「青葉2番! 敵艦隊発見!」
その言葉と共に、
「比叡お姉様」
「なに? 榛名」
流石は比叡お姉様、戦闘となると顔つきが違います。やはり榛名の臀部にしか興味の無いダメお姉様ではなかったということです。お礼はたっぷりするとは約束しましたけれども、これは……いえ、その話は後にしましょうか。
私は湧き上がる劣情を押さえ込みつつ、至極平然とした表情を生み出します。
「瑞鶴さんの艦載機の損耗を抑える必要があります」
「だから、艦攻艦爆を投入させないって?」
だからこそ、ボスに取り付いてしまえば勝ち、なのです。問題はどう取り付くか、ただその一点に絞られます。
「二戦です。二戦だけ持ちこたえられれば良い。それ以上の負担はかけるべきではありませんから」
「……分かった。なら、瑞鶴ちゃんに戦わせない訳ね?」
「逆ですよ。徹底的に戦って貰うんです、なんせ一対三、その次は
だからこそ、航空戦が必要なのです。矛盾しているようですが矛盾はしていません。敵の戦力はいずれをとっても厄介な代物。故にこの
しかし、それはこの戦力では叶いません。今この艦隊が擁する航空母艦は瑞鶴さんのみ。正直、制空権の確保もおぼつかないでしょう。
「それ、出来るの?」
「やって頂くほかないでしょう。今は《純白》の片割れを信じることにします」
全ての航空戦が純粋な計算によって成されていた原作とは異なり、
「本気で言ってないクセに」
「あ、バレました? やっぱり何度も肌を重ねたお姉様には見抜かれてしまいますね」
「……」
呆れたような、蔑むようなお姉様のジト目を躱しつつ私は前を見ます。
《純白の鶴翼》。それは瑞鶴さんと翔鶴さんに……いえ、翔鶴さんに与えられた
無改造の翔鶴型。
翔鶴さんが如何に自惚れようと、そして史実の翔鶴型がいかに優秀な艦艇であろうと、艦これという枠組みの中における翔鶴型というのは決して強い艦ではありませんでした。無改造では各艦載機の機数もイマイチ、搭載量でも
にも関わらず、彼女は決して改造に手をつけようとはしませんでした。戦闘を重ねることにより向上する練度が改へと、改二へと、そして改二甲に相応しいものに達しても。
「でも、今の瑞鶴さんは改二艤装ですよ? 信じるかはともかく、戦力として数えるならば、重要な局面で集中運用。用兵の基本でしょう?」
「……まあいいよ。総旗艦殿、指示を」
比叡お姉さまがそう言い、榛名のことを熱い目線でジッと見つめます。ありきたりな言葉で表すなら、いえ敢えて言いましょう。お姉様はやっぱりイケメンだったのです……!
