THE WIND OF STRATOS   作:バイル77

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第5話「災厄の予兆」

現れたシュウに向かい、正樹が口を開いた瞬間であった。

グランゾンの右マニピュレータの宝玉に高エネルギー反応を検知。

 

咄嗟に機体のスラスターを噴かせて回避を選択。

刹那の差で、サイバスターは発射された【グランビーム】を回避する。

 

 

『シュウっ、テメェッ!』

 

 

回避機動のまま加速して、振り下ろされる神速のディスカッター。

 

だがグランゾンは避ける気配を見せなかった。

正確には避ける必要もないからだ。

 

突如、ディスカッターがまるで見えない何かに阻まれたかのように弾かれた。

ISのシールドバリアとは文字通り次元が違う防御力を持つその機能を正樹はよく知っていた。

 

 

『マサキ、その程度ではグランゾンに傷一つ付けられませんよ?』

 

『歪曲シールド……っ!シュウ!何で学園を襲う!』

 

『……このIS学園が、鋼龍戦隊の様な一騎当千の戦力となるかの見極めですよ。と言っても今回の目的はアナタとサイバスターですが』

 

 

端正な顔に笑みを浮かべた青年、シュウが正樹に告げる。

グランゾン、シュウが右腕を掲げるとマニピュレータに装備されている宝玉が煌めき目の前の空間が裂ける。

 

同時に、サイバスターの周囲360°いたるところに同じように空間が裂け、孔が現れる。

 

 

『ククク……マサキ、見せてください、そのサイバスターがどの程度の力を出せるのか。【ワームスマッシャー】』

 

 

グランゾンの胸部から凄まじい量のビームが放たれ、目の前の孔に吸い込まれていく。

サイバスターに奔るロックオン警告、その数はざっと100。

 

機体周囲の孔全てから、グランゾンの放ったビームが転移し、襲ってきたのだ。

 

 

『ちぃっ!』

 

 

数瞬前までサイバスターがいた空間をビームの嵐が薙いだ。

瞬時加速とAMBACによってワームスマッシャーを回避していく。

 

しかし数発掠ってしまい、その分エネルギーは消耗してしまった。

だが、ワームスマッシャー相手にこの程度ならばむしろ僥倖であった。

 

本来の【グランゾン】が使用するワームスマッシャーはこの比ではない。

それは対峙した経験のある正樹がよく知っている。

 

 

『成程、既存の第3世代機とは隔絶した機動性があると。当然でしょうね、仮にもサイバスターを名乗る機体なのですから……では、これならどうです?』

 

 

胸部の装甲が展開し、内部にある宝玉が煌く。

 

凄まじいエネルギーが宝玉から溢れ、黒い球体が生成される。

少しずつ大きく、まるで空間に空いた孔が辺りの空間を飲み込みつつ巨大化しているようにも見える。

 

 

『事象の地平に近づけば、相対時間が遅くなります。あなたにとっては一瞬でしょうが、こちらでは永遠です。理解できましたか?』

 

 

グランゾンが両マニピュレータを掲げる。

同時に不安定だった孔は球体として安定した。

 

底の見えない黒い球体。

それは触れたものすべてを飲み込む【マイクロブラックホール】

 

これがグランゾンの代名詞でもある【ブラックホールクラスター】

先のシュウの言葉はこの武装に必要となる呪的言霊の置き換え、つまりは魔術的な詠唱でもあった。

 

その様子を生徒の避難を終えた千冬と真耶が管制室でモニター越しに確認していた。

 

 

「あの黒い球体が周囲の重力場、試合エリアに限定して、深刻な重力異常を発生させてます!つまり、あの武装は……【ブラックホール】を生み出してますっ!」

 

「ブラックホールだとっ!?」

 

「信じられませんが、事実です。そんなモノが放たれたら、アリーナだけじゃなくて学園そのものが……っ」

 

 

グランゾンが発生させているブラックホールクラスターの威力試算から、被害が尋常なものではない予測がはじき出され真耶は言葉を詰まらせる。

 

 

『フフフ、見せてください。そのサイバスターの力を』

 

 

ブラックホールクラスターの発射準備は完了した。

正樹は驚愕の表情でシュウに叫ぶ。

 

 

『シュウ、本気かっ!?』

 

『正樹っ!』

 

 

紫のISがサイバスターに寄り添う。

相手は簪、彼女もISを身に纏っていた。

 

紫色の装甲に両肩部には巨大な展開砲塔が非固定浮遊部位として浮いている。

 

 

『あれはグランゾンなのっ!?』

 

『ああ、けど詳しいことは後だっ。簪っ、ネーゼリアでアカシックバスターのリミッターを解除してくれっ!』

 

 

正樹が怒鳴り気味に返す。

それに頷いてすぐさま彼女は空間投影ディスプレイで操作を行う。

 

彼女の身に纏うISの名前は【ネーゼリア】

かつて姉と一心同体であった際に作り上げた霊峰の精霊と契約した魔装機がモチーフとなっている。

 

 

『ネーゼリアからサイバスターへのアクセスを確認。アカシックバスター、プロテクト解除……いけるよ、正樹っ!』

 

『サンキュッ!』

 

 

簪からの返答を聞いてサイバスターはディスカッターを構える。

そしてディスカッターから魔方陣が展開されていく。

 

 

(出力安定、アカシックバスター起動用プログラム実行ニャッ!)