「比叡お姉様……!はr」
「指示」
「随伴の巡洋艦を、
「了解、じゃあ……いこうか!」
比叡お姉様が増速、その動きを読み取った青葉さんたちが指示を請うように私の方に視線を送ってきます。回線を開き、指示を出すことにしましょう。
「
《了解! 北上時津風両氏、続いてください!》
その言葉で一斉に陣形が動きます。単縦陣は崩され、敵艦隊のいる方向へとそれぞれ増速。
我ながら笑いそうです。なにが「いつも通り」だと言うのでしょう。私は戦艦、比叡お姉様は巡洋艦、そして青葉さん以下の艦娘は駆逐艦。強い敵に艦娘を強い順に割り振っただけの、なんの戦術もない作戦。これでは自ら艦隊戦という集団戦の利点を捨てて乱戦に持ち込むようなものです。普段であれば採らない戦術。
「瑞鶴さんは1個戦闘機小隊だけの派遣をお願いします。あの水上打撃群には戦闘機がいませんから、それだけで制空は確保状態になりますので」
正直弾着観測なんて遠距離戦用のシステムをこの状況で使うとは思えませんが……まあ、切れるカードは多いにこしたことはありません。
それに、瑞鶴さんだって状況把握ぐらいはしたいことでしょう。
《榛名さんっ、瑞鶴は参加しなくていいの?!》
「比叡お姉様とは艦隊連携の経験はないでしょうし、下手に介入すると誤爆しますよ? お姉様
悪かったわねトリッキーで、そんな抗議が聞こえて来そうですがそれは
「瑞鶴さんは敵空母群の捜索をお願いします。奇襲が可能ならそちらの自由判断で仕掛けてください……貴重な航空戦力は対空母戦に回しませんとね」
《……わ、わかった》
そう言いながら瑞鶴さんは偵察機を放つ準備を始めます。彼女が殴り合いに参加する理由はありません。私たちの距離はどんどん離れていきます。
「それにしても……」
今頃、瑞鶴さんは「改二」の性能に驚いているのではないのでしょうか。
そもそもステータスを底上げする改造を施さない理由などあるはずもありません。少なくとも、翔鶴さんほどの実力を持つ
でも、彼女はそれをしなかった。自分だけがしないのであればまだ「縛りプレイ」の領域なのでしょうが……それを瑞鶴にもさせなかった。
皮肉なものです。貴女が一番避けたかったのは、貴女の瑞鶴さんが”あの姿”になることだったというのに。
《翔鶴ねぇ……やるよ。瑞鶴航空隊、発艦!》
貴女がいなくなってしまった今、瑞鶴さんは改二の装束……そう海上迷彩に身を包んで戦っています。そう深緑の迷彩です。貴女の目的は彼女をその姿にさせないことではなかったんですか?
★ ★ ★
榛名さんの言わんとすることは分かっているつもりだ。
空母の戦力不足。要は私だけじゃダメってこと。戦闘機の数を増やした都合上私の攻撃機は数が心許ない。だから、少しでも損耗を避けようとしている。
私が放った偵察機が空を舞う。北の寒空に飛んでいく。偵察は釣りと同じだ。目標の頭上を通り過ぎても、雲や、太陽の光の加減や、その他諸々の要素が悪く重なれば見つからないこともある。
そして、じっくりと待たなくちゃ始まらない。
この待つというのがなかなかに大変なのだ。そりゃ空からの景色は楽しいし、実際の偵察にかかるような何時間も待たされるわけではないからいいのだけれど。
「それにしても、改二ってすごい……」
とにかく、
とはいえ、これから挑むのは絶望的に大きい戦力差による航空戦。そりゃ改装してからはこの世界での数日分を航空戦の練習に費やしたけれど、果たして勝てるかどうか。
そして、ついに凶報が入る。いや吉報というべきか。
「瑞鶴7番より入電。我、敵空母を発見せり……」
報告相手を探す。でも、味方は全員敵艦隊の
そう。いま私の報告を聞いたところで、誰の戦闘に役立つというのだろう。発見したからどうなのだ。偵察機は敵に見つかっているか? こちらとの距離は、そして此方の位置は掴まれているのか? それらを総合的に鑑みたときに先制攻撃の必要はあるのか? それを決めるのが、航空戦を一任された艦娘の役目というものではないのだろうか。
じっと集中する。偵察機からの景色に映るのは身じろぎもせずに進む深海棲艦の姿。これらがどう動くのか。
とにかく、偵察機を艦隊から引き離す。さっきは霧の切れ間から見つけた艦隊だけれども、霧はそこまで濃くないから下手をすれば見つかってしまうだろう。それこそ、上空直掩でも飛ばされた日にはすぐ発見されてしまう。
晴れていたのであれば、水平線まで下がってもいいのだけれど……今回は決して視界が開けている訳ではない。下手に離れたなら、見失ってしまうかもしれないのだ。
「えっと、こういう時は随伴艦の動きを見て……陣形変更の気配はナシ、ということは気付いてない、よね?」
迷うな、その迷いが一瞬の命取り。姉にかかれば即断即決だっただろう。即断即決に必要なのは情報? 情報をこれ以上とることなんて出来ない。偵察機の増派なんて悠長なことをしている暇はないのだ。
じゃあ翔鶴ねぇなら……こう言うことだろう。脅威は即座に排除、大切な瑞鶴のためですもの。
ホント、分かりやすいったりゃありゃしない。
「一方通信! 我、敵空母群を発見せり。瑞鶴航空隊、これより航空戦に突入す!」
宣言だけ、わざわざお伺いを立てる理由もない。ただ闘えばいい、守ればいい。それに必要なのは、思えば情報でもなんでもないのだ。
翔鶴ねぇは、無条件に私のことを「瑞鶴」として扱ってくれた。それはきっと、『自分が裏切られてもいい』という覚悟だったんだ。
――――だって、私が翔鶴ねぇの想う
だから、私も覚悟を持とう。翔鶴ねぇの想いには答えられないかもしれない。それでも、翔鶴ねぇが認めてくれる
翔鶴ねぇの妹は、空母瑞鶴っていうのは――――こんなもんじゃない!
「瑞鶴航空隊、全機発艦!!」
誰に対してでもなく叫ぶ。ならきっと、叫ぶ相手は
絶やすことなく、何発も、何発も。やがて北方の空には私から飛び立った何十もの翼が。これで全部、これっきり。今の私に残された艦載機は一機もない。
チャンスは一度だけ。幸いにも、まだ偵察機が見つかった気配はない。この一撃で、決めるしかない。
目標は空母だけ。空母さえ落とせれば後は榛名さんたちがやってくれる。是が非でも制空権を確保してみせる。
「目標……輪形陣中央、敵空母! 艦載機、やれ!!」
これでも装備品の開発には力を入れているのだ。彗星二一型甲が雲の切れ間から飛び込み、魚雷を抱えた流星改が水面とぶつかりそうな高度へと落ちていく。
当然、敵だって気付かない訳ではない。艦載機もすぐに上がってくることだろう。
そのための艦戦隊だ。
「上がらせるな! 墜ちろ!!」
ありったけの
20㎜機関砲から次々と繰り出される弾丸の群れが形成する帯は、いうなら死のカーテン。それが覆いかぶさった日にはヲ級の象徴でもある頭の変な帽子みたいなやつから出てくる敵の戦闘機はひとたまりもない。飛び上がった瞬間にはその命を散らしていく。
真っ向からやりあって制空権を保持するなんて無理な話だ。だったら、端から制空権争いなどしなければいい。飛び上がる戦闘機を片っ端から落とせば、時間は稼げる。
問題は、時間が稼げるだけということ。零戦の20㎜弾は威力が高い反面、弾丸の数が少ない。つまるところ、この弾丸を湯水のように使って初めて作ることが出来るカーテンは、長持ちしないのだった。
「それが……どうしたっていうのよ! 彗星は急降下! 流星は突撃!」
翔鶴ねぇは本当にすごいと思う。制空戦闘をこなしながらも艦爆や艦攻隊の指揮を完全追従でこなしてしまうのだから。私にはそんなことは出来ない。だから、
「瑞鶴航空隊を……舐めるなぁあ!!」
爆弾が飛ぶ。魚雷が水面に踊る。こんなところで負けはしない。たった一人でも、十二分にこの空を支えて見せるから!