 

(マサキ、行けるわよっ!)

 

『これで決めるっ!!』

 

 

ハイファミリアに同化しているシロとクロの2匹が武装の出力を調整する。

展開された魔法陣は複雑な模様を描きながらも迅速に展開された。

 

 

『アカシックレコードサーチっ!』

 

 

魔法陣が完全に展開されたことを確認した後、ディスカッターを差し込む。

すると魔法陣から火の鳥が放たれ、グランゾンに向かう。

 

同時にサイバスターも機体を加速させる。

 

 

『サイバードチェンジっ!』

 

 

正樹の音声認識によって、正樹の身体が量子化し、真の意味でISと1つになる。

搭乗者が消えたサイバスターであったが、その形状を大きく変えていく。

 

鎧にも見える形状はそれぞれのパーツが稼働することで、まるで鳥のように見える形状に変化した。

 

サイバスターの長距離飛行モード【サイバード】である。

 

 

『ブラックホールクラスター、発射』

 

 

サイバスターの行動を待っていたかの様にグランゾンはブラックホールをサイバスターに向けて発射した。

圧倒的な破壊のエネルギーを秘めた黒い球体が、サイバードに向かう。

 

 

『アァァァカシックバスタアァァァーッ!!』

 

 

召喚した火の鳥と共にサイバードが翔る。

サイバードと火の鳥が一つとなり、巨大な炎を纏ったサイバードは発射されたマイクロブラックホールに向かう。

紅き炎はその高温からか蒼き炎に変わり、火の鳥も同じく蒼き姿に変化する。

 

 

『貫けぇぇぇっ!!』

 

 

一瞬の拮抗の後、サイバードはブラックホールクラスターを貫いた。

単純な物理的な破壊力ならばブラックホールクラスターが圧倒的に上である。

だがアカシックバスターは、単純な破壊力も高いが、魔術の要素が強い武装である。

アカシックレコードに接続し、そこから対象だけを削除することでその存在を消し去ることが可能だ。

 

つまり今回の場合ならば、ブラックホールクラスターをなかったことにしたのだ。

 

サイバードが人型に戻ると同時に搭乗者である正樹の身体も再び実体化する。

 

 

(武装の面ではオリジナルのサイバスターと遜色ありませんね。姿が変わっても流石ウェンディといったところですか)

 

 

ブラックホールクラスターを打ち消された事など微塵も感じていないシュウは、サイバスターとネーゼリアを駆る簪を一瞥した後、機体を上昇させる。

 

 

『今回はここまでですね、マサキ』

 

『ぜぇ……まて、シュウっ、まだ終わりじゃねぇ……っ!』

 

 

サイバードから実体化した正樹の呼吸は荒く、汗は滝の様に流れている。

目立った被弾はなく機体自体のエネルギーもまだ十分に残っている。

 

正樹のこの疲労は急激に大量のプラーナを使用した為だ。

ブラックホールクラスターを消滅させるために、自身のプラーナを大量に使用してしまったため、身体に影響が出ているのだ。

 

 

『相変わらずの強がりですね……ウェンディ、彼の事は頼みましたよ』

 

『クリストフ、待って!』

 

 

そう告げたシュウは、簪の声を無視してグランゾンを操作させる。

するとグランゾンの背後の空間に黒い孔が開き、シュウはその孔に消えていく。

 

グランゾンの機体が孔に完全に消えると、最初からなかったかのように孔は消え去った。

 

 

『クリストフ……っ!』

 

『あの野郎……っ!』

 

 

そう悪態をついた瞬間、正樹の意識はブラックアウトした。

同時にサイバスターも展開が解除され、待機形態に戻る。

 

 

『正樹っ!』

 

 

落下する正樹をネーゼリアが抱えて、急いで地上に降下する。

蒼白な顔色の正樹だが簪は、彼の症状を把握していた。

 

 

(プラーナの急激な消費による疲労、あの時と同じなら……!)