★ ★ ★
戦闘というのは教科書通りにやるに限ります。榛名の放った徹甲弾が敵戦艦の顔に直撃したことで戦闘はようやく終結をみました。まあ、敵戦艦を組み倒してマウント取った状態ですから、そりゃあ万に一つも外すわけが無いんですけどもね。
「掃討完了、ですね」
「榛名は、相変わらず乱暴だねぇ……」
弛緩した、というより考えるのを止めたような表情の比叡お姉様。比叡お姉様も十分乱暴だと思うのですが……ぁあ、そういえば比叡お姉様は『Tea Party』の中でも比較的良心的な存在でしたっけ、なんだかそんな気がしてきました。
「青葉さん、状況は?」
《もう仕留めてますよ、これから瑞鶴さんの方に向かいます》
その言葉を聞いてほっとひと安心。先ほどの一方通信からも分かるように、瑞鶴さんは既に敵空母群との戦闘を開始してしまっています。するとシステム上は水上打撃群と同時に空母群とも戦闘を開始した扱いになってしまうんですよね。つまり12対6、単純計算で倍の戦力です。
まあ
《一方通信! 我、敵空母2隻を沈黙せしめる!》
「……なかなか、良い調子じゃないですか」
瑞鶴さんも結構やるものです。そう感心していると、比叡お姉様が併走してきます。少し困り顔の様子、どうしたというのでしょう。
「……榛名さ、電探の様子チェックした?」
「えぇ、戦闘開始前にチェックしたのが最後です。流石に戦ってる最中はそんな余裕は在りませんから」
そう言うと、比叡お姉様は頭を掻きます。どうしたというのでしょう。
「だよね……それがさ、私の調子悪くて、再起動したんだよね……」
「ええ」
「そしたらですね……」
比叡お姉様が明後日の方向を、向きます。その先には雲。薄っぺらく広がる雲。
そこから、ごま粒のような小さな……たこ焼き。
「あー……これは……」
瑞鶴さんが無理な奇襲を仕掛けたせいで迎撃アルゴリズムが変わったのでしょうか。いや、確かにあれの元ネタは陸上基地ですし、奇襲を恐れて先手を打とうとしてくるのはよく分かるんですけども、ね。
《榛名氏! 電探に感、これって
《あちゃー……》
《えっ? なんで見つかってるの!?》
無線に走る青葉さんたちの嘆き声。まあ妥当な反応だと思いますよ。このステージで
「これってさ。多分水上打撃群の通報ってことでいいよね?」
とは比叡お姉様。
「でしょうね……二個艦隊を一斉に相手取るのは
「あのーはるな、へたするとこれ
「それはないと信じたいですね。とりあえず輪形陣、瑞鶴さんを死守しますよ」
とはいえ、まだ終わってはいません。航空戦さえ乗り切ってしまえば、地上から動けない
瑞鶴さんと合流する頃には、既にごま粒はたこ焼きほどの大きさへ。つまり敵航空隊は間近に迫ってきていました。
「可能な限り密集させて陣形を作りましょう。瑞鶴さん、航空隊の収容は?」
「榛名さん、ごめん。間に合わない、戦闘機隊全機弾薬欠乏、燃料はまだあるからとりあえず退避させる!」
「結構です。直掩ナシなんてままある話です、やりましょう。お姉様、しばしお付き合いを」
「分かってる。大丈夫、合わせるから」
比叡お姉様は深く頷きます。ご迷惑をおかけします。ですが、奥の手を使わねばどうにもこの状況は乗り切れそうにないのです。
「お願いします――――最終防空陣形!」
迫り来る艦載機の群れを前に、私たちは併走。徐々に陣形を輪形陣から変化させていきます。
私たちが組むのは最後の手段。
「こんな状況で申し訳ないですが、この陣形の弱点について話しておきましょうか」
「……はるはる、それ不謹慎じゃない?」
とは北上さん。重雷装巡洋艦である北上さんは、正直この陣形の最大のウィークポイントだったりします。誘爆した日には全員巻き添えですからね。
「ですが、弱点は知っていて損しないでしょう?」
そもそもこの陣形には明らかな欠点があります。はっきり言って僚艦との距離が狭すぎるんです。それこそ、艤装同士がもうぶつかっているんじゃないかってくらいです。もちろんぶつけたら大変ですし狙いもぶれます。とはいえ足を止めるわけにもいけませんから、まっすぐ進む訳ですが……それだけで精一杯、下手に曲がれば即座に接触事故へと発展する陣形なんです。
自惚れるつもりはありませんが、私たちほどの高度な連携がとれる艦隊でなかったら陣形を組んだ段階で誰かしらが事故で沈む気がします。
逆に言えば、私たちならそれはなんとかなるんです。で、今回比叡お姉様が助っ人なんですよね。まあこれは比叡お姉様に頑張って頂きましょう。
榛名の考えることなんてお見通しでしょうし、多分大丈夫でしょう。現に陣形組めましたし、これはもう突破した難関とします。
「……私の努力が随分軽んじられてない?」
「よく分かりましたね。大当たりですが気のせいです。むしろ、問題なのは比叡お姉様が戦艦であることですね」
「え、まさかの存在否定……?」
「この榛名がお姉様を拒絶するとお思いで? この陣形はですね、
「あぁ……」
この陣形はいうならば私たち専用の戦術です。
「しかし、そんな問題も些細なものです。本題はここから……この陣形は、言うなら敵に一発でも爆弾や魚雷の投下を許せばおしまいです。それを防ぐために猛烈な対空砲火と上空直掩を必要とするのですが……」
「え。ちょくえん……?」
そうよく気付きましたね時津風さん。あぁ大丈夫ですよそんなマジで食べられる五秒前みたいな感じの顔しなくても。
そうなんです。この陣形、六隻が各方向を担当して防空を行うというコンセプトで設計してあるんですよ。それぞれが『面』の防空を担当して、それにより立体の防空を考えなくてもよくする。そのようにして可能な限り負担を落とすことで機銃の一発にまで正確な照準を実現するという陣形なんです。
まあ考えてもみてください。六つの『面』が私たちを覆います。六角形の壁ですね。では屋根はというと? もうお分かりかと思います。
「もしかして……直上に来たらダメな奴ってこと?」
「そういうことです」
そもそも、対空砲火というのは敵航空機を撃墜することを主眼としているわけではありません。目的は敵を追い払うこと。濃密な対空砲火は、敵を意図した場所に
ここで、追い込まれた航空機を墜とすための戦闘機が、本来であれば必要なんですよね。
先ほども行ったとおり、この陣形と対空砲火は、この空間に狩り場を作り出すことが目的なんです。狩りを行う鷲がいない時点で、この陣形は攻撃手段を喪ってしまっているのです。
それでも、盾として使えないわけではありません。これで最低限、抵抗するしかないでしょう。少しでも耐え凌ぎ、陣形を解消してからは各個の技量に頼るしかありません。
せめて一小隊でも戦闘機隊がいれば……。
とその時、たこ焼きのうるさい音に紛れて、別の音。
――――瑞鶴航空隊所属の
「瑞鶴さん、まさか流星に制空戦をやらせるおつもりですか?」
「……やるしかないでしょ。流星だって、20mmを積んでるんだから!」
空を睨んだ瑞鶴さん。艦隊全滅と艦載機全滅を天秤にかける気持ちは分かりますが、そんなことをしても艦載機を無為に喪うだけで終わってしまうでしょう。
「無茶ですよ、機銃があればいいという話じゃないんですよ?」
「そりゃそうだけど……待って、流星改から報告、8時方向に未確認機」
「新手ですか」
「まぁ今更、100が101に増えたってどうってことないけどねぇ」
そういう北上さん。ところが瑞鶴さんの表情が、ふと止まりました。
「……違う、敵機じゃ無い」
「?」
「敵機じゃ無い――――敵じゃないよ! 榛名さん!!」
まさか。
そんなまさか。
《――――艦隊旗艦、そして随伴艦の皆さん。ご迷惑をおかけしました》
いや、来ると分かっていたのではなかったか。だから待っていたのではなかったか。この陣形も、戦術も、
思わず吊り上がった口角を誤魔化すように、私は口を開きます。今は少しだけ普段の淑女としての嗜みを捨て、挑発するかのように。
「いつから、北方海域は
《お姉ちゃん特権ですっ――――翔鶴型航空母艦一番艦、翔鶴……参る!》