 

 

魔装機神サイバスターがその能力を全開にしたとき、マサキは急激にプラーナを吸われ続けて現在と同じ症状になったことがある。

その際に彼女が自身のプラーナを彼に与えることで回復させた。

その方法は――

 

 

「んっ……」

 

 

彼の頬に口づけして、自身のプラーナを以前と同じように渡す。

流石に直接のキスは憚られた。これでも充分彼を回復させる事は可能だ。

 

顔色の悪かった正樹が見る見る間に回復していく。

そしてすぐに意識を取り戻した。

 

同時に簪も離れる。

 

 

「正樹、私のプラーナを渡したからもう大丈夫」

 

「……悪ぃ……」

 

「ううん、大丈夫。クリストフの事は気になると思うけど、今はゆっくり休んで」

 

「……そうする」

 

 

苦笑しつつ再び目を閉じる。

 

 

『おい、正樹っ!大丈夫かっ!?』

 

『正樹さんっ、大丈夫ですかっ!?』

 

 

シュウが撤退した事により、アリーナを襲っていた重力異常は解除されている。

その為、グラビトロンカノンの影響下にあった白式も復調していた。

セシリアもISを展開して駆けつけてくれた。

 

 

「正樹を保健室に。織斑君、力を貸して」

 

『あっ、ああ。抱えればいいんだな』

 

「お願い」

 

「お供しますわ、正樹さんの事も気になりますので」

 

 

白式のマニピュレータで気を失っている正樹を抱え上げ、移動して行く。

簪とセシリアはそれに付き添う。

ちらりと管制室のほうに視線を移すと、管制室から出て行く千冬と真耶の姿があった。

 

 

(今回の事で、色々と追求されそう。謎の男性搭乗者とISが学園を襲った訳だし……)

 

 

正樹を安全な所に移したら色々と追求があるだろうと簪は思う。

あまりに突然の事態であったため、正樹も自分もシュウについて知らぬ存ぜぬを通せぬ態度をとってしまっていた。

しっかりと映像も残っているだろう。

 

だがそんな事よりも大事な事はある。

何故、シュウは学園を襲ったのか。

以前の様に、邪神に縛られている気配はなかった。それに彼が同じ過ちを2度起こすとは到底思えない。

 

 

(……クリストフ、いえ、シュウ。貴方は一体何をしようとしているの……?)

 

 

憶測や推測が頭の中を飛び交うが、どれも確信を得るには弱かった。

 

――――――――――――――

 

某所

 

何処かに存在する施設、一見すると格納庫の様にも見える場所。

突如としてその空間が割れ、中から現れるのはグランゾンを身に纏ったシュウ。

 

それを出迎えるかのように待っていたウサギ耳をつけエプロン姿の女性――天災【篠ノ之束】がシュウに話しかける。

 

「しーちゃん、おつかれー」

 

「特に疲れてはいませんよ」

 

 

それに笑みを浮かべながらシュウは答える。

IS【グランゾン】を待機形態に切り替えて懐にしまう。

 

 

「あれー、少し嬉しそうじゃない?」

 

「そうですか?まあ、グランゾンは及第点を超えましたからね。当然改良は続けますが」

 

(それもそうだけど、マーちゃんとは色々あったとか聞いてるし……ま、藪を突いて魔神を怒らすのはカンベンだね)

 

 

とぼけた様に返すシュウに束も笑みを返す。

 

 

「さて、束博士。【ゲート】の様子はどうですか?」

 

「ん、特に異常なしだよー。起動もしてないし、する気配もないよん。しっかし南極の下にこんなのがあるなんて束さんびっくりだよ」

 

 

束が空間投影ディスプレイを展開する。

そこに映るのは巨大な円状の物体。

 

その名は【クロスゲート】

莫大なエネルギーを抽出することも、平行世界への転移門として使用することもできる先史文明のオーパーツ。

新西暦世界ではその性質上、たびたび厄災を招いていた。

 

例を挙げるのならば、クロスゲートより現れた絶望の王、ペルフェクティオ。

クロスゲートをその身に取り込んで新人祖となったユーゼス・ゴッツォ。

クロスゲート内の負念を吸収して暴走した巨人族XN-L。

 

新西暦世界の地球、衛星軌道上にあったクロスゲートは鋼龍戦隊の想いを束ねた【グランティード・ドラコデウス】のインフィニティキャリバーで破壊されたが、バルマー帝国やほかの星系にもクロスゲートは複数存在していた。

 

そしてこの世界にもクロスゲートは存在していた。

幸いなことに起動の気配はなく、南極の深海数千mに存在している為かまだ先進国にもその存在は明らかになっていない。

 

 

(クロスゲートを破壊するだけの力を今のグランゾンで出すことは叶いませんね。サイバスターが精霊憑依(ポゼッション)できるのならば可能性はあるでしょうが)

 

 

そもそもオリジナルのグランゾンやその完全体でもある【ネオ・グランゾン】でもクロスゲートの破壊は不可能だったのだ。

それよりも性能が低下している今のグランゾンでは土台無理な話である。

サイバスターが真の力を発揮すれば可能性はあるが、それでも低い。

 

 

「今は観察とゲートを封印するための装置を開発しなければなりませんね。束博士、引き続き協力をお願いしますよ」

 

「とーぜん!対等な取引だからねー、グランゾンのデータとか色々貰ってやる気満々だよ!おーっと、まずはご飯だ!くーちゃーん!」

 

「ふふ、それは何よりです」

 

 

そう言ってデスクの上に置かれていたコーヒーにシュウは口をつけた。

 




第3次OGはよ。
クォヴレー来て。


次回予告

「学園の日常」


「おっ、お前、鈴かっ!?」

(うへぇ……一夏、お前もかぁ)
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